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ハートの国のアリス

『PSP版・アニバーサリーの国のアリス・予約特典 ■PSP版・予約特典(後)』

3:本編

●場所(ハートの城の武器庫)
【エリオット】
「はあっ、はー……。ったく、何だったんだよ、先刻の声は!」■■
【エース】
「はは、不思議だったね。噂は知っていたけど、実際に声を聞いたのは初めてだぜ。こういうのもいい経験だよな!」■■
【エリオット】
「どこがだよ!」■■
【ユリウス】
「医務室から出て適当な部屋に入り込んでしまったが、ここは……、武器庫か?」■■
【エース】
「お、その通り。ここは武器庫だよ。はは、よくわかったなあ」■■
【ユリウス】
「こんなに大量に武器が並んでいるのを見れば、誰だってわかるだろう」■■
【エリオット】
「本当だぜ。銃に、剣、槍、弓まで……。ふん、さすがに城だけあって、一通り揃っているじゃねえか」■■
【エース】
「そうだね。色んな武器が置いてあるよな~」■■
【ユリウス】
「エース……。おまえは仮にもこの城の軍事責任者だろう。他人事のように言っているが、この武器庫はおまえの管理下にあるんじゃないのか?」■■
【エース】
「う~ん、そうなんだけど……。ほら、ここって結構わかりづらい場所だろ?だから、報告は受けるものの来ることはほとんどなくってさ。はは、久しぶりだぜ~」■■
【ユリウス】
「この場所のどこがわかりづらいというんだ。変な道や隠し扉があるわけでもあるまいし、医務室のような不気味な逸話も……」■■
【【【演出】】】・・・風の音
【ユリウス】
「……っつ!?
【【【演出】】】・・・風の音
【ユリウス】
「あ、ああ、なんだ、外の風か……」■■
【エリオット】
「はっ、何びびってんだよ、時計屋。気の小さえ野郎だぜ」■■
【ユリウス】
「何だと?私は風の音に驚いただけだ。おまえこそ、医務室では妙な声に脅えていただろう」■■
【エリオット】
「へっ、強がりはみっともねえぜ?ま、ここも暗い上にいわくありげな武器が大量で、いかにも何か出そうな部屋だもんな~。また先刻みたいな噂とかあるんじゃねーの?」■■
【エース】
「お、勘がいいなあ。そうそう、この部屋にも噂があるんだ!」■■
【エリオット】
「って、マジであるのかよ!?冗談のつもりだったんだがよお……」■■
【エース】
「だって、ここは武器庫だぜ?何十人もの兵士を殺した銃や、血塗られた歴史を持つ剣なんかがたくさんあるんだ。だからこの武器庫も、どこからともなく殺された者の声が聞こえてくるって噂で……」■■
【エリオット】
「ハートの城っつうのは、遊園地のホラーハウスみたいだな……」■■
【エース】
「よりリアルで大掛かりな、ね」■■
【ユリウス】
「くだらん。幽霊なんて存在しない。医務室での声だって、どうせ集団幻聴か何かだろう」■■
【エリオット】
「集団幻聴って、それもどうかと思うけどよ……」■■
【ナイトメア】
「そうだぞ……。幻聴なんかじゃあない……」■■
【エリオット】
「って、げっ!この声だ、また聞こえてきやがった!」■■
【ナイトメア】
「いいか、おまえ達、よく聞け……」■■
【エリオット】
「くそっ、幻聴なんかに惑わされたとなっちゃ帽子屋ファミリーの名折れ……」■■
【【【演出】】】・・・銃声
【ナイトメア】
「なっ!?何をするんだ!いきなり銃を撃つなんて……!」■■
【エリオット】
「ちっ、やっぱり効かねえか?声だけで体がねえんだもんな……。幽霊ってのは厄介なもんだぜ」■■
【ナイトメア】
「なっ!ゆ、幽霊とは、私のことか……!?」■■
【【【演出】】】・・・銃声
【エリオット】
「撃っても殺せねえなんて、気色悪いっつうの!」■■
【【【演出】】】・・・銃声
【ナイトメア】
「こ、こら!気色悪いとはなんだ!」■■
【【【演出】】】・・・銃声
【ナイトメア】
「そんなことをしても無駄だ!やめろと言っているだろう!こらーっ!」■■
【エリオット】
「あー、やっぱり銃じゃ駄目だ。おい時計屋!おまえ陰気臭いんだし、除霊の札かなんか持ってねえのかよ?」■■
【ユリウス】
「そんなもの、私が持っているはずがないだろう……」■■
【エリオット】
