TOP>Game Novel> 「 ハートの国のアリス 」> ブラッド=デュプレ ■06話_1

ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『ブラッド=デュプレ ■06話_1』

【【【時間経過】】】
◆帽子屋屋敷・ブラッドの部屋◆
bra6_1 「…………」■■
「……何する気」■■
【【【演出】】】……上着を脱ぐ音
【ブラッド】
「なんだと思う……?」■■
ブラッドごしに天井が見える。■■
現実感がないにも程がある。
頭に当たるソファの音がダイレクトに伝わってきた。■■
【ブラッド】
「楽しいことさ。
君もきっと気に入ってくれる」■■
「……たいした自信ね」■■
「自分に他の男を重ねられるような恋はごめんだとか、かっこいいことを言っていなかったっけ?」■■
あれは、そんなに遠い日のことではなかったはずだ。
時間軸が曖昧なこの世界でも、しっかりと記憶に残っている。■■
冷たく(私にとっての最高レベルで)見上げるが、ブラッドは堪えた様子もない。■■
【ブラッド】
「……気が変わった」■■
「今、退屈しているんだ。
暇つぶしに付き合ってもらおう」■■
「…………。
かっこつけるなら、最後まで通しなさいよね」■■
【ブラッド】
「恋じゃないのならいいんだろう?
私も、退屈は嫌いだが面倒も嫌いだ」■■
「面倒ごとは起こさないよ……」■■
けだるそうに話す男は、これといった欲望とは無縁に思える。■■
常に涼しい顔をして、だるそうに腕組みでもしていそうな人だ。
付き合いが長くなっても、初対面の印象は変わっていない。■■
「あなたがそんな人だとは思わなかった」■■
私がどれだけ部屋に本を読みに通おうが、変わらない。
変わるはずなどないと思っていたのに。■■
【ブラッド】
「はは……。
……使い古された言い回しじゃないか。本気で言っているのか」■■
「こっち方面で熱心な人には見えなかったっていう意味」■■
いい人だなどとは、冗談でも思えない。
意味が違う。■■
【ブラッド】
「余所者の女というのに興味がある……」■■
「……楽しませてくれ」■■
「最低……」■■
【ブラッド】
「君の……前の男と同じように?」■■
「あの人は、そんな人じゃなかったわ」■■
前の男。
嫌な言い方をするなあと思う。■■
彼との間柄はもっと可愛らしいもので、感情の伴う、ちゃんとした恋だった。■■
【ブラッド】
「いい奴だった、か?」■■
嘲笑するような調子に、むっとなる。■■
触れてくる手にもむかむかする。
力では絶対にかなわない。■■
「性格は悪くなかった」■■
【ブラッド】
「ふうん?
同じ顔をした、性格のいい奴か……」■■
「別世界のこととはいえ、ぞっとしないな」■■
私だって同じだ。■■
この顔、この声、この体。
再び間近で感じるとは思わなかった戦慄。■■
【ブラッド】
「……そんなに似ているのか?」■■
「瓜二つよ。
嫌がらせみたいにね」■■
「でも、勘違いしないでよ。
彼は、あなたみたいに下衆じゃなかった」■■
「……まったく違うわ」■■
【ブラッド】
「やり方も違うのか、比べてみろよ」■■
面白そうに、けだるそうに。
こんなときまで、ブラッドはうざったそうにしている。■■
面倒なら何もしなければいい。
そうすれば、面倒ごとなどこれ以上起こりようがないのだ。■■
「……あんた、本当に最低ね」■■
私も、だ。
詰りながら、危機感も嫌悪感もわいてこないのはどうかと思う。■■
【ブラッド】
「冷静だな、お嬢さん」■■
ブラッドは、私の目の中の冷めた部分を見抜いたらしい。
ますます面白そうに、覗き込んでくる。■■
「まったく気分が乗らないだけ」■■
ふいっと視線を逸らした。■■
こんなに苛つく男を前にして、どうして冷静でいられるのか分からない。
似ているせいというだけではないだろう。■■
ブラッドには、何をしても許されてしまうようなところがある。
上に立つものの特権というやつか、彼は非常に我侭で気ままだ。■■
【ブラッド】
「ふ……」■■
手を置いた胸に、爪をたてる。■■
ブラッドは、怒るどころか嬉しそうに微笑む。
けだるそうな表情は変わらず、眉もしかめない。■■
【ブラッド】
「煽り方がうまいね……」■■
「そういう態度をとられると、いやでも乱してやりたくなるよ」■■
「この……、××××っ」■■
【ブラッド】
「淑女がそんなことを言ってはいけないよ」■■
穏やかに諌める男が信じられない。■■
「注意する権利のある紳士なら、こんなことはしないわよ!」■■
【ブラッド】
「では、お似合いということかな。
私は紳士じゃないし、君も淑女じゃない」■■
「なんの遠慮もいらないというわけだ」■■
「あんたなんて……、百万回くらい死ねばいいのに」■■
こういうとき、いい悪口がみつからない。
恋をしていた人と同じ顔を詰れない。■■
かつて好きだったその顔が、今は憎たらしくて仕方ない。■■
それでも、好きな顔だ。
顔の造形自体が嫌えない。■■
溜め息が出る。
やや熱くなってしまうのは隠せなかった。■■
【ブラッド】
「ははっ。
殺せるものなら殺してもいいぞ」■■
「……嫌よ。
無駄なことはしない」■■
「あなたっていろんな人からそう思われていそうだもの」■■
「私より、もっと実現できそうな人も多いでしょう。
その人達の成功を応援するわ」■■
【ブラッド】
「…………」■■
「余所者というのは、面白いものだな。
私はいい拾い物をした」■■
「ふふ……」■■
低く笑う声が耳をくすぐる。■■
(夢じゃなかったら許さないわよ、こんなこと……)■■
(こんなこと、現実でもここまでされたことない)■■
(…………)■■
(こんな夢、早く終わってしまえばいいのに……)■■
【【【時間経過】】】

深夜のお茶会2(ブラッド) へ進む