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ハートの国のアリス

『新装版ハートの国のアリス・店舗特典B ■新装版・店舗特典B(後)』

本編(ユリウス・エース・ボリス)

● 場面(遊園地・園内)
【【【演出】】】・・・賑やかな人のざわめき
【【【演出】】】・・・アトラクションの陽気な音楽
【ボリス】
「……それで、要するにアリスを楽にしてあげるために、塔を改築したいって言うんだね?」■■
【エース】
「そういうことだ。猫君って、そういうの得意なんだろう?力を貸してくれよ」■■
【ボリス】
「まあ、面白そうだし構わないけど……。具体的に、どうするの?」■■
【エース】
「簡単だよ。階段が辛いって言うんだから、エレベーターをつければいいんだ!」■■
【ユリウス】
「エレベーター!?何を無茶なことを……っ!」■■
【ボリス】
「へえ、なるほどね。確かにその通りだ。でも、なんで時計塔の主である時計屋さんが驚いてるんだ?」■■
【ユリウス】
「そんな話は聞いていなかったからだ!エース、おまえ……、詳しいことも言わずに遊園地まで案内させたかと思えば、塔にエレベーターをつける、だと?」■■
【エース】
「そう。名案だろう?」■■
【ユリウス】
「何が名案なものか!あれだけの高さの塔にエレベーターをつけるなんて、簡単にできることじゃないだろう。そんなことで煩わしくなるのは、私は御免だ!」■■
【ボリス】
「ええ……、なんだよ、要するに騎士さんが勝手に言っていただけってこと?時計塔の主の許可がないんじゃ、さすがにまずいんじゃないの?時間を象徴する塔だし、ルールにも引っ掛かりそう……」■■
【エース】
「ということはつまり、許可があればできるんだよね、猫君?」■■
【ボリス】
「それはもちろん。俺を誰だと思ってるの?俺、自室だって改装しまくっているし、ここのアトラクションだって、半分以上は俺の改造が入っているんだぜ?」■■
【エース】
「ああ、遊園地のアトラクションについては、もちろん知っている。その腕を見込んで、お願いしているんだからね」■■
【ボリス】
「ふふん、光栄だよ。アリスが大変な目に遭っているとあっちゃ、助けてもあげたいしね。俺でできることなら、協力してあげるよ。けど……」■■
【ユリウス】
「勝手に話を進めるな。……私は認めない」■■
【エース】
「ユリウス~っ。アリス、絶対に喜んでくれるぜ?俺はあの長い階段、嫌いじゃないけど、便利になるのはいいことじゃないか」■■
【ユリウス】
「便利になどならなくていい!駄目と言ったら駄目だ!」■■
【【【演出】】】・・・少し小声での会話ここから↓
【ボリス】
「頑固だな~、時計屋さん。……騎士さん、これ、説得できそう?」■■
【エース】
「任せてくれ。アリスのためだ、絶対に説得してみせるさ。そのときには君に遣いを出すから、準備を始めていてくれないか?」■■
【ボリス】
「了解。何だか楽しくなってきた……!期待してるぜ、騎士さん」■■
【【【演出】】】・・・少し小声での会話ここまで↑
【ユリウス】
「おいっ、二人で何をコソコソ話しているんだ?もう帰るぞ、エース!私は仕事があるんだ!」■■
【【【演出】】】・・・足早に歩き去る足音
【【【演出】】】・・・追い掛けて走っていく足音
【エース】
「あ、待てよ、ユリウス……!」■■
【【【演出】】】・・・足音がフェードアウト
● 場面(時計塔・ユリウスの部屋)
【【【演出】】】・・・時計を修理する音
【【【演出】】】・・・カチャッと扉の開く音
【ボリス】
「こんにちは~」■■
【エース】
「やあ、猫君!待ってたよ!」■■
【【【演出】】】・・・時計を修理する音
【ユリウス】
「……ふん、来たか」■■
【ボリス】
「そっけないな~。至急来るようにっていう伝言だったから、急いで来てあげたんだよ?」■■
【ユリウス】
「私はいつだってこうだ!」■■
【ボリス】
「はいはい。で、俺が呼ばれたってことは……」■■
【エース】
「ああ。時計塔の管理人であるユリウスから、正式に改装の許可が下りた。これで、どんな改装もし放題だよ」■■
【【【演出】】】・・・口笛
【ボリス】
「やった!そうだとは思っていたけど。よく説得できたね、騎士さん?」■■
【エース】
「え?はは、それがさ……」■■
【【【演出】】】・・・少し小声での会話ここから↓
「実は俺、大した説得はしていないんだ。けど、ユリウスがその気になってくれてさ」■■
【ボリス】
「え、そうだったの?あれだけ嫌がっていたのに、よくその気になったな。心境の変化ってやつ?」■■
【エース】
「いや。俺の説得よりも、数倍効果的なことがあってさ」■■
【ボリス】
「なになに?」■■
