TOP>New Novel> 「 ハートの国のアリス 」> 新装版ハートの国のアリス・予約特典 ■新装版・予約特典(後)

ハートの国のアリス

『新装版ハートの国のアリス・予約特典 ■新装版・予約特典(後)』

本編(ゴーランド・ボリス・ブラッド)

● 場面(遊園地・園内)
【【【演出】】】・・・賑やかな遊園地の音楽
【ブラッド】
「……すまない、もう一度聞いていいか?今、何と言った?」■■
【ゴーランド】
「はあっ?ちゃんと聞いてなかったのかよ?……何度も言わせるな、【強調】宝探しゲーム【強調】だ」■■
【ブラッド】
「……邪魔をした。帰らせてもらう」■■
【【【演出】】】・・・カツカツと歩き去ろうとする足音
【【【演出】】】・・・たたたっと追い掛ける足音
【【【演出】】】・・・はしっと服の裾を掴む音
【ゴーランド】
「こらこらこら、待てって!詳細を聞く前に帰ろうとするなよ!」■■
【ブラッド】
「詳細など聞く必要もないだろう……。ええい、服の裾を掴むな!放せ、ゴーランド!」■■
【ゴーランド】
「嫌だ、放さねえ!正々堂々と勝負しろよ、帽子屋!」■■
【ブラッド】
「子供か、おまえは。はあ……、果たし状で呼び付けたかと思えば、宝探しだと……?」■■
【ボリス】
「そう、宝探しだ。でも、ただの宝探しだと思って甘く見てもらっちゃ困るぜ?」■■
【ブラッド】
「別に甘くは見ていない。【強調】馬鹿らしいだけだ【強調】」■■
【ボリス】
「く……、相変わらずノリが悪いなあ、帽子屋さんは。ゲームで勝敗を決めるのは、この世界じゃ当たり前のルールだってのに」■■
【ゴーランド】
「だよな。それに分かってるだろ、帽子屋?果たし状に指定された通りにここに来た時点で、もうルールは破れないってこと」■■
【ブラッド】
「破ってはいけないと決められていても、破れないわけではないさ」■■
【ゴーランド】
「へえ……、ペナルティを負おうってのか?自分を掛けた勝負に尻尾巻いて逃げ出して、なおかつペナルティをくらったような奴のところに、アリスはやれないぜ?」■■
【ブラッド】
「……アリスは知っているのか、今夜の勝負のことを?」■■
【ボリス】
「自分が賭けられてるってことは知らないけど、遊園地を使って、あんたとゲームをするってことは知ってるよ」■■
【ゴーランド】
「俺は、かなり手強い罠を仕掛けたから、帽子屋には負けねえって言ったんだけどな。アリスの奴、『ブラッドなら出し抜く可能性も充分あるわよ』とか言ってたぜ」■■
【ブラッド】
「ほう……」■■
【ボリス】
「ねえ、アリスの期待を裏切っちゃうつもり、帽子屋さん?」■■
【ブラッド】
「……いつの間にか交渉がうまくなったじゃないか、おまえ達」■■
【ゴーランド】
「お、それじゃあ……!?」■■
【ブラッド】
「ああ……、茶番ついでだ。今回だけは、アリスに免じて付き合ってやろう。さっさとルールを説明してくれ。長引くと、苛立って銃を出してしまいそうだ」■■
【【【時間経過】】】
【ブラッド】
「……要するに、園内のアトラクションの随所に、宝箱を開けるための鍵が隠してある。鍵は本物がひとつ、残りはすべて偽物。本物の鍵を探し当て、また別の所に隠されている宝箱の鍵を開けた者の勝利、ということだな?」■■
【ゴーランド】
「そういうことだ。鍵も宝箱も、アトラクションの奥に隠してある。アトラクションで奥まで行かねえと見付からない、ってことだ」■■
【【【演出】】】・・・チャラッと鍵を揺らす音
【ボリス】
「ちなみにこれが鍵のサンプルだ。もちろんこれは偽物だけど、本物も見た目はまったく同じだよ」■■
【ブラッド】
「ルールは分かった。だが、どう考えても私が不利ではないか?こちらは一人、おまえ達は二人。いや、そもそも宝を用意したのも隠したのもおまえ達なんだ、不正のし放題だろう」■■
【ゴーランド】
「そこは信用してくれとしか言いようがねえな。宝も鍵も、隠すのは全部従業員にやらせた。俺達はどこにあるのか、まったく知らねえ」■■
【ブラッド】
「従業員から情報をリークされていないという保証は?」■■
