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ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『エリオット=マーチ ■03話_1(選択肢:ユリウス)』

2:「ユリウスに会いに行く」
(ユリウスに会いに行こう)■■
時計塔を目指すことにして、歩き続けた。■■
【【【時間経過】】】
★エリオット・ゴーランド滞在03共通ここから↓
時計塔・ユリウスの部屋
【【【演出】】】……時計をいじる音
【ユリウス】
「おまえは、暇なんだな」■■
「そうよ、暇なの」■■
「あなたに会いに来るくらいだもの。
自分の暇人っぷりにうんざりするわ」■■
嫌味に、嫌味で返す。
嫌味を言われることにも、すっかり慣れてしまった。■■
この男の挨拶だと思えば、堪えない。■■
【ユリウス】
「無駄なことをしていると思うのなら、私になど会いに来なければいいだろう」■■
「聞いていなかったの?
暇だから、来ているの」■■
「時間を無駄遣いしたいのよ」■■
【ユリウス】
「ふう……。
無駄遣いしたがるほど時間があって、羨ましいことだ」■■
「おまえと同じように暇な人間に相手をしてもらえ。
この世界には時間を持て余している奴は腐るほどいる」■■
「あなたは、違うのね」■■
【ユリウス】
「私は、仕事に忙しい。おまえと違って暇じゃないんだ。
一分一秒、無駄に使いたくない」■■
「……私も、そうだった」■■
許可を得ずに、椅子を作業机にひっつける。
それくらいには、この無愛想な男とも親しくなった。■■
「毎日忙しくて、暇な時間なんてなかったわ。
いつも急いでいたの」■■
【ユリウス】
「今は、暇を持て余した、いいご身分というわけだな」■■
「……そうなのよ」■■
「いいご身分、だわ……」■■
頬杖をついて、ユリウスの作業を見学させてもらう。
これくらいでは邪魔にならないと知っているし、ユリウスも止めない。■■
【ユリウス】
「滞在先の手伝いをしているんじゃなかったか」■■
【【【演出】】】……時計をいじる音
「ああ、話したっけ?」■■
「そう……。
やることがないのも暇すぎるし居心地が悪いから手伝わせてもらっているの。
おかげで大分馴染めた感じ」■■
【ユリウス】
「それでは、暇ではないだろう」■■
「ここに来られる時間があるくらいには、暇よ」■■
「休憩時間もあるし、常に詰めていなきゃいけないわけでもない。
暇があるの」■■
【ユリウス】
「どんな仕事にも休憩くらいある。
ずっと働き詰めでいたいのか?」■■
「あなたは、そうしている」■■
【ユリウス】
「私の仕事は、そういう仕事だ」■■
「私の仕事は、違うんだもの……」■■
【ユリウス】
「……なんだ。
私のように、こもりっきりで休みのないような仕事に就きたいのか」■■
「そうじゃないけど……」■■
「はあ……」■■
溜息が漏れる。■■
【ユリウス】
「憂鬱そうな顔をするな。
ただでさえ辛気臭い場所が、ますます暗くなる……」■■
「暗いの、好きなくせに……」■■
【ユリウス】
「自分のならな。
人に暗い空気を作られるのは好きじゃない」■■
「我侭……」■■
【ユリウス】
「押し掛けてきた奴に言われたくない……」■■
「……では、なんだ?職場でいじめられているのか?
人間関係のトラブルなど、よくあることだ」■■
(これって、心配してくれているのかしら……)■■
言葉はきつくても、ユリウスと過ごすのは好きだ。
癒しとは無縁のような人なのに、なんだか安らぐ。■■
「……不満なんてないの」■■
「余裕のある、いい環境だと思うわ。
人間関係にも問題なし。
うまくやっているし、過ごしやすい」■■
【ユリウス】
「なんのトラブルもなさそうじゃないか」■■
「トラブルなんてないのよ。
すごく安定していて、いい労働環境だわ」■■
「余暇もたっぷりあるし……」■■
「そう……。
余暇……」■■
「余暇が、たっぷり……」■■
【【【演出】】】……時計をいじる音
【ユリウス】
「…………」■■
「おまえ……。
……元の世界では、よほど忙しく過ごしていたんだな」■■
「…………」■■
「……そうなのよ」■■
ぱたりと、机に突っ伏す。
なんのトラブルもない。■■
きちんと休憩もとれるし、休日(と言っていいか分からないが、長い休み)もある。
その休み時間をどう使っていいか分からない。■■
「ちゃんとした休みがあるなんて……」■■
【ユリウス】
「休みがあるのは普通のことだ。
ないほうが異常だろう」■■
「こんなに時間があるなんてこと、なかったわ」■■
休日は休日で、することが山のようにあった。
休みに休めることなどなく、日曜の午後……姉と過ごす時間だけが私にとっての休み時間だったのだ。■■
無駄とは思わなかった。
あの時間だけ……。■■
「私、学業と仕事を兼業していたから」■■
【ユリウス】
「おまえのことだ。
うまく両立させていたんだろうな」■■
「……そうでもない。
疲れていたわ」■■
「姉さんに隠すのも疲れたし……。
なんのためにやっているのか、たまに分からなくなっていて……」■■
(あれは、本当にやりたいことだったのかしら……)■■
何度も自問したものだ。■■
「…………」■■
「……ごめん」■■
「……喋りすぎ?」■■
【ユリウス】
「私は、作業に集中すると他のことは気にかからなくなる。
……知っているだろう?」■■
「……うん」■■
通わせてもらって、かなりになる。
もちろん、知っていた。■■
だけど、他のことが気にかからないほど集中しているときは、返事も返さないくせに。■■
【【【演出】】】……時計をいじる音
【【【時間経過】】】
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