3:本編(エドワルド・ランビュール・ブライアン・ミハエル)
●場面転換
●場面(森の中)
●効果音(小鳥の鳴き声)
●効果音(草を掻き分けて歩く音)
ランビュール「……まさか、ミハエル殿が同行者に入っているとは思いませんでした」
エドワルド 「彼の力を借りないと、使用人達に気付かれないで城から抜け出すなんて無理だからね」
ブライアン 「おや、そうなのですか?ランビュールの魔法を使っても?」
ランビュール「王城はバルソーラ先生の魔法防御の結界に包まれているので、中と外を行き来する移動魔法には正式な許可が必要なんです。そうでもないと空間移動の魔法でやってきた侵入者に、貴い方々が襲われたり、攫われたりしてしまうかもしれないでしょう?」
ブライアン 「それもそうか。魔法使いというのは、便利なようで、色々と制約もあるものなんだな」
ランビュール「ええ。ですからその辺りを説明すれば、エドワルド様も諦めていただけるのではないかと思ったのですが……」
ブライアン 「そこで、まさかのミハエル殿か。……ん?ではミハエル殿はどうして、誰にも気付かれず空間移動の魔法を使えたんだ?」
ミハエル 「僕を人間の魔法使いなんかと一緒にしないでよ。すごく、失礼だ」
●効果音(小声でこそこそ話)
ブライアン 「人外のようなことを言っているが……普通の魔法使いと一緒にするな、という意味でいいんだろうか」
ランビュール「ミハエルは、この大陸の人間ではないという話を耳にしたことがあります。おそらく、こちらの言葉に不慣れなんでしょう」
ブライアン 「まあ、ミハエル殿なら何でもアリだという気がしてくるな」
ランビュール「……色々と飛びぬけた方ですからね」
●効果音(小声でこそこそ話、ここまで)
ブライアン 「それにしても、普段はマイセン殿から離れたがらないミハエル殿が、エドワルド様に御同行なさるとは。何か理由でも?」
エドワルド 「ああ、それは……」
ミハエル 「マイセンが構ってくれないんだ!ずっと図書館に篭っていて、僕が話しかけても、いい子だからおとなしくしていてくれって追い払うんだよ!」
ブライアン 「そ、そうなのか……」
ミハエル 「そうだよ!酷いよマイセン。僕はすごく退屈なのに。だからシエラで遊ぼうと思ったのに、シエラもいないし。僕、退屈なんだよ。すごく退屈だから、何か適当に壊して遊ぼうとしていたんだ。そしたら、エドワルド=ウィンフリーが遊んでくれるっていうから。ついて来てあげたんだよ」
ブライアン 「そ、そう……」
エドワルド 「あ~、うん、ミハエルが神出鬼没で困るという話を、シエラから前に聞いたことがあったからね。連れのマイセン=ヒルデガルドが魔法使いだし、もしかしたらミハエル自身も移動魔法に長けた魔法使いなんじゃないかと見当をつけたんだ。ほら、ミハエルって何か妙な雰囲気があるだろう?それで声をかけてみたら、そんなの楽勝だよ、って言うものだからさ。そのまま仲間に入れちゃうことにしたんだ」
ランビュール「皆で渡ればなんとやら……、ですか。共犯を増やして、後でシエラの小言を分散させる作戦ですね」
ミハエル 「マイセンを待つ間、虫けら同然の人間達に付き合ってやるのも、余興くらいにはなるよね。エドワルド=ウィンフリーには、ちょっと興味もあったし」
ブライアン 「虫けらって!ミ、ミハエル殿、いくらなんでも失礼ですよ……っ!」
エドワルド 「あはは……、虫けらかあ……」
ブライアン 「……っ!ほら、エドワルド様も怒っていらっしゃる」
エドワルド 「はは……、いやあ、王子たるもの、心が広くなければ。怒ってなんか……虫けらかあ……、ふふ」
ランビュール「そ、そうそう……!エドワルド様……!!虫といえば、今回、エドワルド様はホタルを御所望なんですよね!?」
エドワルド 「……うん、そうなんだ。今度城でホタル狩りをしようと思ってね。本で読んだんだけれど、東方の国では盛んな催し物らしいよ」
ランビュール「ああ、そのためのお忍びでしたか……」
エドワルド 「城の者には内緒で、サプライズにしたいんだ。それで、城からの脱出と帰りのためにミハエルだろ?乗馬が趣味でこの辺りの地理に詳しく、ホタルがいる水辺を知っていそうなブライアン。ホタルを捕まえて城まで持ち帰ることができそうな魔法使いとしてランビュール。なかなかの布陣だろう?」