【エース】
「あの日の食事で、アリスが作る食事のおかずが、いつもより一品少なかったんだ。それに、ユリウスが仕事を始めるときにいつも淹れてくれる珈琲が、あの日は出なかった」■■
【ボリス】
「……へ?それだけ?」■■
【エース】
「それだけ。でも、ユリウスにはこれ以上に効果的なことはない」■■
【ボリス】
「ぶ……っ、くっくっく!時計屋さんってば、完璧尻に敷かれてるんだ」■■
【【【演出】】】・・・少し小声での会話ここまで↑
【ユリウス】
「……ん?何を笑っているんだ、チェシャ猫?」■■
【ボリス】
「えっ、な~んにも。笑ってなんかいないよ?」■■
【【【演出】】】・・・ジーッとバッグのチャックを開ける音
【ボリス】
「ああ、それよりさ。呼ばれた時点で予想はついていたから、もう工具とかも色々と用意してきたんだ」■■
【【【演出】】】・・・ガチャガチャと床に工具を置いていく音
【ユリウス】
「……そうか。ここにもそれなりに揃っているが、おまえが使い慣れたもののほうがいいだろうしな……、助かる」■■
【エース】
「さっすが、猫君!資材なんかはどうするんだ?」■■
【【【演出】】】・・・ガチャガチャと床に工具を置いていく音
【ボリス】
「遊園地からアトラクション用のを貰ってきてもいいし、集めて回ってもいいよ。俺の能力があれば、どっちも簡単だ」■■
【ユリウス】
「そうだな。チェシャ猫の空間を切り取る能力に、私の権限で時間を進めれば……大掛かりな工事ではあるが、それほどは掛からないだろう」■■
【ボリス】
「最強のタッグってわけだね。
……ところで、アリスは?エレベーターのデザインとか、好みを聞いて参考にしようと思っていたんだけど?」■■
【ユリウス】
「その必要はない。工事中に何かトラブルがあってはいけないからな。作業は、あいつがいないときに行うつもりだ。今も、ハートの城に遊びに行かせている」■■
【ボリス】
「え~、そうなんだ?ちぇ……、せっかく会えると思って、楽しみにしていたのに」■■
【エース】
「まあまあ。デザインは、完成したときのお楽しみってことでいいじゃないか。サプライズってやつだ……、猫君もそういうの、嫌いじゃないだろう?」■■
【ボリス】
「へへ、まあね」■■
【ユリウス】
「ではさっそく、現場になる辺りを見に行って、可能なら作業に取り掛かるか」■■
【ボリス】&【エース】
「了解!」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(時計塔内)
【【【演出】】】・・・がんがんと工事をするような音が響いている
【ユリウス】
「どうだ、チェシャ猫?」■■
【【【演出】】】・・・がんがんと工事をするような音が響いている
【ボリス】
「巻き上げ機の位置はここで問題なさそうだよ。次はメインロープの具合をみてみるから、ちょっと待っていて」■■
【【【演出】】】・・・がんがんと工事をするような音
【【【演出】】】・・・ウィーンと機械が動くような音
【ボリス】
「……こっちも問題ない。乗り場ユニットとかごは、遊園地のほうで着々と作り進めているから、次にはここに持ってきて……」■■
【エース】
「はあ~、猫君、思った以上にすごいな。来る度に新しい装置を作ってきてくれているし、塔の工事もすごいスピードで進んでいる……」■■
【【【演出】】】・・・がんがんと工事をするような音
【【【演出】】】・・・ウィーンと機械が動くような音
【ボリス】
「それが、自分でも不思議なんだけど、すらすらとアイデアが出てきて、不思議とやり方も分かるんだよね。俺、エレベーターを作るのはさすがに初めてなんだけどさ」■■
【エース】
「いやいや、とても初めてというようには見えないぜ?」■■
【ユリウス】
「同感だな。かなり慣れているように見えるぞ」■■
【ボリス】
「自分でもそう思うよ。初めてなのに、エレベーターってものにすごく慣れているような気がしてきて……。ほんと、不思議だ」■■
【【【演出】】】・・・がんがんと工事をするような音
【エース】
「……ん?これは何だろう?」■■
【【【演出】】】・・・何かを拾い上げる音
【ユリウス】
「どうしたんだ、エース?」■■
【エース】
「ここに、こんなものが落ちていたんだ」■■
【ユリウス】
「ここ、って……、その、配線のために床に開けた穴のことか?」■■
【エース】
「うん、そう」■■
【ボリス】
「え?なになに?」■■
【【【演出】】】・・・ガチャッと工具を床に置く音
【【【演出】】】・・・ボリスがエースに歩み寄る音
【ユリウス】
「ん?それは……」■■
【ボリス】
「砂時計?」■■
【エース】
「ああ、そのようだね」■■
【ユリウス】
「どうして床下に砂時計なんかが……?」■■
【エース】
