本編(ブラッド・ハンプティ&ダンプティ・ナイトメア)
● 場面(ナイトメアの夢)
【【【演出】】】・・・煙管に火をつけて吸う音
【ナイトメア】
「あー、暇だ。暇だなあ。今はアリスも起きているようだし……。
一人で煙草を吸っていてもつまらない、誰か話し相手がいればいいんだが」■■
【【【演出】】】・・・何か気配を感じさせる効果音
【ナイトメア】
「……うん?今、誰かが夢の中に入った気配がしたな。誰かは分からないが、とりあえず呼び寄せてみるか」■■
【【【演出】】】・・・しゅんっと出現音
【ナイトメア】
「ほう、誰かと思えば帽子屋じゃないか。この空間で会うのは久しぶりだな。嵐の期間中はめっきり姿を見なかったが、どうしていたんだ?」■■
【ブラッド】
「誰かと思えば、はこちらの台詞だ。どこかと思えば、さして美しくもない夢魔の夢の空間、病弱で貧相で美しさの欠片もない夢魔のお出迎えか、がっかりだな」■■
【ナイトメア】
「う……!?な、なんだ、会っていきなり美しさの欠片もないとは!?失礼じゃないか、私は傷付くぞ!」■■
【【【演出】】】・・・ぶんぶん腕を振り回す音
【ブラッド】
「煙管を振り回すな、危ないだろう。なんて美しくない行為なんだ。
傷付くと言われても、事実なのだから仕方がない。私を迎えようとするなら、もっと美しい空間を用意してくれなくては困る」■■
「こんな何もない空間では、この世で誰よりも美しい私を招くには不相応だとは思わないのか?」■■
【ナイトメア】
「こ、この世で誰よりも美しい……???どうしたんだ帽子屋、寝惚けているのか?」■■
【ブラッド】
「今は夢の中にいるのに、寝惚けているという言い方はおかしいだろう。夢魔のくせに何を言っている?」■■
【ナイトメア】
「それはそうだが……、おまえがおかしなことを言っているからだろう!」■■
【ブラッド】
「おかしい?私はおかしなことなど何も言っていないぞ。
完成された究極の美を備えたこの私に、おかしな点などあるわけがない」■■
「私にあるのは、神をもひれ伏す眩いばかりの美、ただそれだけ!!
ああ、やはりこんな美しくない空間は耐えられない。これは私の夢でもあるはずだから、アレンジさせてもらおう」■■
【ナイトメア】
「へっ!?アレンジだって!?」■■
【【【演出】】】・・・風の吹く音
【ナイトメア】
「ぶわっ!な、なんだ、この視界を埋め尽くすほどに風に舞う赤いものは?
これは……、薔薇の花弁か!?」■■
【ブラッド】
「そう、美しい私には美しい赤薔薇が何よりも似合う!しかし、これではまだ私の美を彩るには足りないな。次は、これだ!」■■
【【【演出】】】・・・空間が変わる効果音
【【【演出】】】・・・キラキラ音
【ナイトメア】
「今度は、私のいつもの領域が一面の星空に変わった!?しかも、無数に流星が降り注いでいる。……これは、嵐の期間中に帽子屋領に発生していた異常現象じゃないのか?」■■
【ブラッド】
「そう、私の好む夜に降り注ぐ、美しい流星だ!ああ、これはいいな、本当に美しい!」■■
「夜空に降り注ぐ流星と、舞う赤薔薇のコンビネーション。いいぞ、いい!
