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クローバーの国のアリス

『PS2版・特典ドラマ ■PS2版・特典ドラマ(後)』

2:本編(ブラッド・ピアス・双子・ボリス・グレイ・ナイトメア)

●帽子屋の庭
●効果音(ソーサーからカップを持ち上げる音)
ブラッド 「ふう……紅茶がうまい。定番とはいえ、やはりダージリンの味がもっとも楽しめるのはセカンドフラッシュだな。ファーストフラッシュの青々しい香りやオータムナルの円熟した深みも捨て難いが、これはこれで……」
●効果音(ガサリと茂みの鳴る音)
ブラッド 「あとは、時間帯が夜であれば言うことがないんだが。ああ……、昼はだるい……。まったく、準備を始めたときには夜だったというのに、忌々しい……」
● 効果音(ガサガサと茂みの鳴る音)

ブラッド 「しかし、せっかく庭にセッティングした席を移すのも面倒だ。部屋へ戻る間にポットの中の茶葉がひらいてしまう……。そうなれば、計りに計った絶妙な蒸らし時間の元花開いたかぐわかしい香気が台無しになるな……、ああだが日差しが憎たらしい……」
●効果音(ガサリと茂みの鳴る音)
ブラッド 「…………。……面倒くさいので無視しておこうかとも思ったが……。それで、おまえは先刻からそこでガサガサガサガサと一体何をしているんだ、ピアス」
ピアス  「ぴっ!!? なっ、ななななっ、なんで!? ボス、なんで俺が隠れてるって分かったの!!?」
ブラッド 「……なんでも何も、おまえはそれで隠れているつもりだったのか。見事に尻尾や耳、頭まで見えているぞ」
ピアス  「えっ、嘘っ!!?」
ブラッド 「エリオットほどではないが、おまえの髪の色は派手だからな。草葉に隠れるような色ではないし、よく目立つ……というより、色うんぬん以前に、茂みの中でひっきりなしにガサガサゴソゴソ音をたてていれば、まあ、当然見つかるな」
ピアス  「か、隠れてたのに……っ! なんで? なんで見つかっちゃうの!?」
ブラッド 「そんなに悲愴な顔をされても……、うるさくて鬱陶しいからとしか言いようがない。どういう事情があるのか知らないが、私の楽しみを邪魔するつもりなら容赦はしないぞ。ああ、ちなみに私は今機嫌が悪いので……、これ以上ガサガサしても撃ち殺したくなるかもしれないな」
ピアス  「ぴ!?ぴいい……」
ブラッド 「……はあ、びくびく顔色を窺うな。それもそれで鬱陶しい。仕事の話なら先ほど終わったはずだろう。どうして未だここでガサガサしているんだ、おまえ」
ピアス  「うう……、俺がコーヒー派だからって、ボスまで俺をいじめるんだね……」
ブラッド 「いや、私の屋敷内でコーヒーを淹れない限り、何を飲もうとおまえの勝手だが……。門番達に見つからないうちに、さっさと帰ると言っていなかったか?」
ピアス  「!! そう! そうなんだよ! 俺、ボスとの話が終わってすぐに門に行ったのに……っ!」
ブラッド 「聞かなくても予想がつく気がするが……どうした」
ピアス  「なのになのにっ、どうしてあそこに双子がいるの!?」
ブラッド 「どうしても何も、いないほうが問題だな。彼らは門番だ」
ピアス  「でも、いつもはいないのに……っ! 俺が屋敷に入るときだって、いなかったんだよ!? この前、仕事の報告に来たときだっていなかったし、その前に来たときだって……」
ブラッド 「……ほう。そうなのか」
ピアス  「そうなんだよ! あの二人はいつもいないもん!」
ブラッド 「ほうほう……」
ピアス  「なのになのにっ! どうして今回、俺が帰ろうとしたときに限っているの!? ……はっ! もしかして、俺を待ちぶせして闇討ちする気なんじゃ……!」
ブラッド 「いや、おまえが来たときにいなかったなら、おまえが屋敷内にいることは知らないんじゃないか」
ピアス  「そ、そうかなあ……」
ブラッド 「それはそれで問題だがな。非常に」
●効果音(カチャカチャと茶器の鳴る音)
ピアス  「う~~~……。 ボスもひどいよっ!!」
ブラッド 「……私? 私がおまえに何かしたか?」
ピアス  「だだだ、だって……いくら俺のことが嫌いだからって……ううっ」
ブラッド 「……ピアス、話が見えない。わかりやすく話してくれないと、撃ち殺したくなってしまう」
ピアス  「ううう……っ、短気だよっ、ボス短気だよ……!」
ブラッド 「……昼だからしょうがない。ああ……、日差しが鬱陶しい……」
ピアス  「そ、それならなんでこんなところでお茶会しているんだよ……っ、カンカン照りの青空の下だよ……!?」