ブライアン 「ええ、そうですね。私に聞いてくれてよかったですよ。今向かっている小川は、本当にホタルが見事なんです」
ランビュール「僕のほうも、ホタルの輸送は任せてください」
エドワルド 「ふふ、僕の人選は間違えていなかったね」
ミハエル 「……ホタルって、光る虫でしょう?あんなのが有り難いの?」
エドワルド 「有難いっていうか、綺麗だろう」
ミハエル 「人間って、石でも何でも光るものが好きだよね。僕には理解できないよ。光ればいいの?それなら僕だって光るのに。マイセンのためなら……。そんな、光るだけの虫より、マイセンを眺めていたほうがよっぽど有意義だと思うけど」
エドワルド 「はあ、ホタル狩りなんて趣向を凝らせば、夜会嫌いの兄上も楽しめるかもしれないじゃないか。君が光ってもマイセン=ヒルデガルドを眺めても、兄上は楽しめないし喜ばない」
ミハエル 「マイセンを見ても楽しめないし喜べない?やっぱり人間って愚かしい。僕なら何時間でもマイセンを眺めていたいよ!」
エドワルド 「何時間も?人間観察としてなら、ある意味、楽しそうだけど……」
ブライアン 「……やめてくださいよ、王子が魔法使いの追っかけなんて。で?どうしてエドワルド様自ら、ホタルを捕まえに行こうと思われたんです?私とランビュールを選んだ理由は分かりましたが……。それならば、ご命令いただければよかったのに」
エドワルド 「僕もミハエルと一緒で、退屈していたんだよ。それに……、シエラがモンスターの掃討から戻ってきたら、本格的に僕も動き始めなくてはいけない。僕は王になるんだからね。そうなれば今まで以上に自由がなくなるのはわかっている。そうなってしまう前に……、何かくだらない、他愛ない外遊びの思い出が欲しかったんだよ」
ランビュール「エドワルド様……」
ブライアン 「失礼かもしれませんが……、そのお気持ち、少々分かるような気が致します。私も、カペラ家を継ぐことが決まっている身。……この先、失うことになるであろう気楽な生活は今しか堪能できません」
ランビュール「継ぐ名がある身というのも、大変なのですね……」
ミハエル 「くだらないよ。人間って本当に愚かだ。したいことをして、したくないことはしなければいい。どうせ長くも生きられないくせに、我慢するなんて。僕には理解できないよ」
エドワルド 「君は、本当に自由だなあ。う~ん、マイセン=ヒルデガルドのことも含め、君とは到底理解しあえそうもない」
ランビュール「さすが、マイセン様の連れですよ。あの方も相当にアグレッシブですからね……」
● 効果音(さらさら、と小川の流れる音が小さく)
ランビュール「ああ、そろそろ川の音が聞こえてきました。ブライアン様、こちらの方向でよろしいんですか?」
● 効果音(さらさら、と小川の流れる音)
ブライアン 「ああ、その通り。そちらにいくと小川が流れているはずなんだ。遠乗りの帰りに、馬に水を与えるために寄ったことがあってね。そのとき、ホタルが見事だったので、エドワルド様からホタルと聞いてすぐ思い出したよ」
●効果音(がさがさと繁みを掻き分ける音)
●効果音(小川の流れる音が次第大きくなる)
ミハエル 「川だね」
エドワルド 「ああ、これは、いかにもホタルが住んでいそうだね。なんでもホタルというのは、綺麗な水にしか住まないんだろう?」
ブライアン 「そうですね……、村や町の中を通る河川では見ない虫です。こういった、少し人里から離れた沢などで見掛けることが多いようで……」
ランビュール「空気も清らかですね。……すう、はあ。普段部屋に篭っていることが多いので、こうして新鮮な空気を味わうなんて久しぶりです」
エドワルド 「……あの部屋の空気は、かなり体に悪そうだもんね」
ランビュール「何を仰っているんですか。滋養強壮のための薬を作っていたんですよ?体にいいものを作る過程で、そんなに危険なものが発生するわけがありませんよ。……おそらく」
