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PSP版・店舗特典ドラマA

『ハートの国のアリス~Twin World~ ■PSP版・店舗特典A(前)』

「ハートの国のアリス・Wonderful Twin World・店舗特典A CD」用
ドラマ台本
スタッフ・声優用

QuinRose

原作・脚本 五月攻
編集・音楽 鞠

ペーター=ホワイト     CV:宮田幸季さん
ボリス=エレイ        CV:杉山紀彰さん
ハンプティ&ダンプティ   CV:岡本信彦さん

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1:プロローグ(ペーター・ボリス・ダンプティ)

● 場面(遊園地・園内)
【【【演出】】】・・・賑やかなBGM
【【【演出】】】・・・人のざわめき、歓声
【【【演出】】】・・・アトラクションの走行音(ジェットコースターなど)
【【【演出】】】・・・ボリスとダンプティが歩く足音
【ボリス】
「クレイジー・ストームが終わって、今で何時間帯目だっけ?けっこう経つけど、なかなか客足が引かないんだよな~」■■
【ダンプティ】
「5時間帯目だ。今回の嵐は、いつも以上に慌ただしかったからな。住民も、祭り気分がなかなか抜けないんだろう」■■
【ボリス】
「そうみたいだね~」■■
【ダンプティ】
「なんだ、遊園地が繁盛しているんだ、いいことだろう?」■■
【ボリス】
「まあ、そうなんだけどね。なんかいつまで経っても騒々しいから、あんまり終わったって感じがしなくてさ」■■
【ダンプティ】
「終わった実感がなくても、間違いなく嵐は終わった。……そういえばおまえ、自分に起こっていた変化は確認したのか?」■■
【ボリス】
「ん?ああ、一応しているよ」■■
【ダンプティ】
「どんな変化だったんだ?」■■
【ボリス】
「それがさ、すっごくつまんなかった。……ガキになってたんだって。ちょうど、おまえくらいの」■■
【ダンプティ】
「僕くらいの年齢に?それはたしかにつまらないな。そんなの、その気になればいつでもなれるじゃないか」■■
【ボリス】
「そうなんだよ。どうせなら、嵐でしか起こり得ないような面白い変化だったらよかったのに。おっさんにも『くだらねえ変化だった』って笑われちゃったぜ」■■
「あ、けど、アリスは驚いていたみたいだ。この間、そう言っていた」■■
【ダンプティ】
「アリスが?そうか、あいつは余所者だからな。僕達にはつまらなくても、余所者にとっては驚くべき変化だ」■■
【ボリス】
「驚いただけじゃなくて、気に入っていたみたいだよ。可愛かった、もっと見ていたかったって言われてさ。別にいつでもなれるって言ったら、もう一回なってほしいって頼まれたぜ」■■
【ダンプティ】
「アリスが気に入っていた?可愛かった、だって……?」■■
【【【演出】】】・・・立ち止まる足音
【ボリス】
「……と、着いたぜ、バンジージャンプ。貸し切りにしてあるから、飛び降り放題だ。さっ、とりあえず上まで上ろうぜ!」■■
【【【演出】】】・・・カンカンと金属製の階段を上り出す足音
【ボリス】
「……ダンプティ?なんで立ち止まっているんだ?早く上ってこいよ?」■■
【ダンプティ】
「あ、ああ……、悪い。ちょっと考え込んでいた」■■
【【【演出】】】・・・カンカンと金属製の階段を上る足音(急ぎ足)
【ボリス】
「考え込んでいた?何を?」■■
【ダンプティ】
「おまえが子供になった姿が、アリスに気に入られていたってことについてだ。おまえ、ちょっと気をつけたほうがいいかもしれないぞ。ハートの宰相……、ペーター=ホワイトに」■■
【ボリス】
「宰相さんに気を付ける??何、それ?どういうことだよ?」■■
【ダンプティ】
「実はあいつ、嵐が終わってしばらく経った頃に、街を巡回中のエリオットと僕達に襲い掛かってきたんだ。
