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ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『ブラッド=デュプレ ■10話_1』

◆帽子屋屋敷・ブラッドの部屋◆
「お城で舞踏会……?」■■
メルヘンな響きだ。
いきなり持ち上がったメルヘンな話題に、聞き返す。■■
話があると言われブラッドの部屋に来てみれば、そんな話だった。■■
【ブラッド】
「ああ、そうだ。
もうすぐハートの城で開催される」■■
「ハートの城……」■■
城なら、定期的に夜会が催されてもおかしくない。■■
「でも、ハートの城とは敵対しているんでしょう?」■■
それは、仲が悪いとかそういったレベルではなく、殺すか殺されるかの次元の話だという。■■
「そんなところが招待してくるなんて、罠じゃないの」■■
違和感いっぱいだ。
罠でないほうがおかしい。■■
【エリオット】
「そりゃあ、招待なんかされたら罠に決まってる」■■
【ブラッド】
「招待されていないから安心だな」■■
【ディー】
「休み放題……」■■
【ダム】
「料理がタダで食べ放題……」■■
【ディー】
「ずっと続けて開催してくれないかな」■■
【ダム】
「そうだよ、けちけちせずに毎時間帯パーティしてくれたらいいのに」■■
「…………」■■
「招待されていないのに、行く気なの?」■■
【ブラッド】
「私は、行きたいときに行きたい場所へ行く」■■
【エリオット】
「ブラッドが行くなら、警護しなきゃならねえだろ」■■
【ディー】
「休み……」■■
【ダム】
「料理……」■■
ブラッドは飄々と、エリオットは当然のように、双子は舌なめずりでもしそうだ。■■
【ブラッド】
「なんだ、不満そうだな、アリス。
なにか文句でも?」■■
「……敵の本拠地なんでしょう?」■■
この人達に危機感とか警戒心とかはないのだろうか。
まあ、求めても無駄かもしれないが……。■■
「気付かれずにまぎれこむなんて出来ないわよ」■■
【ブラッド】
「気付かれるだろうが、黙認される。
見てみぬ振りさ」■■
【エリオット】
「イベントごとは特別なんだ」■■
「?」■■
【エリオット】
「女王は催し物を開く。
俺らは、出来る限り参加する」■■
「参加しなくてもいいが、基本的には出席だ」■■
【ブラッド】
「主催者は、それが殺したいほど憎い相手でも殺さない。
私達も客だから、そのときだけは何も仕組まない」■■
「それが、ルール」■■
「ルール、ね」■■
この世界のルールはよく分からない。■■
「じゃあ、安全が保証されているということ?」■■
【ブラッド】
「基本的にはそうだというだけで、破りたくなったら破るがね」■■
「私はしたいことをするが、女王もそれは同じ。
基本的にはルールを守るが、そうしたくないときは守らない」■■
「それって、なんの保証もないのと同じじゃないの」■■
「破りたくなったら破れるルールなんて、ルールとはいえないわ。
いい加減すぎる」■■
【ブラッド】
「心配しなくても、大体は安全だ」■■
「大体って……」■■
それで安心しろというのか。■■
【エリオット】
「大丈夫だって。
ブラッドを一人で行かせたりしない。
俺らも行くし、部下達も腕利きのを連れて行く」■■
「いざってときになんとかなるようにして出かけるんだから、安全だ」■■
「……それ、安全っていわない」■■
ちらりと双子を見る。
合理主義の二人は、不満を言うかと思ったが……。■■
【ディー】
「休みたい放題だぞ、兄弟……」■■
【ダム】
「タダ飯が食べ放題だ、兄弟……」■■
「…………」■■
「違った方向でメルヘンな世界に飛び立っている……」■■
【エリオット】
「こいつら、イベント系大好きなんだ。
休める上に、飲み食いタダだからな」■■
「ここのお屋敷でだって、おいしい料理はたくさん出るでしょう」■■
【エリオット】
「タダって言葉に弱いんだよ。
特に、ダムのほうは」■■
【ブラッド】
