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ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『ブラッド=デュプレ ■03話_1(選択肢1:ハートの城)』

1:「ハートの城」
「ハートの城に行くの」■■
「……ビバルディと約束しているのよ」■■
咄嗟に思い付いたのは、悔しいが私をこの世界に連れて来たペーターの顔。
しかし彼に会いに行くと言うのは癪だったので、女王の名前を口にする。■■
【エリオット】
「ハートの城の女王様か。
あんた、あの女とも仲がいいのか?」■■
「ええ、それなりには」■■
他領土にはたまに遊びに行くので、彼女とも何度か話をしたことがある。
特に仲がいいというほどでもないが、親しく接してもらっていた。■■
【エリオット】
「そっか~、女王との約束だったらすっぽかせなよな。
あのヒステリー女を怒らせると、何かと面倒だ」■■
「ええ、ごめんね。
それじゃ!」■■
がっかりした様子のエリオットに申し訳なくなってくるが、オレンジ色の菓子を押し付けられるのはやはり嫌だ。
嘘がバレないうちにと、一言謝ると屋敷を出た。■■
(どうせ、どこかには行くつもりだったんだし。
本当にハートの城に行って、ビバルディに相手してもらうか……)■■
【【【時間経過】】】
◆ハートの城・庭園◆
【城の兵士A】
「……陛下……。
女王陛下!?」■■
【城の兵士B】
「女王陛下……!?」■■
【【【演出】】】……草や木の音
すぐ傍を、兵士達が垣根を揺らしながら過ぎていく。
私はといえば、彼等から隠れるように、生け垣に背中を預けていた。■■
……否、今の言い方は正しくない。
「隠れるように」ではなく、間違いなく「隠れている」。■■
私は見付かってもいいのだが、少なくとも、隣にいる女王様は。■■
【ハートの城・兵士・男1】
「……ん?」■■
気配を察したのだろうか。
兵士の一人が、こちら側に振り返った。■■
【ビバルディ】
「まずいっ、アリス!
逃げるぞっ」■■
「……ええっ!?」■■
ぱっと手を取られ、引かれる。
なす術もなく、彼女と一緒に走り出した。■■
何だってこんな状況になっているのだろう。■■
何となく思い付きで外出して、ハートの城にやって来た。
こんなかくれんぼに付き合う予定はなかったのに。■■
ハートの城は、今までにも何度か訪れていた。■■
城の手前にある庭園を歩いていたら、そこでハートの女王・ビバルディに会い……。
そしてなぜか、今の状況に至っている。■■
(……なんで???)■■
【【【時間経過】】】
【【【演出】】】……足音
【【【演出】】】……草や木の音
「…………」■■
【ビバルディ】
「……行ったか?」■■
「……たぶん」■■
「……っていうか、なんなの?」■■
私は、ビバルディと立ち話をしていただけだ。
それが、どうしていきなりかくれんぼになるんだろう。■■
隣に立つ彼女をじっと見詰める。
この女王様に会うのは、これで何度目だろうか。■■
冷酷非情な暴君だと分かっているが、私のことは気に入ってくれているらしい。
最初こそ戸惑ったが、名前で呼び、友人のように接することにも段々慣れてきた。■■
【ビバルディ】
「奴らは、わらわを捜しておるのじゃ」■■
「なんで?」■■
【ビバルディ】
「わらわが仕事をさぼっておるからじゃ」■■
えへんと、偉そうに言い切るビバルディに唖然となる。■■
「戻ろうよ。
隠れていちゃ駄目でしょ」■■
【ビバルディ】
「嫌だ。
戻ったら、仕事をせねばならんだろう」■■
「女王様なんだから当たり前でしょ」■■
兵士が捜し回っているのも当然だ。■■
【ビバルディ】
「女王でも、息抜きをせねばやってられん」■■
「そりゃあ、息抜きは必要だろうけど……」■■
【ビバルディ】
「そうとも。
息抜きは必要じゃ」■■
「……場合によるんじゃないかしら」■■
気に障ることがあればすぐに「首を刎ねよ」のビバルディを捜しているのだ。
よほど大事な仕事を中途で投げ出してきているのだろう。■■
【ビバルディ】
「おまえも生意気を言うようになったのう、アリス」■■
じろりとビバルディが睨んでくる。■■
「そうね。
前だったら、怖くて言えなかったわ」■■
それ以前に、厄介な彼女に忠告をするなどという面倒ごと、する気にもならなかった。■■
「……親しくなったってことかしら」■■
「今なら、これくらい言っても首を刎ねられない気がするの」■■
【ビバルディ】
「……ふん」■■
「本当に生意気を言うようになったな……」■■
つんとそっぽを向くが、その表情は……。■■
「あら、ビバルディ。
ちょっと顔が赤くない?」■■
【ビバルディ】
「可愛くないぞ、アリス」■■
「あなたは、ちょっと可愛い感じね」■■
くすくすと笑うと、ちっと舌打ちされた。■■
(可愛い)■■
傲慢な美女なのに、たまに、少しだけ可愛い。
仕事をさぼること自体、なんだか子供みたいに思えてくる。■■
仲良くなってそういうところが分かってくると、怖くなくなってきた。■■
(……すごく残酷な女王様っていうのも、分かっているんだけどなあ)■■
【【【時間経過】】】

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