●効果音(じゃきり、とマシンガンを構える音)
ブラッド 「おまえは親切なネズミだな、ピアス。私が忘れたいと思っている事実を再認識させてくれる」
ピアス  「ぴ!?なんで、親切にして、マシンガンを構えられるの!?」
ブラッド 「ああ、それは小さな親切余計なお世話というかだな……。わざわざ改めて教えてくれなくとも、自分の居る場所がどこなのかくらい判断する頭を持っているからだ」
ピアス  「う、うん。賢いもんね、ボス」
ブラッド 「そう、ネズミよりは賢い私は、わかっているとも……、今が忌々しい真昼の時間帯だということは。わざわざ自分より愚かなネズミに言われなくとも、だ」
ピアス  「わ、わかった、もう言わない」
ブラッド 「そうだな、それが賢明だ。……ああ、それで一体どうして私が酷いんだ?」
ピアス  「そうだよ、うう……っ、なんで、どうして屋敷に猫がいるの……っ!? ボス、猫を飼い始めたの!?」
ブラッド 「……は?」
ピアス  「最近森で見かけないから、安心してたのに……。ううっ、屋敷で引き取っているなんて、酷いよ……。ボス、俺のことは追い出したのに……」
ブラッド 「追い出したつもりはないんだがな。おまえが自分で出て行ったんだろう。……だいたい、屋敷で猫を飼い始めた覚えはない」
ピアス  「え……で、でも、門のところに……あれは、番猫なんじゃないの?」
ブラッド 「番猫……。それはもしかして、番犬の猫版だと言いたいのか」
ピアス  「ナイフとフォークを持った番猫……。うう、怖い……怖すぎるよ……っ!! 誰も近付けなくなっちゃうよ……っ! 俺も近付けないもん!」
ブラッド 「……彼はおそらく、門番達と遊ぶために来ただけだと思うがな。そもそも、うちはオレンジ色のウサギだけで手いっぱいだ。ピンク色の猫まで面倒を見る余裕はないぞ」
ピアス  「うう……。そのエリーちゃんには会えないし、それなのに猫がいるなんて、最悪だよ……」
ブラッド 「エリーちゃ……、いや、エリオットは仕事中だ。門番達も本来はそのはずなんだが。……それにしてもいいかげん、あの子達の就労条件を見直さなくてはならないらしいな。ふむ……どうするか……」
●効果音(カチャカチャと茶器の鳴る音)
ピアス  「ボ、ボス、その……」
ブラッド 「……うん? なんだ、ピアス」
ピアス  「あの……、ね、猫がいなくなるまで、匿ってください……」
ブラッド 「ふむ、それは別に構わないが……」
ピアス  「!! ほんとっ!? あ、ありがとう、ボス! よかったあ……これで生き延びられるよ……」
●効果音(ガサガサと茂みが鳴る音)
ブラッド 「……ふむ。匿うのは別に構わないが……」
ピアス  「え?」
●効果音(罠に引っ掛かる音)
ピアス  「ぎゃあああっ!?」
●効果音(罠に引っ掛かって吊り上げられる音)
ブラッド 「……見事に引っ掛かったな」
ピアス  「た、たかっ、高い、高いよっ、怖いぃぃいっ!! 何これ何これ!? なんでこんな罠が仕掛けてあるの!?」
ブラッド 「うむ、どうやら、門番達が、庭に穴を掘るなと釘を刺したのを守ったらしいな。勤務態度はともかく、一応注意は聞いているらしい。落とし穴の代わりに今度は吊り上げ式とは……考えたものだ。やはり言えばわかる子たちなんだな」
ピアス  「ほっ、誉めてないで下ろしてっ! 下ろしてよ、ボスっ!」
ブラッド 「そうは言われても……騙されるほうが悪いとは、よく言ったものだろう。まったく、臆病なくせに、どうしてこうも危機察知能力が低いのか……。……第一、もう遅いだろう」
ピアス  「え……」
●効果音(バタバタと駆け足×3)
●以下の双子は子供バージョンでお願いします
ディー  「ああ、やっぱり! ピアスの奴がかかったよ、兄弟!」
ダム   「ほんとだ! 兄弟の言った通りだね!」
ピアス  「ぴ……っ!!?」
ボリス  「っはは、だっせえの。そんなとこにぶら下がってどうしたんだよ、ピアス」
ピアス  「ねっ、ね、ねね……っ」
ブラッド 「やあ、おチビさん。元気そうで何よりだ」
ボリス  「ん、お邪魔してるよ、帽子屋さん」
ピアス  「ね、ねねねっ、ねね……っ!」
ブラッド 「楽しく過ごしてもらえているようで、何よりだよ。……これといったもてなしもせずにすまないな」
ボリス  「うん? そーんなことないって。充分、充分。現に、俺の大好物を用意しといてくれただろ?」
ピアス  「びっ!!!?」
ディー  「ねえ、なんだか獲物がぷるぷるしてるよ、兄弟」