「ちっ、使えねえな。騎士、おまえはどうなんだよ。この城に住んでいるんだから、何かいい対策知らねえのか?」■■
【エース】
「う~ん、そうだなあ……。俺だって除霊のお札なんか持ってるはずないけど……、こんなのはどうかな?」■■
【【【演出】】】・・・ごそごそと薬を取り出す音
【ナイトメア】
「なっ!?そ、それは……!」■■
【エリオット】
「なんだ、それ?ただの薬じゃねえか。なんでそんなもん持っているんだ?」■■
【エース】
「ほら、俺って旅が好きだからさ。旅には、薬も必需品だろ?丁度手持ちを切らしていたから、先刻医務室に行ったときに取ってきておいたんだ」■■
【エリオット】
「盗んできたのかよ……」■■
【エース】
「ええ?やだなあ、盗んでなんかいないよ。俺だってこの城に住んでいるんだから、持ち出したって構わないはずだろ?」■■
【エリオット】
「いや、それでも勝手に持ち出したらまずいだろ。大体、薬なんかが幽霊に効くかよ」■■
【エース】
「ははは、試してみればいいんじゃないかな。えいっ」■■
【【【演出】】】・・・薬の蓋を外す音
【ナイトメア】
「なっ!い、嫌だ!薬は嫌だっ!」■■
【ユリウス】
「ん……?意外と効いているのか?」■■
【エース】
「ははっ。実際飲ませられるわけでもないのに、面白いよなあ。拒絶反応ってやつなのかな?」■■
【ナイトメア】
「く、くそう、駄目だ、薬は嫌いだ……!」■■
【エリオット】
「それにしても、けっこう臭いのキツイ薬だな。うお……、飲んだらすっげー苦そうだ」■■
【ユリウス】
「ふむ。漢方か?まあ、体によさそうではあるな」■■
【ナイトメア】
「く……。お、おまえら、覚えていろよ~!」■■
【【【演出】】】・・・声がフェードアウトしてゆく
【エリオット】
「……お、静かになったな。いなくなったのか?」■■
【ユリウス】
「みたいだな。なんなんだ、一体……。わけがわからないな」■■
【エリオット】
「薬で成仏したのか?変な幽霊……。っと、まあいい。こんなことしてる場合じゃねえ、早くアリスを探しに行こうぜ!」■■
【【【演出】】】・・・足音×3
【【【時間経過】】】
●場所(ハートの城の処刑場)
【エリオット】
「ああ、くそっ!全然アリスが見つからねえじゃねえか!」■■
【ユリウス】
「喚くな、鬱陶しい。おまえはもう少し冷静になれないのか?」■■
【エリオット】
「冷静になんてなれるかよ!こうしている間にも、アリスがあの変態ウサギに××××れたり××××ったりされているのかと思うと……!」■■
【ユリウス】
「っ!おい、妙な想像をさせるな!」■■
【エース】
「え、アリスが××××で××××だって?エリオットってば××××だな~。はははっ」■■
【エリオット】
「笑い事じゃねえよ!畜生、アリス……。あんなに笑顔で、一緒ににんじん料理を食べようって約束してくれたのに……。どこに行っちまったんだ……?」■■
【ユリウス】
「舞踏会で会えなかった程度で今生の別れを言うには早いと思うが……」■■
【エリオット】
「くそっ!俺がもっと早くペーター=ホワイトの策略に気付けていたら……!俺がしっかりしていなかったせいで、アリスを危険な目に……!」■■
【ユリウス】
「おい、策略といっても、まだ何かあったと決まったわけでは……」■■
【エリオット】
「何もないって言えるのか!?相手はあの変質者!いや、人じゃなくてウサギ!腹黒ストーカーウサギだぜ!?」■■
【ユリウス】
「まあ、中身には大分問題のあるウサギだがそれはおまえも同じこと……、いずれにしてもアリスを傷つけるとは思えないが、ともかく白ウサギの部屋へ……。で、ここはどこなんだ?また変な部屋に入り込んでしまったようだが……」■■
【エース】
「ああ。ここは、処刑場だよ」■■
【【【演出】】】・・・ピシリと、空気が凍る音
【エリオット】
「……は?」■■
【エース】
「ん?だからさ、ここは、処刑場。何度も言わせないでよ、はは。長い耳がついているのに、ウサギさんって耳が悪いんだな~」■■
【エリオット】
「あのな、おまえこそ何度も言わせんなよ……、俺はウサギじゃねえ!」■■
【ユリウス】
「はあ……。あの女王のことだ。城内に処刑場があることくらい予想はしていたが……。ここもまた不気味というか、妙な噂などいくらでも転がっていそうだな」■■