エリオットがアリスをたぶらかしたのが許せない、とかいう理由で」■■
【ボリス】
「ナンバー2さんが、アリスをたぶらかしたぁ?え、そうなの??ていうか、それと俺が宰相さんに気を付けなきゃいけないの、どう関係があるわけ?」■■
【ダンプティ】
「事実なわけがないだろう、エリオットにそんな甲斐性はないよ。白ウサギの言い掛かりだ」■■
【ボリス】
「甲斐性ないって。それ、ナンバー2さんが聞いたらおまえが襲い掛かられると思うぜ」■■
【ダンプティ】
「構わない。エリオットとやり合うのなんて、いつものことだ。
……話を戻すが、エリオットは嵐の期間中、ウサギの姿に変身するようになっていたんだ」■■
【ボリス】
「ウサギの姿に?って、元からウサギだけど……、動物のウサギ姿、ってこと??」■■
【ダンプティ】
「そういうこと。アリスはその姿が可愛いって、えらく気に入って。白ウサギは、それが気に入らないらしい」■■
【ボリス】
「それで、嵐も終わったっていうのにナンバー2さんに襲い掛かってきたって?相変わらずアリスのことになると、嵐なんて関係なしにイカレているね、宰相さんは」■■
【ダンプティ】
「ああ、イカレている。あいつが、おまえの子供姿もアリスに気に入られていたってことを知ったら……」■■
【ボリス】
「俺のところにも乗り込んでくるかもしれない、って言うんだな?」■■
【ダンプティ】
「そういうことだ。杞憂かもしれないけど、気をつけておくに越したことはない」■■
【ボリス】
「大丈夫じゃないの?ナンバー2さんの変化は、同じウサギだけに対抗心が燃え上がったんだろ?俺もアリスに気に入られたとはいえ、人間だし」■■
【ダンプティ】
「そうだといいんだけどな。一応、注意はしておけよ」■■
【ボリス】
「分かったよ。気をつけておく……、一応ね」■■
【【【時間経過】】】
● 場面(ハートの城・執務室)
【【【演出】】】・・・ペラペラ書類を繰るような音
【ペーター】
「ふう……、兵士に調査を命じたものの、なかなか報告が上がってきませんね」■■
【【【演出】】】・・・ペラペラ書類を繰るような音
【ペーター】
「三月ウサギには警告をすませたものの、他の連中についての情報がまだまだ足りない。
速やかに調べ上げるよう命じたのに、こんなに報告が遅いとは……」■■
【【【演出】】】・・・トントン指で机を叩く音
【ペーター】
「ああ、苛々しますね。仕事も手に付きません。やはり顔なしの兵士風情に任せるべきではなかったでしょうか……」■■
【【【演出】】】・・・ノックの音
【ペーター】
「……!やっと報告が来ましたね。開いています。入りなさい」■■
【【【演出】】】・・・ドアの開閉音
【【【演出】】】・・・室内に入ってくる兵士の足音
【ペーター】
「待っていましたよ。ええ、前置きなどいりません、私が命じた調査の結果報告でしょう。
簡潔に、結論のみを説明してください」■■
「……ふむ……、そうですか。チェシャ猫が若返った姿が可愛いと、アリスが喜んでいた、と。
嵐が終わってからもその姿を見たいと強請るなんて、よほどの気に入り様ですね」■■
「……よく分かりました。君はもう下がっていただいて結構です」■■
【【【演出】】】・・・部屋を出て行く兵士の足音
【【【演出】】】・・・ドアの開閉音
【ペーター】
「やはり動物は侮れませんね。三月ウサギのように動物姿ではないものの、今度は若くなってアリスの気を引こうとするとは。若返るくらいこの世界では何でもないことですが、見慣れないアリスには新鮮でしょうし……」■■
【【【演出】】】・・・がたっと椅子から立ち上がる音
【ペーター】
「次のターゲットは決定しましたね。そうと決まれば、仕事などしている場合ではありません。さっそく出掛けましょう。
待っていなさい、チェシャ猫。アリスの気を引いて僕の恋路を邪魔しようとする輩は、一人残らず成敗してやります!」■■
【【【時間経過】】】

 

