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マザーグースの秘密の館

『ヴィンセント(学生)ルート ■ヴィンセント10』

■ 全問正解イベント10

【【【時間経過】】】
◆クイズ時と同じ背景。クイズ終了後に、そのままイベントに入ります。
【ヴィンセント】
「おめでとう、エリカ。
ついにやり遂げたな、10回目だ」■■
「……まあね。
実力よ」■■
【ヴィンセント】
「俺の出すクイズで、満点を10回とったら帰してやる、なんて最初に言ったときには、泣きそうな顔をしていたくせに」■■
(……まあ、ちょっと本気で泣きが入ったけど)■■
半泣きだった。
そして、キレた。■■
多分、お互いキレる要素があったので、喧嘩して。
男女だから殴り合いにこそならなかったものの、険悪で。■■
(本当に……、最初のときからは考えられないほど)■■
「……そ、それはあなたが底意地の悪い言い方をしたからよ。
人のことを散々頭が悪いだの愚かだの……」■■
【ヴィンセント】
「実際、あの頃のおまえは、俺のこと何も知らなかっただろ?
知らないっつーか、忘れてたっつーか……」■■
「子供の頃のことって、忘れちゃうもの。
こんなことがなければ……、きっと忘れていたことにも気付かなかった」■■
【ヴィンセント】
「……ま、好意的に見れば、お互い様だろうな。
俺だって、おまえのことを知らなかった」■■
「おまえは俺のことをなんだかよく分からないもの、としか認識していなかったし。
俺にとって、おまえは、俺のことを理解しようとすらせずに捨てた女だった」■■
(そんなふうに言われると、いかにもな悪女)■■
だが、彼は人ではない。
本なのだ。■■
「捨ててはいないわよっ。
ちゃんと本棚の……、片隅にだけど置いてあったじゃないっ」■■
【ヴィンセント】
「……どうだか。
単に、捨てることすら忘れていただけのような気がするんだが」■■
(……う)■■
「【大】気のせいよ【大】」■■
(……図星)■■
貰いものだから、捨てるのもな~等と思っているうちにすっかり忘れさっていたのは内緒だ。■■
【ヴィンセント】
「そのおまえが、最終的にこうして俺のことを理解してくれたのが嬉しい。
それに、これまでおまえと、その……」■■
「デート?」■■
【ヴィンセント】
「デ、デートというかご褒美というか、まあ、その、なんだっ!
おまえと過ごしたのも楽しかった!」■■
「……前は開き直っていたのに、どうしたのよ」■■
(改めて言うと恥ずかしい、とか……?)■■
【ヴィンセント】
「緊張しているんだ、馬鹿。
そこでおまえに押されたら、こっちは引くしかないだろう」■■
(馬鹿とはなんだ、馬鹿とは……)■■
「……何の話よ?」■■
【ヴィンセント】
「うるさいな、照れているだけだから放っておいてくれ!」■■
「……訳が分からない。
放っておいてくれっていう態度じゃないでしょう」■■
「そんなこと言われたら、放っておけないわよ。
【大】からかい倒したくなるわ【大】」■■
【ヴィンセント】
「……【大】性格悪いな【大】」■■
「お互い様よ」■■
【ヴィンセント】
「……ごほん」■■
「なにはともあれ、今日が最後だ。
……付き合ってくれるか?」■■
「ええ、最後でなくとも……、当たり前でしょう?
今日はどこに連れていってくれるの?」■■
【ヴィンセント】
「そうだな……、森へ」■■
ヴィンセントの差し出した手をとる。
いつものように。■■
「…………」■■
(……これで、最後)■■
【【【時間経過】】】
◆鬱蒼と茂る森の中。
◆針葉樹林が生い茂っているため、昼でも薄暗い。
◆二人が歩いているのは、森の中の小道。
ヴィンセントが私を案内してくれたのは、館の近くにある森の中だった。
彼に手を引かれ、薄暗い森の中を歩く。■■
(森……、か)■■
彼とは、後半、自然の中でデートすることが多かった。■■
【ヴィンセント】
「…………」■■
「…………」■■
(……何か探しているのかしら)■■
ヴィンセントは視線を上に向け、頭上に注意を向けているようだ。■■
「ねえ、何を探しているの?」■■
【ヴィンセント】
「ヤドリギだ。
他の木に寄生して育つタイプの植物で、この辺りではそんなに珍しいものではないはずなんだが……」■■
「他の木に寄生?