まさに私の美しさを象徴する煌びやかさだ。象徴するというだけで、私の美しさには劣るがね」■■
【ナイトメア】
「な、ななな……!?おまえ、流星群は眩しいから嫌だとか言って、気に入っていなかったんじゃないのか?アリスからそう聞いているぞ?」■■
【ブラッド】
「アリスが君にそんな話をしたのか?だとしたら、そのときの私はどうかしていたんだ。
この美しい流星を、美を愛でる私が気に入らないわけがない。最高に気に入っているぞ!」■■
【ナイトメア】
「う、美しい、美しい、って……。なんだか本当に言動がおかしいぞ、帽子屋。その単語を連発するのはおまえではなく、おまえの部下の専売特許だろうに。これは明らかに、いつもの帽子屋ではない」■■
「嵐も終わったというのに、今になっておかしくなっているのか?何が起こっているというんだ……?」■■
【ブラッド】
「さあ、もっと降れ、流星よ!……これはいいな、夢だから流星の量も自由自在に操れる!」■■
【【【演出】】】・・・キラキラ音
【ナイトメア】
「うわ、眩しい!これはいくらなんでも降らしすぎだ、帽子屋!眩しすぎて目がおかしくなるから、その辺にしておいてくれ!」■■
【ブラッド】
「薔薇も、もっとだ!より美しく、私を包み込むように舞う赤薔薇……、その中に佇む私の美しさを思うと体が震えるだろう、芋虫?」■■
【ナイトメア】
「いや、私は別の意味で震えているよ。おまえ、完全にイカレているぞ?いつもとは違った方向性で……、一体何があったんだ??」■■
【【【演出】】】・・・小声の独り言↓
「……うん?集中すると、トチ狂った意識の間に、わずかに眠る前の帽子屋の記憶が読み取れるな。おかしくなる前の記憶も僅かに残っているのか」■■
【【【演出】】】・・・小声の独り言↑
【ブラッド】
「何をぶつぶつ言っているんだ、芋虫?よく聞こえないんだが」■■
【ナイトメア】
「いや、何でもない。気にするな!」■■
【【【演出】】】・・・小声の独り言↓
「……途切れ途切れにだが、記憶が読み取れる。
これは……、なになに、煙を吸引すると性格がハンプティのようになる爆弾、だと?」■■
「そうか、どうにもおかしいと思ったら、やはりマッド・ツインズの仕業だったんだな。
このままの帽子屋だと夢で会っても気色が悪い。そういうことなら、あいつ達に責任を取らせるべきだな。もしかしたら、解毒剤のようなものを持っているかもしれない。……よし!」■■
【【【演出】】】・・・小声の独り言↑
【【【演出】】】・・・出現音
【ダンプティ】
「うわっ、眩しい!なんだ、この光は?」■■
【ハンプティ】
「これは、流星だね!我が領土に嵐の期間中降っていたものより、さらに見事だ。
それに、舞っているのは薔薇の花弁か……、なかなか美しい光景じゃないか!」■■
【ナイトメア】
「やはりおまえの感想はそうなんだな、ハンプティ。その感性を、帽子屋もしっかり引き継いでいるということか。発明品としては、成功だったわけだ」■■
【ハンプティ】
「ナイトメア!君がいるということは、ここは夢の中……?俺達を連れ込んだのか?
目覚めないボスを、部屋に運んでいるところだったはずなのに」■■
【ブラッド】
「目覚めない?目覚めなくていいとも、せっかくこんなに美しい空間を作り上げたんだ。もうしばらくはここで、この眩い光景を眺めていたい」■■
【ダンプティ】
「ボス!……そうか、ボスに会わせるために僕達を夢に連れ込んでくれたんだな、ナイトメア?」■■
【ナイトメア】
「……嬉しそうだな、ダンプティ。私はおまえのためにやったわけではないぞ、このおかしくなっている帽子屋をどうにかしろと、そう苦言するつもりで……」■■
【【【演出】】】・・・ダンプティがブラッドに駆け寄る足音
【ダンプティ】
「ボス、気分はどうですか!?あれだけしっかり煙を吸い込んだんだ、効果はもう出ているはず。この流星と薔薇は、ボスが出したんですか?」■■
【ナイトメア】
「こらっ、私を置いて帽子屋のところに行くな!効果は充分に出ているよ、おかしくなっていると言っただろう」■■
【ブラッド】
「何を言っているんだ芋虫、私はおかしくなってなどいない。
……そう、流星と薔薇は私が出したんだ。美しいと思わないか?」■■
【ダンプティ】
「『美しいと思わないか』?美しいものが見たくて、出したんですね?ということは……」■■
【ハンプティ】
「とても美しい光景だと思うよ、ボス。俺はボスほど薔薇好きではないけど、美しい俺にはぴったりの光景だ」■■
【ブラッド】
「美しい俺……だと?何を言っている、この風景は美しい私を引き立てるために出したんだ、おまえにぴったりのはずがないだろう」■■
【ハンプティ】
「ええ???ボスこそ何を言っているの?まさか、本当にダンプティのあの爆弾のせいで……?」■■
【ダンプティ】
「ボスっ、僕の質問に答えてください!この世界で最も美しいのは、誰ですか?」■■
【ブラッド】
「この世で最も美しい者?何を今さら……、私に決まっているだろう」■■
【【【演出】】】・・・ががーん、的な効果音
【ハンプティ】
「な、なんてことだ……!!いくらダンプティの発明のせいとはいえ、今の発言は許し難いよ!
