TOP>Game Novel> 「 ハートの国のアリス 」> サブイベント ■深夜のお茶会2(ブラッド)

ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『サブイベント ■深夜のお茶会2(ブラッド)』

※ブラッド滞在03で「深夜のお茶会1」が発生していて、2:「そうかもね」を選んでいる場合、2回目ここから↓
◆帽子屋屋敷・庭園◆
ブラッドとエリオットに誘われて、深夜のお茶会に加わる。■■
ティータイムは、しょっちゅう席を共にしている。
だが、三人揃っての深夜のお茶会は久しぶりだ。■■
★ブラッド滞在ルートのみここから↓
(なんでわざわざ、今のタイミングで……)■■
ブラッドの部屋で押し倒されたのは少し前のこと。
普通の顔を保ちつつもまだ冷静になりきっていない私には、取ってつけたというか……、作為的なものを感じた。■■
提案したのはエリオットかもしれず、たまたまかもしれない。
それでも、意味があるように思えてしまう。■■
(皆の前では今まで通りを装え、っていうアピールのつもり……?)■■
そんなことは、念を押されなくとも分かっているというのに。■■
いや、ブラッドがそんなことをするとも思えない。
バラしたければバラせと笑いそうだし、バラされたところで平然としているだろう。■■
やはり何の意味もないのかもしれない。■■
……考えても答えが出なくて、イライラする。■■
(…………)■■
(……ああ、いやだ。
なんだか私、ささくれ立っている)■■
だが誘いを受けてしまったからには、もちろん普通の顔を装っている。■■
★ブラッド滞在ルートのみここまで↑
会話が弾み、話は仕事のことになった。■■
私は二人の仕事に反対はしないが、えげつない話は苦手だ。
エリオットはすぐにそちらの方面へいきそうになるが、ブラッドがうまい具合に逸らしてくれる。■■
具体的なことは巧みに避けて、話が続いていく。■■
【ブラッド】
「エリオットはよくやってくれている。
手荒な仕事を任せれば、必ず片をつけてくれるからな」■■
ブラッドが誉めると、エリオットは頬をかいた。■■
【エリオット】
「へへ……っ。
役にたててるか?」■■
【ブラッド】
「あ……、ああ……」■■
ブラッドは、その反応にうっと眉をしかめる。
きらきらと絶対の信頼を向けられることが苦手らしい。■■
薄情な話だが、私も人のことは言えないので咎めなかった。
どうせ、エリオットも気にしていない。■■
【エリオット】
「う~ん、でも、馬鹿にされることも多いぜ」■■
「エリオットを馬鹿にするなんて、命知らずね」■■
【ブラッド】
「まったくだ」■■
私はお菓子を食べながら、ブラッドは紅茶を飲みながら、口々に言う。■■
「どんなふうに揶揄されるの?」■■
【エリオット】
「ん~~~~~……」■■
「俺、よくウサギっぽいって言われるんだよな。
ムカつくぜ」■■
「ま~、んなふざけたこと抜かした奴は生かしちゃおかねえけど」■■
「…………」■■
【ブラッド】
「…………」■■
★ブラッド滞在ルートのみここから↓
(ある意味ありがたいな、このウサギ)■■
今の発言のおかげで、ささくれ立って沈み気味だった気分は吹き飛んだ。■■
★ブラッド滞在ルートのみここまで↑
「そうよね。
ウサギっぽいんじゃなくて、ウサギだものね」■■
さっくり言った私を、だが、エリオットは殺そうとはしなかった。■■
【エリオット】
「ひっで……。
俺のどこがウサギなんだよ……」■■
【ブラッド】
「…………」■■
「どこって……」■■
私とブラッドの視線が、エリオットの頭に集中する。
さすがにエリオットも、じいいっと見られて気付いたようだ。■■
【エリオット】
「……ああ?
この耳か?」■■
「この耳がウサギの耳っぽいから問題なのか?」■■
「ウサギ耳っぽいんじゃなくて、ウサギ耳でしょ」■■
【エリオット】
「ウサギ耳じゃない。
ウサギの耳に似たものだ」■■
「だから、ウサギ耳でしょ。
似たものってなんなのよ」■■
ウサギ耳そのもので、他のたとえなど何もみつからない。■■
【エリオット】
「俺はウサギじゃないんだから、ウサギ耳なんかはえてるわけねえだろ!?」■■
「知らないわよ!