「それはこっちが訊きたいよ。そもそも、ユリウスは時間帯を変えるのに砂時計なんて使わなくてもいいだろ?」■■
【ユリウス】
「ああ……。私には必要ないものだから、使ったこともない」■■
【ボリス】
「それなのに、砂時計。しかも床下になんて、おかしな話だね」■■
【ユリウス】
「うむ……」■■
【【【演出】】】・・・離れたところから近付いてくる足音
【ボリス】
「あ、アリス!」■■
【ユリウス】
「……なんだ、もう帰ってきたのか?今回の作業も2時間帯はかかるから、ゆっくりして来いと言っておいただろう?」■■
【エース】
「おいおいユリウス、そんな言い方はないだろ。罪滅ぼしでやっている工事なのに、更に怒らせる気か?」■■
【ユリウス】
「べ、別にそんなつもりは……!」■■
【エース】
「ちょうどよかった。アリス、これ、君にあげるよ。工事をしていたら出てきたんだ」■■
【ボリス】
「ああ、それがいいね。アリスならルールに縛られずに、自由に時間帯を変えることができるもんな」■■
【エース】
「ほら、受け取りなよ!」■■
【【【演出】】】・・・ひゅーんと砂時計を投げる音
【ユリウス】
「ば、馬鹿っ、エース、投げるな!」■■
【【【演出】】】・・・ひゅーんと砂時計が飛ぶ音
【【【演出】】】・・・ぱしっと受け取る音
【エース】
「あ、受け取っちゃった……」■■
【ボリス】
「まあ、自分に向かって飛んでくりゃ、条件反射でそうなるよね」■■
【ユリウス】
「アリス、それは使わないほうがいい……、なにっ!!?」■■
【【【演出】】】・・・姿が変わっていく効果音(もわもわもわーん、みたいな長く続くもの)
【ボリス】
「え!?ア、アリス!?」■■
【エース】
「アリス!?どうしたんだ!?」■■
【【【演出】】】・・・姿が変わっていく効果音(もわもわもわーん、みたいな長く続くもの)
【【【演出】】】・・・ぱさ、っと地面に服が落ちる音
【【【演出】】】・・・赤ちゃんの泣き声
【ボリス】
「へ……っ!?」■■
【エース】
「え……?」■■
【ユリウス】
「な、な……っ!?」■■
【【【演出】】】・・・赤ちゃんの泣き声
【ボリス】
「ど、どういうこと……?アリスが……、アリスが赤ん坊になっちゃったぜ!!?」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(時計塔・ユリウスの部屋)
【【【演出】】】・・・赤ちゃんの泣き声
【エース】
「おー、よしよし。……えっと、こういうとき、赤ちゃんを泣きやますためにはどうするんだったっけな。たしか……、いないいない、ばあ~っ!?」■■
【【【演出】】】・・・赤ちゃんの泣き声、大きくなる
【エース】
「……う。全然効果なしだ……」■■
【ボリス】
「だって騎士さん、常に白々しいまでに笑ってるからね。変わり映えしないんじゃないの?」■■
【エース】
「ええっ!?白々しいって……猫君、酷いぜ」■■
【ボリス】
「まあまあ。次、俺にやらせてよ。アリスを楽しませることには自信があるんだ」■■
【エース】
「……分かったよ。お手並み拝見と行こう」■■
【【【演出】】】・・・エースからボリスに、赤ん坊を渡す音
【ボリス】
「よいせ、っと。ん~、それじゃあ……」■■
【【【演出】】】・・・赤ちゃんの泣き声、更に大きくなる
【ボリス】
「へっ!?ま、まだ何もしていないんだけど……」■■
【エース】
「駄目だな。人外のものに抱かれるのが怖いんだよ、きっと」■■
【ボリス】
「そ、そんにゃあ……」■■
【【【演出】】】・・・エースが赤ん坊をボリスの腕から取り上げる音
【エース】
「もう一度、俺が挑戦してみよう!よし、じゃあこれはどうだ……っ」■■
【ユリウス】
「おい、もう少し静かにやってくれ!気が散って頭に入ってこないだろう!」■■
【【【演出】】】・・・ばたん、と本を閉じる音
【ユリウス】
「この本にも載っていなかった。次の本になければ、前任者の残した書物はもうない……」■■
【【【演出】】】・・・ドサ、と本を置き、別の本を取る音
【【【演出】】】・・・ページをめくる音
【エース】
「落ち着けよ、ユリウス。静かにと言っても、相手は赤ちゃんなんだぜ?」■■
【ボリス】
「そうそう。赤ん坊は泣くのが仕事、ってね」■■
【ユリウス】
「呑気にそんなことを言っている場合か!おまえ達は何故落ち着いていられるんだ!」■■
【【【演出】】】・・・ページをめくる音(焦っている感じで、速い)
【ユリウス】
「分かっているのか?アリスが……アリスが赤ん坊になってしまったんだぞ!?」■■
【【【演出】】】・・・赤ちゃんの泣き声
【エース】
「もちろん分かってるさ。目の前で変わったんだ……、この金髪に、瞳の色……、間違いなく、この子はアリスだ」■■