ブライアン 「そうですとも。材料はすべて体によいものだけを集めていますからね。少々煙が目にしみようと、あれは体によい……はずです」
エドワルド 「……おそらくとか、はずとか、随分と頼もしいね。完成したとしても、僕は飲みたくないなあ。万が一、僕が体調を崩すようなことがあっても、あれは持って来てくれなくてもいいからね」
ランビュール「そんな!臭いは酷いかもしれませんが、よく効く……はずなのに」
エドワルド 「だから、その、「はず」っていうのが……」
ミハエル 「……どうして、あの臭いがだめなの?あの部屋、傍を通るとたまに懐かしい臭いがして、嫌いじゃないけどなあ。僕の故郷の臭いに似ている」
エドワルド 「それはまた、すごい出身地だね、ミハエル。ホタルがよりつきそうもない」
ミハエル 「まあね、光る虫なんて……うん?あれ?なんだ。ホタル、いないじゃないか」
ブライアン 「それはそうさ。ホタルを捕まえるには、まだ明るすぎるんだよ」
エドワルド 「暗くなるまで、しばらく待とうか。森の中だから、外より暗くなるのは早いはずだよ」
ランビュール「そうですね。この時期なら……、もうしばらくすれば森の中は一足早く暗くなり始めるでしょう」
ミハエル 「ふうん……」
エドワルド 「それまでは……、水遊びでもしている?」
ブライアン 「それはまた……、ずいぶんと童心にかえられますね」
エドワルド 「たまには悪くないだろう?」
● 効果音(さくさく、と歩いていく足音)
● 効果音(じゃぷじゃぷっと水音)
エドワルド 「思ったよりも川の水というのは、冷たいんだな」
ランビュール「森の中ですからね。日の光が届かない分、水が冷えるんですよ」
エドワルド 「ああ、そういえば……、懐かしいな」
ランビュール「……何か、思い出がお有りですか?」
エドワルド 「昔にね。兄上と一緒に、城の敷地内にある小川で遊んだことがあったんだ。兄上と二人で泥だらけになって……。今度、釣りを教えてやると兄上は約束してくれたっけ……」
ブライアン 「ジャスティン様は、釣りも嗜んでいらっしゃるのですか?」
エドワルド 「兄上は忍耐とかがお好きだからね。釣りは性に合っているようだよ。兄上なら無人島で一人放置されても、立派にたくましく生きていけそう……」
ランビュール「……否定出来ません」
ブライアン 「……ですね。あの方はまったく王子様らしくない王子様ですから」
ミハエル 「実験してみる?僕、出来るよ。退屈だから、協力してあげてもいい。ジャスティン=ロベラッティを攫って、どこか人のいないところに置き去りにしてきたらいいんでしょう?簡単だよ。100年ぐらいして忘れてなかったら見に行って、生きていたらエドワルド=ウィンフリーの勝ちだ」
ランビュール「こ、こら……!冗談でも、そんな恐ろしいこと口にしては……!!」
ブライアン 「そうだぞ、ミハエル殿……!いくらなんでもそれは冗談として行き過ぎている……!」
ミハエル 「冗談?僕は本気だよ」
ランビュール「わーわーわー、本気ならなお悪いですよ!本気だとしたら反逆罪で……って、追及するほどマズイ話題に……」
ブライアン 「そ、そういえばエドワルド様……っ。城内の小川とおっしゃっていましたが、城内に小川などありましたか?」
ランビュール「そ、そう!僕も知りませんでした!薬草を探して、城の敷地内を探索しているので、詳しいつもりでしたが……」
エドワルド 「……昔はね。裏手に森があって、その中に小川が流れていたんだよ。小さな、細い小川だったけど水が冷たくて、綺麗で……。兄上と水遊びもしたよ。こんなふうにね」
● 効果音(ぱしゃっと水をかける音)
ブライアン 「……わ!?」
ランビュール「な……っ!?」
ミハエル 「……僕に水をかけるなんて、人間の癖に生意気だよ」
● 効果音(ばしゃっっと水をかける音)
エドワルド 「わ……っ!手加減なしだね、ミハエル……!」
ミハエル 「当たり前だよ。僕に喧嘩を売ったんだ」
● 効果音(ばしゃっっと水をかける音)
● 効果音(ばしゃっっと水をかける音)
ブライアン 「エ、エドワルド様……っ」
ランビュール「ぼ、僕たちはどうしましょう……っ」
