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ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『エリオット=マーチ ■03話_3』

帽子屋屋敷・廊下
【エリオット】
「【主人公の名前】……」■■
「エリオット?
どうしたの、どんよりした顔しちゃって」■■
廊下で会ったエリオットは自分から声を掛けてきたものの、やけに暗い。■■
【エリオット】
「せっかく約束したのに、なかなか休みがとれないんだ……」■■
しゅんとなってしまっている。■■
(み、耳が垂れ気味……)■■
【エリオット】
「……な、なんだよ?
忘れちまったのか?」■■
私の、堪えるような顔を勘違いしたらしく、エリオットは食いついてきた。■■
「覚えているわよ。
どこかへ遠出しようって約束でしょう?」■■
【エリオット】
「!
覚えてたのか!」■■
「当たり前でしょう。
忘れないわよ」■■
きっぱり答えると、エリオットは少しだけ安堵したような表情を見せる。■■
【エリオット】
「そ、そっか。
へへ……っ」■■
【エリオット】
「約束だぜ?
破るなよ!?」■■
「大丈夫。
ちゃんと覚えているから」■■
【エリオット】
「【主人公の名前】……。
俺さ……」■■
「なに?」■■
【エリオット】
「…………」■■
珍しく、エリオットは言葉を詰まらせた。■■
あまり沈黙しない男なのと不意だったのとで、不審に思って顔をのぞきこむ。
エリオットはばっと顔を逸らし、背を向けた。■■
【エリオット】
「俺、あんたのこと、大好きだぜ……!」■■
【【【演出】】】・・・だーっと走りさる音
だーーーーーと、そのまま突っ走っていってしまう。■■
「…………」■■
(……甘酸っぱい)■■
好きだ。
大好き。■■
今までもエリオットに散々言われた言葉だ。
でも、違うふうに聞こえたのは気のせいだろうか。■■
それに……。■■
(何を嬉しがっちゃっているんだ、私は……)■■
気のせいだろうかって、気のせいに決まっている。■■
何を恥ずかしい妄想に浸っているんだ。
気持ち悪い。■■
これは夢だ。
夢なんだ。■■
(代価の伴わない好意など信用できない、か……)■■
ブラッドの言葉を思い出す。■■
【【【時間経過】】】
★全キャラ共通部分ここから↓
帽子屋屋敷・主人公の部屋
【【【時間経過】】】
就寝前のひととき。
たまにそうするように、あの小瓶を出し、眺めていた。■■
「…………」■■
小瓶をじっと見る。■■
(……増えている)■■
「…………」■■
「…………」■■
「不思議……」■■
「……を超えて、【大】不気味【大】」■■
「…………」■■
不気味に思うのに、なぜ捨てられないのだろう。
……自分が不思議だ。■■
(頭がぼんやりする……)■■
こんなときは、また夢をみそうだ。
あの、目覚めても忘れることのない夢。■■
予感がする。■■
きっと……当たるであろう予感。■■
【【【時間経過】】】
ナイトメアの夢
(…………)■■
(……やっぱり)■■
いつものように、夢の世界へダイブする。■■
夢の中の夢。
この浮遊する空間にも慣れた。■■
(ちょうどよかったわ。
私も、気になっていることがあったから)■■
毎回ではないが、ナイトメアに会う確率は高い。■■
「ナイトメア」■■
【ナイトメア】
「……ん?」■■
ナイトメアも、当然のように私を迎え入れる。
人の考えていることを勝手に読んでしまう、この男。■■
いつもなら会いたくないが、今回は用事があった。
やっと気付いた衝撃の事実……気付くのが遅いくらいだった恐ろしい事実に対して、文句を言いたい。■■
「ねえ、私、気付いたんだけど」■■
【ナイトメア】
「何を?」■■
「この世界の人は、誰も彼も私を好きになってくれるって言っていたじゃない?」■■
【ナイトメア】
「そこまでは言っていないよ」■■
「似たようなことよ!」■■
「実際、ここの人達は、皆、私に好意的だわ。
話しやすいし接しやすい」■■
【ナイトメア】
「よかったじゃないか」■■
「……いいことなのに、なぜ怒るんだ?」■■
いいことというより、不気味なことだ。■■
怒ってはいないが、イラついている。
寄せられる好意に、最初はどう対処していいか分からなかった。■■
「誰からも好かれて幸せっ」などと喜べるほどお気楽ではないし、妄想家でもない。
私は、そんなに好かれやすい人間ではないし、誰からも好かれたいなどとも思わない。■■
誰からも好かれるなんて異常事態、不気味なだけだ。■■
【ナイトメア】
「不気味って……。
ひねくれた見方をするね」■■
「また、人の考えていることを読む……」■■
「……普通に考えて、不気味だわ。
