TOP>Game Novel> 「 ハートの国のアリス 」> ブラッド=デュプレ ■12話

ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『ブラッド=デュプレ ■12話』

◆帽子屋屋敷・廊下◆
【【【時間経過】】】
【エリオット】
「俺がなんでブラッドを慕ってるかって?」■■
「なんで、そんなこと知りたいんだよ、アリス。
面白いエピソードなんて、何もないぜ?」■■
「だって、エリオットってブラッドに異常なくらい心酔しているから……」■■
「昔、何かあったんだろうなあ……って」■■
前々から気になっていたので、思い切って尋ねてみた。■■
ブラッドときたら常に怠そうで、面倒なことはすぐ部下に押し付ける。
おまけにしょっちゅう蹴ったり殴ったりされているのに、エリオットの心酔ぶりはこちらが尊敬したいほどだ。■■
(きっと、何か理由があるはず)■■
【エリオット】
「ふうん……?
俺のことを聞くと見せかけて、ブラッドのことが知りたいんだな?」■■
(……う)■■
言葉に詰まってしまう。
正直なところ、図星だ。■■
(エリオットに、内心を言い当てられるなんて……)■■
無性に悔しいのは何故だろう。■■
【エリオット】
「……可愛いな、アリス」■■
エリオットは、にやにやと意地悪く笑った。■■
「本人のいないところで過去をほじくりかえすなんて行儀が悪いとは思うわ……」■■
【エリオット】
「べっつに?
いいんじゃねえの?」■■
「ブラッドは怒ったりしないと思うし……。
むしろ、あんたが知りたがってたって言ったら喜ぶと思うけどなあ」■■
「……絶対に言わないでよ」■■
【エリオット】
「えー?
なんで?」■■
「なんでも」■■
【エリオット】
「……?」■■
「まあ、いいや。
俺がブラッドに惚れこんでる理由は、脱獄を助けてくれた恩人だからだ」■■
しばらく不思議そうな顔をしていたが、エリオットはあっさりと言い切った。
ごくさらりと、何でもないことのように。■■
「…………」■■
【エリオット】
「ん?
なんだ?」■■
「普通、こういう過去話って、もっともったいぶってしない?」■■
【エリオット】
「なんで?」■■
ますます首を傾げられる。
ウサギ耳が軽く揺れた。■■
「いや、いいけどね。
聞きやすくて」■■
【エリオット】
「だろ?
俺は昔、大罪を犯して、役持ちなのに牢屋にぶちこまれちまったんだ」■■
「時計屋の野郎が……。
あの陰険野郎……」■■
ぶちぶちと、ユリウスについて文句を言い始めるエリオットに首をかしげる。■■
「ユリウスに捕まったの?
あの人、あんまり強くなさそうだけど」■■
【エリオット】
「奴の部下が強いんだよ!」■■
「時計塔内は奴の領土で無敵だし、奴は滅多に外に出ない。
その上、すっげー馬鹿強い部下がいるんだぜ?」■■
「詐欺みたいにつえーの」■■
「ふーん……」■■
【エリオット】
「で、捕まってたところを、ブラッドがかっこよく助けてくれたわけだ」■■
「ふーん……」■■
【エリオット】
「で、今に至る。
終わり」■■
「ふーん……」■■
「…………」■■
「……【大】終わり?【大】」■■
【エリオット】
「言ったろ?
面白いエピソードなんて、何もないって」■■
「囚人だった俺を、ブラッドが助けてくれたんだ」■■
「それを盾にこき使われているんだ」■■
エリオットは、同情せずにはいられないくらいよく働いている。
ブラッドがだらだらしている(そう見える)のと対照的に、彼は目に見えて働き者だ。■■
【エリオット】
「働きたくって働いているんだ。
強制されているわけじゃない」■■
「だとしても、あなた、働きすぎよ」■■
双子のようなのは極端だとしても、もう少し労働条件の改善を求めてもいい気がする。■■
だが、何を言っても、エリオットはいいんだと繰り返した。
彼自身が言うように、強制されているようにも見えない。■■
【エリオット】
「それに、俺、いつかブラッドに殺してもらえるんだ」■■
満足そうに言う彼に、私は目を丸くした。■■
【エリオット】
「誰も代わりにならないように、ちゃんととどめをさしてやるって、ブラッドは約束してくれた」■■
そんなものが報酬になるとは思えない。■■
(エリオットって……、大丈夫なのかしら)■■
この世界では、ウサギ耳のついた人は皆どこかおかしくなっているのかもしれない。■■
……ついていない人もおかしいが。■■
【【【時間経過】】】
「ブラッド・エリオットの過去話」イベントここまで↑
帽子屋屋敷・ブラッドの部屋
今回は久々に、エリオットを呼び付けていないらしい。■■
二人きりの部屋。
私はここに来始めた頃の専らの目的だった、読書に耽っている。■■
「邪魔」■■
【ブラッド】
「気にせず、続ければいい」■■
続けるには、あまりに邪魔だった。
身動きがとれない。■■
短い本を一冊読み終わり、次を探そうと書棚に近付いたところ、ブラッドが寄ってきたのだ。■■
「私は、本を探しているの。
邪魔しないで」■■
【ブラッド】
「私は君を抱きしめている。
君こそ、邪魔をするな」■■
「私は、本を探したいの」■■
【ブラッド】
「私は、こうしていたい」■■
「…………」■■
「はあ……」■■
埒が明かない。■■
「ブラッド。
こんなあなたを見たら、部下が泣くわよ?」■■
【ブラッド】
「泣いたりしないさ。
部下達は、みんな私の我侭に慣れっこだ」■■
「こういう我侭には、誰も慣れていないと思う」■■
ブラッドが我侭で気ままなのは、私だってここへ来た当初から知っている。■■
だが、我侭は我侭でも、これはまた性質が違う。
仮にもマフィアのボスという肩書きを持つ男にしては、甘ったるすぎる。■■
【ブラッド】
「……どういう?」■■
「だから……、こんなふうに……」■■
【ブラッド】
「……どんなだ?」■■
「…………」■■
うまく説明できない。■■
こんなふうに、情けなく?