【ボリス】
「ないよ。でも、そんなズルをする気があるなら、最初からここであんたをどうにかしてる。俺達、ゲームにはフェアなんだ。マフィアなんて小ずるい集団とは違うからね」■■
【ブラッド】
「ふ……、たしかにここで不正をしては、おまえ達も、対抗している私と同じ卑怯者に成り下がってしまうな」■■
【ゴーランド】
「そういうことだ。……その対抗意識をもって信用してくれ」■■
【ブラッド】
「ふふ、いいだろう。では、早速始めようか」■■
【ボリス】
「時間は無制限。誰かが宝箱を開けて、中の宝をゲットした時点でゲームセットだ。俺かおっさんが勝てば遊園地の勝ち、あんたが勝てば、あんたの勝ち」■■
【ゴーランド】
「んじゃ、行くぜ。ゲーム……スタート!!」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(遊園地・ホラーハウス内)
【【【演出】】】・・・お化け屋敷のおどろおどろしい音楽、または効果音
【【【演出】】】・・・かつーん、かつーんと響く足音
【ボリス】
「うは~、このホラーハウスも、不気味さが数段アップしてるな。一人きりで入ると、さすがの俺もちょっと背筋が寒いぜ……」■■
【【【演出】】】・・・かつーん、かつーんと響く足音
【【【演出】】】・・・茂みのようなものがガサガサっと揺れる音
【【【演出】】】・・・ゾンビの雄たけびか、獣のような声
【ボリス】
「うわあああっ!?」■■
【【【演出】】】・・・短く、走る足音
【ボリス】
「ちょ……、勘弁してくれって。なんであんなところから化けモンが出て来るんだよ!?」■■
【【【演出】】】・・・かつーん、かつーんと響く足音
【ボリス】
「ほとんどのアトラクションに、一斉に手を加えたから……、覚えていないのも、把握していないのも多いんだよな。これじゃ、部外者の帽子屋さんとも大して違わないぜ」■■
【【【演出】】】・・・かつーん、かつーんと響く足音
【ボリス】
「……鍵、ここにあんのかな。あるとしたら、一番奥か……」■■
【【【演出】】】・・・遠くから大きくなってくる、無数の羽音
【ボリス】
「……いっ!?にゃんだにゃんだ、今度はなに!?」■■
【【【演出】】】・・・更に大きくなる無数の羽音
【【【演出】】】・・・キーキーという、たくさんのコウモリの鳴き声
【ボリス】
「コウモリっ!?し、しかも本物かよ!?どうすんだ、こんなに大量に放し飼いしてっ!!?」■■
【【【演出】】】・・・更に大きくなる無数の羽音
【【【演出】】】・・・キーキーという、たくさんのコウモリの鳴き声
【【【演出】】】・・・走る足音
【ボリス】
「いててててっ。ぶつかるなっての、この……っ」■■
【【【演出】】】・・・カチャッと銃の撃鉄をあげる音
【【【演出】】】・・・ここから回想(エコー効果などで区別)↓
【ゴーランド】
「銃や武器での攻撃はご法度だ。アトラクションの中で使っても、対戦仲間に使っても、ルール違反だからな」■■
【【【演出】】】・・・ここまで回想(エコー効果などで区別)↑
【ボリス】
「……っと、注意を受けてたな。これは駄目だったか……」■■
【【【演出】】】・・・銃を下ろす音
【ボリス】
「……撃てもしないゲームなんて、つまらないな。けど、ただでさえこっちが有利で、不正も疑われて当然なんだから絶対にルールは守れって、おっさんがうるさいし……」■■
【【【演出】】】・・・かつーん、かつーんと響く足音
【ボリス】
「とりあえず奥まで行ってみるか。……へへ、ここ、今度またアリスと来よう。こんだけグレードアップしてたら、さすがのアリスも驚くよな。弾みで俺にくっついてくれるかも」■■
【【【演出】】】・・・かつーん、かつーんと響く足音がじょじょに小さくなる
● 場面(遊園地・ジェットコースター)
【【【演出】】】・・・ジェットコースターの走行音
【ゴーランド】
「おわわわわっ!こりゃすげえな、スピードが格段にアップしてるぞ~っ!?」■■
【【【演出】】】・・・ジェットコースターの走行音
【ゴーランド】
