【【【時間経過】】】
◆帽子屋屋敷・エントランス◆
【エリオット】
「アリス~!」■■
(ん?)■■
外出しようと屋敷のエントランスまで来たところで、背後から声を掛けられた。■■
【【【演出】】】・・・走る足音
振り返ると、盛大な足音を立てて、エリオットが走ってくる。■■
「エリオット。
どうしたの?」■■
【エリオット】
「あんたを探してたんだよ。
ブラッドが呼んでるんだ」■■
「ブラッドが?」■■
【エリオット】
「ああ。
今からお茶会をやるんだが、それに是非あんたも連れて来いって」■■
「お茶会……」■■
ここでのお茶会は珍しいことではなく、むしろ日常茶飯事だ。
思えば初対面のときから、私は彼等とお茶している。■■
大の紅茶好きのブラッドは、事あるごと突発的に茶会を始めるが……。■■
(使用人じゃなく、エリオットがこんなに急いで呼びに来るなんて……)■■
ただの声掛け、というニュアンスではない。
……嫌な予感がする。■■
「ずいぶんいきなりね。
またブラッドが急に思い付いたの?」■■
【エリオット】
「そうだけど、ちょっと前から準備させてるから、もうすぐ支度も整うぜ。
急ぎだけど、ちゃんとにんじんの菓子は5種類以上用意させてるから!」■■
(う……。
や、やっぱり……)■■
目の前のウサギさんは、にんじんの加工食品に目がない。
茶会となると、大量のにんじんスイーツをシェフに用意させることが多い。■■
そして毎回、執拗に同席者にそれを勧める。■■
(ブラッド……。
また今回も、私ににんじんスイーツを押し付ける気ね!?)■■
以前はブラッドにだけ向いていた矛先が、今は私にも向くようになった。
ここぞとばかりに、私ににんじんスイーツを消費させようとするのだ。■■
食べてみると別にまずくはないのだが、さすがに毎回だと私も飽きている。
すでに飽食ぎみだ。■■
(冗談じゃないわ。
そう何度も何度も、利用されてたまるもんですか)■■
「ごめん、エリオット。
私、今から出掛けるところなの」■■
エントランスの扉の前にいるのだから、エリオットだって分かっているはずだ。■■
だがブラッドの命を受けている彼は、食い下がってくる。■■
【エリオット】
「どこに行くんだよ?
今すぐ行かなきゃいけない用事なのか?」■■
「ええ。
……約束しているから」■■
嘘だ。
本当はただぶらりと出掛けるつもりで、約束などない。■■
エリオットはがっかりした様子で眉尻を下げる。■■
【エリオット】
「そうなのか……、先約があるんだったら仕方ねえか。
あー、でも、一応ブラッドにそう説明しねえとなぁ」■■
【エリオット】
「どこに行くんだ?
約束って、誰としてるんだよ?」■■
「え?
ええっと……」■■
とりあえず誰かでっち上げておこう。
急いで頭を働かせる。■■
(誰でもいいけど……。
ユリウスだけは、やめておいたほうがいいかな)■■
エリオットはユリウスを嫌っているようで、彼の名前が出るといつも不機嫌になる。■■
1:「ハートの城」
2:「遊園地」