【ユリウス】
「私が分かっているのかと聞いたのは、ことの重大性だ!謎の砂時計で時間が遡り、赤ん坊になってしまった。おまけに、私の力をもってしても元に戻せない。この事態がどれだけ深刻か、分かっているかと聞いているんだ!」■■
【ボリス】
「分かってるって。だから、あんたが時計塔に残る古い書物を調べ漁っているんだろ。けど、俺達にはそれを読んでも意味が分からないし、できることがない」■■
【エース】
「猫君の言う通りだ。それなら俺達は、自分の出来ることをするしかないだろ?目の前に泣いている赤ちゃんがいたら、あやしてあげないと」■■
【ボリス】
「そうそう。それがアリスだと分かっていれば、こっちも必死になるよ」■■
【ユリウス】
「アリス……、はあ……」■■
【【【演出】】】・・・ページをめくる音(少しゆっくりに)
【ユリウス】
「……待っていろ。解決法は、必ず見つける」■■
【【【演出】】】・・・赤ん坊の泣き声がフェードアウト
【【【時間経過】】】
【ユリウス】
「……駄目だ。この塔に残る古い書物には、赤ん坊になるような砂時計の記述は無かった……」■■
【エース】
「……そうか。記録がないってことは、塔の管理人は与り知らないものってことなのかな」■■
【ユリウス】
「砂時計自体は、使用できる者は限られているにも関わらず、世間に出回っているからな……」■■
【ボリス】
「だね。たまーに、道に落ちていたりもするし。でも、塔の床下にあったんだから、無関係とは言えないんじゃないの?」■■
【エース】
「いや、分からないぜ。あったのは、入口に近い一階の床下だ。ユリウスが不在のときに第三者が忍び込むくらいは、わけないだろう」■■
【ボリス】
「どこかの誰かが、わざわざここに隠したっていうこと?」■■
【ユリウス】
「私にとっての厄介ごとを望む者は少なくない……、可能性がないとは言い切れないな。とにかく、私はもう少し調べてみる」■■
【ボリス】
「調べものに関しちゃ、あんたに任せるよ。けど、その前にさ、買い物行かない?」■■
【ユリウス】
「買い物?」■■
【ボリス】
「そっ。もうしばらく、この子はこのままってことだろ?でもこの子、着る服すらなくて、あんたのパジャマで包んでるだけじゃないか。それに、食事だって与えてあげないと」■■
【エース】
「あ、本当だね。もしかしたら泣き止まないのも、お腹が空いているんじゃ……」■■
【【【演出】】】・・・赤ん坊の泣き声
【ボリス】
「……正解じゃない?な、時計屋さん、買い物行こうよ。俺としては、この趣味の悪いパジャマをどうにかしてやりたいぜ」■■
【【【演出】】】・・・赤ん坊の泣き声、大きくなる
【エース】
「切実に訴えかける泣き声だね。アリスもそうしてほしいみたいだな」■■
【ユリウス】
「し、失敬な。他に包むものがなかったんだ、仕方がないだろうっ」■■
【ボリス】
「かりかりするなってば。な、ほら、街に出ようぜ?」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(街)
【【【演出】】】・・・人のざわめき
【【【演出】】】・・・行き交う人々の足音
【ボリス】
「さて、じゃあまずは、洋服店に入って服を買ってあげよう。えーと、服屋、服屋……」■■
【エース】
「あ、あそこじゃないか?」■■
【ボリス】
「お、そうみたいだね。よし、行こう、時計屋さん……、時計屋さん?」■■
【ユリウス】
「……ん?な、なんだ?」■■
【ボリス】
「なんだ、じゃないよ。どうしたの?アリス抱いて、固まっちゃって」■■
【ユリウス】
「赤ん坊を抱く機会など、めったにあるものではない。しかもこれがあいつだと思うと……き、緊張して……」■■
【エース】
「今更緊張してどうするんだよ?俺達、アリスの生まれたままの姿を見ちゃったんだぜ?抱くのくらい、もうどうってことないだろ?」■■
【ボリス】
「いいね~、騎士さん。その言い方、あからさまに卑猥な感じ」■■
【ユリウス】
「ばっ、馬鹿か、おまえ達はっ!!いかがわしい言い方をするんじゃないっ」■■
【エース】
「え~、俺は事実を述べただけだぜ?いかがわしく聞こえるのは、ユリウスがそういうことを考えているからだろ?」■■
【ボリス】
「にゃはは。時計屋さん、元のアリスの姿で想像しちゃった?時計屋さんも案外……くくくっ」■■
【ユリウス】
「そっ、そんなわけがないだろうっ!おまえ達と一緒にするな!と、とにかく行くぞっ」■■
【【【演出】】】・・・ずんずん歩き出す足音
【【【演出】】】・・・追い掛ける二人の足音
【エース】
「あははっ、待てよ、ユリウス。いやー、何だか、案外楽しいなあ~」■■
【【【時間経過】】】
【【【演出】】】・・・ドアの開閉音