「おおーーーーっ。いいねえ、この浮遊感!!」■■
【【【演出】】】・・・ジェットコースターの走行音
【ゴーランド】
「く~~~っ、爽快!!……って、いやいや、ただ乗って遊んでる場合じゃなかったな。鍵を探さねえと……」■■
【【【演出】】】・・・ジェットコースターの走行音
【ゴーランド】
「うちの従業員なら、歩いて回るような普通のアトラクションに隠すとは思えねえ。こういう、一見隠す場所なんかなさそうなヤツに隠すんじゃねえかと思って乗ってみたが……」■■
【【【演出】】】・・・ジェットコースターの走行音
【ゴーランド】
「しかし……、こんだけハードなジェットコースターだと、探してる余裕もねえぞ……っ。いやでも、次のトンネルに入ったときが怪しそうだ……っ」■■
【【【演出】】】・・・ジェットコースターの走行音がフェードアウト
● 場面(遊園地・スカイサイクルのアトラクション)
【【【演出】】】・・・キイキイとペダルをこぐ音
【ゴーランド】
「ほー、こりゃ案外いいな。自転車で空の旅、か。このアトラクションは様子を見に来る暇がなかったが、いい感じになってるじゃないか」■■
【【【演出】】】・・・キイキイとペダルをこぐ音
【ゴーランド】
「スカイサイクル自体は珍しいもんでもないが、下に見えるオブジェが今まで以上に凝ってる。本当に、いくつもの街の上を自転車で飛び回ってるみてえだ」■■
【【【演出】】】・・・汽笛の音
【【【演出】】】・・・カモメの鳴き声
【ゴーランド】
「おっ、今度は港町か。雰囲気が変わっていいねえ」■■
【【【演出】】】・・・キイキイとペダルをこぐ音
【ゴーランド】
「……って、何を楽しんでるんだ、俺はっ。完全に、自分の施設に対する自画自賛になっちまってる。ジェットコースターで見付けられなかったんだ、今度こそ鍵を見付けねえと……」■■
【【【演出】】】・・・キイキイとペダルをこぐ音
【ゴーランド】
「飛び降りられねえ高さじゃないし、下のオブジェの中なら隠し放題だ。今度は当たりの予感がするぜ、絶対にあるな!」■■
【【【演出】】】・・・キイキイとペダルをこぐ音
【ゴーランド】
「鍵を見付けて、宝箱を開けて……、必ず勝つぜ、アリス!絶対にあんたに、遊園地を見直させてみせる!」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(遊園地・園内)
【【【演出】】】・・・園内の賑やかな音楽
【【【演出】】】・・・カツカツと歩く足音
【ブラッド】
「……だるいな。何が楽しくて、一人で遊園地のアトラクションを巡らなくてはいけないんだ。やはり馬鹿馬鹿しい……」■■
【【【演出】】】・・・カツカツと歩く足音
【ブラッド】
「あれは何だ……、『妖精さんと一緒に夢の森探検』……?う……、まったく入る気にならん……。夢の中で会うのなど、芋虫だけで充分だろうに……」■■
【【【演出】】】・・・カツカツと歩く足音
【ブラッド】
「はあ……、何をやっているんだろうな、私は。ルールを破ることなど、その気になれば造作もない。ゲームに乗る必要は、必ずしもなかった。帰ってしまえばよかったものを……」■■
【【【演出】】】・・・カツカツと歩く足音
【ブラッド】
「そもそも、ああは言っていたが、ゴーランドが不正を働かない保証などない。2対1である時点でも、圧倒的にこちらが不利なゲームだというのに……」■■
【【【演出】】】・・・カツカツと歩く足音
【ブラッド】
「お嬢さんは、何も知らずにベッドの中、か……」■■
【【【演出】】】・・・ここから回想(前出の台詞。エコー効果などで区別)↓
【ゴーランド】
「俺は、かなり手強い罠を仕掛けたから、帽子屋には負けねえって言ったんだけどな。アリスの奴、『ブラッドなら出し抜く可能性も充分あるわよ』とか言ってたぜ」■■
【【【演出】】】・・・ここまで回想(前出の台詞。エコー効果などで区別)↑
【ブラッド】
「本当にあのお嬢さんがそんなことを言ったのか……?ふう……、やれやれ。私としたことが、柄にもなく……」■■
【【【演出】】】・・・カツカツと歩く足音
【ブラッド】