「ここでの食事は自由だが、給料から食費をとっているしな」■■
「……意外とせこい」■■
【エリオット】
「タダだと厨房から漁って転売しかねない奴らだぞ?」■■
「……やりそうね」■■
【ブラッド】
「私のお気に入りの茶葉まで根こそぎやられそうだ。
給料からさっぴいてやれば無茶もしない」■■
なんだか、ものすごく納得した。■■
さすが彼らの上司。
非常に合理的だ。■■
【エリオット】
「奴ら、手癖も悪いからな……」■■
「人んちならいくら荒らしても構やしねえ。
思う存分漁れるから、ご機嫌なんだろ」■■
「女王の城なら、食い潰してくれてもいいくらいだ。
うちの門番なだけに、ちょいと恥だが……」■■
【ブラッド】
「やんちゃだからな……」■■
「催し物のときはやるなと言ってあるのに、帰るときには必ず返り血をつけて戻ってくる……」■■
「……やんちゃで済んじゃうんだ」■■
【エリオット】
「ガキだから、長い間、大人しくしてらんねえんだよ。
もっと躾けとかないと、うちの品性が疑われるぜ」■■
【ディー】
「……ウサギに品性を語られたくないよ」■■
【ダム】
「はっ、まったくだよ。
その耳とか、品性とは無縁だ」■■
けっ……と双子達はエリオットを馬鹿にする。■■
【エリオット】
「んだとぉ!?クソガキ共!
俺はウサギじゃねえ!」■■
そして、双子を子供扱いするわりには、負けずに子供じみた反応を返す兄貴分。■■
【ディー】
「ウサギじゃなかったら、なんなんだよ!?」■■
【ダム】
「自分の存在を否定するのはやめたら?」■■
【エリオット】
「うっせえ、チビ!
ガキみたいなことばっかしてるから伸びねえんだよ!」■■
【ディー】
「なっ……んだって!?
僕らは成長期なんだよ!」■■
【ダム】
「そうだそうだ!
これから伸びるんだよ!」■■
【エリオット】
「んなこと言って、いつまでたっても伸びないじゃないか!
伸びるどころか、身長縮んでるんじゃねえのか!?」■■
【ディー】
「縮むわけないだろ!
ちょっとがたいがいいからっていい気になって!」■■
【ダム】
「そのウサギ耳を切り取って、身長を削ってあげようか!?」■■
ぎゃあぎゃあ。■■
「…………」■■
ルールだかなんだか知らないが、こんなのを引率しなくてはならないなんて、かわいそう。■■
同情の目をブラッドに向けると、彼は彼で違ったメルヘンの世界に飛んでいた。■■
【ブラッド】
「フラワリー・オレンジ・ペコーというのを知っているか、アリス」■■
「…………」■■
ブラッドの目は、きらきらしている。■■
普段、濁ったというか淀んだというか……、別の意味でしか光りそうにない目が純粋に輝いている。■■
(…………)■■
(……怖い)■■
普段から怖いが、今は別の意味で怖い。■■
きらきらしたブラッドなんて、怖すぎる。
きらきらという言葉自体がどうやったって結びつかないし、究極に似合わない。■■
【ブラッド】
「茶葉のグレードのことだ。
茶木の一番先端にある芽の部分を、フラワリー・オレンジ・ペコーという」■■
「葉になる前の芽は貴重な部分で、とれる量は少ない。
味や香りはほとんどないが、味をまろやかに深くしてくれる」■■
「フラワリー・オレンジ・ペコーは、その部位そのものをいうこともあるが、それが多く含まれている紅茶を指すんだ」■■
ブラッドは、私の返事を待たずに解説を始めた。■■
返事などどうでもいいのかもしれない。
彼の目は、どこか別世界へ飛んでいる。■■
私がこの世界に飛ぶよりも、もっと遥か遠くへ飛ばされていそうだ。■■
【ブラッド】
「高級茶葉の代名詞といっていい。
だが、先刻言ったようにフラワリー・オレンジ・ペコーはそれ自体の味や香りは薄い」■■
「高級だからといって、ただ配分を増やせばいいというものではない。
多すぎると味の薄いものになるし、それだけで作ることはできない」■■
「オレンジ・ペコー以下のグレード、品種はもちろんのこと茶園や茶葉を摘んだ時間による癖も、紅茶のブレンドには欠かせないものだ」■■
「そう!