エドワルド 「君達も、混ざればいい。安心してよ、いきなり不敬罪で首を撥ねたりはしないから、さ!」
● 効果音(派手な水音)
ブライアン 「ぶっ……!?」
ランビュール「そんなことをおっしゃられましても……っ」
エドワルド 「ほらほら、ランビュールもやられっぱなしでいいの?」
● 効果音(派手な水音)
ランビュール「わあ!?」
ミハエル 「抵抗しないってことは水をかけられたいってことだよね。なら僕も水をかけてあげるよ」
ランビュール「ええ!?抵抗しないのは、驚いたからでかけてほしいからでは……」
● 効果音(派手な水音)
ランビュール「わぷ!?」
● 効果音(派手な水音)
ブライアン 「わあ?」
ミハエル 「ふ、無様な姿……。マイセンに遊んでもらえないのはつまらないけど、これはちょっと面白いな」
● 効果音(派手な水音)
エドワルド 「あっはっは、二人とも濡れネズミになったね!」
ランビュール「エドワルド様……っ」
エドワルド 「えい!」
● 効果音(派手な水音)
ランビュール「ぶわっ!?……げほっ、ごほっ、は、鼻に水が……っ」
エドワルド 「やあ、無抵抗主義が報われないといういい見本だ」
ミハエル 「やらなければやられるだけなのに、愚かだね」
● 効果音(派手な水音)
ランビュール「……~~っっ!」
ブライアン 「だ、大丈夫かランビュール?」
ランビュール「ふふ。ふふふふふ。そこまでおっしゃるなら……っ」
ブライアン 「ランビュール!?」
ランビュール「行きますよ、ミハエルにエドワルド様……!!」
ブライアン 「き、君まで何を……!!」
エドワルド 「はは、そうこないとね!」
● 効果音(派手な水音)
● 効果音(派手な水音)
ブライアン 「ああもう……っ、私も参加するぞ!」
● 効果音(派手な水音)
● 効果音(派手な水音)
エドワルド 「あ、ランビュール、水を蹴り上げるのはインチキじゃないか……!?」
ランビュール「こちらのほうが広範囲に攻撃できますからね……!」
ミハエル 「っ!それなら、僕だって!」
● 効果音(軽い爆発音)
●効果音(ばしゃーっと水が激しく周囲に飛び散る音)
ブライアン 「ま、待て待てっ、ミハエル殿……!攻撃魔法は本当に反則……っ!」
ミハエル 「大丈夫だよ。誰にも当ててないからね。僕、ちゃんと手加減しているよ。マイセンが殺すな、壊すなって怒っちゃうから。僕、マイセンの言うことは守るんだ」
ブライアン 「じゃあ、そもそも危険な行為は避けるべきだろう……っ!」
ミハエル 「危険なんかじゃないよ。水の中に攻撃魔法を叩き込んで、その勢いで水を飛ばしているだけで」
ブライアン 「そ、それは『だけ』でいいのか……!?威力や位置を間違ったら、充分に危険……」
ミハエル 「ほら、もう一発いくよ?」
ブライアン 「や、やめ……」
ランビュール「では、僕も……!」
ブライアン 「え、ちょっ、ランビュール……!?」
● 効果音(呪文詠唱)
ランビュール「…………」
●効果音(ざぱーっと水の壁が出来る音)
ブライアン 「な……っ!?こっちは水の壁……!?」
ランビュール「……さすがに攻撃はしませんよ。防御です、防御」
エドワルド 「魔法使い組、本気出しすぎだよ……っ、あはは!」
ミハエル 「やめてよね。僕は魔法使いなんかじゃない。僕を、弱くて醜い人間なんかと一緒にしないでよ。僕はれっきとしたあく……」
エドワルド 「隙あり!!」
● 効果音(ばしゃんっと水音)
ミハエル 「わ!?」
ブライアン 「……エドワルド様は、怖いもの知らずだな」
ランビュール「王族らしい胆力ですね!」
ミハエル 「むう……。人間のくせに……っ、僕に不意打ちするなんて」
エドワルド 「隙を見せるほうが悪いんだよ」
ミハエル 「僕が悪い?いいか悪いかっていうなら悪いに決まっているだろ、僕は悪魔で……。でも、人間に馬鹿にされるなんて、そんなの僕、認めないよ。生意気な人間、壊したいよ。殺したい……」
効果音(ぐおおおおんっと迫力がドス黒いオーラが増していく)
ブライアン 「ミ、ミハエル殿……!?」
エドワルド 「あれ?もしかして、逆鱗に触れちゃったかな?」
ランビュール「……っ、これは僕でも防ぎきれるか……!!」