はえているものははえているんだから!」■■
【エリオット】
「ブラッド!こいつ、ひでえ!
俺のこと、ウサギ扱いするんだぜ!?」■■
「だって、ウサギだし……」■■
喧嘩っ早く怖い人だとは分かっている。
だが、エリオットは怒っても私に手出ししない。■■
それが嬉しい。
安心もあって、エリオットをからかう。■■
【ブラッド】
「安心しろ、エリオット。
ウサギ耳がついていようと、おまえは私の相棒だ」■■
【エリオット】
「ブラッド……」■■
「あ、ちょっと、ブラッド。
自分だけ理解のあるとこ見せないでよ」■■
「私だって、ウサギでもエリオットのことを嫌いになったりしないわよ」■■
ウサギ耳とは相性最悪だが、それはエリオットのことではない。■■
【エリオット】
「アリス……」■■
エリオットは感極まったというように、うるうるしている。■■
反して、私とブラッドは冷めた目だ。
こういう反応が苦手なところ、ブラッドとは実に気が合う。■■
【エリオット】
「二人とも……。
俺も、おまえらのこと、大好きだぜ……」■■
【ブラッド】
「……私は、大好きとまでは言っていないんだが」■■
【エリオット】
「も~~~、ブラッドってば、照れんなよ!」■■
【【【演出】】】……バシッと叩く音
【【【演出】】】……バシッと叩く音
エリオットは、ブラッドの背中をばっしばし叩く。■■
ばしばしという域を越えている。
ばっしばし、だ。■■
打撃に近い。■■
【エリオット】
「あ~~~、俺って幸せだよな~~~!
とってもいい気分だぜ!」■■
【ブラッド】
「…………。
私は、とても嫌な気分だ……」■■
ばっしばし叩かれたブラッドは、ティーカップを持っていた。■■
紅茶が波打つ。
中身が減っていたので惨状は免れたが、シャツに紅茶が飛んでしまったようだ。■■
かわいそうに、彼はエリオットのせいで頻繁にシャツを汚している。■■
【エリオット】
「はははっ。ブラッドは悩み事が多いもんな!
相談ならいつでも乗るぜ!」■■
【ブラッド】
「…………」■■
エリオットは、裏表のない満面の笑みを浮かべている。■■
【ブラッド】
「…………」■■
「……ありがとう、エリオット。
おまえのおかげで、私もずいぶんと気が長くなったよ」■■
「昔は私も短気だったが、おまえは私に忍耐というものを教えてくれる……」■■
ブラッドは諦めたように、ハンカチを出して拭き始めた。■■
(なるほど。
ブラッドがよほどのことがない限り、我慢強く一人で紅茶を飲んでいられるのは、ある意味エリオットのおかげなのか……)■■
短気なブラッドというのは想像がつかないが、本人が言うのだからそうなのだろう。
今以上にエリオットを殴る蹴るしていたのだろうか。■■
昔は何とかエリオットを躾けようとして……、無理だと悟って諦めたのかもしれない。■■
【エリオット】
「なに言ってんだよ、ブラッドは前から寛大な男だぜ!
俺のほうこそ、未だに短気が直らなくってさあ……」■■
「ブラッドは、ほんっっっっっとすげえよな!」■■
【ブラッド】
「……う」■■
きらきらした信頼の目を向けられ、ブラッドは嫌そうにティーカップを持ち直した。■■
何か持っていないと、ステッキに手が伸びそうなのだろう。
手が落ち着かない。■■
【エリオット】
「でも、最近は俺もブラッドを見習って抑えるようにしてるんだぜ?」■■
「すぐ銃をぶっぱなしたりしねえ。
ちゃんと考えてから撃つようにしている」■■
【ブラッド】
「ほう?