ブレンドこそが紅茶の命を左右するのだ!」■■
「……は、はあ……」■■
それ以外、なんと言えただろう。
いや、言えない。(反語)■■
紅茶はおいしいし、好きだが、私はマニアではない。■■
しかし、ブラッドは明らかにマニアだった。
いつもは、人生を捨てたように淀んでいる目がきらめいている。■■
(……に、似合わない)■■
(怖い……)■■
男が夢や好きなものを語るとき、女はきゅんとくるものらしいが……、私もきゅんきゅんきていた。■■
(怖い怖い怖い怖い怖い……)■■
きゅんきゅんきすぎて、寒気がする。
ブラッドほど、輝きの似合わない奴もいないだろう。■■
【ブラッド】
「フラワリー・オレンジ・ペコーはブレンド具合によって生きるもの。
いかに生かすか工夫を凝らし、ブレンドする者の腕の見せ所だ」■■
「独自のブレンド方法は、もちろん我が屋敷にもある。
しかし、同じようにハートの城にも独自のブレンドがあるのだ」■■
「催し物といえば、その行事ごとにブレンドされた紅茶が出される。
夜会は酒がメインだが、紅茶を欠かすようなことはない」■■
「行く度ごとに変わるブレンド……。
尻尾を掴んだと思えば、次に会うときにはまた別の顔を見せてくれる……」■■
「きまぐれな貴婦人のようだ……」■■
ブラッドはぺらっぺらとよく喋った。
滞在して長くなるが、彼がこんなによく喋り、熱弁をふるうのを聞いたことがない。■■
そして、そう何度も聞きたいとも思わなかった。■■
(怖~~~……)■■
【ブラッド】
「……想像するだけで、ぞくぞくしないか、アリス?」■■
「……うん、する」■■
私は、現在進行形でぞくぞくしていた。■■
そこらへんで、ブラッドは我に返ったようだ。■■
【ブラッド】
「……っふ。
私としたことが……」■■
「……取り乱してしまったな」■■
帽子の位置を直しつつ、こほんと咳ばらいをする。■■
「……は、はあ」■■
やはり、私の返事はそんな感じにしか出てこなかった。■■
(取り乱したとか、そういう次元ではなかったわよ……)■■
【ブラッド】
「ハートの城には、珍しいブレンドの紅茶がある。
今から楽しみだ」■■
今更、すまして言われても……。■■
「……え、ええ。
すっっっごく楽しみなんでしょうね」■■
もう充分に分かった。
身の危険とかそういったものは、珍しいブレンドの紅茶に比べれば些細なことなのだろう。■■
【エリオット】
「死ね!クソチビ!
××××野郎共!」■■
【【【演出】】】……銃声(連発)
がうん、がうん!■■
【【【演出】】】……金属音(連続)
きんきん!■■
がつんがつん!■■
銃声と、金属音が響く。■■
【エリオット】
「どうせ問題起こしやがるんだ!
舞踏会になんかはなっから行けなくしてやる!」■■
【ディー】
「やれるものならやってみたら!」■■
【ダム】
「返り討ちにしてあげるよ!」■■
【エリオット】
「っざけんな!
