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ハートの国のアリス

『新装版ハートの国のアリス・豪華版 ■新装版・豪華版(後)』

本編(ペーター・エース・ナイトメア)

● 場面(ハートの城・アリスの部屋)
【【【演出】】】・・・わさわさと体を揺する音
【ペーター】
「アリスっ、アリスー!!お願いです、目を覚ましてください~っ!!」■■
【【【演出】】】・・・わさわさと体を揺する音
【ペーター】
「アリス!ア~リ~ス~っ!」■■
【エース】
「ペーターさん、駄目だよ、そんなに激しく揺すっちゃ。起こさなくていいんだって……。眠っているのは鎮痛剤の副作用で眠くなるからだって、お医者さんも言っていただろ?」■■
【ペーター】
「ええ、聞いていましたよ。ですが、僕はアリスが心配で不憫で可哀想で……っ。ああ、今すぐ目覚めたあなたにキスをして慰めてあげたい!!」■■
【エース】
「駄目だって。怪我をしたときのショックもあるだろうし、ゆっくり眠らせてあげたほうがいいよ」■■
【【【演出】】】・・・にゅっと出てくるような効果音
【ナイトメア】
「その通りだ。今は眠らせてやってくれ」■■
【【【演出】】】・・・がたっと椅子から立ち上がる音
【【【演出】】】・・・椅子が床に倒れる音
【ペーター】
「な……っ!?」■■
【エース】
「おっと……夢魔さん!?なんてところから出て来るんだ!?」■■
【ナイトメア】
「椅子を蹴倒して驚くほどのことではないだろう。化け物が出たわけじゃあるまいし」■■
【ペーター】
「いや、普通驚くでしょう!?いきなり、寝ているアリスの布団から、あなたの頭だけ出てきたら!!」■■
【エース】
「同感だ。アリスのお腹から生えたみたい見える……。化け物と変わらないぜ、夢魔さん?」■■
【ナイトメア】
「失敬な。彼女の夢の中から姿を見せているんだよ。しかし私はその国の住人ではないから、これが限界なんだ。確かに彼女のお腹の位置から頭が生えるのはシュールな絵づらだろうが、我慢してくれ」■■
【ペーター】
「我慢してくれと言われても……。アリスのお腹から芋虫って……不吉すぎます!化け物というか……どこぞのクリーチャーそのものじゃありませんか!」■■
【ナイトメア】
「芋虫じゃない。蓑虫と呼んでくれないか」■■
【ペーター】
「【強調】どっちもどっちです。【強調】突っ込みどころはそこではないでしょうに……いえ、いいです。今は目を瞑りましょう。あなた、今夢の中で彼女と一緒にいるんですね?」■■
【ナイトメア】
「いや、先刻まで一緒にいたが、今はもう休ませたよ。私と一緒では精神が休めないからね」■■
【エース】
「つまり、夢魔さんも遠慮するくらい、参っているっていうこと?」■■
【ナイトメア】
「そのようだ。それは怖かっただろう……、貯蔵庫で脚立に乗って荷物を取ろうとしていたら、いきなり傍の通気口から鶏が飛び出してきてぶつかり、脚立ごと転倒したところに、振動で棚の上からたらいと口にするのも恐ろしいような拷問道具が落ちてきたんだぞ?」■■
【エース】
「ええっ!?アリスが怪我をしたのって、それが原因なのか!?通気口から鶏が……」■■
【ペーター】
「そ、それは本当なんですか、ナイトメア!?棚の上から拷問道具が……」■■
【ナイトメア】
「ん?ああ、そうだ。なんだ、君達は知らなかったのか?」■■
【ペーター】
「僕達は、アリスが転倒して気を失っているのに気付いた兵士に呼ばれたんです。貯蔵庫は使用人が片付けて、アリスも兵士がここに運び込んだ後でした」■■
【エース】
「アリスが治療を受けている間は部屋の外で待っていたし、そこからずっと彼女は寝ているしね。だから具体的な原因は知らなかったんだよ」■■
【ナイトメア】
「なるほどね。あれだけの目に遭っておきながら、捻挫だけですんでいるのは奇跡的だよ」■■
【ペーター】
「本当ですね……。ああ、アリス!!すみません!!」■■
【【【演出】】】・・・がばっと寝ているアリスに抱きつく音
【エース】
「ペーターさん、だから抱きついちゃ駄目だって。彼女が起きちゃうよ」■■
【【【演出】】】・・・パシッと手を打つ音
【ペーター】
「僕に触らないでください!ああ、アリス、アリス……っ。僕のせいであなたが怪我をしてしまうなんて……っ」■■
【エース】
「ん?ペーターさんのせいって、どういうこと?」■■
【ペーター】
「貯蔵庫に拷問道具をしまっていたのは僕なんです。いつかあなたや陛下を屠ったときに使おうかな、と思いまして」■■