【エース】
「当たり。なんてったって処刑場だからね、その手の噂は絶えないぜ?」■■
【エリオット】
「またかよ……。ったく、なんで先刻からこう変な場所にばっかり来ちまうんだ?」■■
【ユリウス】
「変な場所にいきあたるというか、どこもかしこもそういう場所ばかりだというのが正しいのではないか……」■■
【エリオット】
「城全体が呪われていそうだな……」■■
【エース】
「まあまあ、二人とも。たまにはこういう旅もスリルがあっていいじゃないか。うん、『ハートの城・ミステリーツアー』って感じかな。ははははっ」■■
【エリオット】
「全っ然よくねえよ!何がミステリーツアーだ!」■■
【ナイトメア】
「こら~……」■■
【エリオット】
「……って、げっ!まーた変な声が聞こえてきたぞ!?」■■
【ナイトメア】
「し、失礼な!変な声なんかじゃあないぞ!」■■
【ユリウス】
「うむ、どこかで聞いたことがあるような気もするんだが……。それにしても、不気味な声だな」■■
【エース】
「さすがミステリーツアー……。素敵に不気味だ……」■■
【ナイトメア】
「不気味とはなんだ、不気味とは……!んっ!?お、おまえは……!?」■■
【エース】
「あれ、どうしたんだ?なんだか声の様子がおかしくなったけど……」■■
【ユリウス】
「そうだな。まるで誰かを見つけたような……、いや、誰かに見つけられたのか?」■■
【ナイトメア】
「おっ、おまえは……。せっかく夢の空間に篭っていたというのに、こんなところにまで仕事を持ってきたのか!?」■■
【ユリウス】
「なんだ?よく聞き取れないな。ひどく脅えているようだが……」■■
【ナイトメア】
「お、おまえ……!?なんてものを持っているんだ!?そっそれは……、注射器じゃないか!」■■
【エリオット】
「んん?聞こえづれえな。何を持っているって?」■■
【ナイトメア】
「いっ、嫌だ!こっちへ来るな……。やめろ!死ぬ!そんなものを刺されたら、痛くて死んでしまう!」■■
【エリオット】
「な、なんだ!?そんなものを刺されたら死ぬって……!?」■■
【エース】
「よくわからないけど、すごく真に迫る感じだね。無理もないか。ここって処刑場だもんな~」■■
【エリオット】
「そうか……、こいつは、この処刑場で殺された幽霊だな!?」■■
【ナイトメア】
「なっ!?誰が幽霊だ……、くっ、ちゅ、注射器が……!嫌だ~、助けてくれ~!」■■
【エリオット】
「死んだ者は助けられねえっての!くそっ、駄目だ、この声、耳を塞いでも聞こえてくる!」■■
【ナイトメア】
「痛いのは嫌だっ!来るな!来ないでくれーっ!」■■
【ユリウス】
「怖くはないが騒がしい……、早く別の場所へ移るぞ!」■■
【【【演出】】】・・・バタバタと去ってゆく足音×3
【ナイトメア】
「……はー。注射なんて大嫌いだ……。グレイのことはなんとか撒いたが、あいつらは相変わらず私を幽霊扱いするし……。くそう、もういい!こうなったら、本当に幽霊になってやる!ふふん、私に気付かなかった罰だ。もう手伝いなんかしてやらないぞ。あいつらがアリスに会えないように、邪魔してやる!」■■
【【【時間経過】】】
●場所(ハートの城の階段)
【エリオット】
「ここは……、階段だな」■■
【ユリウス】
「見ればわかる。馬鹿にしているのか?」■■
【エリオット】
「んだよ、確認しただけだろ?細けえ野郎だな」■■
【ユリウス】
「いちいち確認する必要もないだろう。どう見ても階段だ」■■
【エリオット】
「だってよ、先刻から行くとこ行くとこで変なことが起きるじゃねえか。ここは普通の階段に見えるけど、階段といったら、お約束のアレだろ?普段は二十段の階段が、夜の時間帯になると一段増えているっつー……」■■
【エース】
「はははっ。ミステリーツアーっていうより、学校の七不思議みたいだね」■■
【ユリウス】
「くだらない。そんなもの、俗っぽすぎるぞ」■■
【エリオット】
「ちっ……。ま、でもそうだよな。階段なんて、数えず昇っちまえばいいんだし」■■
【【【演出】】】・・・階段を昇る音×3
【【【演出】】】・・・階段を昇る音×3
【エリオット】
「んん……?なんだかこの階段、おかしくねえか?」■■
【【【演出】】】・・・階段を昇る音×3