相手が上司でも許せない、この世界で最も美しいのは、この俺をおいて他にはいないんだから!」■■
【ブラッド】
「……なんだと?ハンプティ、おまえ、私の美しさがおまえに劣っていると言いたいのか?」■■
【ハンプティ】
「辛い事実を突き付けるようで悪いけど、その通りだよ、ボス。ボスもそれなりに美しいかもしれないけど、俺には勝てないよ。というか、この俺の美しさに勝るものなんて、何一つないんだ」■■
【ナイトメア】
「おいおいおい……、どんどん怪しい雲行きになっているじゃないか。狙って帽子屋に質問しただろう、ダンプティ!」■■
【ダンプティ】
「当たり前だ。こういうのを見たくて開発したんだから」■■
【ナイトメア】
「当然のように言うんじゃない!私はおまえ達に収拾をつけさせようと思って、夢の中に引き入れたんだ。焚き付けてどうする、早く帽子屋を元に戻さないか!」■■
【ダンプティ】
「元に戻す?嫌だ、どうして戻さなくちゃいけないんだ。まあ、多分2・3時間帯で薬の効果が切れるけど。効果が出ている間は、この状態を楽しまなきゃ勿体ないだろう」■■
【ナイトメア】
「2・3時間帯?放っておけばよかったのか……。だが、すでにハンプティと対面させてしまったしな。すぐに効果を消し去る、解毒剤のようなものは持っていないのか?」■■
【ダンプティ】
「そんなものは作っていない。……こんな話をしているより、おまえも二人を見ていろよ!こんな光景は滅多に見られないぞ、最高に不気味で面白いじゃないか!」■■
【ナイトメア】
「この光景のどこが面白いんだ!?って、いつの間にか二人共、武器を出しているじゃないか!」■■
「帽子屋はマシンガン、ハンプティは斧……、この場であれを使って争う気なのか、あいつらは!?」■■
【【【演出】】】・・・ガチャッとブラッドがマシンガンを構える音
【ブラッド】
「どこからどう見ても、美しいのは私のほうだ。見ろ、この整った美貌と、艶のある黒髪を!おまえには備わっていない、完成された美しさだろう!」■■
【【【演出】】】・・・カチャッとハンプティが斧を構える音
【ハンプティ】
「ふ、美貌なら、俺のほうが明らかに上を行っているよ。髪だって俺のほうが美しい。ボスには俺のような華やかさも神々しさもないよ、最も美しいのは、誰が見てもこの俺だ」■■
【ブラッド】
「まだそんなことを言うのか。哀れな男だな、美しくないだけでなく、目までおかしくなっているようだ」■■
【【【演出】】】・・・マシンガンの銃声
【【【演出】】】・・・ハンプティが跳躍して避ける音
【ハンプティ】
「くっ!おかしくなっているのはボスのほうだろう、早く目を覚ましなよ!
いや、この俺が美しい斧さばきで目を覚まさせてあげる!」■■
【【【演出】】】・・・だだっと踏み込む音
【【【演出】】】・・・ぶんッと斧を振るう音
【【【演出】】】・・・ブラッドがざっと避ける音
【ブラッド】
「……はっ。目を覚ますべきなのはおまえのほうだ、ハンプティ。
私が造り上げたこの空間に、美しくないおまえはそぐわない!」■■
【【【演出】】】・・・マシンガンの銃声
【【【演出】】】・・・ハンプティが跳躍して避ける音
【ハンプティ】
「……っと、危ないところだった!形にしろ音にしろ、その銃も品がなくて美しくないよね。
俺に持たせているこの斧も含めて、ボスは武器のセンスもいまいちだ。やっぱり、より美しいのはこの俺だよ!」■■
【ブラッド】
「品がないなどということはない。圧倒的な威力を備え持った、力と美に溢れる武器じゃないか。そこの夢魔のように貧弱なイメージの小銃より、よほどいい」■■
【ナイトメア】
「……なに、私か!?