情けないような感じは受けない。■■
では、子供っぽく?■■
(子供っぽくなんかない)■■
けだるげな男は、情けないというには存在感がありすぎる。
子供には、こんな色気はない。■■
甘えであることは分かるが、説明できなかった。
しかし、とても甘ったるく、くすぐったい。■■
「…………」■■
「……悪いものでも食べた?」■■
【ブラッド】
「……食べてない」■■
「…………」■■
「はあ……」■■
「……なんで、あなたが溜め息をつくのよ」■■
仕方ないと、溜め息をつくのは私のほうだ。
そんな、呆れたような目で見られる覚えはない。■■
「部下が泣かなくても、私が泣きそう……」■■
【ブラッド】
「……泣けばいいだろう」■■
「はあ……」■■
やはり、溜め息をつくのは私のほうだ。■■
(本当に泣いてやろうかしら……)■■
「なんだか、もう……嫌だわ……」■■
甘ったるさに耐えかねた勢いで、泣き真似を始めた。
さすがに、本当に泣いたりはできない。■■
「なんだってこんなふうになっちゃったのかしら……。
う……」■■
【ブラッド】
「……下手な泣き真似はよせ。
見え透いているぞ」■■
(そうでしょうね)■■
私の演技なんて猿芝居。
やっていても軽く馬鹿らしい。■■
だが、甘ったるいよりはマシなので続けてみる。■■
「う……。
……っ」■■
ブラッドから顔を背けて俯き、嗚咽(っぽい声)を漏らす。
この体勢ではブラッドの顔は見えない。■■
【ブラッド】
「アリス。
どうしたんだ、君にしては悪趣味じゃないか」■■
「……っ」■■
【ブラッド】
「……っ。
よせと言っているだろう……!」■■
顔を覆っている手をブラッドが掴もうとしたので、身を捩って避け、更に続ける。
おかしなもので、ブラッドの手はそれ以上は迫らず、あっさり引いた。■■
「く……。
……っ」■■
【ブラッド】
「……アリス!」■■
「ううう……」■■
【ブラッド】
「…………」■■
「~~~~~っ!」■■
【【【演出】】】・・・がばっと腕を掴む音
「わ……っ!」■■
今度は容赦のない勢いで手首が掴まれ、顔を覆っていた掌をどけられた。■■
【ブラッド】
「…………。
やっぱり泣いてなどいないじゃないか」■■
短い間の後、安堵したようにブラッドが呟く。■■
その表情が予想以上に切羽詰まっていて、私のほうが呆気に取られた。■■
(……え、なんで???)■■
「まさか、本当に泣いていると思ったの?」■■
目は潤んですらいない。
それは見えていなくても私の下手な演技など、騙されるわけもないはず。■■
【ブラッド】
「まさか。
あんなことで君が泣くわけもない」■■
その通りだ。
そのわりにはブラッドが余裕なさそうなのは、なぜなのか。■■
【ブラッド】
「…………」■■
【ブラッド】
「……真似事だと分かっていても、君の泣き声なんて聞きたくないんだ」■■
じっと見上げる私の視線から逃げて、バツが悪そうにブラッドは言った。■■
【【【演出】】】・・・抱き締める音
そしてまた、私を閉じ込めるように抱き締めてくる。■■
「…………」■■
「……まだ続ける気なの?」■■
「邪魔しないでよ……」■■
【ブラッド】
「私は、したいことをする」■■
「私の邪魔をするのが、したいことなの?」■■
私は、本を探している。■■
これと決めた読みたい本があるわけではないが、だからこそ探している。■■
読みたい本を見つけたい。
この部屋で過ごす、堕落した日常をどうにかしたいのだ。■■
読書でもして過ごせばまだましかと思っても、探す段から堕落気味だ。■■
【ブラッド】
「ああ。
邪魔してやりたいね」■■
「私を放って読書に勤しむつもりなんだろう?」■■
「本が好きなの……」■■
「知っているでしょう?