2:前説(ペーター・ボリス・ハンプティ&ダンプティ)
【【【演出】】】・・・ぴんぽんぱんぽん、とお知らせ風の音
【ハンプティ】
「ちょっとちょっとちょっと!呑気にぴんぽんぱんぽ~ん♪なんて鳴らしている場合じゃないよ!どういうことだい、これは!?」■■
【ボリス】
「落ち着けよ、ハンプティ。にゃに?なんでいきなりそんな怒ってんの?」■■
【【【演出】】】・・・どたばた暴れる音
【ハンプティ】
「怒るに決まっているだろう!それどころか、信じられないよ!プロローグに、俺だけ出番がないなんて、間違っているとしか思えない!!」■■
【ペーター】
「やかましいですね、暴れないでください。……物語の展開上、冒頭部分にあなたは必要なかったということでしょう。そういうことも、往々にしてありますよ」■■
【ハンプティ】
「この俺が必要ない……?あるわけがないだろう、そんなこと!君達ならまだしも、この世界一美しい俺が必要ないなんて、有り得ない!」■■
【【【演出】】】・・・どたばた暴れる音
【ハンプティ】
「むしろ、このCD、最初から最後まで俺一人だけでもいいくらいだ。大して美しくもない脇役なんて、必要ない。うん、脇役なんていないほうが、聴いている皆も俺の美しさに集中できていいと思う!」■■
【ペーター】
「……相変わらず、この男の頭は完全にネジが飛んでいますね。黙っていないでどうにかしてください、あなたの片割れでしょう?」■■
【ダンプティ】
「……え?あ、何か言ったか?気色の悪いハンプティを眺めるのに夢中で聞いていなかった」■■
【ボリス】
「おとなしいと思ったら、見惚れてたのか……。おまえらって、ほんとおかしな兄弟だよな~」■■
【ハンプティ】
「そう、俺は見惚れてしまうくらいの美しさを備えた、物語の主役を張るに相応しい卵だ。それなのに、プロローグで出番がないなんて……!」■■
【ボリス】
「あーもう、その話はいいって!前説がちっとも進まないだろ!」■■
【ペーター】
「説明が進まないどころか、始められてもいませんよ。たしかに、放っておいて進めたほうがよさそうですね。
……このCDは、クインロゼより発売されたPSPゲーム『ハートの国のアリス~Wonderful・Twin・World~』店舗特典CDです。今、こうして聴いてくださっているんですし、もちろんお分かりですよね?」■■
【ボリス】
「特典だから、このドラマCDは、当然ゲーム本編の内容に沿ったものになっているよ。つまり、ゲームをプレイしてから聴いたほうが楽しめるってことだ。あんたはまさか、ゲームをプレイ前に聴いている、なんてせっかちな子じゃないよね?」■■
【ペーター】
「ええ、それはいけません。プレイ後に聴くというのが前提のドラマですから、ゲーム本編のネタばれが出る可能性もあります。それに、僕達のことをよく知らない状態で聴いても、あまり楽しめはしないでしょう」■■
【ボリス】
「宰相さんの言う通り。もしプレイ前に聴いちゃっているんだったら……」■■
【【【演出】】】・・・どんっとぶつかる音
【ハンプティ】
「ストーップ!!!」■■
【【【演出】】】・・・ボリスがたたらを踏む音
【ボリス】
「にゃっ!!?いった~!……わ、とっ、と……、よろける!
おい、全力でぶつかってくるなよ、痛いだろ!」■■
【ハンプティ】
「ぶつかりもするよ!黙って聞いていれば、今度は俺を無視して勝手に説明を進めていく気!?
この俺に喋らせないつもりなのかい、君達は!?
は……っ、さては、俺の美しさに嫉妬して、嫌がらせをしているんだね!?」■■
【ボリス】
「はああ……?何言ってんの?あんたが前説の頭でいきなり騒ぎ出して説明が進んでいないから、俺達がちゃっちゃとすませてあげているんだろ?」■■
【ペーター】
「それを、今度は嫌がらせ呼ばわりですか。僕にはあなたのほうが嫌がらせをしているように見えますけどね」■■
【ダンプティ】