自分では光合成ができないの?」■■
【ヴィンセント】
「出来る種類もあるが、限定的だ。
その場合も、特定の栄養素を自分では作りだせないため、その部分に関しては寄生先から吸い上げている」■■
「完全に寄生先に依存する種類もある。
そちらは、すべての栄養に関して寄生先任せだ」■■
「へえ……。
他の植物がないと生きていけないのね」■■
「それで……、あなたはどうしてそのヤドリギを探しているの?」■■
【ヴィンセント】
「ヤドリギはそういった特殊な生態から、いろいろな伝説や神話を持っているんだ。
他の木に張り付いて、そこから栄養素を吸い取るために『吸血鬼の木』とも言われているな」■■
「だが、その中でも一番有名なのが……」■■
「……?」■■
【ヴィンセント】
「……あった」■■
言葉の途中で、ヴィンセントは目的のヤドリギを発見したらしい。■■
【ヴィンセント】
「あれが、ヤドリギだ。
分かるか?」■■
「ああ、本当だわ。
その部分だけ、他と葉っぱの形が違うみたい」■■
【ヴィンセント】
「行こう」■■
ヴィンセントは私の手をしっかりと握り締めると、そのヤドリギに寄生された木の根元まで早足に進む。■■
「な、なんなの?」■■
【ヴィンセント】
「ああ、ヤドリギについての話が途中だっただろう?
是非、実践をかねて話してやろうかと思ってな」■■
「……実践?」■■
(???)■■
【ヴィンセント】
「ヤドリギは、北欧神話やケルト神話では重要なシンボルなんだ。
だが、【大】そんなことはどうでもいい【大】」■■
「どうでもいいって、あなた……」■■
これまで様々な知識を披露してくれたヴィンセントの言葉とは思えない。
彼自身、こだわりがあったはずだ。■■
【ヴィンセント】
「今、俺にとって大事なのは……」■■
ぐいっと、腰にヴィンセントの腕がまわって強く引き寄せられた。■■
v10_1

「……!」■■
(か、顔が近い……!)■■
【ヴィンセント】
「ヤドリギの下で出会った男女は、キスをしなければいけないという風習があることだ。
……まあ、クリスマスの風習なんだけどな」■■
「!?!?」■■
「明らかに、今はクリスマスじゃないわよ!?」■■
本の中だからか、寒くも暑くもない。■■
【ヴィンセント】
「……そのクリスマスの風習も、元を辿れば北欧神話からきているらしい。
祭日の風習らしいから、いいんじゃないか?」■■
「今日は、祭日でもないでしょう」■■
【ヴィンセント】
「祭日にしてしまえばいい。
……祝うに値する日だ」■■
「祝うに値する……」■■
私は、自分の元の世界に帰る。
彼は、また元の日常に戻る。■■
(帰れることを、祝う気になれないなんて……)■■
「あなたは、祝いたい気分なの?」■■
(私が、帰ることを)■■
【ヴィンセント】
「……ああ。
俺は、おまえと一緒に行くと決めた」■■
「……【大】は?【大】」■■
【ヴィンセント】
「聞こえなかったか?
俺はおまえと行くって言ったんだ」■■
「聞こえたわよ、聞こえたけど……。
ど、どうやって!?」■■
【ヴィンセント】
「グース夫人の力を借りる。
おまえをここに連れてこられたんだ、俺が行くことだって出来るはずだろ」■■
「そんなアバウトな……っ!」■■
「だっ、大体、あなた、学生でしょう!?
勉強途中で、私の世界へ行くなんて……」■■
【ヴィンセント】
「俺はおまえのことがもっと知りたい。
おまえの世界のことも、知りたい」■■
「……学校を辞める気なの?
そんなの、勉強好きなあなたらしくないわ」■■
【ヴィンセント】
「おまえの世界を知ることも、勉強になる。
……この世界の学校を辞める気もないけどな」■■
「……?」■■
「……どういうこと?