……これだけ一緒に過ごしているんだから」■■
【ブラッド】
「私は、こうしているほうが好きだよ」■■
「あなただって、読書家のくせに」■■
ブラッドの部屋の本棚を見れば分かる。■■
スタイルや部屋のインテリアとして並べているわけではない。
本の種類や並び、読み跡を見れば、分かるものだ。■■
そして、本棚というのは、その部屋の持ち主の本質を映す。■■
【ブラッド】
「そうだな。
読書は嫌いじゃない」■■
私が真剣に本棚に向き合っているというのに、ブラッドはだるそうに絡んでくる。■■
だるそうにしているのに、しつこい。
私までだるくなってきた。■■
【ブラッド】
「だが、君を放っておいて読んだりしない。
君は違うみたいだけどな」■■
「…………」■■
「……仕事しなさいよ」■■
【ブラッド】
「しているさ。
知っているだろう?」■■
「これだけ一緒に過ごしているんだ。
なあ、アリス?」■■
淡々とした口調の中に、艶めいたものが含まれる。■■
私の言葉をなぞっただけなのに、どうしてこんなに違うのだろう。
触れ合った背中が熱くなる。■■
「そ、そうね……。
さぼっているように見えて、いつの間にか終わらせているものね」■■
ブラッドは感情を表に出す人ではない。
感情だけでなく、努力も、なにもかもだ。■■
苛立ちは分かりやすく表したりするが、威圧するためのポーズな可能性もある。
苛立っていることは分かりやすくても、何に苛立っているのかつかみにくい。■■
とにかく、分かりにくい人なのだ。■■
それでも、押さえどころは外していないのは、分かる。
いつのまにか、いつのまにかだ。■■
「いつやっているのか分からないわ」■■
【ブラッド】
「ちゃんとしているさ。
私は働き者なんだ」■■
★「お風呂・皆」イベントが発生している場合↓
入浴していたときと同じことを言う。
声の艶や響きが違っているだけで説得力まで感じ、笑い飛ばせない。■■
★「お風呂・皆」イベントが発生している場合↑
【ブラッド】
「君一人滞在してもわけないくらいに稼いでる。
宿に困ることはないから安心しなさい」■■
だらっと恩着せがましくそんなことを言うから、信憑性がなくなる。■■
私とだらだら過ごしていても(強制的にそういうふうに過ごさせられる)、エリオットが持ってきた仕事の書類の山はいつのまにか片付いている。■■
時にはしばらくずっと部屋に連れ込まれることもあるが、それでもきちんと仕事は片付く。■■
他に任せられるような内容ではないとエリオットは言っていたし、ブラッドは全部を自分でやっているのだろう。■■
浮世離れしたところのある男だが、ブラッド=デュプレは魔法使いではない。
この世界は、そんなに都合よく出来ていないのだ。■■
「ブラッドは……」■■
「……隠れてこっそり徹夜しているのよね」■■
そういう結論に達した。
カマかけだったが、彼が魔法使いでない限り間違っていないはずだ。■■
【ブラッド】
「詮索するのはよせ。
君と過ごしているときは、仕事を持ち込んだりしていないだろう」■■
認めたも同然の答えに、笑いたくなった。■■
「……かっこつけ」■■
ふっと、鼻で笑ってやる。■■
彼がたまにする仕草の真似だ。
人にやられると腹が立つことを知ればいい。■■
【ブラッド】
「男っていうものは、虚栄心で構成された生き物なんだよ、お嬢さん。
下手に暴こうとするものじゃない」■■
「私には隠しても無駄よ?