【【【演出】】】・・・ちりりん、とドアの鈴が鳴る音
【【【演出】】】・・・人のざわめき
【ボリス】
「よし、とりあえず洋服は買えたね。着替えもすませたし……」■■
【【【演出】】】・・・赤ちゃんの笑い声
【エース】
「おっ、上機嫌だ!やっとまともな服が着られて、嬉しいんだな」■■
【ユリウス】
「む。まともでない寝間着で悪かったな……」■■
【ボリス】
「次は食べ物かな。食べ物っていうか、赤ちゃんだしミルクか。それに、哺乳瓶とかもいるよね」■■
【ユリウス】
「ミルク……、哺乳瓶……。わ、私には無縁すぎて、どこに置いてあるのか……」■■
【エース】
「無縁なのは俺達だって同じだよ。けど、生活用品を扱う店なら普通に置いているんじゃないか?」■■
【ボリス】
「多分ね。ちゃっちゃと行っちゃおうぜ。アリス、お腹が空いているんだろ?」■■
【【【時間経過】】】
【【【演出】】】・・・袋を揺すって持ち直して、中身が動く音
【エース】
「よっと。付属品も買い揃えたら、けっこうな量になったな~」■■
【ボリス】
「ほんと。赤ちゃんって、思ったよりたくさんグッズが必要なんだな。もう買い忘れはなさそう?」■■
【ユリウス】
「私に聞くな!……だが、ないんじゃないか。おむつの替えも、風呂用の桶も買ったし……」■■
【エース】
「おむつ……。さらっと言っているけど、いいのかな。俺達、いよいよ未知の扉を開けちゃう気が……」■■
【【【演出】】】・・・少し小さな声での会話ここから↓
【ボリス】
「駄目だよ、騎士さん!時計屋さんにそれ意識させたら、今度こそ硬直して動かなくなるぜ?」■■
【エース】
「あ、そうだったな。悪い悪い」■■
【ボリス】
「おむつを変えるとなれば、きっとあんなことやこんなことも……だからね。先刻も服屋でもらったおむつ履かせてあげたけど、替えるのも、俺がやってあげたいな」■■
【エース】
「それは、またそのときに相談しよう。なんだか怪しいプレイみたい……いや、いたってノーマルな俺だけど、譲りたくはないなあ」■■
【ボリス】
「むむ……っ。何だかんだで時計屋さんもそう言いそうだしな~。これは、争奪戦が繰り広げられる予感……!」■■
【【【演出】】】・・・少し小さな声での会話ここまで↑
【ユリウス】
「おい、どうした?早く戻ってミルクを飲ませるんじゃないのか?」■■
【エース】
「ごめんごめん、何でもないよ。そうだね、急いで帰ろう……、いつまでも空腹じゃ、アリスが可哀想だ」■■
【【【演出】】】・・・歩いていく三人の足音がフェードアウト
● 場面(時計塔・ユリウスの部屋)
【【【演出】】】・・・かた、と軽い瓶(哺乳瓶)を机に置く音
【【【演出】】】・・・赤ん坊の笑い声
【エース】
「ミルク美味しかったか~、アリス?はは、ご満悦って感じだな~」■■
【ボリス】
「機嫌よくなって、よかった。やっぱりお腹が空いていたんだね」■■
【ユリウス】
「……そのようだな。はあ……」■■
【エース】
「どうしたんだ、ユリウス?ため息なんてついて」■■
【ユリウス】
「何でもない……。あまりにも未知の経験が続きすぎていて、少し疲れてきただけだ。だが、私は調べものを再開する」■■
【ボリス】
「え、でも、古い書物は調べ尽くしたんじゃなかったっけ?」■■
【ユリウス】
「物置など、まだ見ていないところがいくつかある。ろくな蔵書はないはずだが……、それを探すのも含め、調べてみる」■■
【エース】
「分かったよ。俺達は……やっぱりアリスの相手かな?彼女を放って、エレベーター工事を進めるわけにもいかないもんな」■■
【ボリス】
「そうだね。工事は一時中断だ。俺達、ここでアリスの面倒をみているから、時計屋さんは調べ物に専念してよ」■■
【ユリウス】
「……分かった。では、その子を頼む」■■
【【【演出】】】・・・カツカツと出口へ歩く足音
【【【演出】】】・・・ドアの開閉音
【【【時間経過】】】
【【【演出】】】・・・ガラガラ(玩具)の音
【エース】
「ほ~ら、どうだ、アリス?面白いだろ~?」■■
【【【演出】】】・・・きゃっきゃと喜ぶ感じの赤ん坊の笑い声
【ボリス】
「ははっ、笑っちゃって、可愛いな~。何だか俺、今まで自分の中にはなかったものが目覚めていってる……」■■
【エース】
「俺もだよ。赤ちゃんのアリスも、これはこれで可愛い。ユリウスが解決方法を見付けられなかったら、いっそこのまま育てていくのも……」■■
【【【演出】】】・・・ガチャッとドアが開く音
【ユリウス】
「その心配は必要ない。やっと解決策が見付かったぞ!」■■
【ボリス】
「え、マジで!?やっぱり物置に書物があったの?」■■
【ユリウス】