【【【演出】】】・・・階段を昇る音×3
【エース】
「本当だ。昇っても昇っても、上に辿り着かないね」■■
【ナイトメア】
「うらめしや~……」■■
【エリオット】
「げっ!?また出てきたぜ、この声。幻聴にしても幽霊にしてもしつこすぎるだろ」■■
【ナイトメア】
「ふふふ……。ここから先へは、行かせないぞっ!私は偉い夢……、じゃなかった、偉い幽霊だからな!」■■
【ユリウス】
「ん?その無駄に偉そうな言い方……、そうか、おまえは!……はあ。一体なんなんだ。用がないなら話しかけるな。私達は先を急いでいるんだ」■■
【ナイトメア】
「な、なんだその態度は!冷たい、冷たいぞ時計屋!」■■
【エリオット】
「ん?なんだこの幽霊、時計屋の知り合いなのか?」■■
【ナイトメア】
「ぐっ!ごほ、ごほごほごほっ!わ、私はただの偉い幽霊だ。時計屋のことなんて知らないぞ~」■■
【ユリウス】
「ふん……。そうだな。私も、こんな愚かな奴と知人だとは思われたくない」■■
【ナイトメア】
「な、なんだとっ!?くっ。そんな冷たいことを言うなら、ここから先へは絶対に行かせないからな~。アリスのもとへ行きたいなら、私の屍を越えて行け!」■■
【エース】
「ははっ。いつも死にそうになっているくせに、面白いことを言うんだね」■■
【ナイトメア】
「な、なんだと……、ごほんごほん、げふっ!」■■
【エース】
「はははっ。もう既に死んじゃいそうじゃないか。でも、こんな能力があるとは知らなかったな。この階段面白いね、本当に幽霊の力みたいだ」■■
【ナイトメア】
「まあ、これは企画ものだからな。本来の能力を超えた、多少の無茶くらいは……。ご、ごほん!とにかく、この先には行かせないぞ!ここを通らないと、彼女のもとへは辿り着けないからな」■■
【エリオット】
「何っ!?つまり、この先へ行けばアリスがいるのか!?」■■
【ナイトメア】
「そうとも!だが簡単には行かせないぞ!」■■
【エリオット】
「つーか、誰だ、てめえ!?」■■
【ユリウス】
「まだ分からないのか、おまえは……」■■
【エリオット】
「謎の幽霊だろ!?なんで時計屋や騎士にはわかんだよ!?」■■
【ナイトメア】
「ふはははは、そう、私は神秘的な夢魔、いや幽霊だ!おまえ達に、試練を与えてやろう!」■■
【エース】
「試練だって?まるっきり悪役だね。はははっ」■■
【ナイトメア】
「ふふ、さて、どんな試練にするかな……。やはり企画ものに相応しい、斬新なものがいいな……」■■
【ユリウス】
「また面倒なことを……。おい、どうせ拒否してもしつこく粘るんだろうから付き合ってやるが、とっとと終わるものにしろよ」■■
【ナイトメア】
「う~ん、よし、決めたぞ!……ふふ、安心しろ。終わらせようと思えば、すぐに終わる試練だ。ただし、おまえにはどうだろうな?時計屋。ふふふ、ふふふふふ、ごふっ」■■
【ユリウス】
「笑いながら吐血をするな。なんなんだ。私への嫌がらせか?」■■
【ナイトメア】
「ふふふ。そうだとも言えるし、そうでないとも言える。おまえはいつも私に冷たいからな。これを機に、もっと私のことを尊敬するといい!」■■
【エリオット】
「先刻から何言ってんだ?なんだか知らねえが、早くしろよ、化け物」■■
【ナイトメア】
「ば、化け……!?ま、まあ、今は幽霊だからいいだろう。ふふふ……、ここを通りたければ……」■■
【【【演出】】】・・・じゃじゃーんという音
【ナイトメア】
「アリスのことが好きか嫌いか、この場で答えろっ!どうだ、企画ものの試練に相応しいだろう?」■■
【ユリウス】
「なっ……!?」■■
【エリオット】
「はあ?な~に言ってんだ。俺はアリスのことが好きだぜ?大好きだ!決まってんだろ!?」■■
【エース】
「うんうん。俺もアリスのこと、好きだぜ?」■■
【ユリウス】
「な……っ。どうしておまえ達はそう、簡単に……」■■
【ナイトメア】
「ん~?どうした時計屋。おまえは答えられないのか~?」■■
【ユリウス】
「ぐ……。わ、私は……」■■
【エリオット】
「おい、早くしろよ時計屋!アリスのところに行けないだろ!?」■■
【ユリウス】
「うるさいぞ、××××ウサギ!わ、私はあいつのことが……。き、嫌いではない」■■
【ナイトメア】