【エース】
「ええっ、そうだったのか!……って、さり気なく酷いことを言うなあ、ははは」■■
【ナイトメア】
「いや、さり気なくなく酷いと思うぞ。私もアリスの記憶から読み取ったが……、白ウサギ、××××はないよ、××××は」■■
【ペーター】
「え、どうしてですか?素敵でしょう?ああでも、あれが頭の上から降ってきたらどきっとしますよね……」■■
【エース】
「『どきっ』じゃすまないって。でもそっか……、ペーターさんが白状したんなら、俺も白状しよう」■■
【ペーター】
「……ん?どういうことです???」■■
【エース】
「実は……、通気口から出てきた鶏っていうのは、多分俺のせいだ。少し前にお腹が空いて、鳥小屋で飼育しているのを頂いたときに、絞めようとして逃がしちゃったんだよね」■■
【ペーター】
「な……んですって……!?」■■
【エース】
「追い掛けたら、なんか排気口みたいなところに入ってっちゃったから諦めたんだよな。けど、ちゃんと食べてあげるべきだった……。まさか、そんな災いを招くとは……。騎士っていうのは諦めちゃいけないものだよな」■■
【ペーター】
「騎士がどうのという以前の問題でしょう!?その鶏がいなければ、アリスが怪我をすることはなかったんじゃないですか!!」■■
【【【演出】】】・・・銃声
【エース】
「って、いきなり撃つなよ!彼女に当たったらどうするんだ!?」■■
【ペーター】
「僕がそんなミスをするはずないでしょう!」■■
【【【演出】】】・・・銃声
【【【演出】】】・・・銃声
【ナイトメア】
「銃弾が当たらなくても起きてしまうよ。やめるんだ白ウサギ、今は彼女を眠らせてやってくれと言っているだろう!」■■
【ペーター】
「ですが、この男のせいで……!」■■
【ナイトメア】
「切欠は鶏にしろ、彼女の心の傷になっているのは、その後の×××やら×××の道具にぶつかりそうになったことだ。どっちも同罪だよ」■■
【ペーター】
「う……っ!」■■
【エース】
「そうだな、夢魔さんの言う通りだ。悔やまれるぜ……、他にも何羽か確保していたから、いいやと思っちゃったんだ。飛べないくせに排気口を駆けあがれるような元気な奴なら、何が何でも捕まえて食べておくべきだった……」■■
【【【演出】】】・・・銃の撃鉄を上げる音
【ペーター】
「問題点がずれていません?」■■
【エース】
「ん?はは、冗談だよ、冗談。そんな怖い顔で銃口を向けないでよ、ペーターさん」■■
【ナイトメア】
「はあ……、問題点ならずれまくりだぞ。アリスが気にしていることも、別にある」■■
【ペーター】
「アリスが気にしていること?なんですか?」■■
【ナイトメア】
「分からないか?彼女は左足を捻挫してしまったんだ。これでは……ダンスが踊れない」■■
【ペーター】
「は……っ!」■■
【エース】
「あ……っ」■■
【ナイトメア】
「やっと気づいたか。そちらではもうすぐ舞踏会が開催されるんだろう?そもそも彼女が貯蔵庫になんて行っていたのも、舞踏会の準備に追われるキングを手伝っていたらしい」■■
【エース】
「王様の手伝い?そうだったのか……」■■
【ペーター】
「ああ、そう言えば、王が全部自分がしょい込むことになって大変だ、とか彼女に泣きついていたのを見ましたね。手伝ってあげていたんですか……、なんと優しい……、ああアリス!」■■
【エース】
「でも舞踏会の話をしたとき、彼女はあまり乗り気じゃなかったみたいだけどな。そういう堅苦しいのは苦手だって言っていなかったっけ?」■■
【ペーター】
「そうですね。僕がダンスの相手を申し込んだときも、柄じゃないから踊りたくないって言っていました。いえ、照れていたのもあるんでしょうけど」■■
【ナイトメア】
「キングを手伝っている間に、多少は気も変わってきたんじゃないか?それに、どのみち参加するならダンスの機会は間違いなくあるだろうからね。開催が迫れば、その気にもなってくるさ」■■
【ペーター】
「アリス……!あんなことを言いながらも、もうちゃんと僕と踊る気になってくれていたんですね……!」■■
【ナイトメア】
「いや、おまえだとは言っていないんだが……」■■
【エース】
「そうだったのか……!舞踏会が乗り気じゃないポーズなんて、俺に対する焦らしプレイだったんだな。ごめんよアリス、俺、気付いてあげられてなかった……!」■■
【ナイトメア】
「いや、そうとも断定はしていないんだが……」■■
【ペーター】
「彼女の怪我の具合はどうなんですか、そこのメイド?