ダム   「ほんとだね。あーあ、せっかくかかったっていっても、ネズミじゃなあ……、しょぼすぎるよ」
ディー  「だよね。ひよこウサギを引っ掛けるつもりだったのに……」
ボリス  「いや、さすがにそれは無理だろ……」
ブラッド 「そうとも。あいつの図体では、吊り上げたロープのほうが切れそうだ。吊れたにしても、馬鹿力だしな。自力で切ってしまいそうだ」
ボリス  「いや、それ以前に、NO2さんが引っ掛かったりしないだろ?」
ブラッド 「まあな。門番達の悪戯が見抜けないような腹心に、背中を預ける気にはなれない。……というか、門番達の罠にはすっかり慣れて、日常茶飯事と化しているから見抜けて当然だ」
ディー  「ちぇーっ、言われちゃったよ、兄弟」
ダム   「ほんとだね、兄弟……。まだまだ修行が足りないってことだね」
ディー  「次は、ウサギもかかるように、もっとカモフラージュに凝らないと……」
ダム   「うんうん。ちょうど実験台がいるし……」
ピアス  「う……っうわああああああん!!! やだやだやだやだっ、たす、助けてえええっ!! 怖い怖い怖いっ、猫と双子、怖いぃいっ!」
●効果音(じたばたと暴れる音)
●効果音(ガサガサと葉が降る音)
ブラッド 「……こら、暴れるんじゃないっ。せっかくの紅茶に、ごみが入ってしまうだろう!」
ピアス  「うわああああああんっ!!!」
●効果音(じたばたと暴れる音)
●効果音(ガサガサと葉が降る音)
ブラッド 「だから、暴れるなと……っ! それならば私がいっそ永久に静かにさせてやろう……っ!」
●効果音(ジャキッとマシンガンを構える音)
ピアス  「びっ!!!?」
ブラッド 「ふふふ、蜂の巣のごとくぶら下がっていることだしな……。せっかくだ、穴も開けてやる」
ボリス  「おっ、なになに、帽子屋さん。楽しそうだね、俺も混ぜてよ」
●効果音(ジャキッと銃を構える音)
ディー  「誰が撃ち落とすか競争する?」
ダム   「いいね、兄弟。ナイスアイディアだよ」
●効果音(斧を構える音)
ピアス  「~~~~~っ!!!? 怖い怖い怖い怖い怖いぃいいっ!!!」
●効果音(ザクッとロープを切る音)
ディー  「あ」
ダム   「ネズミのやつ、ナイフで、自力で脱出しちゃったよ」
●効果音(ドサっと高い所から落ちる音)
ピアス  「いたたた……、でも、撃たれるよりはいいっ、ずっといいよっ!! うわぁあああああんっ」
●効果音(ぴゅ~~~っと走り去る音)
ダム   「ああっ、逃げた!!」
ボリス  「はっ! 銃が嫌なら、斧で切り刻んでやるよ!」
ディー  「そうだそうだっ!」
ダム   「僕らから逃げられると思うなよ!」
●効果音(バタバタと走り去る音×3)
ブラッド 「……ふう。やっと静かになったな。これでようやく、お茶の続きが楽しめる。……ふふ」
●効果音(ソーサーからカップを持ち上げる音)
●場面転換
●塔の調理室
●効果音(くつくつと鍋を煮る音)※ずっと続く
●効果音(トントンと野菜を切る音)
グレイ  「……ふむ。一口大というと、だいたいこのくらいだろうな。これを最後に加えて、蓋をする……と。だが料理の本というのはどうしてこうも曖昧なのだろう……。一口というのは誰の口での一口分で、少量というのは具体的いったいどれくらいなんだ、ううむ、難解な……。まあいい、そろそろ完成も近い」
●効果音(ぼちゃぼちゃと鍋に物を入れる音)
●効果音(鍋に蓋をする音)※「くつくつと鍋を煮る音」が小さくなる
グレイ  「よし、あとは味が染み込むまで待つだけだな。下ごしらえをきちんとしたから、すぐに出来上がるはずだ……。さて、そろそろナイトメア様にお目覚めいただかなくては……」
●効果音(バタバタという足音)※小さく
グレイ  「……うん? 誰だ、廊下を走っているのは……」
●効果音(バタバタという足音)※段々近づく
グレイ  「もしかして、何か緊急の事態でも……?」
●効果音(バンっと扉が開く音)
ピアス  「たたた、助けてっ!! ナイトメア、助けてようっ!!」
グレイ  「……眠りネズミ? どうしたんだ、一体……。というか、出来れば塔の廊下は走らないでもらいたいんだが……」
ピアス  「トカゲさん! ナイトメアっ、ナイトメアはっ!?」
グレイ  「ナイトメア様にご用なのか? すまないが、すぐに会わせることは出来ない。急ぎの用事か? 緊急の用件なら、ひとまず俺が……」
ピアス  「急ぎ急ぎっ! 急ぎだよっ! ものすごく緊急だよっ!!」
グレイ  「落ち着いてくれ。いったい何が……」
●効果音(バタバタという駆け足×2)