「いや。何のことはない、砂時計が見付かったあの穴の中に、木箱に入ったノートが置かれていた。放置しておくのは危険だから、板を置いて塞いでおこうと見に行って、発見したんだ」■■
【エース】
「あの穴の中か!灯台下暗しだったな。砂時計と一緒にノートが隠してあったってことは……」■■
【ユリウス】
「ああ、ノートの中に、砂時計のことやそれを隠した経緯などがすべて書かれていた。これがそのノートだ」■■
【【【演出】】】・・・ノートをテーブルの上に置く音
【ボリス】
「うわ、いかにも古そうなノートだね」■■
【エース】
「カビ臭いな。年季を感じさせるぜ。俺達も触れていいのか、ユリウス?」■■
【ユリウス】
「構わない。読みにくくなっているところもあったから、かいつまんで説明するが……」■■
【【【演出】】】・・・ノートをパラパラと捲る音
【ユリウス】
「結論から言うと、やはり第三者の仕業だった。そのノートを記したのは、国内のとある貴族の男だ」■■
【エース】
「貴族???」■■
【ユリウス】
「ああ。しかし、ノートの状態や記述の内容を見る限り、かなり以前にここに隠されたもののようだ。その男が今もこの国に存命しているかどうかは、定かでないな」■■
【ボリス】
「そんなに古いものだったんだ……。で、どうして貴族の男がこんな所に砂時計を隠したんだ?時計屋さんに恨みを持つ奴だとしても、個人的な恨みにしちゃ、長期計画すぎるだろ」■■
【ユリウス】
「いや……、仕掛けたにしろ、こうしてネタばらしの記録があることからしても、その対象は私ではなかったようだ。その当時、世間では『人の外見年齢を自由に操り、かつ固定してしまう砂時計がある』という噂が流れていたそうだ。男には長年の敵がいたが、相手はとても強かった。そこで、何とか噂の砂時計を手に入れ、赤ん坊にしてから抹殺しようと目論んだらしい」■■
【ボリス】
「何それ……、せこいこと考えるね。でも、ということはつまり……?」■■
【ユリウス】
「ああ、これが、男が手に入れたその砂時計だ。人の外見年齢を動かし、かつ固定する……とんだ不良品だが、時間もルールも気まぐれなこの世界でなら、たしかに偶然そんなものが出来上がる可能性もあるだろう」■■
【エース】
「ははっ、砂時計まで狂っちゃうのか。ある意味、この世界に相応しいな」■■
【ユリウス】
「まったくだ。……だが、その男には天罰が下った。狂った時計が自分にだけ味方してくれるとは、考えが甘い。
謀略に使う前に、謝って彼の妻が砂時計を手にしてしまい、赤ん坊になってしまったんだ。男は、大慌てで固定された時間を元に戻す方法を調べた。すると、たったひとつだけ解決策があることが分かった」■■
【エース】
「おお、解決策があるんだな!よかった、アリスにもそれが使えるかもしれないってことだ!」■■
【ユリウス】
「いや、それが……、そう簡単な問題でもない」■■
【ボリス】
「え?どういうこと?その方法で、ぱぱっと元に戻せないの?」■■
【ユリウス】
「戻せないから困っているんだろう。もちろんその男もすぐさまその方法を試したが、彼には妻を元の姿に戻すことができなかったんだ。悲嘆にくれた男は、砂時計と事実を記したノートを、時間を象徴するこの塔の床下に隠して、赤ん坊と共に行方をくらました……」■■
【エース】
「戻せなかった……?その解決方法って、一体どんなものなんだ?」■■
【【【演出】】】・・・ノートをめくる音
【ボリス】
「なんだか、教訓的な昔話みたいな話だけど……俺にはこの字、ほとんど読めないな。教えてよ、時計屋さん」■■
【ユリウス】
「そ、それは……。それはだな、つまり……、赤ん坊になってしまった者に、大人でしか持ち得ない感情を教えること……」■■
【エース】
「大人でしか持ち得ない感情?」■■
【ユリウス】
「……そうだ。要するに……、あ、あ、『愛する感情』を教えるということだっ」■■
【ボリス】
「へっ?」■■
【エース】
「……愛する感情?それって……」■■
【ユリウス】
「あ、赤ん坊になってしまった者を本気で愛する人物が、愛情をこめてキスを贈るんだ。その愛が通じれば、砂時計の力で固定された時間は、元に戻る。だが、チャンスはたった1回だけ……、そう、ノートには書かれていた」■■
【ボリス】
「えええ……?それはまた、なんてベタベタな……」■■
【エース】
「本当だな。キスで助けるなんて、どこかのおとぎ話じゃあるまいし……」■■
【ボリス】
「なんだか昔話っていうか作り話っぽいよね……」■■
【【【演出】】】・・・バンバンとノートを叩く音
【ユリウス】
「私に文句を言うな!文句なら、このおかしな砂時計に言え!」■■
【ボリス】
「怒るなよ、時計屋さん。あんたがこういうネタ、苦手なのは分かるけどさ。ふむ……、要するにその貴族は、本気で妻を愛せていなかったってことか。もしくは、妻に本気で愛されていなかった。そりゃあ、たしかに、凹むよね」■■