「おや?私は、好きか嫌いかで答えろと言ったはずだぞ?そんな答えでは受けつけられないな~」■■
【ユリウス】
「な……!」■■
【ナイトメア】
「ん~?どうした、アリスのところへ行きたくないのか?」■■
【ユリウス】
「貴様……」■■
【【【演出】】】・・・ジャキっと銃を取り出す音
【ナイトメア】
「ふふ、銃なんか取り出したって、私には効かないぞ」■■
【ユリウス】
「……そうか。そうだな……、おまえに効くのは、銃より薬か」■■
【ナイトメア】
「!?く、薬っ!?」■■
【ユリウス】
「……いつか引越しで同じ場所に住むとき、食事の中に薬を仕込まれたいのか?」■■
【ナイトメア】
「なっ!?い、一体何を言っているんだ、おまえは……」■■
【ユリウス】
「ふん。薬なら健康にいいし、おまえの部下も喜んで協力するだろうな。注射器を刺してやるのもいい」■■
【ナイトメア】
「く、薬に注射だと!?私はどっちも大嫌いなのに……、卑怯だぞ、時計屋っ!」■■
【ユリウス】
「ふん、卑怯なのはおまえのほうだろう。なんだったら、注射器の中に機械油を入れてやるぞ」■■
【ナイトメア】
「そ、そんなことをされたら、本当に死んでしまうじゃないか!物騒なことを考えるな!」■■
【ユリウス】
「嫌なら、さっさと引くんだな。まったく、おまえはろくなことをしない」■■
【ナイトメア】
「ぐ、ぐぬぬぬ、し、仕方ない……。だけどな、わ、私だってファンサービスというものを考えてやったというか……」■■
【ユリウス】
「なんだそれは……。意味がわからん」■■
【ナイトメア】
「時計屋、おまえにはサービス精神というものが欠落しているぞ!アリスが好きかどうかくらい堂々と言え」■■
【ユリウス】
「そ、そんな安易に言えるわけが……」■■
【ナイトメア】
「私だって答えられるぞ!?私は、アリスのことが好きだ」■■
【ユリウス】
「表では言えないくせに……、異空間だけだろう、おまえが堂々と出来るのも」■■
【【【演出】】】・・・銃声
【ナイトメア】
「わ!?」■■
【ユリウス】
「……よし、行くぞ」■■
【エリオット】
「ん?あ、ああ。なんだかよくわかんねえけど……。行けるのか?」■■
【ユリウス】
「ああ、あいつの集中をきらせばいい……」■■
【エース】
「はは、集中力が足りていないね、病弱な幽霊さん。それじゃあ、通らせてもらうよ~」■■
【【【演出】】】・・・階段を昇る音×3
【ナイトメア】
「く……っ。うう、なんだか妙な疎外感が……。さ、寂しい……」■■
【【【演出】】】・・・遠くのほう(外)で、がさがさと何か探す音
【ナイトメア】
「……ん?外のほうから、何か音がするな。む、誰かを探して、呼んでいるような声も聞こえる」■■
【【【演出】】】・・・遠くのほう(外)で、がさがさと何か探す音
【ナイトメア】
「一体、なんだ?まるで満開の花畑のような浮かれた気配、それでいて酷く不穏な思考を感じるが……。むむ!あれは……」■■
【【【時間経過】】】
●場所(ペーターの部屋の前)
【ユリウス】
「ふう。階段を昇ってはきたが、この扉は……?今までと違った扉だが……」■■
【エリオット】
「くんくん……。ほのかに消毒液の臭いがするな」■■
【エース】
「あっ、この扉……。ここがペーターさんの部屋だよ」■■
【エリオット】
「本当か?確かにそれっぽい臭いはするけどよ~、また変な医務室とかじゃねえだろうな?」■■
【エース】
「本当だよ。だってこの扉の傷、数時間帯前に俺がつけたものだから」■■
【エリオット】
「は?なんでおまえが、ペーター=ホワイトの部屋の扉に傷をつけるんだよ。城に勤める仲間だろ、喧嘩でもしたのか?」■■
【エース】
「はは、喧嘩なんかじゃないさ。舞踏会が始まるまでの時間、退屈だから鍛錬でもしていようかと思ったんだ。でも鍛錬場まで辿り着けなくてさ。もうここでいっか~って剣を振っていたら、そこの扉に当たっちゃったんだよ」■■
【エリオット】
「もういっか~、で人の部屋の前で剣を振り回すのかよ……」■■
【エース】
「はは、当てるつもりはなかったんだぜ?でもそうしたら、中からペーターさんが出てきてさ~。銃を取り出して、俺の鍛錬に付き合ってくれたんだ!心の広いウサギさんだよな~、ははははっ」■■
【ユリウス】