ピアス  「あわわわわっ、来ちゃった! 来ちゃったよううっ!!」
グレイ  「来た? 誰が……」
●効果音(バンっと扉が開く音)
ディー・大人「見つけたっ!」
ダム・大人「塔に逃げ込むなんて、どういうつもりだよ!」
ピアス  「ぴいいいいっ!?」
●効果音(バタバタという駆け足)
●効果音(バンっと扉が開く音)
ボリス  「っずるいぞおまえらっ! なに大人の姿になってんだよっ!」
ディー・大人「あれ、遅かったね、ボリス」
ダム・大人「歩幅の差くらい、気合いで埋めてみせなよ」
ボリス  「このやろ……っ!!」
グレイ  「帽子屋の門番達に……、チェシャ猫? なんだ、ぞろぞろと……」
ピアス  「あわわわわわわっ、助けて、トカゲさん、助けてよっ!」
グレイ  「そう言われても……。もしかして、ナイトメア様への用というのはこのことか? 眠りネズミ」
ピアス  「だ、だって……、他に助けてくれそうな人が浮かばなかったんだもん……、ぐすっ」
グレイ  「いや、泣かれても困るんだが……」
ピアス  「そ、それにっ、ここは中立の場所なんでしょう!? だったら、誰も俺をいじめないよね!?」
グレイ  「……確かに塔は中立だが、駆け込み寺ではないぞ。中立ではあっても、他の場所の中立を守る立場にもない」
ピアス  「ぴ……っ!!?」
ディー・大人「へえ、話が通じるね、トカゲさん。それなら早速……」
●効果音(ちゃき、と斧を構える音)
グレイ  「待て、何をする気だ? 駆け込み寺にされるのも困るが、武器を出されるのはもっと困るぞ」
ダム・大人「そう言われても……、僕らはネズミ狩りをしてるだけだよ」
ピアス  「あわわわ……っ!」
ボリス  「そいつが塔にいたって困るだろ? すぐに連れてくからさ……」
ピアス  「あわわわわわわ……っ!」
グレイ  「いや、しかし……」
●効果音(もわ~ん、と臭う音)
ディー・大人「……ねえ、何か変な臭いがしない?」
ダム・大人「ああ、兄弟も感じた? 僕もだよ」
ピアス  「ぴ? におい……?」
ボリス  「うっ……! そ、そう言われれば……」
グレイ  「……におい? ああ、もしかして、これのことか」
ディー・大人「これって……その鍋……?」
ダム・大人「い、いったい、何の実験をしてるのさ?」
グレイ  「実験? 実験などを、調理場の鍋でするわけがないだろう? もちろん、単なる料理だ」
ボリス  「た、単なる料理……?」
グレイ  「……ふむ、そろそろいい頃合いだな。ちょうどいい、味見をさせてあげよう」
●効果音(鍋の蓋をとる音)※「くつくつと鍋を煮る音」が大さくなる
●効果音(もわわわ~ん、と臭う音)
ボリス  「う……っ!?」
ピアス  「うわ……っ!」
ディー・大人「こ、これは……」
ダム・大人「す、すごいね……」
グレイ  「そうか? 見た目だけでそう言ってもらえるとはな……。頑張った甲斐がある。力作なんだ」
ボリス  「り、力作、って……。どこにどう力を入れたらこういうものが出来るのさ!?」
グレイ  「きちんとレシピに沿って作ったぞ? まあ、改良のためにいろいろな材料を加えはしたが……。まあ、いわゆる創作料理というやつだ」
ボリス  「か、改良……?」
ピアス  「創作、って……。そもそも、これ、何?」
ディー・大人「すごいね、兄弟……。もはや原型となった料理名を想像することすらできないよ……」
ダム・大人 「うん、すごいとしか言いようがないくらい……黄緑色だね」
ディー・大人「今まで目にした中でも、一番刺激的な料理だよ……」
グレイ  「刺激的? そんなことはない、胃に優しい料理だ」
ダム・大人「胃には優しいかもしれないけど……、目に優しくないよ……」
ボリス  「っていうか、この色とこのにおいの時点で胃にも優しいわけないだろ!?」
グレイ  「むっ、そんなことはないぞ? きちんと、栄養価も計算した上で調理している」
ディー・大人「栄養、あるんだ……これに……」
ダム・大人 「もはや蛍光塗料の色だよね……」
ボリス  「……おっさんの音楽センスと同じぐらい、破壊的なナニかを感じざるをえないな……」
グレイ  「やれやれ……。誉めてくれているのかなんなのか、微妙な感想だな。そこまで言うなら、仕方ない。さあ、味を見てみてくれ」
ピアス  「……え?」
グレイ  「食べてみてくれれば、分かるはずだ。胃だけでなく、舌にも優しい味に仕上がっているはずだからな。食べてみてくれ、ぜひ」
●効果音(ずいっと差し出す音)
●効果音(もわわわ~ん、と臭う音)
ディー・大人「う……っ!?」