隠してもばればれ」■■
本当は、ばればれどころか、片鱗もつかませない。
これは、私の虚栄心だ。■■
なんでもお見通しというふりをする。■■
「これだけ一緒にいるんだもの。
諦めて、私にくらい隠さずにいたら?」■■
【ブラッド】
「……馬鹿を言うな。
君に爆け出すくらいなら、商売敵に弱みを見せたほうがまだいい」■■
「…………」■■
なまじ悪口や侮蔑の言葉を聞かされるより、よほど酷い。
そんなに信用ならないかと、軽く傷ついた。■■
【ブラッド】
「男心というやつだよ。
君には分からないだろうが……」■■
「……分からないわよ」■■
【ブラッド】
「君に対して、見栄を張っていたいんだ」■■
ショックだったはずなのに、耳をくすぐる声があまりに優しいものだから、どうでもよくなってしまう。■■
(ここにいると……)■■
(この人といると、なんでもよくなってきちゃう……)■■
だらけた部分がうつってしまったかのように、怠惰な考えが頭を侵食していく。■■
【【【時間経過】】】
◆帽子屋屋敷・庭園◆
「もう開かないと思ったんだけど……」■■
ルールで開かれる、お茶会。
しばらくなかったので、終わったものだと思っていた。■■
やると言われれば、状況的に私も参加しないわけにいかない。■■
例によって、双方共に何をしでかすか分からない。
前回を考えれば参加するのも危険な賭けのような気がするが、見て見ぬ振りは落ち着かないのだ。■■
【ゴーランド】
「主催者が是非にもって言うからな」■■
【ブラッド】
「客が来たいと強請るものでな」■■
「…………」■■
【大】どっちなんだよ……。【大】■■
(もう、なんでもいい……)■■
(早く……、早く終わってほしい……)■■
またもや、針のむしろのようなお茶会の始まりだ。■■
【【【時間経過】】】
【ゴーランド】
「……じゃあな、アリス」■■
ゴーランドは、懲りずに頭にキスを落とし、別れの挨拶にした。■■
しかし、接触時間は前回ほど長くない。■■
【【【演出】】】・・・歩き去る足音
ブラッドが止める間もなく離れて、踵を返してしまった。
そのまま、会場を出て行く。■■
(よかった……!
無事に終わった)■■
「……ふう」■■
「もう、これで終わりにしてよね。
あんなお茶会、催し物なんていえないわよ」■■
「ブラッド……?
聞いているの?」■■
【ブラッド】
「…………」■■
「……君は、あの男のことも好きなんだな」■■
「……え」■■
【ブラッド】
「……私のことも好いてくれているのだろう?」■■
「ブラッドのこともっていうか……、私はブラッドのことが……」■■
尻すぼみになっていく。■■
ゴーランドと比べるなど、見当違いだ。
好意の種類が違う。■■
【ブラッド】
「好かれている自信はあるんだ……」■■
「……自信があるにしては、えらく弱気に聞こえるわよ」■■
自信を持っていい。
私は、ブラッドを好いている。■■
好いてしまっているのだ。
恐ろしいことに。■■
【ブラッド】
「……自信ならある。
だが、君にとって私が特別なわけではないらしい」■■
「君は……、ちょっとばかり軽率なんじゃないか?」■■
「……どういう意味よ」■■
声が冷たくなる。
ふらふらしているのは認めるが、そんなふうに言われる覚えはない。■■
「軽い子だって言いたいの」■■
【ブラッド】
「貞淑な女性とはいえないようだ」■■
「……そうね。
そんな女性なら、あなたになんか靡かないでしょうよ」■■
マフィアのボスにいいようにされるなんて、身持ちの固い女なら断固拒否するはずだ。■■
【ブラッド】
「靡かなくても落とすさ」■■
「たいした自信ですこと」■■
【ブラッド】
「私は、欲しいものには貪欲なんだ。
君が拒否しても、私が欲しいと思えば同じ結果だ」■■
「拒否しないでいてくれて助かった。
泣かれるのは本意じゃない」■■
「……あなたのほうが軽いわね」■■
「ゲームみたいだわ」■■
【ブラッド】
「そう思いたいなら、それでも構わない」■■
「だが、私は君と二人きりのゲームを楽しみたいんだ。
他の奴を割り込ませないでくれ」■■
二人きりのゲーム。
何だかな……、という表現だ。■■
「私がその……ゲームとやらをいろんな人とやっているっていうの」■■
【ブラッド】
「そうでないことを願うよ」■■
「……これまで余裕で盤面を支配してきたんだ。
私の評価にも定評があった」■■
「嫉妬で血を降らすような三流の結末を迎えさせないでくれ」■■
「……脅しているわけ?」■■
間近に迫った顔を睨む。■■
記憶と同じ顔だ。
だが、今となっては、ブラッド=デュプレの顔としか感じない。■■
【ブラッド】
「あちこちに気を持たせすぎているんじゃないかと言っているんだ」■■
「焦らすのは私だけにしておいてくれないか。
お嬢さん」■■
「…………」■■
「……素直に、言えないの?」■■
