【【【時間経過】】】
◆森◆
「……!!!」■■
……デジャヴだ。
また、倒れている男性がいる。■■
他領土の友人のところへ向かう道。
以前と、同じ場所。■■
(同じ人……???)■■
(まさか、ずっとここに……?)■■
(……そんな馬鹿な……)■■
あれから、どれだけ経ったというのか。
ずっと倒れているなんて、ありえない。■■
同じ人だとしても、違う理由で倒れているのだろう。
あれだけ時間が経ったのだから……。■■
(……?)■■
(あれ……?)■■
あれだけ時間が経った……。
……どれだけ時間が経ったのだろう?■■
昼夜はころころと、ダイスのように気ままに変わる。
だが、どれだけ時間が経ったかというと……。■■
(……でも、かなり経っているわよね?)■■
かなり……経っているはずだ。
……どれくらいかは分からないけど。■■
(とにかく、助けなきゃ……っ)■■
のんきに考え事をしている暇などない。
とりあえず様子をみようと、近づく。■■
「……?」■■
……またもや、近づけない。
近くへ行こうとしても、それ以上は近寄れない。■■
(……なんで???)■■
前回も、こうだった。
唐突に思い出す。■■
どうして今まで、倒れている人を放置して平気でいられたのか。
あれから、滞在場所に戻って平然と生活していた。■■
何事もなかったように、ずっと。■■
(……ずっと???)■■
(……???)■■
【【【演出】】】……不思議サウンド(頭がぼんやりする音?)
頭がぼんやりする。■■
(…………)■■
【【【時間経過】】】
◆遊園地・園内◆
【ゴーランド】
「よ、また来てくれたんだな」■■
遊園地を訪ねると、ゴーランドが笑顔で私を迎える。■■
「……ええ、来たわよ」■■
能天気な顔で声を掛けてきたゴーランドに、そっけなく返す。■■
【ゴーランド】
「??」■■
【ゴーランド】
「どうしたんだよ、なんか機嫌悪いのか?
まあ、ここで遊べば気も晴れるぜ!さっそく何か乗るか!」■■
「『乗るか!』じゃないわよ!
あんたと遊ぶ気なんかないわ!!」■■
遊園地に来たのは、もちろん文句を言うためだ。
前回のブラッドとのお茶会の後同様……、いや、そのときより酷い。■■
シフトの関係で来やすい時間帯がなくやや遅くなってしまったが、怒りは冷めていない。■■
「なんだって、ブラッドの前であんなことしたのよ!?」■■
【ゴーランド】
「んっ、あんなこと?
何の話だ?」■■
「とぼけないで!
キスに決まってるでしょ!」■■
「あんた今まで、私にキスしたことなんてないじゃないの!
なんで、あの場に限ってあんなことしたのよ!?」■■
友人だが、そこまで親密な関係でもない。
挨拶や親愛のキスでさえ、それまではされたこともなかった。■■
【ゴーランド】
「…………。
……あー、ああ、そのことか!」■■
ようやく思い至ったというふうにぽんと手を叩くゴーランド。
どこか白々しく見えてしまう。■■
「…………」■■
【ゴーランド】
「んな睨むなよ、アリス。
茶会っていう畏まった場だったから、畏まって挨拶しただけのことだろ」■■
「畏まっただけ……?」■■
嘘だ。
それだけにしては、とにかく長かった。■■
態度や発言からしても、ブラッドへの当てつけだったことは間違いない。■■
(私が聞きたいのは、どうしてそんな当てつけをしたのかってことなのよ!)■■
「誤魔化さないで。
畏まっただけであんなキスの仕方、おかしいでしょう」■■
【ゴーランド】
「誤魔化してなんかねえって。
おかしいとか、決めつけるなよ」■■
「確信を持っているのよ!
大体、いくら畏まった場だからって、私達はキスしてもらうほどの仲じゃないわ」■■
「いきなりあんなキスをしてきて……、本当にどういうつもりよ!?
惚けないで教えなさい!」■■
【ゴーランド】
「はあ……。
いや、惚ける気はねえけどよ……」■■
ゴーランドは言葉を濁し、困惑した表情を作る。■■
「何よ!?
男らしくないわね!」■■
【ゴーランド】
「は……、その言い草はねえだろ。
そんじゃあまあ、言うが……」■■
【ボリス】
「あんた、キスキスってうるさいよ。
発情期にでも入ったの?」■■
「【大】!!?【大】」■■
いきなり隣にボリスが現れ、耳元に呆れた声を落とされる。■■
「ボ、ボリス!?」■■
いつの間に来ていたのだろう。
神出鬼没なこの猫の登場は、いつも突然だ。■■
いや、もしかしたら普通に歩き寄っていたかもしれないが、私が興奮していて気付かなかった。■■
ゴーランドはボリスに言葉を遮られたが、納得の表情をしている。
彼の言いたかったことも同じだったのだろう。■■
(ん?
言いたかったこと?)■■
【ボリス】
「あんたが狂ったようにキスがどうとか連発してるから、ぎょっとしたぜ。
遊園地って子供も多いんだから、もうちょっと考えたほうがいいんじゃない?」■■
「!!」■■
ようやく自分の失態に気付く。
そういえば、怒りのあまり連発していたかもしれない。■■
従業員が銃を携帯しているような遊園地。
そこの住人に道徳を説くようなことは言われたくないが、それどころではない。■■
そういう意味のキスではないと弁解もしたいが、後回しだ。■■
【ゴーランド】
「まったくだ。
すっかり周囲の視線を集めちまってるなあ、ははは、俺も隅に置けないってことか」■■
「どっ、どこか別の場所に行きましょう……!」■■
【【【時間経過】】】
大声で騒いでしまったエリアを離れ、別の一画にやって来る。
ボリスが乱入したので、まずは簡単にお茶会での経緯を説明する羽目になってしまった。■■
話を聞き終わった猫は、これまた能天気に笑う。■■
【ボリス・追加】
「にゃっはは!なにそれ、最高!