【【【演出】】】・・・こしょこしょと囁く効果音
【ペーター】
「……何?それでは、舞踏会までに治るかどうか微妙ですね……」■■
【エース】
「けっこう酷いんだな。ここの時間は滅茶苦茶だし、治るかもしれないけど、治らない可能性のほうが高そうだ」■■
【ペーター】
「可哀想なアリス……。いえ、哀れんでいても仕方がありません。どうにかして、彼女の怪我を治してあげたい!」■■
【エース】
「同感だぜ、ペーターさん。そもそも彼女が怪我をしたのは、俺達の責任でもある。ここは、手を組むべき場面だな」■■
【ペーター】
「あなたと協力するなんて普段なら死んでも御免なんですが、背に腹は代えられませんね。……ナイトメア」■■
【ナイトメア】
「ん?何かな?」■■
【ペーター】
「あなた、何か彼女の怪我を確実に治せるようないい手を知りませんか?あなたも彼女とは夢の中で親しくしているんでしょう?協力してくださいよ」■■
【ナイトメア】
「構わないよ。私にできることはあまりないが、知識の面でなら手助けはできるだろう」■■
【ペーター】
「ありがとうございます。では、さっそく……」■■
【【【時間経過】】】
【【【演出】】】・・・山道を歩く二人の足音
● 場面(どこかの山道)
【ペーター】
「頂上はまだですか……?いいかげん足が疲れてきました……」■■
【エース】
「ははっ、しっかりしろよ、ペーターさん。この程度の山道で疲れるなんて鍛錬が足りていないぜ?」■■
【ペーター】
「……楽しそうですね、あなた。遊んでいるんじゃないんですよ?僕達はひと塗りすればどんな怪我にも効くという幻の薬草を探すために、ここに来ているんですからね?」■■
【エース】
「分かっている分かっている。ロールプレイングゲームでは定番の展開だよな。そんな薬草がこの国にもあるとは初耳だったけど」■■
【【【演出】】】・・・にゅっと出てくるような効果音
【ナイトメア】
「なんだ、私の話が信じられないのか?」■■
【エース】
「うわ!夢魔さん、頼むからその登場はやめてくれよ~。自分の腹から夢魔さんの頭が生えてくるなんて、反射的に殺意がわいちゃって困るんだ……」■■
【【【演出】】】・・・すらっと剣を抜く音
【ナイトメア】
「剣を抜くな剣を抜くな!仕方がないだろう、同行するためには誰かの夢の中にいるしかないんだから」■■
【エース】
「俺は起きているのに……」■■
【ナイトメア】
「目覚めていても、夢の意識世界というのは片隅にあるんだよ。先刻もそう説明しただろう」■■
【エース】
「そうだったっけ?じゃあ、ペーターさんの意識世界にしなよ。今からでも移れない?」■■
【ペーター】
「やめてくださいよ、僕だってお腹からナイトメアが頭を出したら即撃ちます。そっちにしておいてください。あなた、じゃんけんで負けたんですから」■■
【エース】
「ぐぐ……っ。俺ってついていない……。剣で勝負だったら負けていないんだけどな」■■
【ナイトメア】
「二人して私を押し付け合って……酷い、酷い!そんなに邪魔者扱いするなら、もう協力してやらないぞ?」■■
【【【演出】】】・・・ナイトメアが引っ込もうとする音
【【【演出】】】・・・ぐいっとナイトメアの髪の毛を引っ張る音
【ペーター】
「あー、すみませんでした!いじけないでください、ナイトメア」■■
【ナイトメア】
「いたたたたっ!か、髪を引っ張るな!痛い、痛い!」■■
【ペーター】
「ああ、失礼。でも、帰らないでくださいよ。幻の薬草の外見を知っているのはあなただけなんですから」■■
【エース】
「そうだよ夢魔さん、君が頼りなんだ。よろしく頼む」■■
【ナイトメア】
「……分かっているよ。とにかく、頑張って頂上を目指してくれ。その薬草は、山頂の崖にしか咲かないんだ」■■
【エース】
「またベタベタな設定だな……。まあいいや、とにかく、歩こう」■■
【ペーター】
「そうですね。早く山頂に着かなくては」■■
【【【演出】】】・・・山道を歩く二人の足音