というか、先刻から病弱だ貧弱だって酷いんじゃないか、帽子屋!私だってそれなりには……」■■
【ダンプティ】
「事実なんだから仕方がない。それとも、『私も美しいぞ』ってあの二人の間に入ってみるか?
僕は止めないぞ。むしろ、ますます面白くなりそうだから大賛成だ」■■
【ナイトメア】
「うぐ……っ。や、やめておこう。あの二人、すでに目がギラギラしているぞ……。
とても割って入る気にはなれない」■■
【【【演出】】】・・・マシンガンの銃声
【【【演出】】】・・・斧を振るう音
【【【演出】】】・・・金属音
【ハンプティ】
「く……っ、は!どうあっても自分が最も美しいと言い張るつもりなんだね、ボス!?」■■
【【【演出】】】・・・斧を振るう音
【【【演出】】】・・・ブラッドが避ける音
【ブラッド】
「……はっ、当然だ!誰よりも私が美しいことは、明らかだろう!」■■
【ハンプティ】
「分かった、そこまで言うなら、彼女に……、アリスに決めてもらおうじゃないか。
彼女は、今この世界で最も魅惑的な存在。俺が、この俺に誰よりもふさわしいと思っている卵だ」■■
【ブラッド】
「アリスに……?なるほど、我々にとって魅力的な女性である彼女に選ばせる。
彼女が選んだほうが、この世界で最も美しい存在だということか」■■
【ハンプティ】
「そういうこと。まあ、アリスが俺以外を選ぶことなんてあるはずないんだけど。彼女にあっさりフラれれば、ボスも諦めがつくだろう?」■■
【ブラッド】
「あっさりフラれるのはどちらだろうな。彼女は私の見込んだ、見る目のあるお嬢さんだ。おまえは選ばれない……、恥をかくのはおまえのほうだぞ?」■■
【ハンプティ】
「恥?美しい俺に、そんな言葉は存在しないよ。じゃあ、異存はないね?今すぐ目覚めて、彼女の意見を訊きに……」■■
【【【演出】】】・・・ナイトメアがザッと前に出る音
【ナイトメア】
「待て待て、そのイカレた状態でアリスのところに押しかけるつもりなのか?だったら、そんなことはさせられないぞ」■■
【ブラッド】
「なぜ邪魔をする、ナイトメア?私達を目覚めさせろ。
私とハンプティ、どちらのほうが美しいと思うか、お嬢さんに意見を訊きに行く」■■
【ナイトメア】
「だから、させられないと言っているだろう!彼女が選べるわけがない。答えを貰えなかったら、おまえ達はまた彼女の傍で争うに決まっている」■■
【ブラッド】
「そんなことはない、彼女は悩む余地もなく私を選ぶに決まっているからな」■■
【ハンプティ】
「いや、彼女は俺を選ぶに決まっている。だから早く目覚めさせてよ、ナイトメア」■■
【ダンプティ】
「そうだ、僕も含めて全員外の世界に戻してくれ。絶対、もっと面白くなる」■■
【ナイトメア】
「おまえ達は……っ。駄目だ、目覚めさせるわけにはいかない。帽子屋の薬の効果が切れるまで、ここでこうしているんだ」■■
【【【演出】】】・・・心の声的な効果↓
「効力が切れるまで、約2・3時間帯……。その間この三人を引き止めるのは、私にも集中力が必要だ。骨が折れるが、アリスのためだ、やむを得まい……」■■
【【【演出】】】・・・心の声的な効果↑
【ダンプティ】
「効果が切れるまで!?冗談じゃない、せっかく成功したんだから、もっと色々と試したいことがあるんだ!この二人を街にも連れ出したいし、他の役持ちにも会わせてみたいし……!」■■
【ナイトメア】
「そんなことをしたら、騒動が大きくなるだけだろう!