十年早い!!!」■■
【ディー】
「おまえを墓に送り込むのに十年もいらないよ!」■■
【ダム】
「今すぐ逝けよ!」■■
「……まだやってる」■■
【【【演出】】】……金属音(連続)
がんぎんがんぎんと、不協和音に頭が痛い。
もっとも、頭痛の原因は音のせいだけではなさそうだ。■■
【ブラッド】
「どんな紅茶が出るのか……」■■
「私の舌を痺れさせるほどのものが出てほしいものだ……」■■
ブラッドは騒ぎにも、まったく我関せず。
遠い世界に旅立っている。■■
「……これ、ひょっとして私が引率するのかしら」■■
【【【時間経過】】】
◆帽子屋屋敷・ブラッドの部屋◆
ブラッドにも仕事がある。■■
だらけた見た目に反して多忙な男だ。
忙しい。■■
屋敷内で生活していると嫌でも分かる。
彼は頼られ、頼られるだけの仕事をこなしている。■■
「この間もそうだったんだけど、ここへ来る前にも……」■■
【ブラッド】
「へえ……」■■
こうしてだらだらしていると、暇な人のようだ。■■
ブラッドは、いつだって余裕ぶっている。
どんなくだらない雑談にも付き合ってくれたし、時間が無限にあるかのように振舞う。■■
私に見せる顔は常にけだるそうなくせに(私だけに限らない。常にだるそうと言ったほうが正しい)、彼は仕事をきっちりこなしていた。
暇そうにしていても、多忙なはずだ。■■
こうして無駄に時間を使うなど、惜しいはず。
そのはずなのに、まるで時間が無尽蔵にあるように無駄遣いしている。■■
時には、入っていた仕事の予定を変更してまで。■■
だらけた時間を毎回不思議な気分で過ごしながらも、彼ととりとめなく過ごす。■■
「それでね、エリオットが……」■■
こうして過ごす時間を暇つぶしと言うが、リラックスできる時間を作ってあげられているのなら活用されてもいい。■■
ブラッドは、この屋敷、そして組織をまとめあげるという重責を担っている。
……とても、そうは見えなくとも。■■
【ブラッド】
「楽しく過ごせているようで、なによりだ」■■
今も、ブラッドはだらっとしていた。■■
【ブラッド】
「ところで、アリス」■■
「ん……?」■■
【ブラッド】
「君の話には、よくエリオットが出てくるんだな」■■
「そう……かしら?」■■
【ブラッド】
「そうとも。
話し始めてから、エリオットの話題が鬱陶しいくらいに出てきた」■■
「カウントするのも阿呆らしいほど出てきたぞ?」■■
「……そんなに?
言ったかな」■■
腹心に対して、鬱陶しいというのは酷い。
だが、不快になるほど繰り返していたなら悪かった。■■
【ブラッド】
「親しいのか?」■■
「ええ。彼はよくしてくれるわ。
親切なの」■■
組織のナンバー2という肩書きを持っているにも関わらず、彼は気安い。
気さくに接してくれるし、親身にもなってくれる。■■
(最初、殺されかけたんだけどね……)■■
気を許した人にはどこまでも甘くなるタイプの、面倒見がいい気質らしい。■■
悪人なのに、お兄さんみたいだ。
屋敷内のことや外の知識などで、お世話になっていた。■■
彼は、ブラッドと違って分かりやすい。
感情も、多忙具合もすぐ分かる。■■
頻繁に会っているブラッドが分かりにくい人なので、その分だけ癒される。■■
ブラッドは、エリオットよりずっと分かりにくいし、癒しなどとは無縁。
これだけ傍にいなかったら、サボっているリーダーとしか思えなかった。■■
(実際にはそうじゃないくせに……)■■
(…………)■■
いや、実際にはどうなのだろう。■■
(……これだけ間近にいても、分からない)■■
彼は、それほど自分というものを悟らせない。■■
今だって、一体いつ仕事をしているのかと思うことが多々あった。
実際に重要決定を下しているのは彼なのに、他人任せで悠々と過ごしているように見せるのだ。■■
「エリオットって、なんでも口に出して言ってくれるから話していて安心する」■■
あなたも、ちょっとは内面を見せなさいよ。■■
そういう意味を含めて言ったのだが、ブラッドには伝わらなかった。
嫌そうに顔をしかめる。■■
【ブラッド】
「君好みの、誠実な男というやつか」■■
「……見る目がないな。