【【【時間経過】】】
● 場面(どこかの山頂・切り立った崖)
【【【演出】】】・・・ひょおおっと風の吹く音(谷風)
【【【演出】】】・・・ざっと、立ち止まる足音
【エース】
「着いたな」■■
【ペーター】
「ええ、山頂です」■■
【【【演出】】】・・・にゅっと出てくるような効果音
【ナイトメア】
「お疲れ様。ああ、たしかに山頂だな。また険しい崖だね」■■
【【【演出】】】・・・カチャッと剣を握る音
【エース】
「う……。やっぱり反射的に手が……、殺意が……」■■
【ナイトメア】
「剣を抜くなよ?それよりも、崖を降りてくれ」■■
【ペーター】
「エース君、よろしくお願いします」■■
【エース】
「えっ?俺!?」■■
【ペーター】
「当然でしょう?ナイトメアを体に宿しているのはあなたなんですから」■■
【エース】
「その言い方はやめてくれよ。俺がクリーチャーに浸食されてるみたいじゃないか。ああ、もう内臓を食い荒らされてそうだ」■■
【ナイトメア】
「ぶっ!!!げほげほ、ごほ……っ!私を化け物扱いするなと言うのに!気色の悪いことを言うから、むせてしまったではないか!」■■
【エース】
「一番気色悪い思いをしているのは俺だよ。ああどうしよう、斬っちゃいそうだ……、手が勝手に……」■■
【【【演出】】】・・・すらっと剣を抜く音
【【【演出】】】・・・カチャッと剣を構える音
【ナイトメア】
「だからやめろというのに!」■■
【エース】
「この至近距離で夢魔さんの頭だけ斬れるかな。いや、上からざくっと突き刺しちゃえばいいか」■■
【【【演出】】】・・・カチャッと剣を動かす音
【ナイトメア】
「……っ!?冗談じゃない、そんなことをされるのなら私は帰るぞ、帰っちゃうぞ!?」■■
【【【演出】】】・・・ピュッと引っ込むような効果音
【エース】
「あ!?俺の中に戻った!?うーん、こうなったら自分の腹に剣を突き刺すしかないのか?」■■
【ペーター】
「エース君!あなただけの体じゃないんです、もっと自分を大事にしてください」■■
【エース】
「あはは、なんでかなあ。真っ先にペーターさんを斬りたくなってきたぜ……、クリーチャーに浸食されてるより身ごもるほうが更に気色悪いだろ……」■■
【ペーター】
「ナイトメア、あなたもまだ帰ってはいないんでしょう?ちゃんと出てきてくださいよ」■■
【【【演出】】】・・・にゅっと出てくるような効果音
【ナイトメア】
「……私を斬ろうとしないな?」■■
【エース】
「……分かったよ、しない。斬らないよ」■■
【【【演出】】】・・・剣を鞘に納める音
【ナイトメア】
「それならいい。さあ、さっさと目的を達成してしまおう。私だって、いつまでもこんな不安定な状態は嫌なんだ」■■
【エース】
「幻の薬草……。本当にこの崖を降りればあるのか?」■■
【ナイトメア】
「ああ。ハートの国なら、間違いなくここに咲いているはずだ」■■
【エース】
「ふう……、仕方がない、行くか。ペーターさん、色々と準備して来てくれているんだろ?」■■
【ペーター】
「え?色々というほどじゃないんですけど……まあ、それなりに」■■
【【【演出】】】・・・どさっと鞄を地面に置く音
【【【演出】】】・・・ガサガサと鞄を開ける音
【【【演出】】】・・・しゅるっとロープを出す音
【ペーター】
「まずは、エース君の体に括り付ける迷子紐……じゃなかった、命綱のロープ」■■
【ナイトメア】
「ああ、何はともあれまずそれが必要だな」■■
【ペーター】
「あとは、ハーケンにピッケルに……」■■
【【【演出】】】・・・ガチャガチャと地面に岩登り用品を置いていく音
【ペーター】
「この辺りは、エース君ならその大剣一本でどうにかなりそうですけど、一応。それと採取した薬草を入れる瓶。以上ですね」■■
【エース】
「ありがとう、ペーターさん。最初から俺にやらせるつもりだったっていうのがよく分かったよ」■■
【ペーター】
「え?嫌だなあ、何の話です?」■■