おまえは、不気味さを追求することに関しては、本当に厄介な性格だな」■■
「駄目だ。おまえ達は全員、目覚めさせない!
帽子屋が元に戻るまでは、私がここでおまえ達を監視する!」■■
【【【演出】】】・・・がしゃーんと、檻が上から降ってくる
【【【演出】】】・・・振動で地響きのような音
【ブラッド】
「!!なんだ、これは!?鉄格子……、これは、檻か?」■■
【ハンプティ】
「ああ、巨大な檻だ。なんてことをするんだ、ナイトメア!俺達全員を、こんな檻に閉じ込めるなんて!
俺を閉じ込めて、この美しさをずっと眺めていたい気持ちは分からないわけじゃないけど!」■■
【ナイトメア】
「そんなことはこれっぽっちもしたくはない!逃がさないために決まっているだろう!」■■
【ブラッド】
「本気で私達を夢の中に留め置くつもりなのか……!く……!」■■
【【【演出】】】・・・マシンガンの音
【【【演出】】】・・・檻に銃弾が当たる音(弾く金属音)
【ダンプティ】
「ボス……!よし、僕も手伝います、ボス!」■■
【【【演出】】】・・・ダンプティが斧を出す音
【【【演出】】】・・・がきんっと檻の柵に斧の刃を立てる音
【ナイトメア】
「はは、無駄だよ、帽子屋、ダンプティ。君達の夢でもあるが、ここは私の領域だぞ。私が出したものが、そう簡単に壊れるわけがないだろう」■■
「しばらく、そこでおとなしくしているんだ。帽子屋がまともな状態に戻ったら、出して……、んんっ!?」■■
【ハンプティ】
「ん?どうしたんだい、ナイトメア?急におかしな声を出して?何か思い出したの?」■■
【ナイトメア】
「な、何でもない。とにかく、おまえ達は外には出させない!」■■
【【【演出】】】・・・心の声的な効果↓
「……今、たしかにアリスの気配がした。しかも、近付いてきている……。
どうやら、彼女も眠りについたようだな。しかも、頻繁に私と会っているせいで、無意識のうちにこちらに引き寄せられている」■■
「このままでは、彼女のほうからこの空間に入ってきてしまうぞ。それはまずい、収拾しかけたものも駄目になる。どうにかしなければ……!」■■
【【【演出】】】・・・心の声的な効果↑
【ブラッド】
「おい、芋虫、どうしたんだ?何だか焦っているように見えるが?」■■
【ナイトメア】
「あ、焦ってなどいないとも!……私は少し用事を思い出した。しばらくここを離れるが、私が去ろうとその檻は消えない。破壊しようなどと無駄なことは考えず、じっとしているんだ!」■■
【【【演出】】】・・・ナイトメアが消える音
【ダンプティ】
「え!?あ、おい……!