【ブラッド】
「どんなふうに?」■■
「捻くれて生きてきたもので、お上品な言い回しなど思いつかないな」■■
唇を触れ合わせながら、話される。
触れたり離れたりする、くすぐったいような感触がもどかしい。■■
「上品じゃなくても……」■■
素直に言ってくれればいいだけだ。■■
「好きで堪らないから、浮気しないでくれ……とかさ」■■
(…………)■■
(アホか、私は)■■
(……そんなこと、言うわけないでしょうが、この人が)■■
恥ずかしくなる。■■
よくも言えたものだ。
少し色事によろめいているくらいで、この人がそんなことを言うはずがない。■■
女に屈服して懇願するような真似、彼には似合わない。
けだるそうに澄ましているか、感情的になっても冷たく見下ろすくらいの図しか想像できなかった。■■
この人を降伏させるなんて……。■■
(……余裕がないのは私のほうじゃない)■■
【ブラッド】
「…………」■■
「好きで堪らないから、浮気しないでくれ」■■
ぽかんと、口が開く。■■
間抜けに開いた口の中、舌をざらりと舐められ、我に返る。■■
「……は……」■■
【ブラッド】
「……これでいいか?」■■
絡む舌と異なる、口先だけのことだとしても。■■
「そんなこと、言うとは思わなかった」■■
【ブラッド】
「言えといったのは君だろう?」■■
「……私は催促に従ったまでだ」■■
ブラッドは言い訳がましく、不満そうだ。■■
【ブラッド】
「これくらいで浮気防止になるのなら、いくらでも」■■
彼の顔は少し赤く見える。■■
夕日のせいだろうか。
そうだろうと決めつける。■■
【【【時間経過】】】
◆帽子屋屋敷・廊下◆
【エリオット】
「よう、アリス。
いい夜だな」■■
「エリオット……」■■
会いたくないときに限って出くわす気がする。■■
(……いえ、そんなこともないわね。
充分、隠せているほうだわ)■■
この屋敷は相当広い。
自室からブラッドの部屋に行く順路だって数通りあるし、廊下を歩いていて誰にも会わないことも多い。■■
隠せていなければ、私達の関係はとっくに大っぴらに噂になっているだろう。
それくらい、私は彼の部屋に通っている。■■
【エリオット】
「夜と言ったらあれだな!
い~いにんじん酒が入ったんだ。一杯と言わずどうだ?」■■
エリオットは機嫌がいいのか、明るく誘ってくる。■■
「ごめんなさい。
遠慮しておくわ」■■
【エリオット】
「ええっ、なんでだよ?
あんた、飲めないクチじゃなかっただろ?」■■
【エリオット】
「晩飯のときにも飲んでたの見たことあるし……。
少しくらい、いいじゃねえか」■■
「飲めなくはないけど……、そういう気分じゃないの」■■
重ねて断ると、エリオットの耳がしゅんと垂れる。
申し訳ないが、ブラッドが待っているので仕方がない。■■
【エリオット】
「……なんだよ、いつも遠慮ばっかりしやがって。
寂しいだろー?付き合えよ~」■■
【エリオット】
「あ……、もしかして、疲れでも溜まってるのか?
だから酒が飲みたくないとか?」■■
「ああ、そうね。
そうかも」■■
【エリオット】
「そっか、だったら無理には勧めねえよ。
そうだ……、俺、疲れに効くいいお茶を持ってるから、今度分けてやる!」■■
「いいお茶?」■■
【エリオット】
「ああ。
めっちゃくちゃ高級で美味い、にんじん茶だ!」■■
【エリオット】
「疲れたときにはにんじん茶だよなあ。
体の中から元気になっていく感じがするぜ」■■
「にんじんエキスがた~っぷり染み込んでるんだ……。
じゅるり……」■■
「へ、へえ……。
にんじんエキスがたっぷり、ね……」■■
「それって、色はやっぱり……?」■■
【エリオット】
「色?
もちろん目にも鮮やかなオレンジ色だぜ?」■■
「考えただけで美味そうだろ?」■■
「…………。
……しばらく休みが続くし、休めば疲れも取れると思うわ」■■
「気遣いどうもありがとう。
それじゃ!」■■
返事も聞かずに、足早に歩き去る。
エリオットに悪気がないのは分かっているが、酒も茶もオレンジ色はご勘弁……だ。■■
【【【時間経過】】】
帽子屋屋敷・ブラッドの部屋
「私、最近になって気付いたんだけど……」■■
【ブラッド】
「……何に?」■■
ブラッドは、あいかわらず私の邪魔をするのが好きだ。■■
彼の部屋で、有意義な時間の使い方など出来なくなっている。
有意義の定義も分からない。■■
「私の立場について」■■
【ブラッド】
「君の立場か……。
いつも小難しいことを考えるな、アリス」■■
「あなたほど、厚顔ではないもので」■■
言葉が途切れ途切れになるのは、ブラッドが邪魔をするからだ。
会話にさえ集中できないほどちょっかいを出したいなら、質問などしないでほしい。■■
【ブラッド】
「ふふ、厚かましいのは認めよう」■■
「それで?