【エース】
「はあ……、まあいいよ、どうせ誰かがいかなくちゃ駄目なんだ。アリスのためならこんなこと、何でもないさ」■■
【【【演出】】】・・・しゅるっとロープを取る音
【エース】
「それに、いつもの旅でだって、これくらいのところを移動することはたまにあるしね。ペーターさんの言う通り、このロープと剣があれば充分だ」■■
【ナイトメア】
「こんなことが、たまにという頻度であるのか……。相変わらず壮大な旅をしているね」■■
【エース】
「お陰様で。俺の旅はいつだって壮大で楽しいぜ」■■
【【【演出】】】・・・ロープを自分の腰に結ぶ音
【エース】
「よしっと……、命綱はこんな感じでいいかな。ペーターさん、反対側、そっちの木に結んでよ」■■
【ペーター】
「人使いが荒いですね。……まあいいでしょう」■■
【【【演出】】】・・・しゅるるっとロープが伸びる音
【【【演出】】】・・・木の幹にロープをくくる音
【ペーター】
「ん……っ、よいせっ、と。こんな具合ですかね」■■
【【【演出】】】・・・ぎゅ、ぎゅっとロープを引っ張ってみる音
【ナイトメア】
「いいんじゃないか。では行くか」■■
【ペーター】
「よろしく頼みますよ、エース君」■■
【エース】
「分かっているって。ちゃっちゃと見付けてくるよ」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(山頂・崖の間近)
【【【演出】】】・・・ひょおおっと谷に吹く風の音
【【【演出】】】・・・ガキンガキンと岩肌に剣を突き刺す音(少し遠く、響いている)
【【【演出】】】・・・ざっざっと岩肌を降りていく音(少し遠く、響いている)
【ペーター】
「エース君、どうですかーー!?」■■
★少し遠くからの声ここから(エコーもかける)↓
【エース】
「俺の足場は問題ないよー!問題は、夢魔さんがちゃんと見付けてくれるかどうかだー!」■■
★少し遠くからの声ここまで(エコーもかける)↑
【ペーター】
「見付けてくださいよ、ナイトメア?ここまで来てなかったなんて、許しませんからねー?」■■
★少し遠くからの声ここから(エコーもかける)↓
【ナイトメア】
「がくがくがく……。た、谷風が寒い……。気分が悪くなってきた……、ごほごほおっ、がほん」■■
【エース】
「ちょっと夢魔さん、吐血しないでくれよ?俺の腹から生えてるんだから、確実に俺にかかるじゃないか。さすがの俺も今は両手がふさがってて、どうしようもないぜ」■■
【ナイトメア】
「いいじゃないか、元から赤い服なんだし大目に見てくれ……げふんげふんっ」■■
【エース】
「わわわわっ!?」■■
★少し遠くからの声ここまで(エコーもかける)↑
【【【演出】】】・・・ひょおおっと谷に吹く風の音
【ペーター】
「……大丈夫なんですかね……。そこはかとなく不安が……」■■
【【【時間経過】】】
【【【演出】】】・・・ガキンガキンと岩肌に剣を突き刺す音(少し遠く、響いている)
【【【演出】】】・・・ざっざっと岩肌を降りていく音(少し遠く、響いている)
★少し遠くからの声ここから(エコーもかける)↓
【ナイトメア】
「そっちの辺りを見てみてくれないか。いかにも咲いていそうだ……ごほっ」■■
【エース】
「こっちだな?よし、ちょっと待っててくれ……」■■
【ナイトメア】
「おいっ、どうしてそっちに行くんだ!?真逆だ、真逆!」■■
【エース】
「え?あれ、ごめんごめん。こっちか……」■■
★少し遠くからの声ここまで(エコーもかける)↑
【【【演出】】】・・・ガキンガキンと岩肌に剣を突き刺す音(少し遠く、響いている)
【【【演出】】】・・・ざっざっと岩肌を降りていく音(少し遠く、響いている)
【ペーター】
「はあ……。やっぱりエース君に任せたのは失敗だったか……」■■
★少し遠くからの声ここから(エコーもかける)↓
【エース】
「ん?何か生えているな……」■■
【ナイトメア】