ダム・大人「い、いくら僕らでも、これは……」
ピアス  「うう……。くらくらする~……」
ボリス  「……やば。意識が遠のきかけてきてるんだけど……っ」
グレイ  「遠慮しなくていいぞ? 確かに、ナイトメア様のために作った料理ではあるが、実際に召し上がっていただく前に他の者の意見も聞きたいからな」
ピアス  「これ、ナイトメアが食べるの……? そっか、ナイトメアの具合がいつも悪いのって、もしかして、これのせ……もがっ!?」
ボリス  「ばっ、それ以上言うなよネズミっ!」
ピアス  「??? ふゎんふぇ?」※口を塞がれてもごもごと
ディー・大人「これ……、あの芋虫はいつも食べてるんだ……?ぼ、僕、初めてナイトメアのこと、尊敬したかも……」
ダム・大人「尊敬はするけど、関わりたくない。……僕ら、帽子屋屋敷の子でよかったね、兄弟」
ディー・大人「うん……。ひよこうさぎのオレンジ攻撃とか、ボスの服装センスがおかしいのなんて、些細なことだったんだね……」
グレイ  「なんだ、こんなときばかり遠慮深いな。誰から手を出すか迷っているのなら……チェシャ猫、まずは君からどうだ? よそってあげよう……」
● 効果音(じゅうううう、と溶ける音)
グレイ  「おや、おかしいな……、お玉の先の部分が鍋の中で外れてしまったようだ」
ボリス  「ち、違うよ、トカゲさん、たぶん絶対間違いなく!探してもその鍋の中からお玉のさきっちょは出てこないと思う!!」
ディー・大人「と、溶けたよね。今の、間違いなく溶けたよね、兄弟……っ!」
ダム・大人「と、溶けたね、兄弟。……鍋のほうは、なんで無事なんだろう」
ディー・大人「特別製なんじゃないかな……」
ダム・大人「……値が張りそうだけど、不思議と欲しいとは思わないな」
グレイ  「しょうがないな……、皿にわけるか」
ボリス  「えっ……、む、無理無理無理っ! いくらなんでも、それは無理っ!!」
グレイ  「しかし……」
ボリス  「夢魔さんのために作ったなら、夢魔さんが食べるべきだよっ!」
ディー・大人「まあ、そうだよね……。うん、僕もそう思う」
ダム・大人「温かいうちに、芋む……じゃなかった、夢魔に食べさせるべきだよ」
グレイ  「そうかもしれないが……。ナイトメア様は、夢の中に篭ったままで……」
ボリス  「……それって、トカゲさんの料理が原因じゃないの?」
グレイ  「そんなことはない。むしろ順序が逆だ」
ピアス  「順序?」
グレイ  「ああ。ナイトメア様が夢の中に篭られるのも、つまるところ、現実が辛いからだろう。夢の中よりも現実のほうが楽しいと思っていただければ、きっと引き篭もりから立ち直ってくださるはず……!」
ボリス  「な、なんだか、ニートの社会復帰計画みたいになってるけど……」
グレイ  「そこで、まずは思いやりのこもった食事を毎食用意することから始めようと思ってな……」
ディー・大人「うわあ……」
ダム・大人「うわあ~……」
ボリス  「刺してる……、トドメを刺してるよトカゲさん……っ!出てこないって、それ」
グレイ  「む、出てこないなら、引っ張り出すまで。あの方はまだ夢の中だが、これから起こしに行くから、その前に是非、君達に味見を……」
●効果音(ずいっと差し出す音)
●効果音(もわわわ~ん、と臭う音)
ディー・大人  「うっ」
ダム・大人   「くっ」
ピアス  「きゅう……」
ボリス  「ま、まずい、本気で視界がかすんできた……。こ、こうなったら……」
●効果音(パタン、とドアを閉める音)
ディー・大人  「ちょっ、ボリス!?」
ダム・大人   「こんなに空気が悪い中でドアを閉めるなよ!」
ボリス  「そう言うなって。すぐに繋ぐから……」
●効果音(かちゃ、とドアを開ける音)
●効果音(夢の中へとドアがつながる)
グレイ  「……む? もしかして、ドアの向こうに見えるのは……」
ボリス  「そ。俺はチェシャ猫だからね。いつだって、好きなときに、好きなところへ行けるんだよ」
●場面転換
●夢の中
ナイトメア「ああ……、いい加減、腹が減った。だがしかし、塔に戻るわけには……ぶつぶつ」
●効果音(ぐうう、とお腹の鳴る音)
ナイトメア「……ああ、くそ。どうして私が、こんなにひもじい思いをしなくてはならないんだ。それもこれも、グレイの奴が……」
グレイ  「俺が、どうかしましたか、ナイトメア様」
ナイトメア「グレイの奴が、私に毎食料理を作るとか恐ろしくもおぞましいことを言い出したせいで……」
グレイ  「ええ、不慣れなもので、お待たせしてしまいました。そんなにお腹を空かせていらっしゃったとは、失礼を……」