消えてしまったか……、どこに行ったんだ、あいつは……?」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(帽子屋領・街(主人公の夢))
【【【演出】】】・・・人のざわめき(街の喧騒)
【【【演出】】】・・・ナイトメアの出現音
【ナイトメア】
「うん?この風景は、帽子屋領の街か?そうか、アリスは領土内を歩いている夢をみているんだな」■■
【【【演出】】】・・・人のざわめき(街の喧騒)
【ナイトメア】
「アリスはどこに……、ああ、いたいた、通りを歩いているな。きょろきょろして……、やはり、無意識のうちに夢の空間にいる同居人の気配を感じているのか。彼らを捜し歩く夢でもみているに違いない」■■
【【【演出】】】・・・ナイトメアがアリスに駆け寄る足音
【ナイトメア】
「アリス!……そんなに驚かなくてもいいだろう、君が私の領域に入った気配を感じたので、会いに来たんだ。君は、どこを目指して歩いているんだ?」■■
「……ん?帽子屋とマッド・ツインズが近くにいるような気がして歩いていた?いや、それは君の気のせいだよ、アリス。この先には何もない……、夢の終わりがあるだけだ」■■
【【【演出】】】・・・ナイトメアがアリスの腕を掴む音
【ナイトメア】
「こちらへおいで、アリス。私がいいものを見せてあげよう。ほら、あそこだ。通りの隅に、人が集まっているところがあるだろう?」■■
【【【演出】】】・・・ぐいぐい引っ張る音
【【【演出】】】・・・速めの足音二人分
【【【演出】】】・・・人の歓声、口笛など(楽しげなもの)
【ナイトメア】
「ああ、盛り上がっているな。……え?この人だかりは何かって?そうか、君は背が低いから、後ろのほうではあまり見えないな」■■
【【【演出】】】・・・ぱちんと指を鳴らす音
【ナイトメア】
「ほら、これで最前列だ。……はは、割り込みだなどと気にする必要はないさ。
これは夢なんだから、誰も怒ったりしない」■■
「よく見えるだろう?……そうだよ、大道芸人の一人芝居だ。見ていくといい、絶対に面白いから」■■
【【【演出】】】・・・大道芸の陽気な音楽
【【【演出】】】・・・どっと人の笑い声
【ナイトメア】
「……ん、そうか、気に入ったか。それはよかった。
……え?どうしてこんなものを見せてくれるのか、って?」■■
「それは、君をアホでナルシストな男達から守りたいから……、ああいや、何でもない。しばらくこれを見ていくといい。終わったら、気持ちよく目覚められるだろう」■■
「私は一緒に見ていかないのか、って?すまない、事情があって、ずっと一緒にはいられないんだ。また別の機会にゆっくり話そう」■■
【【【演出】】】・・・大道芸の陽気な音楽
【【【演出】】】・・・どっと人の笑い声
【ナイトメア】
「ほら、盛り上がっているぞ。私と話していると物語の筋が分からなくなるだろう、芝居を見ているといい。もう少しだけ、一緒にいるよ。ああ、それと……」■■
【【【演出】】】・・・ナイトメアがアリスの額に触れる音
【【【演出】】】・・・アリスが驚いてざっと後ろに足を引く音
【ナイトメア】
「逃げないでくれ……、と言っても、急に額に触れられれば、驚くのも無理はないが。
驚かせてすまない。しかし、君のために必要なことなんだ」■■
「『なぜ必要なのか』?それは、詳しくは話せないんだが……、君が気持ちよく目覚めるための、まじないのようなものだよ。だから、許してくれないか」■■
「……ああ、許してくれるのか、ありがとう。では、もう一度……」■■
【【【演出】】】・・・ナイトメアがアリスの額に触れる音
【ナイトメア】
「…………。……よし、これでいい。これで、君は安全だ。では、芝居を見ようか」■■
【【【演出】】】・・・大道芸の陽気な音楽と歓声、口笛などがフェードアウト
【【【時間経過】】】
● 場面(ナイトメアの夢)
【【【演出】】】・・・流星が降るキラキラ音
【【【演出】】】・・・風の音
【【【演出】】】・・・ナイトメアの出現音
【ハンプティ】
「あ、帰ってきた!どこに行っていたんだい、ナイトメア!俺達を閉じ込めたまま放置するなんて、許し難い冒涜だよ!この俺に、檻だなんていう情緒のないものを被せるなんて!」■■
【ブラッド】
「同感だな。敵前逃亡とは美しくないじゃないか、芋虫。正々堂々と闘ったらどうなんだ?」■■
【【【演出】】】・・・小声の独り言↓
【ナイトメア】
「はあ、うるさいところに戻ってきてしまったな。私だって、できることならアリスと二人で芝居を見続けたかったさ。しかし、そうもいかない」■■
「アリスには、こちらの気配を感じ取られないように暗示もかけておいた。これであの大道芸が終われば、そのまま目覚めてくれるだろうが……」■■
【【【演出】】】・・・小声の独り言↑
【ブラッド】
「何をぼそぼそ話している?小声で話されても聞こえないぞ?」■■
【ナイトメア】
「気にするな、ただの独り言だ。そんなことより、まだ効力が薄まってきている気配はないのか、ダンプティ?