おっさん、あんたもたまには面白いことやるね!」■■
【ゴーランド・追加】
「はは、まあな。
ただお茶飲んで帰ってくるだけじゃつまんねえだろ?」■■
「つまんねえだろ、じゃないわよ!
あんた、本当に面白半分でやったの!?」■■
【ボリス・追加】
「いいじゃないか、アリス。
おっさんのおかげで、あんたもいいものが見れたんだろ?」■■
「いいもの?
何がよ、いい思いなんてまったくしていないわ」■■
からかう口調に、ついむきになって言い返してしまう。■■
(そういえば、前に一度ボリスも帽子屋屋敷に来て……。
あのときも、からかうようなことを言われたんだっけ)■■
(ブラッドは、それが面白くなかったみたいで……。
思えば、あの後もけっこう大変だったのよね)■■
遊園地の住人は、私を振り回すのが趣味なのだろうか。■■
【ボリス】
「そうなの?
……帽子屋さんが嫉妬に狂って余裕をなくした顔、見れたんだろ?」■■
「あ……っ」■■
探るように、わずかに口調をゆっくりにして。■■
今度は、からかいには聞こえなかった。
ずどん、と胸に来てしまう。■■
★ブラッド滞在07の回想ここから↓
【ゴーランド】
「意外と青いんだな、帽子屋」■■
「いつもの余裕が崩れまくってるぜ?
若きマフィアのドンも、恋に狂わされてちゃ形無しか」■■
★ブラッド滞在07の回想ここまで↑
ボリスの言葉に、お茶会のときのゴーランドの台詞が甦る。
俄かに頬が熱を持つのが分かった。■■
【ゴーランド】
「…………」■■
【ボリス】
「……あんたは、最初から相当分かりやすいね」■■
「う、うるさい!」■■
どんどんと、顔が火照っていく。■■
(文句を言いに来たはずなのに……)■■
【ボリス】
「そう怒らないでよ。
せっかく来てくれてるんだし、遊ぼうぜ」■■
【ボリス】
「あんたは、俺と遊ぶの楽しくない?
俺は楽しいんだけどな」■■
ボリスがいきなり、そんなことを尋ねてくる。
楽しいかと聞かれれば……。■■
「ええ。
ボリスと遊ぶのは楽しいわよ」■■
【ボリス】
「ほんとに?
よかった。俺もあんたと遊ぶの楽しいぜー」■■
「これからもなぞなぞ出してあげるよ」■■
「あ、それとも、もっと違った遊びがしたい?
なぞなぞなんかより、もっとスリルのある……さ」■■
【【【時間経過】】】
帽子屋屋敷・ブラッドの部屋
【【【演出】】】……上着を脱ぐ音
(この人って、ソファが大好きなのかしら……)■■
「……ソファが好きなの?」■■
思ったことを、そのまま口に出す。■■
【ブラッド】
「ソファ?」■■
ブラッドは、きょとんとした。
不意打ちのように見せる素の顔に、こちらのほうが驚いてしまう。■■
【ブラッド】
「おかしなことを聞くんだな。
家具にこだわりなどないよ」■■
「そうじゃなくて……」■■
【ブラッド】
「……なんだ?」■■
「…………」■■
もごもごと口を動かす。
言いづらい。■■
(分かっていて、とぼけている?)■■
(どっちでも有り得そうなんだよね……、この人の場合は)■■
「……ここで……だと、落ちそうじゃない」■■
前にも訴えかけたつもりだったが、流されてしまった。
そして、今回も。■■
【ブラッド】
「落ちそうになったら、しがみつけばいい」■■
優しいとも、酷いともとれる発言で、やはり流されてしまう。■■
(結局、ソファ好きなの?
どうなの?)■■
【ブラッド】
「しっかりと腕を回していれば、落ちたりしないよ」■■
だから手を回しなさいと、催促された。■■
「そういうの、嫌だから……」■■
【ブラッド】
「どうして」■■
ブラッドの目が細くなる。■■
この人は、いちいち迫力があるから怖い。
凄まれたら、反論も出来ずに従ってしまいそうになる。■■
「だ、だって……」■■
「……恋人同士みたいじゃない、そういうのって」■■
そう答えると、ブラッドの瞼が微かにぴくりと動いた。
じっと見ていなければ分からない……、この距離だから気付く変化。■■
私の心も、微かに震える。■■
【ブラッド】
「…………」■■
「それが、何か問題でも?」■■
「…………。
問題がないとでも?」■■
尋ね返すと、嫌そうな顔をされた。■■
【ブラッド】
「問題ないだろう。
ただ、縋れと言っているだけだ」■■
「……落としたりしない」■■
きゅっと抱きしめられキスをされる。■■
【ブラッド】
「力が抜けて落ちそうになったら、私が抱きしめてやるから」■■
(……そういう言葉が出てきちゃうのは大問題だわ)■■
まるで恋人に言うような甘さに、また目が痛くなってきた。■■
【【【時間経過】】】
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