ナイトメア「……ん?」
グレイ  「どうぞ、ナイトメア様。本当は、現実に戻ってからと思っていましたが……、そこまでひもじい思いをしていらっしゃるなら、この場で召し上がられても文句は言いません。もとはと言えば、お待たせした俺に責任が……」
ナイトメア「なっ!? グ、グググ、グレイっ!!?」
グレイ  「はい」
ナイトメア「お、おまっ、どうして夢の中に……! おまえが眠った気配などなかったぞ!?」
グレイ  「それは、まあ……。眠りについてここへ来たわけではありませんからね」
ナイトメア「そ、そんな器用なことができるのは、私くらいのもので……。はっ! ま、まさか……!」
ボリス  「……うん。ごめん、夢魔さん」
ナイトメア「チェシャ猫……! お、おまえ、なぜここに……というか、裏切ったのか!?」
ボリス  「いや、裏切ったも何も……」
ディー・大人「当たり前だろ?」
ダム・大人「おまえの身代わりなんて真っ平だからね」
ピアス  「ナイトメア、俺のこと助けてくれなかったし……」
ナイトメア「なななな……っ! どういう組み合わせだか知らないが、なんでこんなに大所帯なんだ!? というか、私を売るんじゃないっ!」
グレイ  「ナイトメア様。あなたの元へすぐに料理をお持ちできたのは、彼らのおかげでもあるんです。ささ、さっそく召し上がってください」
●効果音(もわわわーん、と臭う音)
ナイトメア「う……っ!! こ、今回もまた、やたらと凶悪な……っ」
ディー・大人「今回も、っていうことは……」
ダム・大人「やっぱり、いつも食べてるんだ……?」
ナイトメア「食べていないっ! 食べていないぞ!? そんな信じられないものでも見たような顔で引くんじゃないっ! 食べられるわけがないだろう、こんな危険物体エックス!!」
グレイ  「ナイトメア様……?」
●効果音(ぐうう、とお腹の鳴る音)
ナイトメア「うう……、しかし、空腹で限界だ……」
グレイ  「当たり前ですよ。俺が食事を作りますと言った三時間帯前から、ここに篭りきりじゃありませんか。どうして意地を張っていらっしゃるのか分かりませんが、そんなに空腹なら、どうぞ召し上がってくださいと言って……」
ナイトメア「いーやーだっ! 意地でも食べないぞ、私は! おまえの手料理を食べるくらいなら、飢えたほうがましだ……っ!」
ピアス  「ええ? でも、辛いよ?? おなか空くのって大変だよ、ナイトメア」
ナイトメア「それでも嫌だっ!! そんなに腹が減っているのならおまえが食うといい!!」
ピアス  「ネズミは何でも食べられるけど……、これはちょっと、危険だよね……」
ボリス  「……ちょっと、って言えるレベルなのかよ、コレが」
ディー・大人  「まあ、これ、なんか、もはや武器になりそうな感じだもんね……」
ダム・大人   「うん。食べるだけじゃなくて、ひよこウサギとかに投げつけても、かなりダメージを与えられると思うよ……。お玉溶けてたし」
ナイトメア「!! そんな腐食性化学物質みたいなものを食べられるわけがないだろうっ!」
グレイ  「ナイトメア様……、そんな好き嫌いをおっしゃらず」
ナイトメア「いいかグレイっ、もはやこれは好き嫌いとかいう生ぬるい問題じゃあないぞ!そんな顔をしても無理なものは無理っ! 無理と言ったら無理なんだっ! ううっ、空腹で叫んだものだから、眩暈がしてきた……早く何かを食べないことには死んでしまう……。くっ、こうなったら……!」
●効果音(ぐにゃん、と夢から覚める音)
●場面転換
●帽子屋屋敷の庭
●効果音(ピチチチチ、という鳥の鳴き声)
●効果音(茶器の鳴る音)
ブラッド 「……で、どうしておまえがここにいるんだ、芋虫」
ナイトメア「おまえが美味そうなお茶請けをずらりと並べて一人でお茶を優雅に楽しんでいるのが見えたから、呼ばれてやったんだ」
ブラッド 「寝ぼけるのも大概にしろ。私はおまえなど招待していない。お嬢さんのような紅茶の味の分かる相手ならともかく、おまえに出すものなどないぞ。今すぐ出て行け」
ナイトメア「来ちゃったものは仕方ないだろう。もぐもぐもぐ……」
ブラッド 「勝手に茶菓子を頬張るな!それは、珍しくオレンジ色の物体が含まれていない貴重な茶菓子なんだ!」
ナイトメア「そうつれないことを言わないでくれ。空腹で死にそうなんだ。もぐもぐ」
ブラッド 「……おまえの腹心が、鍋を持って控えているように見えるのは気のせいか?」
ナイトメア「鍋は持っているが、食べ物は持っていないぞ。疑うなら中身を見てみればいい。夢に出る」