私の世界に来たら、学校を辞めるどころか帰ってこられないのに……」■■
「…………」■■
(……あれ?)■■
私の世界に来たら、帰れない。
そう思っていたが、そんなこと一度も言われていない。■■
現に、私だって元の世界へ帰れるのだ。
彼だって、行き来できておかしくはない。■■
【ヴィンセント】
「……分かったみたいだな。
この世界について、おまえより深く理解している俺は、おまえより行き来が楽なはずだ」■■
「時間の流れも違うから、学校を辞める必要もない。
おまえの世界へ行けば、こっちへ戻ったときに年を食ってそうだが……」■■
「……それ、ちっともよくないじゃない」■■
時間の流れが異なるというのは大きな問題だ。■■
【ヴィンセント】
「……それも、まあ、なんとかなるだろ。
そう長い時間じゃなければ」■■
「私の世界へ来ても、長くはいられないってこと?」■■
【ヴィンセント】
「決断まで、長くかけなければいいってことだ。
俺がおまえの世界に永住するか……、おまえがこっちの世界に来るか、決断するまで」■■
「!」■■
【ヴィンセント】
「どっちにするか、決めるのを先延ばしに出来る。
俺も、おまえの世界で暮らせるか試してみられるし……、今すぐ決めなくていいってだけだ」■■
「どっちにしても、いつかは決めなきゃならないのね」■■
【ヴィンセント】
「学生に限らず、進路っていうのはそういうものだろ。
いつかは、決断しなくちゃならない」■■
「今だって、決められるんだぜ?
おまえは……、今、俺と別れたいか?」■■
「っ……」■■
ぶんぶんと、首を振る。■■
【ヴィンセント】
「じゃあ、考えればいい。
それほどゆっくりとはいかないが、自分達で決められる」■■
「……環境に流されるよりいいだろ?」■■
「……ヴィンセント」■■
「あなた、って……」■■
【ヴィンセント】
「ん?」■■
「……いい男だったのね」■■
【ヴィンセント】
「は?
……なんだよ、今になって気付いたのか、ったりまえだろ」■■
「いや……。
はは」■■
学生の身でもあるし、憎まれ口ばかり叩きあっていた。
女性に免疫もなさそうで、体は発育していても『男の子』の印象が強かったのだ。■■
(……最後に株を上げる、か。
駆け引きが出来ないなんて、とんでもない)■■
あるいは、駆け引きなしだからこそ、とんでもないのか。■■
(これは……。
断れっていうほうが無理じゃない?)■■
【ヴィンセント】
「多少うまくいかないことがあっても、離れなければ『ロミオとジュリエット』みたいにはならない」■■
「おまえと離れたくない。
……おまえのことが、好きなんだ」■■
「……ヴィンセント」■■
抱き寄せる腕の力が強くなる。
ぐっと抱き寄せられて、逃げられない。■■
(逃げる気なんか、ないけど)■■
【ヴィンセント】
「おまえは、どうだ……?
俺のことを、おまえはもう充分に知っているはずだろ?」■■
(私は……)■■
(……いいえ。
まだまだ知らないわ)■■
まだまだ、彼について知らないことだらけだ。■■
だからこそ、知りたい。
先があると思いたい。■■
「……好きよ。
私も、あなたのことが好き」■■
知れば知るほど、知識には深みがある。■■
「最初は本当に大嫌いだったのに、おかしな話よね」■■
【ヴィンセント】
「それはお互い様だ。
俺だっておまえが嫌いだったぜ?」■■
「人を忘れるなんて……、大嫌いだ。
もう絶対に、忘れられないようにしてやる」■■
互いに嫌いだと告白しあっているというのに、空気は甘い。■■
【ヴィンセント】
「ヤドリギに誓って、絶対に、だ。
……エリカ」■■
そっと、その手が私の頬に触れ、顔を持ち上げる。■■
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【ヴィンセント】
「……ヤドリギの種って、すごい粘着力があるんだぜ。
あちこちにくっついては寄生先を探すんだ」■■
「そんなヤドリギの下で誓うんだ。
……効果ありそうだろ?」■■
「……粘着質な誓いごとになりそうね」■■
「でも……、私の世界に来たからって、寄生されるのは御免よ?
ちゃんと、自活してよね」■■
【ヴィンセント】
「寄生するつもりはないが……、いろいろと教えるくらいはしてくれよ?」■■
「……あなたが私にしてくれた程度になら」■■
(傍にいてくれるなら、ご褒美に)■■
減らず口を叩きあいながらも、互いの距離が少しずつ近くなる。■■
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【ヴィンセント】
「…………」■■
「…………」■■
ヤドリギの下で、キスを交わす。■■
そのキスは、柔らかくも絡みつく。
離れられなくなるようなキスだった。■■
【【【時間経過】】】