【エース】
「だね。『本気の愛』ってことだし、なまじっかな愛情じゃ駄目ってことか。しかもチャンスは一度きり……」■■
【ユリウス】
「そ、そういうことだ……」■■
【エース】
「アリスを本気で愛する者が、愛を込めたキスを贈らないといけない……。しかも、それが赤ん坊である相手にも伝わらなきゃいけないって……難易度が高いなあ」■■
【【【演出】】】・・・赤ん坊の無邪気な笑い声
【ボリス】
「……はは、呑気に笑っちゃって。たしかにこれは、予想以上の難題だよ、アリス……?」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(時計塔広場)
【【【演出】】】・・・逃げ惑う人々の叫び声
【【【演出】】】・・・連続する銃声
【ボリス】
「考えてみたけど、やっぱりアリスのことを一番好きなのは、間違いなく俺だよ。俺がやるしかない!」■■
【【【演出】】】・・・銃声(数回)
【【【演出】】】・・・銃弾を剣で弾く音(数回)
【エース】
「猫君、奢っちゃいけないぜ!目が覚めるほどの衝撃をアリスのことに与えられるのは俺だよ。俺のキスでしか、彼女は元に戻らないはずだ」■■
【ボリス】
「ショックを与えてどうするんだよ!そういうテーマじゃなかっただろ!?」■■
【【【演出】】】・・・銃声(数回)
【【【演出】】】・・・銃弾を剣で弾く音(数回)
【【【演出】】】・・・周囲の人の叫び声
【ユリウス】
「やめないか、おまえ達!時計塔広場は中立地帯なんだぞ、こんなところで争うな!」■■
【ボリス】
「じゃあどうするんだよ、時計屋さん!?アリスがキスで元に戻るチャンスは、一回こっきり。失敗できないんだろ!?」■■
【エース】
「そうだよ、ユリウス。ミスは許されないんだ。人選を誤ったら、取り返しがつかないぜ?」■■
【【【演出】】】・・・銃声(数回)
【ボリス】
「アリスを元に戻せるのは、俺を置いて他にいないよ!俺はアリスが大好きなんだから!」■■
【【【演出】】】・・・銃弾を剣で弾く音(数回)
【エース】
「俺だって思い入れの点なら負けてないぜ!きっと、俺のキスならアリスは元に戻ってくれる!」■■
【【【演出】】】・・・銃声(数回)
【【【演出】】】・・・銃弾を剣で弾く音(数回)
【ユリウス】
「く……っ。一体何を根拠にそこまで言えるんだ。おまえ達のキスで元に戻る保証など、どこにも……」■■
【【【演出】】】・・・無邪気な赤ん坊の笑い声
【ユリウス】
「はあ……、分かっているのか、アリス?おまえが元に戻れるか、赤ん坊のまま成長できないか、その瀬戸際なんだぞ……?」■■
【【【演出】】】・・・無邪気な赤ん坊の笑い声
【ユリウス】
「分かって……いるはずがないか。はああ……」■■
【【【演出】】】・・・銃声(数回)
【【【演出】】】・・・銃弾を剣で弾く音(数回)
【ボリス】
「俺がアリスにキスするんだって!騎士さんなんかには無理に決まってるだろ!」■■
【【【演出】】】・・・銃声(数回)
【【【演出】】】・・・銃弾を剣で弾く音(数回)
【エース】
「ははっ、抱っこしようとしただけで泣かれていた猫君が、何言ってるんだ!君にこそ無理だよ!」■■
【【【演出】】】・・・銃声(数回)
【【【演出】】】・・・銃弾を剣で弾く音(数回)
【ボリス】
「最初だけだろ!?すぐに、全然気にしてない感じになっているよ!!」■■
【【【演出】】】・・・銃声(数回)
【【【演出】】】・・・銃弾を剣で弾く音(数回)
【ユリウス】
「見苦しい……。あんな奴らの愛情など、あてになるものか……」■■
【【【演出】】】・・・無邪気な赤ん坊の笑い声
【ユリウス】
「だいたい、アリスの家主は私だ。同居人で、一番長い時間を一緒に過ごしてきた私を差し置いて……」■■
【【【演出】】】・・・無邪気な赤ん坊の笑い声
【ユリウス】
「ん?おまえもそう思ってくれるか?しかし、な……、たった一度きりしかチャンスがないとなると、私にも自信が……いやしかし、あの二人にも到底任せられない……」■■
【【【演出】】】・・・銃声(数回)
【【【演出】】】・・・銃弾を剣で弾く音(数回)
【ボリス】
「あんたの愛なんて、どうせ×××で×××なことばっかり考えてる、どす黒い愛情だろ!?そんなのでアリスが元に戻せるわけないっての!」■■
【エース】
「あははははっ、その言葉、そっくりそのまま君に返してあげるよ、猫君!君だって充分××××で×××じゃないか!そんな気持ちでアリスを救おうなんて、おこがましいよ!」■■
【ボリス】
「にゃ、にゃんだって~っ!?」■■
【【【演出】】】・・・銃声(数回)
【【【演出】】】・・・銃弾を剣で弾く音(数回)