ブラッド 「あの鍋を開けてここが悪臭で汚染されるようなことになったら、私はおまえを撃ち殺すぞ、芋虫」
ナイトメア「……私だって、そんな事態は御免だ。せっかくまともなものにありつけたのに」
グレイ  「ナ、ナイトメア様……?」
ブラッド 「さっさとあの危険極まりない鍋を持った腹心をつれて出て行ってくれ。さもないと……」
●効果音(ジャキッとマシンガンを構える音)
ナイトメア「なんだなんだ、やけに短気だな、帽子屋」
ブラッド 「当たり前だ。紅茶は美味いがこうも日差しがキツいと機嫌も悪くなる……。そこにさらに対抗勢力の連中がバイオテロを仕掛けてきたともなれば、短気にもなるというものだ」
ナイトメア「バイオテロ……。っむむ、否定できない……!」
●以下の双子は子供バージョンでお願いします
●少し離れたところで(ここから)
ディー・大人「あっ! 手を出すなよ、ネズミ!」
ダム・大人「そうだよ! それは僕らのだ!」
ピアス  「えええ……っ、でも、いっぱいあるんだから、ひとつくらい……」
ボリス  「どうせクッキーの味なんか分かんないだろ?」
ディー・大人「うんうん。チーズの味しか分からないんだから、何を食べたって無駄だろ」
ダム・大人「チーズの味だって、分かっているかどうかあやしいよ」
ピアス  「むっ! わ、分かってるよ!」
ボリス  「へ~え?」
ピアス  「ほんとだよ! チーズは美味しいって、ちゃんと分かるもん!」
ディー・大人「それ、分かっていないも同然だろ?」
ダム・大人「予想通りすぎて、溜め息も出ないよ」
●少し離れたところで(ここまで)
ブラッド 「ふう……。夜の予定の茶会が昼になっただけでも許しがたいというのに……まったく、なんとも大勢を引き連れてきてくれたものだ。せっかくの安らぎのひと時を、よくも台無しにしてくれたな」
ナイトメア「そうは言っても、私が連れて来たのはグレイだけで、他の連中はもともとここの……」
●効果音(ガガガガッというマシンガンの連射音)
●効果音(キィン、という弾き返すような音)
ナイトメア「な、ななっ、あぶ、危ないだろうが! 殺す気か!? グレイが庇ってくれなかったら当たってたぞ!?」
ブラッド 「当てる気で撃ったんだ」
●少し離れたところで(ここから)
ボリス  「……なあ、今、トカゲさんが帽子屋さんの銃撃、鍋で防いだように見えたの俺の気のせい……、だよな?」
ディー・大人「……あの鍋、やっぱり特別製だ。マシンガンを防げる鍋かあ……。欲しくなってきたね兄弟」
ダム・大人「中身はいらないけどね、兄弟」
ピアス  「なるほど~、特別製かあ。だから、あの爛れたスライムみたいなのが入っていても、お鍋は溶けないんだねっ! トカゲさんのお鍋は万能ですごいなあ」
●少し離れたところで(ここまで)
●効果音(ガガガガッというマシンガンの連射音)
●効果音(キィン、という弾き返すような音)
ナイトメア「きゃ、客に向かってマシンガンの一斉掃射とは酷すぎるぞ帽子屋!」
ブラッド 「呼びもしないのに現われて図々しく茶菓子を貪るような輩を、客と呼ぶとは知らなかったな」
グレイ  「……もっともな言い分だが、俺の上司に銃を向けるのはやめてくれないか」
ブラッド 「うるさいぞ、歩くバイオテロ」
グレイ  「バ、バイオテロだと……?渾身の力作を……」
ブラッド 「ふう。ある意味、狂気の作品かもしれないが……、あいにくと、招いた覚えのない客のもてなし方は知らないんだよ。……それがさらに塔の連中ともなれば、なおさらだ。お互いこれ以上不愉快な思いをする前に、さっさと引き上げてくれないか。もちろん、その物騒な鍋も一緒に。……いったい何製なんだその鍋は」
グレイ  「? 何を言っているんだ、これは極々普通の通販で購入した万能料理鍋だ」
ディー・大人「通販!?」
ダム・大人「通販で売ってるの、それ!?」
ボリス  「……ってか、通販とかするんだね、トカゲさん」
グレイ  「忙しいときに便利だぞ。……と、それはともかく、確かにナイトメア様には早く塔に戻り、食事の後で仕事に取り掛かってもらいたいが……、おまえに指図されるいわれはないな。クローバーの塔の主に対して、命令はやめて貰おう」
ナイトメア「……グ、グレイ?」
ブラッド 「ふふ、そんなに睨まないでくれ。誠実な部下の皮が剥げて本性が出てきているぞ、トカゲ」
グレイ  「はっ、睨まれたくらいで堪えやしないだろう。いっそ噛まれでもしないことには、な」
ナイトメア「おーい、グレーイ……」
ブラッド 「遠慮させてもらおう。爬虫類に毒はつきものだ」