「君が掛かっているからには、手は抜けないな、アリス。今夜だけは、くだらない茶番も我慢しよう。私が勝った暁には、とびきり長いお茶会に付き合ってもらうぞ……」■■
【【【演出】】】・・・カツカツと歩いていて、立ち止まる足音
【ブラッド】
「っと、いつまでも選り好みはしていられない。目についたものに入ってみるか。これは何だ……?」■■
【【【演出】】】・・・アトラクションの賑やかな音楽
【ゴーランド・ガイダンス音声(ゴーランドの声を機械で加工したようなもの)】
「さあ、みんなおいで!これは、不思議の国の不思議な住人が繰り広げる、愉快な音楽会を楽しむアトラクションだよ!楽しくて、心が踊る音楽会!でも、最後には感動の嵐が待っているぞ!」■■
【ブラッド】
「なんだ、このふざけた声のガイダンスは。どこかで聞いたことのあるような声だな……」■■
【ゴーランド・ガイダンス音声(ゴーランドの声を機械で加工したようなもの)】
「さあ、僕が紡ぎ出す感動の旋律、涙なしでは聴けない名演奏を、ご堪能あれ!」■■
【【【演出】】】・・・ガイダンスの中で、ゴーランドの演奏が流れ出す
【ブラッド】
「うっ!?こ、これは……っ」■■
【【【演出】】】・・・ガイダンスの中で、ゴーランドの演奏が流れている
【ブラッド】
「……次を探そう。このアトラクションだけは、何があっても入るわけにはいかない……。遊園地の従業員も、まさかここには隠さないだろう。トラウマがあるはずだ……」■■
【【【演出】】】・・・ふらふらと歩き出す足音
● 場面(遊園地・園内)
【【【演出】】】・・・園内の賑やかな音楽
【【【演出】】】・・・近付いてくる複数の足音
【ゴーランド】
「よう、帽子屋、ボリス!かち合ったな!」■■
【ボリス】
「あ、おっさん。調子はどう?帽子屋さんも、鍵、何個か見付けられた?」■■
【ブラッド】
「お陰様で、幾つかはね。同時に、ここのオーナーの趣味がいかに悪いかも再認識させてもらっているよ……」■■
【ゴーランド】
「俺の趣味のどこが悪いってんだよ?んな妙ちきりんな帽子をかぶってる奴に言われたくねえな」■■
【ブラッド】
「いやいや、おまえのセンスのなさにはとても敵わない。この帽子は脱げないが、心境としては脱帽というところだ」■■
【ボリス】
「はは、うまいこと言うね、帽子屋さん。ていうか、趣味の悪さはどっちもどっちだと思うけどね~」■■
【ゴーランド】
「おまえにも言われたくねえっての!このピンク猫が!」■■
【ブラッド】
「同感だな。君の色彩は目に痛い……。お嬢さんが毒されてはないかと心配だ」■■
【ボリス】
「毒は毒でも、俺は美味しいからいいんだよ。アリスも喜んでくれてるぜ?」■■
【【【演出】】】・・・ふわり、とファーを揺らす音
「特に、このファーとか大好きだって言ってくれる。これを枕代わりにして、並んでお昼寝すんの、超気持ちいいんだ」■■
【ブラッド】
「ぐ……っ」■■
【ゴーランド】
「あっはは、どうしたんだよ、帽子屋。ボリスに言い負かされてるなんて、あんたらしくもないじゃねえか。アトラクションを回りすぎて、疲れてきたか?」■■
【ブラッド】
「当然だろう。こんな馬鹿げたゲーム、お嬢さんが掛かっていなければ、とうの昔に放棄している」■■
【ゴーランド】
「まあ、そうだろうな」■■
【ブラッド】
「……で、おまえ達も鍵は見付かっているのか?見分けは、たしかにつかなかった。できる限り多く集めたうえで宝箱に辿り着いた者が、最も有利というわけだ」■■
【ゴーランド】
「ああ。もちろん、俺も何個かは手に入れたぜ」■■
【ボリス】
「俺も。でも、まだまだ集める気だけどね」■■
【ゴーランド】
「俺もそのつもりだ。相応な数を隠してるからな。まだまだ、アトラクションのどこかにあるはずだ」■■
【ブラッド】
「では、私もそうしよう。負けるわけにはいかないからね」■■
【ゴーランド】
「それはこっちの台詞だ。まあ、せいぜい頑張ってくれ」■■
【ボリス】
「次は宝箱の前で会えるといいね。じゃあね!」■■
【【【演出】】】・・・それぞれ歩き去っていく足音