自分の立場についての何に気付いたんだ?」■■
「どういう立場にいるか考えたの……」■■
「居候とか、お客さんとか……」■■
【ブラッド】
「あっているじゃないか」■■
「でも、どれも違うでしょう」■■
客にしては長期的すぎるし、自分の家のようになってしまっている。
居候にしては、代価を払ってしまっている。■■
「代償つきな時点で客でも居候でもないわ」■■
【ブラッド】
「強要はしていない」■■
「よく言う」■■
まあ、とにかくタダで寄食させてもらっているわけではないので居候には当たらない。■■
「で、気付いたの。
ものすごーく遅いんだけど、最近になってようやく」■■
【ブラッド】
「?」■■
「持って回った言い回しをするな」■■
続きを促される。
邪魔をしながら聞いてくるので、もっと焦らしてやろうかと思うが、そうすると機嫌を損ねることも分かっていた。■■
「…………。
私……マフィアのボスの情婦ってやつなのかしら」■■
はあっと息を吐き出すと同時に、低く話す。
密着しているブラッドが息を飲んだのが分かった。■■
【ブラッド】
「……ふ。
ふふ……。ははははっ」■■
「ははは、私の情婦か。
そいつはいい」■■
ブラッドは、彼にしては珍しく声をあげて笑った。
よほどおかしかったらしい。■■
「そ、そんなにおかしいこと……?」■■
【ブラッド】
「いや……、おかしくなんか……ははは……」■■
「ふふ……、君が情婦ねえ……。
はは……」■■
少し体を離され、じろじろと見られる。■■
(う……)■■
恥ずかしくなってくる。
服も、外見も、いわゆる「可愛い系」のファッションだという自覚はあった。■■
(若干……、若干、気色悪い系の……)■■
(い……、いいの、いいのよ。
これが私スタイルだから……)■■
「服装とか外見はちょっと……、大分……、それらしくは見えないけど、ポジション的にはそうでしょう?」■■
【ブラッド】
「ふふ……。
男の格は連れている女で決まるというからな」■■
「……ブラッド」■■
【ブラッド】
「君みたいな、到底それらしくない子を情婦にできるなんて、自慢できそうだ」■■
「……格を落としていく方向だと思うんだけど」■■
自分がものすごく見劣りする子だとは思わないが、絶世の美女とは程遠い。■■
誘拐されそうなくらいに可憐な美少女でもないし、「綺麗」よりも「可愛い」分類に属することからしてブラッドには不似合いだ。■■
口を開けば毒舌とか、この際中身はどうでもいい。
外見からして、私は「マフィアのボスの情婦」などという言葉と結びつかない。■■
自分で言っておいてなんだが、何を言い出すんだという感じだ。■■
(でも、立場を考えると、それそのものなのよね……)■■
今の状況を見ても明らかに。■■
「そういうの……情婦とかって、綺麗系でスタイル抜群のお姉さんのイメージでしょう。
レースのひらひらした服を着た子ではないはずよ」■■
【ブラッド】
「ははは。
毛皮のコートの似合いそうな女か?」■■
「そう、そういうタイプの女性。
ゴージャスな美女っていう感じの」■■
「もしくは……、可愛いっていっても小悪魔タイプの美女ね」■■
残念なことに、あるいは幸いなことに、私はどちらにも当てはまらない。■■
姉の趣味で、年齢的にぎりぎり許される範囲で良家の子女っぽい可愛い格好をさせられている。
自分の趣味でないこともあって、かなり中途半端な出来映えだ。■■
しかし、この手の格好が非常に「いい子」だと見られやすいことも知っていた。■■
【ブラッド】
「そうだな。
君は、男を手玉にとれそうな女には見えない」■■
「でしょう?
なんで自分がこういうポジションになっているのか、さっぱりなんだけど……」■■
【ブラッド】
「ははっ。
見た目はともかく、実際に手玉にとれるような女だからだろう」■■
ブラッドは、にやにやと面白そうに笑っている。■■
彼がこんなにけたけたと笑う(というほどでもないが)のは初めて見たかもしれない。
長い付き合いになってきたと思うが、まだ知らない面も多い。■■
「手玉にとられているのは私でしょ。
翻弄されてばっかり……」■■
「本を読むのも邪魔されるし……」■■
【ブラッド】
「そんなことはない、私のほうだよ。
言うがままになってやってもいいぞ?」■■
「君が欲しいなら、毛皮のコートだろうが宝石だろうがいくらだって買ってあげよう」■■
「気前のいいこと」■■
【ブラッド】
「強請ってくれないのか?」■■
「それとも、この前のように私が勝手に贈りつけてもいいぞ」■■
「……よしてよ」■■
私が、情婦がどうのと馬鹿かと思うようなことを言い出した理由の一つはそこにある。■■
彼からは、何度か贈り物を貰っている。
いずれも高価なものだ。■■
ブラッドは何も言わなかったが、見る目くらいはある。■■
「家族でもない人から、高価な物をたくさん貰うなんておかしいわ。
特別な日でもなければ、家族からだって貰うのはおかしい」■■
【ブラッド】
「ここでは毎日が誕生日さ。
君が来た日も誕生日のお茶会だっただろう」■■
「そんな出鱈目なのじゃなくて……」■■
【ブラッド】
「……だが、君は受け取ってくれた。
受け取ったからには、使ってもらいたい」■■
「前のプレゼントも、クローゼットの肥やしにしてしまったようだな。
気に入らなかったか?」■■
「いいえ。
趣味は悪くなかったわ」■■
「お礼を言ったでしょう?