【ユリウス】
「……まったくもって、あてにならん。やはり、ここは私が……っ」■■
【【【演出】】】・・・無邪気な赤ん坊の笑い声
【エース】
「……ん?何しようとしてるんだ、ユリウス?」■■
【ボリス】
「あ、ああ~っ!?ちょっと!あれ、抜け駆けしようとしてるんじゃないの!?アリスに顔近付けてるよ!?」■■
【エース】
「くっ!まさか、ユリウスにそんな勇気があるとは思ってなかったぜ!けど、いくら親友とはいえ抜け駆けは許せないな!」■■
【【【演出】】】・・・だだっと走り出すエースとボリスの足音
【ボリス】
「同感!家主だからって、役得は許さないぜっ!」■■
【【【演出】】】・・・だだだっと走ってくるエースとボリスの足音
【ユリウス】
「……うっ!?な、何だ、おまえ達っ!!?」■■
【ボリス】
「惚けるなよ!こっそりアリスにキスしちゃおうとしてたのはお見通しだっての!!」■■
【エース】
「親友を出し抜こうとするなんて酷いじゃないか、ユリウス!いくら相手がおまえでも姫を救う騎士の役は譲れないぜ?」■■
【【【演出】】】・・・だだだっと走ってくるエースとボリスの足音
【ユリウス】
「な……っ、だ、駄目だ!おまえ達のキスでアリスが元に戻るわけがない!ここは私が……っ」■■
【ボリス】
「させないよ……!」■■
【【【演出】】】・・・だだだっと走ってくるエースとボリスの足音
● 場面(時計塔内)
【【【演出】】】・・・がんがん、とんとんと工事を行っている音
【ボリス】
「……で?アリスはどこに行ったって?」■■
【【【演出】】】・・・がんがん、とんとんと工事を行っている音
【ユリウス】
「帽子屋屋敷に行った。帽子屋に、茶会に誘われたそうだ」■■
【エース】
「……へえ。本当に、何も覚えていないんだ?」■■
【ユリウス】
「ああ。まったく覚えていないらしい。そして、いまだに相当怒っている……」■■
【ボリス】
「そりゃあね。気付いたら時計屋さんの腕に抱かれて、時計塔広場にいたんだもんな」■■
【エース】
「しかも俺達三人にキスされて、ね。まあ、混乱して当然だろうけど、赤ん坊の服が破れて×××な格好になってました、なんてオチよりはマシだと思うんだけどなあ」■■
【ユリウス】
「時間が戻ったんだ、それはない。ちゃんと元通りの服を着ていて当然だ」■■
【ボリス】
「服は着ていても、目覚めていきなり、屋外で三人にキスされていたら……」■■
【ユリウス】
「…………。あれ以来、一度も珈琲を淹れてもらっていない……」■■
【ボリス】
「飯作ってくれてるだけ有難いと思えって、時計屋さん」■■
【【【演出】】】・・・がんがん、とんとんと工事を行っている音
【エース】
「アリスが元に戻れたのは、間違いなく俺達のうちの誰かのおかげなんだけどな。覚えていないんじゃ、話しても通じないし……」■■
【ボリス】
「仕方がないよ。でも結局、誰のキスが効いたんだろうね?ほとんど同時に、全員でキスしていたから、さっぱり分からない」■■
【ユリウス】
「そのことは、もうどうでもいい。とにかく元に戻ったんだ、終わってから考えても仕方がないだろう」■■
【エース】
「……だね。これに関しては、まだまだ決着はつかないってことだ」■■
【ボリス】
「そうだね。まあ、気長に……。って、あれは結局誰が仕掛けたんだろうね」■■
【エース】
「ん?」■■
【ボリス】
「いや、だってさあ、あの胡散臭い設定、貴族が誤って妻に呪いをかけた……とかさあ。本気であったと思う?しかも、都合よく時計塔に隠されていた、とか」■■
【エース】
「う~ん……、悪戯にしては凝りすぎているよな。ノートの古さとか、文字も古かったり……。そういう底意地悪いことをしそうな暇人といえば……。なんだか結構うじゃうじゃと思いついてうんざりするぜ、あはははは。ジョーカーさんとかジョーカーさんとかジョーカーさんとか、主にジョーカーさんだな!」■■
【ユリウス】
「はあ……。いかにもすぎて、考えると頭痛がしてくるな。それよりも……、今だ。どうにかしてアリスの怒りを鎮めなければ……」■■
【エース】
「ふむ……」■■
【ボリス】
「うーん……」■■
【【【演出】】】・・・短い沈黙
【ボリス】
「……とりあえず、さ。エレベーターを完成させるしかないんじゃない?」■■
【エース】
「そうだな。はは、まさに罪滅ぼしのエレベーターだ」■■
【ユリウス】
「笑い事ではないぞ、エース。だが……、そうだな……、そうするか……」■■
【【【演出】】】・・・がんがん、とんとんと工事を行っている音
【ユリウス】
「アリス……、もう、おまえに大変な思いはさせないから。また、私に珈琲を淹れてくれ……」■■
【【【演出】】】・・・がんがん、とんとんと工事を行っている音



END