グレイ  「……ふ」
ブラッド 「ふふ……」
●少し離れたところで(ここから)
ディー・大人「うわー……」
ダム・大人「避難しておいて正解だったね……」
ボリス  「つーか、怖いって……」
ピアス  「ぴいい……っ」
ナイトメア「まったくだ。厄介なことこの上ない組み合わせだな……」
ボリス  「ちょ、いつのまに夢魔さんまで逃げてきてんのさ!」
ナイトメア「私だって、怖いものは怖い!!あいつら、基本的に人の話聞いてくれないんだぞ!?グレイだって、私に対して命令するなとか言いつつ、私のこと無視だし……!」
ディー・大人「ボスとトカゲか……。関わらないほうがいいね、間違いない」
ダム・大人「うんうん。一銭にもならないしね」
●少し離れたところで(ここまで)
グレイ  「なんでも部下任せにしているうちに、どうやらおまえは口ばかりが回るようになったらしいな」
ブラッド 「ふ。君こそ、忙しなく駆けずり回ってご苦労なことだ。上司が無能だと部下は苦労するな」
グレイ  「……この××××××めが」
ブラッド 「それはこちらの台詞だ、××××××。見たくもない顔を見ていると、せっかくの紅茶が不味くなる。というか、その鍋から微妙に蛍光黄緑の煙幕が漏れてきているように見えるのは私の気のせいだと言ってくれ」
グレイ  「気のせいだ。食欲をそそる香りに色はない。まったく……、俺だっておまえの顔など見ていたくもない。くそ、ナイトメア様がごねずに俺の料理をおとなしく食べてくださっていればこんなことには……」
ブラッド 「ああ、そうだな。そもそも、君のところの上司が現れなければ、私だって今頃は優雅なティータイムを楽しんでいたし、君の上司がさっさとその不気味な鍋の中身をたいらげてくれていれば……」
ナイトメア「……ん? な、なんだ? 風向きが……。蛍光黄緑の煙がこっちに……。それに、二人とも、急にこっちを見て……」
ブラッド 「……元はと言えば、この男のせいだな」
ナイトメア「え?」
グレイ  「おまえに同意するのは癪だが、つまりはそう言うことだな」
ナイトメア「え、ええ? ちょ、待っ……、む、無言で凝視するな! こ、こわ……っ」
●効果音(ジャキッとマシンガンを構える音)
ブラッド 「ふむ。少し、話し合いといこうじゃないか、芋虫」
ナイトメア「い、いいっ! 要らないぞ!? 私は参加しな……」
●効果音(かちゃ、と鍋を構える音)
グレイ  「すぐすみますよ。小規模な会合のようなものです。ナイトメア様は、食事しながらで構いませんから」
ナイトメア「それが食事といえる物体か!? か、会合中は争いは禁止されているんだぞ!?」
ブラッド 「ああ。一応、な」
グレイ  「なるべく、禁止されていますね。でも、ご安心ください。これは、ただのお食事です」
ナイトメア「~~~~っ! わ、私に当たるなっ! お門違いだぞっ!? ……っておい、おまえたち、な、何をするんだっ! 私を押すなっ!!」
ディー・大人「そう言わずにさ。僕らのために身代わり……じゃなかった、盾になってよ」
ダム・大人「偉い領主様なら、当然子供を守ってくれるよね?」
ナイトメア「なっ、待て待て待て! 何が盾だ! 身代わりどころか、生け贄だと思っているだろう!? 第一、自分達は私の身代わりになるのは真っ平だとか言ったくせに……!」
ディー・大人「そりゃあ、そうだよ。僕ら、子供だもの」
ダム・大人「守る立場じゃなく、守られる対象だよね」
ナイトメア「今は大人だろう!? ……っておい、本当に押すなと……っ! よ、よせっ!! 私を犠牲にする気か!!?」
ボリス  「いやいやいや、そんなこと……」
ナイトメア「あるだろう!? はっきりそう思っているだろう!!」
ボリス  「もとはと言えば、夢魔さんがトカゲさんの料理を食べなかったせいだし……」
ナイトメア「そ、それは、あんなの料理といえないから……っ!!」
ピアス  「……無事でいられるといいね、ナイトメア」
ナイトメア「さりげなく不吉なことを言うんじゃない! わ、分かった、帰ればいいんだろう。今すぐ塔に帰る!帰って仕事でもなんでもするから……っ」
グレイ  「本当ですか? それはありがたい。……では、食事と話し合いが終わったらすぐに帰りましょう」
ブラッド 「ああ。話し合いと食事が終わったら、な」
●効果音(がしっと腕を掴む音)
ナイトメア「ううう、腕を掴むなっ!! お、おいっ、私を見捨てるんじゃないっ! このっ、裏切り者……っ!! 同じ会合なら、まだ仕事をしていたほうがいい……っ! こ、こんな会合は嫌だああああ~~~~っ!!」



Fin