【【【演出】】】・・・一人で歩く足音
【ブラッド】
「さて、これで鍵は幾つになった……。1、2、3……12本か。そろそろ、宝箱のほうを重点的に探したほうがいいかもしれないな。しかし、もうけっこうな数のアトラクションを見てきたが、それらしいものはなかった……」■■
【【【演出】】】・・・一人で歩く足音
【ブラッド】
「まだ入っていないアトラクションを当たってみるか?だが、あの二人もそれなりに集めていたことを考えると、誰も調べていないアトラクションなど、もうほとんどないはず……」■■
【【【演出】】】・・・手の中でチャリチャリと幾つかの鍵を揺らす音
【ブラッド】
「この鍵……、宝箱の鍵というにしては、やや造りが大きいな……」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(遊園地・園内・アトラクション前)
【【【演出】】】・・・ざっ、と立ち止まる足音
【ブラッド】
「あった……、ここだな」■■
【【【演出】】】・・・カツカツカツ、と数歩歩く足音
【ブラッド】
「おかしなアトラクションだと思っていたんだ。呼び込みのアナウンスも流れず、他のアトラクションではほとんど開いている入口の扉も、閉ざされたまま……」■■
【【【演出】】】・・・ブラッドが触れ、カチ、と金属製の取っ手が動く音
【【【演出】】】・・・ドアを引くが、鍵がかかっていてギシギシいう音
【ブラッド】
「やはり鍵がかかっているな。……このアトラクションの名前は、なんというんだ……?」■■
【【【演出】】】・・・カツカツ、と数歩移動
【ブラッド】
「なに……、『眠り姫の部屋』?……ふふ、これは……」■■
【【【演出】】】・・・チャリ、と鍵を取り出す音
【【【演出】】】・・・鍵穴に差し込み、回してみる音(開かない)
【ブラッド】
「回らない……、この鍵は違うか。でも、大きさは合っているな」■■
【【【演出】】】・・・別の鍵を鍵穴に差し込み、回してみる音(開かない)
【ブラッド】
「これも違う……。だが、見付けたよ、お嬢さん。なかなか粋な計らいじゃないか……、ゴーランドが思い付くはずもなし、従業員の企みだろうが」■■
【【【演出】】】・・・鍵穴に差し込み、回してみる音(開かない)
【【【演出】】】・・・カチャカチャやる音がじょじょにフェードアウト
● 場面(遊園地・園内・通路)
【【【演出】】】・・・園内の賑やかな音楽
【【【演出】】】・・・園内にリンリンとベルの音が鳴り響く
【ゴーランド】
「この音は……っ!誰かが宝箱を見付けた合図じゃねえか!くそっ、先を越されたか……!!」■■
【【【演出】】】・・・遠くから近付いてくる走る足音
【ボリス】
「おい、おっさん!」■■
【ゴーランド】
「ボリス!?おまえがここにいるってことは、宝箱を見付けたのは……?」■■
【ボリス】
「ああ、帽子屋さんに先を越されちゃったみたいだ。俺はもうかなり鍵を見つけたし、行くぜ。あんたはどうする?」■■
【ゴーランド】
「俺も行こう。鍵は見切りをつけて、宝箱を探していたところだ」■■
【ボリス】
「そうか。じゃあ、急ごうぜ」■■
【ゴーランド】
「おう!」■■
【【【演出】】】・・・走り出す二人の足音
● 場面(遊園地・園内・静かなアトラクション前)
【【【演出】】】・・・鍵穴に差し込み、回してみる音(開かない)
【ブラッド】
「これも違うか……。残る鍵も減ってきたな……」■■
【【【演出】】】・・・ばたばたと近寄ってくる足音
【ブラッド】
「……ん?やれやれ、嗅ぎ付けてきたか」■■
【ゴーランド】
「帽子屋!何やってんだよ、それは宝箱じゃねえぞ?」■■
【ブラッド】
「いや、宝箱はこれだ。間違いない」■■
【ボリス】
「え。どういうこと?それは、今は閉鎖中のアトラクションだよ?」■■
【ブラッド】
「分かっている。『眠り姫の部屋、ただ今閉鎖中』とここに書いてあるからな」■■
【ゴーランド】
「じゃあ、んなとこで何をしてるんだよ?」■■
【ブラッド】
「分からないか?私達が今取り合っているのは、まさしく『眠り姫』だろう?」■■