『美しい』・『美しくない』と馬鹿みたいに繰り返して。いいかげん、うんざりなんだが」■■
【ダンプティ】
「2・3時間帯は効果が持続するはずだと言っただろう。まだそれほどは経っていないはずだ、もうしばらくは続く」■■
【ナイトメア】
「そうか、まだ終わらないのか。まったく、おまえはとんでもないものばかり発明するな。ハンプティのようなキャラクターは、一人いれば充分だろう。二人も三人も増やしてどうするんだ……」■■
【ダンプティ】
「もちろん、先刻みたいな競い合いが不気味で面白いからに決まっている。けど、おまえがこんなものに閉じ込めてくれたせいでそれも台無しだ」■■
【ナイトメア】
「台無し?どういうことだ?」■■
【【【演出】】】・・・カンカン、と檻を叩く音
【ハンプティ】
「君がいない間、何とかこの檻を壊そうと試行錯誤していたんだよ。体力を使いすぎて、さすがに疲れた。夢の中なのに疲れるっていうのもおかしな話だけど」■■
【ブラッド】
「まったく美しくない展開で面白くないが、同じくだ。マシンガンを乱射しすぎて腕が疲れた、もうだるい」■■
【ナイトメア】
「はは、そうなのか。それはよかった、私も努力した甲斐があるというものだ」■■
【ダンプティ】
「よくないだろう!苦労して造り上げた爆弾だったのに……!街に出て、もっと色々と面白い展開を追求したいのに!」■■
【ナイトメア】
「元はと言えば、予想外の副作用で帽子屋が気を失ったのが失敗だったんだろう?私だけのせいでもないと思うぞ?」■■
【ダンプティ】
「う!そ、それは……!」■■
【ナイトメア】
「まあいいじゃないか。ほら、疲れたなら座って休んだらどうだ?おまえ達が美しいと称賛する流星が、今もこんなに降り続けているんだ。のんびり眺めながら過ごせばいい」■■
【【【演出】】】・・・キラキラ音
【ブラッド】
「おや、流星の光が増したな。今度はおまえの仕業か、ナイトメア?
たしかにこれは美しいが、やはり最も美しいのはこの私で……」■■
【ハンプティ】
「まだそんなことを言っているの、ボス!?最も美しい卵は俺だよ、お・れ!流星よりも、ボスよりも、この俺が世界一眩しく輝く一等星なんだ!」■■
【ブラッド】
「おまえこそ、まだそんなことを言っているのか、ハンプティ?その斧の刃に、自分の顔を映してよく見てみるといい。私にはまったく及ばないということがすぐに分かる」■■
【ハンプティ】
「あっ、その言葉、そっくりそのままボスに返してあげるよ!ほら、ボスこそ自分の顔を映してみなよ!」■■
【【【演出】】】・・・カチャッと斧を動かす音
【ブラッド】
「ん?ほう、私の顔が映っているな。美しいじゃないか……、ため息が漏れる。この美しさは、存在自体が罪に値するほどだな……」■■
【ナイトメア】
「うっとりするな、帽子屋!気色が悪すぎる!おまえが罪人なのは美しさとは関係ないだろう!」■■
【ハンプティ】
「そうだよ、ボスは気色悪い!真に美しいのはこの俺だけだ!」■■
【ダンプティ】
「僕は、どっちも不気味で面白いけどな。はあ、派手なやり合いをする体力は尽きたようだが、まだ口論する気力はあるみたいだから、これで我慢するか……」■■
【ナイトメア】
「何が『我慢するか』だ!言っておくが、最も我慢しているのはこの私だぞ!こんなことなら、帽子屋を引き寄せるんじゃなかった」■■
「……いや、しかし、そうすると目覚めた後に現実で同じような口論をして、最後はアリスに決断を迫ったかもしれないな。そう考えると、私が対処できてよかったのか……」■■
【ブラッド】
「ん?アリス?今、アリスと言ったか?彼女がどうかしたのか、ナイトメア?」■■
【ナイトメア】
「どうもしない!いいから、おまえは早く元に戻ってくれ。ただでさえ迷惑な男のくせに!ナルシストは、ハンプティ一人で充分だ!」■■
END