「どれだ?……ああ、やはり予想通りだった!それだよ、それ!」■■
【エース】
「本当か?やった!!」■■
★少し遠くからの声ここまで(エコーもかける)↑
【ペーター】
「見付かったんですかーっ!?」■■
★少し遠くからの声ここから(エコーもかける)↓
【エース】
「ああ、見付けたよ、ペーターさん!いっぱい生えてる!」■■
★少し遠くからの声ここまで(エコーもかける)↑
【ペーター】
「よかった!これでアリスの怪我も、舞踏会までに治りますね……!!」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(ハートの城・アリスの部屋)
【エース】
「まだ眠っているんだな、アリス」■■
【ナイトメア】
「医者に処方されたほうの薬が効いているんだ。だが、そんなものよりその薬草を煎じたものを塗れば、捻挫なんてあっという間に治るよ」■■
【ペーター】
「あなたはまたアリスのお腹から生えているんですね……。ああいや、今更やめておきましょう。
……これですね。あなたに言われた通り使用人に作らせましたから、大丈夫だと思いますけど」■■
【【【演出】】】・・・薬の入った器を持ち上げる音
【エース】
「よし、じゃあさっそく塗っちゃおうぜ、ペーターさん」■■
【ペーター】
「そうですね。これを彼女の足首に塗れば……」■■
【エース】
「足首に……、おお」■■
【【【演出】】】・・・カチャッと銃を突きつける音
【ペーター】
「今、よからぬことを考えませんでした、エース君?」■■
【エース】
「まさか。そんなわけないだろ?銃を下ろしてよ、ペーターさん」■■
【ペーター】
「怪しいものだ。あなたは部屋を出てください、僕が一人で塗ります」■■
【エース】
「ええっ、なんでだよ!?ペーターさんこそ何をするか分かったものじゃない、俺がやるよ」■■
【ペーター】
「とんでもない、あなたのような卑猥騎士には任せられません!僕が……っ」■■
【エース】
「酷いな、同僚を信頼してくれよ。大体、苦労してその薬草を採って来たのは俺だぜ?」■■
【ペーター】
「何を偉そうに。元はといえば、あなたが逃がした鶏のせいでこうなったんでしょう!?」■■
【ナイトメア】
「おいおい。喧嘩はよさないか、二人共。せっかくここまでは、珍しく二人で協力してきたんだろう?……彼女のために」■■
【ペーター】
「う……っ」■■
【エース】
「む……」■■
【ナイトメア】
「協力すればどうだ、最後まで?」■■
【ペーター】
「…………。はあ……、分かりました」■■
【エース】
「夢魔さんの言う通りだな。じゃあ、二人でやろうか、ペーターさん」■■
【ペーター】
「そうですね。二人で塗ってあげましょう」■■
【【【演出】】】・・・ばさ、と布団をめくる音
【【【演出】】】・・・布の擦れる音(足を出している)
【ペーター】
「まだかなり腫れているようですね。包帯の上からでも分かりますよ」■■
【【【演出】】】・・・しゅるる、と包帯を解く音
【エース】
「うわ、本当だ。相当痛そうだな、これは」■■
【ナイトメア】
「心配ない。この薬草があればたちどころに回復する」■■
【ペーター】
「……信じましょう。では、これを……」■■
【【【演出】】】・・・ちゃぷ、と煎じた薬に指を浸す音
【【【演出】】】・・・薬を塗り込んでいる音
【エース】
「これくらい塗ればいいかな?」■■
【ペーター】
「いいんじゃないですか?」■■
【ナイトメア】
「ああ、それでいい。2時間帯もすれば、もう治っているはずだよ」■■
【ペーター】
「分かりました」■■
【【【演出】】】・・・薬の容器を台に置く音
【【【演出】】】・・・ぱさ、と布団を掛け直す音
【ペーター】
「終わりましたよ、アリス。これですぐによくなりますからね。ちゃんと、僕とダンスを踊れますよ」■■
【エース】
「いや、悪いけどそこは譲れないよ、ペーターさん。
君と踊るのは俺だよな、アリス?誘うのは出遅れちゃったみたいだけど、君が眼覚めたら真っ先に、俺とダンスを踊ってくれって申し込むよ」■■