【ボリス】
「眠り姫……、って、まさか!?」■■
【ブラッド】
「ふふ、恐らくそのまさかだろうな。彼女がどこまで状況を把握しているかは分からないが、従業員がこっそり手を回したんだろう」■■
【【【演出】】】・・・数歩駆け寄る足音
【【【演出】】】・・・ドアにバン、と掌をつく音
【ゴーランド】
「じゃあ、この中にアリスがいるってのか?」■■
【ボリス】
「あいつら……、宝箱も宝もちゃんと用意したってのに、すり替えたのか。相変わらずふざけた連中だな」■■
【ブラッド】
「粋な計らいじゃないか。これだけ苦労して探して来たんだ、ご褒美がガラクタひとつでは面白くもない」■■
【ゴーランド】
「ガラクタってな。ちゃんと、それなりのレアな品を用意してたんだぜ」■■
【ブラッド】
「ふん、私にはどんな希少品より、可愛らしい眠り姫のほうが魅力的だ。おまえ達もそうだろう?」■■
【ゴーランド】
「う。そ、それは、まあ……」■■
【【【演出】】】・・・鍵穴に差し込み、回してみる音(開かない)
【ブラッド】
「ふむ……。残念ながら、私の鍵はどれも外れだったようだ。最後のひとつが終わってしまった」■■
【ボリス】
「代わって!俺がやってみる」■■
【【【演出】】】・・・二人が入れ替わる足音
【【【演出】】】・・・鍵穴に差し込み、回してみる音(開かない)何回か繰り返す
【ボリス】
「……駄目だな。こっちは……」■■
【【【演出】】】・・・鍵穴に差し込み、回してみる音(開かない)何回か繰り返す
【【【演出】】】・・・カチャカチャやる音がじょじょにフェードアウト
【ボリス】
「くそっ、俺も全滅だった。こんなに、たくさん見付けたってのに」■■
【ゴーランド】
「俺に代われ、ボリス」■■
【ボリス】
「ん、ああ」■■
【【【演出】】】・・・二人が入れ替わる足音
【【【演出】】】・・・鍵穴に差し込み、回してみる音(開かない)何回か繰り返す
【ゴーランド】
「俺は、それほど数は見付けられなかったが、こういう中にこそ当たりがあるもんなんだよな」■■
【ブラッド】
「さて、そううまくいくかな」■■
【ゴーランド】
「へへっ、余裕ぶっていられるのも今のうちだぜ?俺がこの扉を開けることができたら……分かってるよな、帽子屋?」■■
【ブラッド】
「……ちっ」■■
【【【演出】】】・・・鍵穴に差し込み、回してみる音(開かない)何回か繰り返す
【ゴーランド】
「これは違ったか。一体どれなんだ、本物の鍵は……?」■■
【【【演出】】】・・・鍵穴に差し込み、回してみる音(開かない)何回か繰り返す
【【【演出】】】・・・カチャカチャやる音がじょじょにフェードアウト
【ゴーランド】
「……くそっ、なんでだよ!三人のを合わせりゃ、かなりの数の鍵が集まってたってのに!!」■■
【【【演出】】】・・・ゴーランドが複数の鍵を地面に投げ付ける音
【ブラッド】
「残念だったな、ゴーランド。本物はまだ、この遊園地のどこかにあるということか……」■■
【ボリス】
「俺はもう一度鍵を探しに行くぜ。予想外の展開だったけど、宝物がアリスだって分かったら、ますます負けるわけにはいかないよ!」■■
【ゴーランド】
「ああ、俺だって負ける気はねえさ!よし、俺も……っ」■■
【【【演出】】】・・・走り出そうとする二人の足音
【【【演出】】】・・・足音を遮るように、園内に大きな鐘の音が響く(リンゴーンという教会の鐘のような)
【ブラッド】
「……っ?この音はなんだ?」■■
【ゴーランド】
「いや、俺も分からねえ。誰かが宝箱を見付けたとき以外に、特に合図のようなのは手配してないんだが……」■■
【【【演出】】】・・・鳴り響く鐘の音
【ボリス】
「じゃあ何なんだ、この音?普段、こんなの鳴らすようなイベントって予定にないぜ?いや、予定にない展開って意味じゃ、このアトラクションもだけど……」■■
【【【演出】】】・・・カチャっ、と鍵が開く音
【ブラッド】
「ん……?」■■
【ボリス】
「……あっ!扉の鍵が……開いてるっ!?」■■
【ゴーランド】
「なに!?そんなはずが……っ」■■