何度も言っているけど、私は誰からも好かれるような人間じゃないもの」■■
好かれれば、嬉しいと思うよりもおかしいと思う、歪んだ性格だ。
こんな性格の人間が万人受けするとは思えない。■■
【ナイトメア】
「そこは、素直に喜んでおいたらいいのに」■■
(また……)■■
考えを読まれない方法はないのだろうか。■■
【ナイトメア】
「君みたいな子のほうが、この世界では好かれるんだよ、【主人公の名前】。
誰にでも好かれるような無難な子じゃ、好かれないから生き残れない」■■
(……誰にでも好かれるような子が無難な子だとは思えないけど)■■
好かれるというのも、才能だ。■■
誰にでも好かれる子なんて、めったにいない。
姉のような人は、希少だ。■■
なろうと思ってなれるものでもない。
しかし、ようやっと分かったことがある。■■
「……そうよね。
好かれていないと、殺されちゃっていたかもね……」■■
「…………」■■
「……気に入られなければ、とっくの昔に殺されちゃうような世界だもの」■■
つまり、これは必然だったのだ。■■
最初は、誰にでも好印象を持たれるなんて、とても滑稽な妄想の世界だと思っていた。
しかし、そうでなければ生き残れないような世界なのだ。■■
【ナイトメア】
「そうなんだよ。
君は賢い子だ、そろそろ気付くと思っていた」■■
誉められているというよりも、けなされている感じがする。■■
【ナイトメア】
「君が気に入られるのは、この世界で生き残るための必須条件なんだよ、【主人公の名前】。
そういった願望がなかろうと、気に入られなければとっくの昔に死んでいる」■■
「過剰な妄想でもなんでもないさ。
好かれることに安堵しないといけない」■■
「この世界に気に入られたから、この世界で生きていられる」■■
「気に入られないと生きていけない世界なんて、とんでもないわ……」■■
「嫌われたり、気に食わなかったりしたら、殺されていた可能性が充分にあったわけでしょう」■■
結果的に、気に入られて滞在場所も確保でき、生活しているわけだが……。
今更ながらにぞっとする。■■
【ナイトメア】
「この世界の人間はばらばらでいても、すべてがどこかしら連動しているんだ。
白ウサギに好かれている君は、他の人間にも気に入られる」■■
「……へえ」■■
「でも、気に入られなかった可能性だってあったわけよね」■■
【ナイトメア】
「…………」■■
「……まったく、君は賢いよ」■■
「……ふふ。
気に入られてよかったな」■■
(……やっぱり)■■
「綱渡り状態だったのね」■■
今更だ。
今更だが……、今更でも、ぞおっとする。■■
やっと、私は気付いたのだ。■■
誰にでも気に入ってもらえるなんて都合がいいと思っていたが、そう、都合よくなければ私は殺されていた。
都合がいいというよりは、本当に……必然、必須条件だったのだ。■■
【ナイトメア】
「そんなに心配はしていなかったよ。
白ウサギに好かれるということは、他の役持ちにもある程度は好かれることは確定していた」■■
「奴らは、皆、連動しているからね」■■
「ここの世界のルールとか、そういうのはよく分からないし、どうでもいいの」■■
ストップをかける。■■
この世界の人の説明は、大体が理解できないものばかり。
聞くと、かえってこんがらがる。■■
どうせ夢の中のことだ。
たいした意味なんてない。■■
「でも、あなた、他人事だからそういう気楽なことが言えるのよ。
自分のことだったら、もっと切実だわ」■■
夢といえど、自分の生死を人に気に入られるかどうかで左右されたくなどない。■■
都合がいい世界だなどと考えていた、私のほうがのんきだった。
誰にでも気に入られるようでなければ、この世界では生きていること自体が難しい。■■
気付いたときは慄然とした。■■
【ナイトメア】
「だが、君は気に入られている。
この世界は君を好いていて、受け入れているんだ」■■
「嬉しいだろう、【主人公の名前】?」■■
「嬉しい?
生きるも死ぬも相手次第なんて、嫌な世界だわ」■■
「早く帰りたい」■■
怖いと同時に、ムカつく世界だ。
自分ではどうにもならない。■■
そんなの、現実と同じで、夢の意味がない。■■
【ナイトメア】
「そんなに焦るものじゃない」■■
「君は、非力な女の子。
気に入られることは、ここで生きるための必須条件だ」■■
「だけど、それ以上のことは君次第でもあると思うよ。
元の世界よりもいい居場所をみつけられるかもしれない」■■
(いちいち、嫌味っぽいわね)■■
「夢の世界で生きていくつもりはないわ」■■
私は、早く現実に戻りたい。■■
【【【時間経過】】】

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