それはいいことだ、エリオット」■■
「おまえはまったく考えずに撃つからな。
元から銃を持っているだけに、変化させる時間もない」■■
「三下じゃないんだから、もう少し思慮を持ってほしかったんだが……。
すぐ撃つ癖が改善されたのなら何よりだ」■■
「え~……、でも、とても思慮深いようには……」■■
お菓子をぱくつきながら大人しく聞いていたが(単に口が一杯だったということもある)、そこには異議がある。■■
【エリオット】
「ひっで……。
アリス、あんた、俺に対して酷くねえ?」■■
「え~……。
ほら、私って、正直な子だから……」■■
(いじりたくなるのよね、エリオットって)■■
(かっこいいのに可愛いんだもの……)■■
【エリオット】
「そんなに信用ないのかよ、俺って」■■
「ちゃんと考えてからっていうのが、怪しいのよ。
あんたって、即断即決な人でしょう」■■
「考えるより先に手が出そう……」■■
【エリオット】
「んなことねえよ!
ちゃんと考えてから撃ってる!」■■
「どれくらい?」■■
【エリオット】
「3秒くらいだ!
偉いだろ!?」■■
「…………」■■
【ブラッド】
「…………」■■
【エリオット】
「なっ、なんだよ!?
前は、1秒も待たずにぶっぱなしてたんだぜ!?
進歩だろ!?」■■
「昔は、誰だろうと考えずに撃つような『すごく悪い奴』だったが、今はそうでもねえ。
ばっちり考えてから撃ってる」■■
「今は、『ちょっとだけ悪い奴』だ。
進歩してんだろ?」■■
「…………」■■
(どうしよう……。
こいつ、本気でそう思っているんだわ……)■■
「…………」■■
「……はあ。
あのねえ、エリオット」■■
深い息を吐きつつ、憐みの目を向け。
次にはキリリと表情を引き締め、怒鳴った。■■
「1秒が3秒に延びたところで、大して変わりゃしないわよ!」■■
【エリオット】
「ええっ、なんでだよ!?
すっげー進歩じゃねえか!」■■
【エリオット】
「2秒も考えられるようになったんだぜ?
これもブラッドの教育の賜物だ!」■■
【ブラッド】
「……エリオット。
私が陳腐な指導をしているように聞こえるから、やめてくれ」■■
ブラッドが会話に割り入ってくる。
見やれば、微かにぴくぴくと眉を震わせて嫌そうな顔をしていた。■■
実際のところ、わずか2秒をエリオットに覚えさせるにも相当な期間を要しているのかもしれない。
それを思うと、ブラッドが哀れな気もした。■■
ちらとエリオットを見ると、誉めてほしそうにしている。■■
彼にとっては、誉められるべき進歩なのだろう。
少なくとも、本人はそう思っている。■■
きらきらと。
早く誉めてくれないかと待つ目は、ウサギというより……。■■
「犬みたい……」■■
「……そういえば、前にもブラッドの犬だとかなんとか言っていたわね」■■
【ブラッド】
「……やめてくれないか」■■
がくーっと、ブラッドは俯いた。■■
脱力気味だ。
基本的なマナーはいい彼にしては珍しく、テーブルに突っ伏してしまいそうな状態。■■
エリオットはといえば、尻尾があったら振っていそうな感じで私達を見ている。
信用・信頼・好意、そういったものがかなりあからさまだ。■■
私も、エリオットを見ていると、がくーっとなる。
突っ伏してしまいそうだ。■■
「気持ち分かるわ……」■■
「脱力しちゃって、指導なんて無理……」■■
【ブラッド】
「……ああ。理解者がいてくれて嬉しいよ。
幾分か気が楽だ……」■■
妙な連帯感を持った私達に、誉められるのを待ちくたびれたエリオットが割り込んでくる。■■
【エリオット】
「どうした???
俺も会話に入れてくれよ」■■
「会話の中心はあなたよ、エリオット」■■
【エリオット】
「???」■■
「俺を誉めてたのか???」■■
【ブラッド】
「そんなところだ……」■■
【エリオット】
「そっか!嬉しいぜ。
どうせ誉めるなら、もっとおおっぴらに誉めてくれよな!」■■
「…………」■■
【エリオット】
「二人とも、大好きだぜ!
俺の頭に何がはえてようが気にしないよな?」■■
「……でも、この耳はウサギの耳じゃないからな?
俺はウサギじゃないんだ」■■
「…………」■■
「……まだ言い張るんだ」■■
【【【時間経過】】】

ブラッド 06話_2 へ進む