ブライアン 「水遊びの延長で、第二王子が害されるなんて洒落にならないぞ……!?」
ランビュール「後で、僕らもシエラに殺されてしまいます……!!」
ブライアン 「ミ、ミハエル殿!落ち着いてくれ……!!」
ランビュール「そうですよ、ミハエル、落ち着いてください……!!」
ミハエル 「……壊したい。壊したい壊したい壊したい壊す壊す壊す殺す壊す……」
● 効果音(ぐおおおおんっと迫力がドス黒いオーラが増していく)
ランビュール「ふ、防げる気がしません、これ……!逃げたほうがよさそうです!」
エドワルド 「う~ん、そうだね、すごいなあ……」
ブライアン 「エドワルド様、悠長に構えていらっしゃる場合では……!!」
●効果音(モンスター出現の効果音)
ランビュール「……っ、あ!?」
ブライアン 「こ、こんなときにモンスターまで!?」
エドワルド 「へえ、これがモンスター?透明な液体みたいだね。僕、このタイプは初めて見たよ」
ランビュール「え?珍しいモンスターではありませんが……」
エドワルド 「王子なんてやっていると、モンスターなんてほとんど見掛けることないからね。動物タイプのものだと、狩場で見かけたりすることもあるけれど……。じっくり見る前に、シエラ達がなんとかしちゃうからね」
ランビュール「ああ、それはそうでしょうね。それに、王族の方々が狩りをする場合、事前に危険な動物やモンスターは護衛によって排除されていますから」
エドワルド 「うん。そうなんだよね。だから、モンスターを生で見る機会ってほとんどないんだよ」
ブライアン 「そんな、のんきにお喋りしている場合ですか……っ!」
● 効果音(モンスター出現の効果音)
● 効果音(モンスター出現の効果音)
● 効果音(モンスター出現の効果音)
ブライアン 「っ、次々と出てきたな……!」
ランビュール「エレメンタルウォーター……っ!僕たちが騒いだせいで、住処を荒らされたとでも思ったのかもしれませんね!」
ブライアン 「ランビュール」
ランビュール「何です?」
ブライアン 「こいつらは物理攻撃も効くのか?」
● 効果音(すらっと剣を抜く音)
ランビュール「ええ、物理攻撃も有効です」
エドワルド 「それなら安心だ」
● 効果音(すらっと剣を抜く音)
ブライアン 「な!?え、エドワルド様は駄目ですよ、後ろに下がっていてください!」
エドワルド 「こんな機会、めったにないんだからいいだろう」
ブライアン 「こんな機会、めったになくて当然です……!めったにもなくていい……」
● 効果音(モンスターの威嚇の鳴き声)
ミハエル 「邪魔だよ。消えちゃえ」
●効果音(モンスターの断末魔)
●効果音(ばしゅっと一瞬でモンスターが消滅)
● 効果音(モンスターの威嚇の鳴き声)
● 効果音(モンスターの威嚇の鳴き声)
● 効果音(モンスターの威嚇の鳴き声)
ブライアン 「っと、ミハエル殿にやられたせいで、一斉に襲ってきたな……!」
ランビュール「ブライアン様、援護します!」
ブライアン 「分かった、私が前に出よう!」
エドワルド 「ああ、これがパーティを組むときの陣形か。魔法使いは後衛って決まっているもんね。それじゃあ僕も前に……」
ランビュール「エドワルド様まで前に出ないで下さい……!!」
エドワルド 「だって僕は魔法使いじゃないし、剣を持っている。前衛でしょ?こういう場合」
ブライアン 「王子は守られるものです!あなたに何かあったら……!」
エドワルド 「そうだね、君達の首が飛ぶ」
ブライアン 「分かっていらっしゃるなら、どうぞ後ろに……!」
エドワルド 「だから、頑張ってくれるだろう?」
ブライアン 「……っ!!」
ランビュール「……っ!!」
エドワルド 「ふふ、頑張ってよ。僕が楽しみつつ、安全でいられるように」
ブライアン 「……シエラの気持ちが、ほんの少し分かったよ」
ランビュール「……僕もです」
● 効果音(モンスター出現音)
●効果音(モンスター出現音)
ミハエル 「キリがなくて面倒くさい……っ!もう全部森ごと吹っ飛ばしていいかな。マイセンいないし、好きにしちゃっていいよね」