すごくいいプレゼントだった」■■
ブラッドから、ピンクダイヤのアクセサリー一式(なんと本物の)と、それに合った衣類(なんとサイズぴったり)を贈られた。■■
アクセサリー類は大粒の宝石なのに、私くらいの年齢でつけても浮いて見えない、センスのいいものだ。
可愛いのに、本物と分かる上品さがあるデザインだった。■■
あわせて衣類まで贈ってくるのが、こ憎たらしいくらいに完璧なプレゼントだった。■■
シックでそんなにぴらぴらしていない、普段着よりは少し畏まったドレス。
私好みだ。■■
【ブラッド】
「では、どうして着てくれない?
君に似合うと思って選んだのに」■■
それはそうだろう。
デザインからサイズまで私に合わせて選ばれたと分かる、私へのプレゼントだ。■■
だから、突っ返せなかった。
そんなところまで完璧だ。■■
「……本気で言っているの?」■■
「あんなのを着て、屋敷内や外を出歩けって……?
出来るわけないでしょう」■■
宣伝して歩いてまわるようなものだ。■■
【ブラッド】
「ああ……、なるほどね。
それで、情婦か……」■■
「……そう見られるかもしれないな」■■
「ははは。いいな。
余計に着てほしくなった」■■
何が楽しいのか、ブラッドは又けらけらと笑い始めた。■■
そう、あのプレゼントは家主が居候に贈るような物ではない。
高価すぎるし、内容が親密すぎる。■■
どんな鈍い人だって邪推せずにはいられないだろう。■■
「冗談じゃないわ。
知れ渡っちゃうじゃないの」■■
【ブラッド】
「今だって、気付いている者は気付いていると思うぞ?」■■
「それでも。
広めて歩く真似はしたくない」■■
【ブラッド】
「……そんなに、私のものだと思われるのが嫌か?」■■
「ブラッドだって、嫌でしょう?」■■
良くも悪くも、私ではそぐわない。■■
【ブラッド】
「私は、嬉しいね。
こんなお嬢さんが私のものだと見られるのは気分がいい」■■
「……ロリータ系の趣味があるのかと思われるかもよ?
趣味を疑うわ」■■
【ブラッド】
「ふふ……。
その気があるのかもな」■■
皮肉を言っても、ブラッドはどこ吹く風だ。■■

bra20_2 【ブラッド】
「強制はしないが、気が向いたら着てみてくれ」■■
「誰になんと思われようが、私は気にしない。
中傷が気になるようなら、私が消してやる」■■
「君も立場など考えずに、いつまでもここにいればいい」■■
マフィアのボスらしく、怖いことを普通に言う。■■
「あなたが飽きるまで?」■■
【ブラッド】
「飽きたりしない」■■
「暇つぶしなんて、いつかは飽きるものよ」■■
この気まぐれは、いつまで続くのだろう。
変な目で見られるのも嫌だが、調子に乗ったふうに見られるのも嫌だ。■■
ブラッドが見栄にこだわるように、私にも私なりの矜持がある。■■
【ブラッド】
「飽きてほしいのか?」■■
「飽きないでほしいわ。
……宿に困るもの」■■
たまに、矜持なのか、他の何かなのか迷うことがあるとしても。■■
【【【時間経過】】】
※以下条件を満たしている場合のみ、「女王・ブラッド」イベント5回目ここから↓
・「女王・ブラッド」イベント発生済み
・4回目で「2:そうなの……?」を選択している
帽子屋屋敷・薔薇園
【ビバルディ】
「この口紅、どう思う?
色を変えてみたのじゃ」■■
「うん、似合っている。
赤が鮮やかな感じでビバルディにぴったりよ」■■
【ビバルディ】
「うふふ、おまえはよい子だの。
愚弟とは比べものにならんわ……」■■
【ブラッド】
「……違いが分からん」■■
薔薇園で過ごしていると、二人が敵対して本気で殺しあっていることなど嘘のようだ。■■
美しい場所、綺麗な姉弟に囲まれて、ひどく場違いな気がしてならない。■■
【ビバルディ】
「……ブラッド、おまえ、この子が好きなのだろ?」■■
「ビバルディ?」■■
【ブラッド】
「……なにを言い出すんだ、姉貴」■■
【ビバルディ】
「ふふ……、初な反応を返すでないよ。
可愛い子達」■■
赤くなった私達に、ビバルディはふっと息を吹きかけた。■■
【ブラッド】
「小姑め……」■■
忌々しそうに、ブラッドは姉を睨む。■■
ビバルディから見れば、私は弟の恋人に映るのだろうか。
否定しようか、放っておくべきか複雑な心境になる。■■
私は、恋愛などごめんだ。
だが、この美しい姉弟と過ごすのは、とても素敵な時間だった。■■
誤解でも、中に入れてもらえるのは嬉しい。■■
【ビバルディ】
「だが、残念。わらわもこの子が好きなのじゃ。
弟には譲ってやらぬ」■■
「……え」■■
「……なっ、なにそれ!?」■■
【ブラッド】
「……おい、お嬢さん。
なぜ、私に好きだと言われたときより赤くなるんだ」■■
「だ、だって……」■■
かああっと、赤くなる。■■
「ビバルディは、すごく綺麗な女の人だし……」■■
【ブラッド】
「綺麗でもない男の人で悪かったな」■■
「あ……、別に女の人が好きなわけじゃないわよ!?