【ペーター】
「ふん……、まあ、誘いたいなら誘えばいいです。どうせ断られますからね。アリスは僕の仕立てたドレスを着て、僕と踊るんですよ」■■
【エース】
「あの、呪いのドレス……。よせよ、ペーターさん、病み上がりのアリスの血圧が上がる……」■■
【ペーター】
「上がるとしても、喜びのあまりに、でしょう……!」■■
【ナイトメア】
「ふふふ……。さて、どうなるかな。私も顛末が気になってきたよ。この方法で、舞踏会でも彼女の中にいようか」■■
【ペーター】&【エース】(ハモり)
「それは却下です。
それは却下だ」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(ハートの城・舞踏会会場)
【【【演出】】】・・・舞踏会の音楽
【【【演出】】】・・・賑やかな人のざわめき
【ペーター】
「薬草が効いてアリスの足も回復。舞踏会も無事に開催となって、問題なしですね」■■
【エース】
「ああ。夢魔さんを疑っていたわけじゃないけど、本当によかった。でも、当のアリスが見当たらないっていうのはどうしてなんだろうな」■■
【ペーター】
「あなた、結局彼女にダンスを申し込んだんでしたっけ?あなたが鬱陶しくて、どこかに隠れちゃったんじゃないですか?」■■
【エース】
「それを言うならペーターさんだろ?誘ったけど、嫌な顔はされていないよ。返事はまだ聞いていないけどね」■■
【ペーター】
「む……、あなたも返事を貰っていないんですか……」■■
【エース】
「ペーターさんは、あのドレス受け取ってもらえなかったんだよな?その時点で、ペーターさんには望みが薄いと思うんだけど?」■■
【ペーター】
「にやにやしないでください。彼女は照れ屋さんなんですよ。お手製のドレスは少し目立ってしまうのが恥ずかしかっただけです」■■
【エース】
「どうだかね~……」■■
【【【演出】】】・・・わあっと賑やかな人のどよめき
【ペーター】
「ん?何だかあっちのほうが賑やかですね。何かあったんでしょうか」■■
【エース】
「あっちには今、陛下がいるはずだぜ。また何かしでかしたんじゃないか、あの派手好きの女王様のことだから……って、ええっ!?」■■
【【【演出】】】・・・歓声
【【【演出】】】・・・ダンスの音楽、少し大きく
【ペーター】
「アリス……!ど、どうして陛下とダンスを……!?」■■
【エース】
「やられた……。まさか陛下に出し抜かれるとは……!」■■
【ペーター】
「僕としたことが迂闊でした。お手製ドレスとアリスの怪我で頭がいっぱいになって、あの女のことを忘れてしまうなんて……!開催までに謀略を凝らし、始末しておくべきだった!!」■■
【【【演出】】】・・・にゅっと生えるような音
【ナイトメア】
「ははははっ。なかなか面白い顛末になったようだ」■■
【エース】
「わわっ!?夢魔さん、いつの間に俺の中にいたんだ!?」■■
【ナイトメア】
「やはり興味があったものでね。ふふ、来てみてよかったよ。実に愉快だ」■■
【ペーター】
「どこが愉快なんですか!あそこまでして彼女の怪我を治したっていうのに、いいところをあのクソババアに持っていかれちゃったんですよ!」■■
【エース】
「いや……、あそこまでしたっていうのは俺だろ」■■
【ナイトメア】
「いいじゃないか。ほら、彼女も楽しそうだ。あの笑顔は、君達の努力がなければ見られなかったよ」■■
【エース】
「むむ……」■■
【ペーター】
「ぐぐ……っ」■■
【ナイトメア】
「こうなれば、協力したついでに、三人で酒盛りでもするか?」■■
【ペーター】&【エース】(ハモり)
「遠慮します。
遠慮するよ」■■
【ナイトメア】
「はは。なんだかんだと息があってるじゃないか。なんにしても、終わりよければすべてよし、だ」■■
【【【演出】】】・・・賑やかなざわめき
【【【演出】】】・・・舞踏会の音楽



END