● 効果音(モンスターの断末魔)
● 効果音(モンスターの消滅する音)
エドワルド 「駄目だよ、ミハエル。今回の目的はホタルを持ち帰ることなんだから。森ごと吹き飛ばしたりなんかしたら、ホタルまでいなくなっちゃうだろう?」
ランビュール「……こ、これだけ水場を荒らして、言えることでしょうかっ」
● 効果音(呪文詠唱)
ランビュール「…………」
●効果音(モンスターの断末魔)
● 効果音(じゅうっと炎が水を蒸発させる音)
ブライアン 「撤退したいところだが……」
●効果音(ぶんっと剣を振りぬく音)
●効果音(モンスターの断末魔)
エドワルド 「ここまで来たんだ。ホタルを取って帰らなきゃ」
ブライアン 「う~ん、どうせ後でシエラにはばれて怒られそうだしなあ……」
ランビュール「……これで、何も持ち帰らなければ、それこそ何をしにいったんだっていう感じですよね」
エドワルド 「うんうん、だから、さっさとモンスターをやっつけて……」
● 効果音(ぶんっと剣をふり抜く音)
エドワルド 「ホタル狩りをしよう!」
● 効果音(モンスターの断末魔)
ブライアン 「お見事です、エドワルド様!……けど、どうかあまり前に出ないでください」
ランビュール「ホタル狩りというか、モンスター狩りですよね……」
エドワルド 「即位前だし、最後に羽目をはずしたかったんだよね。兄上ほどじゃなくても、僕だって剣は習っているんだ。実戦に出れてよかった」
ランビュール「はあ……、やはりホタル狩りのほうが口実だったんですね。……あまり接近しすぎないでくださいよ!?」
ミハエル 「あ~あ、光る虫なんてどうでもいいよ……。ああマイセンに会いたい。マイセン、マイセン……。マイセンなら光ってなくても光っててもどっちでもいい……」
● 効果音(だんだん遠くなっていく戦闘音)
● 場面転換
● 場面(森の中、小川のほとり)
ランビュール「……よ、ようやく終わりましたね」
ブライアン 「モンスター自体は手強くもなかったけど……、プレッシャーがすごかった……」
エドワルド 「ふんふん。こういうのが、普段シエラがしていることなんだね。新鮮だ」
ミハエル 「僕、もう疲れたよ」
ブライアン 「私もだ……」
ランビュール「僕も……」
ミハエル 「もう帰りたい。マイセンに会いたいよ。マイセンが足りていないんだ。おなかが空いた」
エドワルド 「そうだね……、そろそろ夕暮れだし……」
●効果音(ふわっとホタルが舞う)
ランビュール「あ!」
ブライアン 「ホタルだな」
エドワルド 「飛び始めたね……」
● 効果音(ふわっふわっとホタルが次々と姿を現す)
ミハエル 「たくさん出てきたね。これ、全部捕まえればいいの?」
エドワルド 「いやいや、全部はさすがにね。残しておかないと、ここのホタルがいなくなってしまうだろう?」
ミハエル 「欲しいものは全部手に入れればいいのに。人間って貪欲なくせに、たまに変なことを言うよね」
ランビュール「では、ある程度残す形でホタルを呼び寄せましょう」
エドワルド 「頼むよ」
● 効果音(呪文詠唱)
ランビュール「…………」
● 効果音(次々とホタルが引き寄せられてくる)
ブライアン 「見事なものだ……、ホタルが次々と集まってくる。淡い光が……、儚くて美しい」
エドワルド 「……昔、兄上と遊んだ小川にもホタルがいてね。夏になると、見事なものだった」
ブライアン 「ああ、それでジャスティン様を喜ばせるためにホタルを?」
エドワルド 「うん。その小川は、僕の母上が潰してしまったからね」
ランビュール「そう……、なのですか?」
エドワルド 「僕が泥だらけになって帰ってきたのを見て、血相を変えられてね。危ないだのと理由をつけて、城の裏手にあった森を切り開き、小川を埋めさせてしまったんだよ。兄上は、自分が至らぬせいでとずっと悔やんでいた」
ブライアン 「エドワルド様……」
エドワルド 「僕が泥だらけになったのも、僕の母上が過保護なのも、兄上のせいではないのに」
ブライアン 「……エドワルド様」
エドワルド 「だから……、兄上にホタルのいる光景を、僕の手で見せてあげたかったんだ」
ブライアン 「(声、大き目に)エドワルド様」