【【【演出】】】・・・ドアの取っ手を掴んで回す音
【【【演出】】】・・・ぎぃぃっとドアが開く音
【ゴーランド】
「ひ、開いた……っ」■■
【ブラッド】
「鍵が自動的に解除されたんだな。この鐘の音と何か関係があるのか……」■■
【ボリス】
「なんで自動的に開いちゃうんだよ?お宝を隠したドアが勝手に開いちゃ、ゲームにならないじゃないか!?」■■
【ブラッド】
「そうは言っても、既に開いているんだ、どうしようもあるまい。
おまえ達、完全に従業員に出し抜かれているようだな。情けない……」■■
【ゴーランド】
「ぐ、ぐぬぬ……!」■■
【ブラッド】
「とりあえず、入ってみようじゃないか。この先に宝が眠っているのは、ほぼ間違いないんだ」■■
【【【演出】】】・・・ぎぃっとさらにドアを開く音
【【【演出】】】・・・かつーんと、響く足音
【ブラッド】
「薄暗い通路になっているな。さて、どこにいるんだ、眠り姫?」■■
【【【演出】】】・・・かつんかつん、と数歩中に進む足音
【ゴーランド】
「待て、帽子屋。俺も行く!」■■
【ボリス】
「俺も行くよ。やれやれ……、この先に進んだら、ちゃんと事情が分かるんだろうな?」■■
【【【演出】】】・・・三人で進んでいく足音
【ゴーランド】
「このアトラクション、こんな通路はなかったはずなんだが。従業員の奴ら、俺に黙って改装までしやがったか!」■■
【ブラッド】
「ではおまえも、この先に何があるのか分からないのか?」■■
【ゴーランド】
「ああ、分からねえ」■■
【ボリス】
「でも、『眠り姫の部屋』であることは間違いないんじゃない?そこも変えちゃうなら、こっそり看板書き換えるくらいのことはするだろ、あいつら」■■
【ブラッド】
「そうだろうな。おまえ達に似て、ふざけたことが好きな人種のようだから」■■
【ゴーランド】
「だから、おまえに言われたくないっての!」■■
【【【演出】】】・・・三人で進んでいく足音
【ボリス】
「……ん?ねえ、どっかから明かりがさしてない?」■■
【ブラッド】
「ああ、そうだな。ゴールが近いようだ」■■
【【【演出】】】・・・三人で進んでいく足音
【ゴーランド】
「あそこにあるドアから灯かりが漏れてるな。とうとう眠り姫の部屋に到着か?」■■
【ブラッド】
「恐らくそうだろう」■■
【ボリス】
「アリス!アリス、そこにいるのか……!?」■■
【【【演出】】】・・・たたたっと走っていく足音
【【【演出】】】・・・追い掛ける二人の足音
【ゴーランド】
「待て、ボリス!」■■
【【【演出】】】・・・三人で走る足音
【ボリス】
「アリス!」■■
【【【演出】】】・・・ドアノブに手を掛ける音
【【【演出】】】・・・ノブを回して扉を開く音
【ボリス】
「アリス、いるか……って、え?」■■
【ゴーランド】
「どうした、ボリス?アリスはいたのか?」■■
【【【演出】】】・・・カツカツと入ってくる足音
【ブラッド】
「なんだ。何のことはない、普通の女性の部屋だな。それで、我らがアリスは……」■■
【ゴーランド】
「アリス……」■■
【ボリス】
「これは……」■■
【ブラッド】
「……まさに、寝ているな」■■
【ボリス】
「……だね」■■
【ゴーランド】
「とはいえ、眠り姫って感じじゃないぞ」■■
【ブラッド】
「そうだな。椅子に座って、テーブルに突っ伏して眠っているような眠り姫は、どんな物語でも見たことはない。これはどう見ても、ただの居眠りだろう」■■
【ボリス】
「あ。足元に本が落ちてる」■■
【ゴーランド】
「読んでるうちに、眠くなって寝ちまったってことか……」■■
【ブラッド】
「……ん?テーブルの上に何かあるぞ」■■
【【【演出】】】・・・歩み寄る足音
【【【演出】】】・・・ペラ、とカードを取り上げる音
【ブラッド】
「これは……。ふむ、そういうことか」■■
【ゴーランド】
「なんだったんだ、帽子屋?俺達にも見せろ」■■
【ブラッド】
「メッセージだ。従業員から、私達への」■■
【ゴーランド】
「え……っ!?か、貸してくれ!」■■