でも、ビバルディに好きなんて言われたら……、どきどきしちゃうわ」■■
【ブラッド】
「私では、どきどきしないのか」■■
「……突っかからないでくれる」■■
【ビバルディ】
「あはははは。
ほんに、可愛い子達じゃ」■■
ビバルディは女王らしくない笑い声をあげた。
普通の女性のように、柔らかい。■■
「二人は、綺麗よ。
ブラッドも、綺麗」■■
「……二人は、二人でいるのが一番綺麗だわ」■■
ブラッドと私。
ビバルディと私。■■
そんなのは、似合わない。■■
好きだと言ってもらえるのは嬉しいが、私では似合わない。
私だけでなく、他の誰も似合わないかもしれない。■■
二人は、本当にお似合いだ。■■
「二人って、本当にお似合い」■■
うっとりと、思ったままを口にする。■■
嫌そうに眉をしかめる様子がお揃いで、そんな様子も美しく見える。
私もかなりおかしい。■■
【ブラッド】
「私達は姉弟だぞ?」■■
「ブラッドが常識的なことを言っている……」■■
【ブラッド】
「そういった禁忌には興味がない……」■■
【ビバルディ】
「こんな男、血がつながっておらんでも嫌じゃ」■■
ブラッドも、ビバルディも、どうして嫌がるのか不思議だ。■■
「だって、こんなに綺麗な二人なのに……。
絶対、ブラッドとビバルディはお似合いよ」■■
【ブラッド】
「姉弟なんだが……」■■
「そんなこと、どうでもいいわ。
二人はずっと一緒にいるべきよ……」■■
【ブラッド】
「私はどうでもよくない……」■■
「……アリス、なんだかおかしくないか?
目がきらきらしているぞ」■■
「誰とは言わないが、エリオットみたいで引く……」■■
「……誰って明言しているじゃない」■■
「……エリオットみたい?」■■
【ブラッド】
「……ああ。性格変わってきてないか?
気持ち悪いぞ」■■
「そういう目で見るな。
鬱陶しい……」■■
キツイ言葉を投げられても、たいして気にならない。■■
私は恍惚とした目で二人を見ていることだろう。
間近で見ていると、自分が感じたちっぽけな疎外感などどうでもよくなってしまう。■■
二人は美しい。
こんなに近くで、こんなに綺麗な人達を見られるなんて眼福だ。■■
「私も、ここにいる間は特別なのかも……」■■
「……二人とも素敵……。
なんて素敵なカップルなの……」■■
【ブラッド】
「カップル……」■■
【ビバルディ】
「……酔っておるのか、アリス」■■
「……ちょっと。
倒錯具合にくらくらきているの」■■
冷たくされるのも、軽く快感に感じてしまう。■■
片方だけのときはそうでもなかったが、どうやら私はこの手の人に弱い。
顔もそうだが、気まぐれで傲慢ともとれる性格も、見ている分にはかなりいい。■■
「私って、薔薇の香りの漂うような小説とかそういうの、はまれない人だと思ったんだけど……」■■
「……近くにいると、いいわ、こういうのも」■■
うっとり。■■
私が甘ったるい目(たぶんきらきらしている)で見ると、ブラッドは「げ」というように引いた。■■
悪くない。
ブラッドをからかえるのも、なかなか楽しい。■■
禁忌に触れるとか、そういった倒錯的なシチュエーションに憧れる女の子を馬鹿にしていたが、いい感じだ。■■
現実にはこんな姉弟はいないだろうが、それがまた妄想を盛り上げてくれる。■■
【ビバルディ】
「悪趣味な……」■■
私がうっとりしているのを、弟と同じくビバルディも嫌そうにしていた。
が、彼女は何かを思いついたようでにんまりと笑う。■■
【ビバルディ】
「……ふうん、そうか、アリス。
おまえは倒錯的な遊びが好きなのか」■■
「……え」■■
「私が加わりたいとかそういうわけではなくて、見ているのが好きっていうか……」■■
【ビバルディ】
「そう言うな。
せっかく遊ぶなら、一緒に遊ぼう」■■
薔薇が咲くように微笑まれ、固まってしまう。■■

1:「いざ、倒錯の世界へ……」
2:「お許しください、女王様」