エドワルド 「ん?」
ブライアン 「(声、大き目に)嘘くさいです」
エドワルド 「あ、はは。ばれた?まあ、先刻認めた、羽目はずしにモンスター退治したかったっていうのが本当のところ」
ブライアン 「そういわれると、また逆のような……。ふう。嘘くさくてもなんでも、嘘だか本当だかいまいち分からない、分からせないのが、あなたってお人なんですよね」
エドワルド 「ふ、次期国王として頼もしい限りだろう?」
ブライアン 「ええ……。ホタル、ジャスティン様も、きっとお喜びになられますよ」
ランビュール「それに、城の敷地内にもう一度小川を引きなおしてもいいのでは?僕も微力ながら、協力いたしましょう」
エドワルド 「ふふ、ありがとう、二人とも」
ミハエル 「光る虫の何がいいんだろう……。でも、人間がそんなに有難がるようなものなら、マイセンも喜んでくれるのかな。それなら僕も捕まえるよ」
ランビュール「それでは、手分けしてホタルを捕まえましょうか。捕まえたホタルは異空に作った仮装世界に移して……」
エドワルド 「その間に、僕達は帰る準備をしようか」
ブライアン 「そうですね、そうしましょう」
● 効果音(ホタルの飛びかう音)
● 場面転換
● 場面(エドワルドの自室前)
エドワルド 「やあ、今日は楽しかったよ。部屋の前まで送ってくれてありがとう」
ブライアン 「いえいえ、お礼には及びませんよ。お忍びで外出などと、どうなることかと思いましたが……。私どもこそ、楽しませていただきました」
ランビュール「ええ。ハラハラ致しましたが、楽しかったです」
ミハエル 「……僕はおなかがすいたよ。マイセン、もう図書館から出てきているかな」
エドワルド 「ミハエル以外は、ランビュールの魔法で服を乾かしたけど……。汚れまでは落としきれていないから、早く着替えないとメイドに見つかってしまうね」
ミハエル 「ふふん、三人とも、よれよれしてみっともないよね。汚らしい人間共」
エドワルド 「……ミハエルは一人だけ服を新品同然に、魔法で元に戻すんだもんなあ。ずるいよ」
ミハエル 「当たり前のことだよ、ずるくなんかない」
エドワルド 「……そんなに簡単に出来るなら、ついでに僕らのも戻してくれてもいいだろう」
ミハエル 「よくないよ。なんで僕が人間にサービスしなくちゃいけないの?そんなの、マイセンにしかしたくないね」
ブライアン 「ふう、よれよれか……。では、メイドに見つかる前にさっさと解散することに致しましょう」
ランビュール「そうですね。ブライアン様は、僕の部屋で着替えていってください」
ブライアン 「ああ。助かるよ、ランビュール」
エドワルド 「こうしていると、本当に小さい頃の川遊びを思いだすよ」
ブライアン 「ずいぶんとトウの立った悪戯小僧ども、といった感じですね」
ランビュール「まったくです。こんな姿、今、見つかったら大変ですよねえ」
エドワルド 「ははは」
ブライアン「はっはっは」
ランビュール「ふふふふふ」
● 効果音(扉がきぃいいいいっと開く音)
ミハエル 「あ」
エドワルド 「うん?扉が勝手に……?」
ブライアン 「え……?」
ランビュール「どうかしました……か」
● 効果音(四人声を揃えて)
ミハエル 「わ」
エドワルド 「げ」
ブライアン 「ひ!」
ランビュール「あっ!」
ミハエル 「マ、マイセン怒っているの?僕、どうしてマイセンが怒っているのか分からないよ!?」
エドワルド 「あ……、兄上どうしてこちらに。いえ、僕はちょっと……、その……」
ブライアン 「り、リリー?その片手に構えた物騒な斧は……っ!」
ランビュール「シ、シエラ!?帰っていたんですねっ!」
● 効果音(がしっとそれぞれ掴まれるような音)
●効果音(部屋に引きずりこまれる音)
ミハエル 「マイセン、僕は悪くないよ……っ!」
エドワルド 「兄上、腕っ!腕、痛いですって……!」
ブライアン 「リリー、話しあおう!物理的にでなく、知的に!対話で!」
ランビュール「顔が怖いですよ、シエラ!無言で腕を掴まないで……っ!」
●効果音(4人の言葉を遮るように、バタンっとドアの閉まる音)
END