奴は悪党だぞ?」■■
皮肉びた言葉に、むっとする。■■
「いい人よ」■■
【ブラッド】
「敵に対して、どれだけ非情になれるか見せてやりたいよ。
単純そうな頭の中には、繊細な拷問のやり口も詰まっている」■■
「悪党だ。
……私と同種のな」■■
「…………」■■
「あなた、私にエリオットを嫌わせたいの?」■■
【ブラッド】
「私だけ嫌われて、奴が好かれるなんて不平等だろう?」■■
「…………」■■
しっかり仕事していると知っても、この人は本当にリーダーなのだろうかと思うのはこんなときだ。■■
我侭、気まま。
自分が中心。■■
やりたいことをして、言いたいことを言う。
その奔放さもカリスマ性につながっているところが憎たらしい。■■
「ここの人達が、皆マフィアだってことは知っているわ」■■
マフィアというものがどういうものかも知っている。■■
伊達に読書家を気取っていない。
ニュースも読むし、本も読む。■■
えげつなく、外道な連中で、憎むべき社会悪だと知っていた。■■
【ブラッド】
「君みたいなお嬢さんは、私達のことを軽蔑するんだろうな」■■
問いかけというより断定の形だ。■■
「そうね。
職業選択としては最低だと思うわ」■■
「人を蝕まないと成り立たない仕事なんて、間違っている」■■
【ブラッド】
「正常な考え方だ」■■
言い訳もしなければ、否定もしない。
自己弁護をするつもりはないようで、ブラッドはただだるそうにしている。■■
【ブラッド】
「特殊な仕事だからな。
嫌悪されるのも仕方ない」■■
特殊ですまされないものがあると思うが、ブラッドは淡々としている。■■
いいことだとも、悪いことだとも言わない。
どう思われても構わないという、余裕というより適当さが窺えた。■■
私にどう思われていようと構わないのだ。
それが、癪に障る。■■
「私、エリオットが好きよ」■■
【ブラッド】
「は……」■■
「……なんだって?」■■
ブラッドはぽかんとした後、徐々に不快感を広げていく。■■
いい気分だ。
彼を動揺させるのは気分がいい。■■
何にも執着しないように見せて、子供っぽい独占欲があることは知っている。■■
男の矜持もあるだろう。
女性を所有物扱いするのは、男特有の愚かな癖だ。■■
「彼の、気を許した人だけは特別扱いするところが好き」■■
嫉妬する彼を堪能した後で、言葉をつぐ。■■
痛いくらいの威圧感も、理由が明確な場合はやりすごせる。
肝は冷えるが、やはりいい気分だ。■■
「私も、気を許した人になら甘くなれるの。
悪いことだと思わないといえば嘘だけど、嫌えない」■■
「あなた達がマフィアで、どれだけ人を傷つけていようと平気。
目を瞑っていられる」■■
ニュースの中だろうと、同居していようと変わらない。■■
「あなたが目の前で人を殺そうとしていれば止めるかもしれないし、酷いと非難するかも。
でも、あなた達の悪事を今すぐ暴いて改善しようなんて思わないもの」■■
呆気にとられたような顔をいい気分で見つめる。■■
「悪党っていうのはね、こういう人間をいうのよ」■■
身を呈して人を庇うかもしれない。
無視できてしまうかもしれない。■■
どちらに転ぶか分からない。
恐らく、状況次第でどちらにでも転ぶのだろう。■■
なんの信念もない。
だから、ずるい。■■
【ブラッド】
「…………」■■
「マフィアのお屋敷でお世話になっている私を、善人だとでも思っていたの」■■
今このとき、私は目を瞑っている。
誰かを傷つけて築かれたのだろうと分かる程度には想像力を持ちながら、その屋敷で生活している。■■
多数の人を傷つけてきた人に抱かれている。■■
【ブラッド】
「…………」■■
「君はエリオットが好きだというが、私は君が好きだ」■■
「……なんですって?」■■
もう一度言ってと顔をしかめる。
先刻とは逆の立場だ。■■
【ブラッド】
「…………。
君みたいな子が好きだよ」■■
けだるげに言い直して、微笑む。■■
【ブラッド】
「私は、自覚のある悪女が好きなんだ」■■
【【【時間経過】】】

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