「……はあ。言うまでもないが、確信犯だな」■■
【エリオット】
「……不覚にも、白ウサギに同情しちまった。だが、いくら同僚に恵まれねえからってアリスを監禁していいわけがねえ!同情の余地はないぜ!」■■
【ユリウス】
「だから、決め付けるなというのに……」■■
【エリオット】
「疑わしきは罰しろ、だ。ブラッドが言ってた」■■
【ユリウス】
「強引な……。中に入ってみないことにはわからんが、当然のことながら鍵がかかっているぞ。どうするつもりだ?」■■
【エリオット】
「そんなの……、こうするに決まってんだろっ!」■■
【【【演出】】】・・・銃声
【【【演出】】】・・・ドアが壊れる音
【エリオット】
「アリスっ!大丈夫なのか、どこにいるんだ!?」■■
【ユリウス】
「おい、アリス!ここにいるのか?」■■
【エース】
「おーい、アリスー?いるなら返事をしてくれよー」■■
【【【演出】】】・・・しーん、と無音
【エリオット】
「どこにもいねえじゃねえか!アリスはペーター=ホワイトに監禁されているんじゃなかったのか!?てめえら、俺を騙したのかよ!?」■■
【ユリウス】
「いや、それはあくまで憶測であって、そうと決まったわけではないと……」■■
【エリオット】
「ペーター=ホワイトが犯人じゃなかったってことかよ!?なら、アリスはどこにいるんだ!?」■■
【ユリウス】
「ふむ、他に異常がありそうな部屋など、特になかったが……」■■
【エリオット】
「異常な場所なんて、もう充分回っただろ。もうこれ以上……」■■
【エース】
「あれ?なんだか、足音が聞こえないか?こっちに来るみたいだけど……、ペーターさんかな?」■■
【ユリウス】
「だとしたら、面倒なことになりそうだな。監禁の疑いをかけられた上、部屋の扉を壊され、しかもアリスが行方不明ときている。あのウサギ、暴れ狂うかもしれんな……」■■
【エリオット】
「へっ、上等だ。先刻から変なことばっかりでむしゃくしゃしているんだ。喧嘩なら買ってやるぜ」■■
【【【演出】】】・・・ジャキっと銃を取り出す音
【ユリウス】
「おい、待て。
ウサギ同士、もっと穏やかに……」■■
【エリオット】
「だから、俺はウサギじゃねえって!殺すぞ、てめ……」■■
【【【演出】】】・・・足音、近づいてくる
【エリオット】
「来たな、ペーター=ホワイト……」■■
【ユリウス】
「ちょっと待てといっているだろう。あれは……」■■
【エース】
「あれ?あれって……」■■
【【【演出】】】・・・足音、近づいてきて止まる
【エリオット】
「え……。あ、アリス!?アリスじゃねえか!よかった、探してたんだぜ!一体どこに行ってたんだよ!?」■■
【ユリウス】
「何……?仲のいいメイド達が忙しそうだったから、給仕の手伝いをしていた?」■■
【エース】
「ええっ、そうだったのか?そんなの気にすることないのに……。こんなときまで働くなんてさあ」■■
【エリオット】
「ドレス着て、メイドの手伝いってよお。はあ……、あんたらしいっちゃらしいが……。どこにもいないから、心配したんだぜ?ま、でも……、無事だったなら、よかった」■■
【エース】
「にしても、それじゃあペーターさんが部屋を綺麗にするとか言っていたのは、何だったんだろうな?」■■
【エリオット】
「さあな。アリスが無事なら、あんなウサギのことなんかどうだっていい。……ん、なんだアリス。ペーターがどうかしたのかって?ああ、俺達、あんたがあいつに監禁されているんじゃないかと勘違いしていたんだ」■■
【エース】
「こうして君が無事だとわかった今では、笑い話だけどね。はははっ……いや、笑えないな、ペーターさんならまったくおかしくない話だし」■■
【エリオット】
「でも、よく考えてみりゃ、あの潔癖症が部屋を綺麗にするなんて、当然のことだもんな。あんたが見当たらないからって、つい焦って先走っちまったぜ。……ったく、紛らわしいんだよ、あのウサギ野郎!」■■
【【【演出】】】・・・銃声
【ユリウス】
「当然のことと言いつつ、紛らわしい、か……。完全に八つ当たりだな。部屋の中に銃を撃ち込んだりして、後でバレても知らんぞ」■■
【エリオット】
「へっ。バレようが構うかよ。あいつが何してこようが、返り討ちにしてやるっての」■■
【エース】