【【【演出】】】・・・カードを手から奪う音
【ゴーランド】
「なになに……、『オーナー、ボリスさん、すみません。指示を破って勝手にこんなことをしたのは、すべてアリスさんに言われたからです』……っ?」■■
【ボリス】
「へっ?ど、どういうこと!?アリスの指示だって……!?」■■
【ゴーランド】
「ああ……まだ続きがある。
『準備段階でうっかり口を滑らし、アリスさんにこのゲームの目的が知られてしまいました。そうしたらアリスさんが、自分が宝物の代わりになりたいと仰ったんです』」■■
【ボリス】
「アリスが自分から……?自分を見付けてくれた人のものになるつもりだったのかな?」■■
【ブラッド】
「いや、違う。そんなこと、お嬢さんが言いそうにないだろう。続きはこうだ。
『アリスさんは、自分を賭けてゲームなどしてほしくないと仰いました。しかし、果たし状が受け取られた時点で、もうゲームの中止はきかない。だから自分が宝になって、見付けてもらったときにそのことを伝えるつもりだったんです』」■■
【ゴーランド】
「はっ、物覚えがいいな。その通りだ。で、最後が……。
『アリスさんは遊園地も帽子屋屋敷も好きなので、選んだりできないそうです。私達も、帽子屋屋敷にアリスさんを取られたくなかったので、全面的に協力しました。ゲームを棒に振ってすみません』……」■■
【ボリス】
「……何それ。じゃあ、勝手にここの鍵が開いたのも……」■■
【ブラッド】
「タイマーか何かで、あらかじめ設定されていたんだろう。もしかしたら、本物の鍵なんて最初から隠されていなかったかもしれないな」■■
【ボリス】
「は……、ははっ。従業員じゃなく、アリスに出し抜かれていたってことか……」■■
【ゴーランド】
「……してやられたな。それにしても、待ちくたびれて寝ちまうとは……、詰めの甘いお姫様だぜ」■■
【ボリス】
「本当だよ。……あれ?そこに置いてある荷物、何だろ?」■■
【ブラッド】
「ん?ああ、これか」■■
【【【演出】】】・・・がさっと荷物を掴む音
【ブラッド】
「甘い香りがするな」■■
【【【演出】】】・・・がさがさと、小さな袋を出していく音
【ゴーランド】
「それは……クッキーか?」■■
【ブラッド】
「そのようだ。ラッピングの具合いからみると、手作りだな」■■
【ボリス】
「あ、この匂い、覚えがあるよ。アリスの得意なクッキーだ、間違いない」■■
【ブラッド】
「……ふふ。見てみろ、包みは三人分だ」■■
【ゴーランド】
「俺達全員にくれるつもりだったのか。宝探しゲームのご褒美として……」■■
【ブラッド】
「ああ。私達全員に、ね」■■
【ゴーランド】
「……ははっ。あーあ、なんか気ぃ抜けちまった!」■■
【【【演出】】】・・・どさっとソファに腰を下ろす音
【ブラッド】
「私もだ。美味い紅茶が飲みたい……」■■
【ボリス】
「俺は、アリスの焼いてくれたこのクッキーが食べたい!でも、まだ本人が寝てるしな……、勝手に食べちゃまずいよね」■■
【ブラッド】
「それはマナー違反というものだ。そして、これだけ気持ちよさそうに眠っている眠り姫を起こすのもね」■■
【ゴーランド】
「仕方ない、起きるのを待つか。アリスが起きたら、深夜のお茶会と行こうじゃないか」■■
【ブラッド】
「いい案だ。それまでずっとお嬢さんの寝顔を見つめていられるのなら、退屈もしない」■■
【ボリス】
「あ、帽子屋さんだけずるいよ、俺も見たい!抜け駆けは許さないぜ!」■■
【ブラッド】
「門番達のようなことを言うな。ああ、三人で彼女を見ながら、待とうじゃないか。目覚めたときの顔も見ものだな」■■
【ゴーランド】
「それは確かに楽しみだな。アリスの奴、きっと驚くぜ」■■
【ボリス】
「にゃっはは……、俺、アリスの驚いた顔って大好き。可愛いんだよね~」■■
【ブラッド】
「同感だ。驚かれた後には怒られそうだが……、それでも楽しい夜になりそうだな……」■■
【【【演出】】】・・・カツカツ、と数歩歩く足音
【【【演出】】】・・・チュ、とリップ音
【ブラッド】
「早く目覚めてくれよ、可愛い眠り姫」■■



END