「まあまあ、そう言ってやるな、ボリス、白ウサギ。ハンプティはこれでも真剣だ。それに、これがこいつの魅力なんだ、大目に見てやってくれ」■■
【ペーター】
「魅力?どこに魅力があるっているんです?」■■
【ハンプティ】
「魅力なら、俺の全身から溢れているだろう!ほらほら、よく見て、白ウサギ!」■■
【【【演出】】】・・・ぐいぐい身を寄せてくる音
【ペーター】
「わ……、ちょ、ちょっと、詰め寄るのはやめてください。気色が悪い!」■■
【ハンプティ】
「気色が悪い!?この溢れんばかりの美を備えた俺の、どこが気持ち悪いっていうんだ!?」■■
【ペーター】
「気持ち悪いだけでなく汚いです!雑菌が飛んでくる!」■■
【ハンプティ】
「な、な、なんだって!?俺が汚い!?この美の象徴である俺が!?」■■
【ダンプティ】
「面白いなあ……、思う存分騒いでいいぞ、ハンプティ。おまえの分も、説明は僕がきっちりすませてやるから。
さて、このドラマCDは企画ものに当たる。ゲーム外のものということだ。このドラマCDの中で起こることは、あくまでここだけの話だということを理解しておくようにな」■■
【ボリス】
「おまえも相当自由だよね、ダンプティ」■■
「……企画ものなんだから、俺達の人間関係も微妙に変わっているかもしれないよ。本編ではあまり親しくないキャラクター同士が仲良くしていたり、逆に険悪な関係になっている、っていうように」■■
【ダンプティ】
「本編前提での企画ものだからな。ゲームでの関係を、多少アレンジしていたりするということだ。
だが、くれぐれもこれを通常の関係だとは思うなよ。裏設定というわけでもない」■■
【ペーター】
「いや、あなた達!説明をするのもいいですけど、こっちの卵もどうにかしてください!
僕から離れなくなっちゃったんですけど!!」■■
【【【演出】】】・・・ぐいぐい押し返そうとして揉み合う音
【ハンプティ】
「どうして俺を見ようとしないんだ、白ウサギ!ほら、ちゃんとこの美しい俺を見て!!」■■
【【【演出】】】・・・ぐいぐい押し返そうとして揉み合う音
【ペーター】
「見たくないと言っているでしょう!く……っ、どんなに押し返そうとしても離れない……!雑菌が移ります!汚い!」■■
【ハンプティ】
「だから、俺のどこが汚いっていうんだ!?こんなに美しい俺に対して汚いだなんて!」■■
【【【演出】】】・・・ぐいぐい押し返そうとして揉み合う音
【ボリス】
「おーい、ハンプティ。あんた、一言くらい説明しとかないと、マジで終わっちゃうけどいいの?」■■
【ハンプティ】
「え!?なんだって、もう終わるのか!?」■■
【【【演出】】】・・・ばっとペーターから離れる音
【【【演出】】】・・・だだだっと走ってくる音
【ハンプティ】
「プロローグだけでなく、前説でもろくに喋れないなんて!信じられない仕打ちだけど、とりあえず説明は何が残っているんだい?」■■
【ボリス】
「何って、後は最後の締めだけかな?」■■
【ハンプティ】
「最後の締め?残り物のようだけど、締め括りと考えれば美味しくもあるような……。いや、美しい僕がいつまでも文句を言っていても仕方がない、ここは前向きに考えよう」■■
【ペーター】
「……よく言いますね。前説の間中、文句しか言っていなかったと思いますけど」■■
【ハンプティ】
「脇役の彼らが説明した通り、要は企画ものと把握したうえで聴いてほしいということと、ネタバレになるから絶対にゲームプレイ前には聴かないでほしいということだ。可愛い君なら、ちゃんと分かってくれたよね?」■■
「それじゃあ、前説はここまで。こうなったら早くドラマのほうに進もう。皆は、俺の出番のところまで早送りしてしまえばいいよ」■■
【ボリス】
「それじゃ話が分からなくなるだろ……。こんな奴の言うことは気にしないでいいから、ちゃんと順番に聴いてね?」■■
【【【演出】】】・・・ぴんぽんぱんぽん、とお知らせ風の音

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