「はは。アリスがいると途端に強気だなあ……」■■
【【【演出】】】・・・ギイイと扉が開く音
【エース】
「っと、あれ?あんなところに扉なんかあったんだ?なんだか勝手に開いちゃったね」■■
【ユリウス】
「銃弾を撃ち込んだ衝撃で開いたようだが……。ずいぶん分かり辛いところにある上、小さな扉だな」■■
【エリオット】
「確かに。開く音がしなけりゃ気付かなかったぜ。いわゆる隠し扉ってやつか?」■■
【ユリウス】
「隠し扉か……。宰相の私室となれば、あっておかしくはないが……」■■
【エース】
「ペーターさんてば、何を隠しているんだろう?面白そうだし、ちょっと覗いちゃおうかな~」■■
【エリオット】
「お、いいな。恥ずかしい秘密でも隠しているなら、今度ネタにしてやるぜ」■■
【【【演出】】】・・・扉に近づく足音×3
【ユリウス】
「おい、隠し部屋か隠し通路かも分からないんだぞ!?もうこの部屋に用はないのだから、これ以上余計なことに首をつっこむのはやめて……。ん?アリス、おまえまで……。はあ、どうしようもない奴らだ」■■
【エリオット】
「ぐだぐだうるせえな、いいだろちょっとくらい。さーて、何を隠していやがるんだ……。っと、うおっ!?」■■
【エース】
「わっ!?……すごいな。さすがはペーターさんだぜ」■■
【ユリウス】
「どうした。……おい、アリス、なんだか足元がふらついていないか?」■■
【エリオット】
「おまえも来てみりゃわかるぜ。アリスが眩暈を起こす理由がよ」■■
【ユリウス】
「なんだというんだ、一体……」■■
【【【演出】】】・・・扉に近づく足音
【ユリウス】
「こ、これは……!」■■
【【【演出】】】・・・きらきら~
【エース】
「すごいよなあ~……。天井から床までアリスの写真がびっしり貼られていて、アリスの人形まで置いてある。極めつけはこの垂れ幕、『ようこそ、僕とあなたの愛の巣へ』だって」■■
【エリオット】
「部屋の中は塵一つなく綺麗に掃除されているところが、あいつらしくて余計に気持ち悪いぜ。おまけに食料と××××っぽい変な道具まで置いてあるし。……あいつがアリスを監禁しようとしているのって、勘違いでもなかったんじゃねえか?」■■
【ユリウス】
「……そうだな、なにせこんな隠し部屋を作っているくらいだ。……ん?どうした、アリス。……そういえば以前ペーターに、見せたいものがあるから、舞踏会のとき部屋に来てほしいと言われていた、だと?……もはや疑う余地無しだな。あのウサギ、電波にしても荒波すぎるぞ」■■
【【【演出】】】・・・くらっと倒れる音
【【【演出】】】・・・受け止める音
【エース】
「おっと。大丈夫、アリス?急に倒れたりして。いや、倒れたくなる気持ちはわかるけどね。ペーターさんてば、こんな部屋を作っちゃうなんて、愛が重すぎるぜ……」■■
【ユリウス】
「……はあ。どんな呪いの部屋よりも、この部屋が一番恐ろしいな」■■
【エース】
「はははは。ミステリーツアーっていうか、怪奇ツアーの締めに相応しく、狂ってるよなあ」■■
【エリオット】
「本当にな……。それにしても、ここまで準備万端にしておいて、当のペーター=ホワイトは一体どこに行ったんだ?」■■
【ナイトメア】
「ああ。白ウサギだったら、先刻私が眠らせておいたぞ」■■
【エリオット】
「っつ!この声は!?またあの化け物か!?」■■
【ナイトメア】
「私は化け物ではなーい!くうっ、いいかげん気付け!いつもオレンジ色の夢を見せてやっているというのに、なんて薄情な奴だ!」■■
【エリオット】
「夢?夢ってことは……。まさか、おまえ、ナイトメアだったのか!?」■■
【エース】
「まさかも何もあからさまに……」■■
【ナイトメア】
「そうだっ!天上天下唯我独尊、偉くてすご~い夢魔・ナイトメア様だっ!はあ、ようやくわかったか……」■■
【ユリウス】
「そんなことより、白ウサギを眠らせておいたとはどういうことだ?」■■
【ナイトメア】
「む。そんなこととはなんだ、そんなこととは!……ごほん。まあいい、私は心の広い夢魔だからな、説明してやろう。……白ウサギ、あいつもアリスを探していたんだ。だが、何やらとてつもなく電波の津波のようなことを考えていたからな……、彼女の安全を考えて眠らせた。幸せな夢を見せてやっているから、しばらく起きないんじゃないか?」■■
【エリオット】
「あいつにとっての、幸せな夢って……」■■
【ナイトメア】
「勿論、アリスの夢だ」■■
【エリオット】
「ぐ。それはそれでなんかむかつくな……。アリスに妙な真似しようとしやがったくせに、目論見が実現したような夢を見て呑気に寝ていやがるなんてよ」■■
【ナイトメア】
「ああ。だから庭の、風がよく当たる場所で寝かせてやったんだ。ふふ、目が覚めたら風邪をひいているかもしれないな。それに、あいつが見ているのはアリスの夢は夢でも、目論見が成功どころか失敗して殴られたり蹴られまくったりするような夢だぞ。まあ、それでもあいつは幸せそうだが……」■■
【エース】
「ははは、夢魔さんも意外と役にたってくれるね~。幽霊みたいに出てきて、情けなく退散するだけじゃなかったんだ」■■
【ナイトメア】
「し、失礼なっ!私はおまえ達を導いてやろうとしたし、白ウサギを眠らせてアリスを危険から守っただろう!?おまえ達よりも、私のほうが彼女のために活躍したんだ!もっと敬え、尊敬しろっ!」■■
【エース】
「はいはい、尊敬している尊敬している。さてアリス、そろそろ会場に戻ろうか。早くしないと、舞踏会が終わっちゃうよ」■■
【【【演出】】】・・・ぐいっとアリスを引き寄せる音
【ナイトメア】
「こらーっ!そんな投げやりな尊敬の仕方があるか!しかもそんなにアリスにべたべた触って!そっちの国へ行けない私へのあてつけか!?」■■
【エース】
「ええ?あてつけなんかじゃないって。夢魔さんがこっちに来られないのは、どうしようもないことだろう?」■■
【【【演出】】】・・・きらーん
【エース】
「彼女をペーターさんから守ってくれてありがとう。おかげで、俺達はゆっくり舞踏会を楽しめるぜ!」■■
【ナイトメア】
「ぐ、ぐぬぬぬぬ、なんて爽やかに酷い奴なんだ。……大体先刻までの幽霊騒ぎにしても、おまえは最初から私が正体だと気付いていたんじゃないのか?武器庫でも、薬を持ち出したくらいだし……」■■
【エース】
「はははっ。だってそのくらい、声ですぐわかるだろ」■■
【エリオット】
「何、てめえ、最初から気付いていたのか!?それなら、なんでそう教えなかったんだよ!?」■■
【エース】
「だって、幽霊や幻聴だと勘違いしていたみたいだから、黙っていたほうがスリルのある旅をしてもらえるかと思ってさ。それに、夢魔さんは俺達を案内しようとしていたみたいだけど……、案内のある旅路なんて邪道だからね。いや~、それにしても、終わってみればなかなか楽しいミステリーツアーだったよな。ははははっ」■■
【ユリウス】
「エース、おまえという奴は……。おまえこそ、この城一番のミステリーだと思うぞ。一番、タチが悪い」■■
【エリオット】
「俺達が化け物だと思って不気味がっているのを、楽しんでいたっつーのかよ。こ、この野郎……!」■■
【【【演出】】】・・・ジャキっと銃を取り出す音
【ナイトメア】
「よし、やってしまえ!と言いたいところだが……。彼女が困っているぞ。ここではやめておいたほうがいい」■■
【エリオット】
「うっ……。ちっ、仕方ねえか。それに、こんなことしてる場合でもねえしな。……アリス、早く舞踏会の会場に戻ろうぜ!急がないと、にんじん料理が他の奴に食われちまう!」■■
【【【演出】】】・・・ぐいっとアリスを引き寄せる音
【ナイトメア】
「く!エリオット、おまえまで彼女にべたべたと……。おまえらだけ舞踏会を楽しむなんてずるい、ずるいぞっ!」■■
【エリオット】
「あ?んなこと言ったって、おまえは今、別の国にいるんだから、しょうがねえだろ」■■
【エース】
「そうそう。舞踏会は、ハートの国の住人だけのお楽しみだからね。ほら、ユリウスも行こうぜ!」■■
【ユリウス】
「……ふん。こんなウサギ小屋なんかにいるよりは、会場のほうがまだましだ。行くか」■■
【【【演出】】】・・・去ってゆく足音×4
【ナイトメア】
「なっ!こら!私を放置するつもりか!?私だって彼女のために動いたのに、幽霊扱いされるわ舞踏会を楽しむことはできないわ……。おい!わ、私は偉いんだぞ!もっと尊重されるべき……、げほっ、げほげほ、ごほおっ!……うう。う、うらめしや~……」■■
【【【演出】】】・・・ひゅるる~と虚しく風が吹く音

 

END