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マザーグースの秘密の館

『ヴィンセント(学生)ルート ■ヴィンセント03』

■ 全問正解イベント3

【【【時間経過】】】
◆クイズ時と同じ背景。クイズ終了後に、そのままイベントに入ります。
【ヴィンセント】
「これで、全問正解も3回目か。
……なかなか、やるな」■■
「素直に褒めなさいよ。
3回目で認めるって言っていたじゃないの」■■
【ヴィンセント】
「……仕方ない。
【大】仕方ないので【大】認めてやろう」■■
「……どうしてかしらね。
【大】まったく【大】嬉しくないわ」■■
【ヴィンセント】
「それはおまえに、人の褒め言葉を受けとめるだけの謙虚さが欠けているからじゃないか?
女としてどうかと思うぜ」■■
「あんたは女性に対する気遣いが欠落しているわよね。
男としてどうかと思うわよ」■■
【ヴィンセント】
「…………」■■
「…………」■■
互いに厭味をぶつけあって、睨みあう。■■
(せっかく満点をとっても、ご褒美がこれじゃあなあ……)■■
「……はあ。
こんなふうじゃ、理解する気になんかなれないわ」■■
【ヴィンセント】
「……っ」■■
「……まあ、それでも、帰るために頑張るけど」■■
【ヴィンセント】
「…………」■■
「……ふん。
おまえのような女に理解できるか分からないが、美術館で面白い催し物をしている」■■
「褒美に連れて行ってやらなくもないが……、どうする?」■■
「い、行くわよっ!
せっかく満点をとったのに、厭味を言われるだけなんて釣り合わないもの」■■
【ヴィンセント】
「現金な女だ……。
行くぞ、さっさと歩け」■■
「……あんた、本当にむかつくわね」■■
ギスギスした会話をしながらも、私達は館を後にした。■■
【【【時間経過】】】
◆美術館の中。
◆様々な陳列台が飾られた中、警備の人間があちこちに立っている。
ヴィンセントが私を連れてきたのは、美術館だった。
いろいろなものが陳列されているが、それよりも警備の人間が目に付く。■■
「なんだか……、美術館にしてはずいぶんと物々しくない?」■■
【ヴィンセント】
「面白い催し物をしているといっただろう?
これだけの警備が必要とされるようなものが展示されているんだ」■■
「警備が必要とされるような展示物……?」■■
【ヴィンセント】
「人が多いから、はぐれないように気をつけろよ。
迷ったら俺は容赦なく置いていくぞ」■■
(むむむ……)■■
(この男……)■■
私が嫌いなのは分かったが、それでも物には言いようというものがあるだろうに。■■
「……そう。
それじゃあ万が一にもはぐれないように、手でも繋いでいてもらおうかしら」■■
【ヴィンセント】
「ああ、そうしてくれ。
おまえを探す手間が省けていい」■■
「……え?」■■
ぐい、と手を取られた。■■
(……まさか、本当に手を繋いでくれるとは)■■
こちらも厭味で返してやろうというくらいの気持ちだった。
素直な行動に戸惑う。■■
【【【時間経過】】】
【【【演出】】】・・・ざわざわ、と周囲からは賑やかな気配。
「ね、ねえ……?
ヴィンセント?」■■
(……いつまで手を繋いでいるの?
なんだか、どんどん人出の多いほうへ向かっていくけど……)■■
【ヴィンセント】
「あそこに目当てのものが飾られている。
人ごみに入るぞ、掴まっておけ」■■
「……ぜ、善処するわ」■■
【【【演出】】】・・・ざわざわ、と周囲からは賑やかな気配。
【【【演出】】】・・・どん、とぶつかる音
「っ!?」■■
「ご、ごめんなさい」■■
【【【演出】】】・・・ざわざわ、と周囲からは賑やかな気配。
【【【演出】】】・・・どん、とぶつかる音
「わ?」■■
「っと、すいません」■■
【【【演出】】】・・・ざわざわ、と周囲からは賑やかな気配。
人ごみの中を通り抜けようとすると、どうしても人にぶつかる。■■
「……ふう」■■
【ヴィンセント】
「……着いた」■■
「え?」■■
そうして押し合いへし合いしながらも、なんとかヴィンセントとはぐれずに陳列台の前に立つことが出来た。■■
v3_1

「……わあ!
綺麗……!!」■■
陳列台の上、ガラスケースの中に並んでいたのは美しい装飾品の数々だった。■■
王冠、錫杖。
指輪、ネックレス、ブローチ……。■■
そしてそのすべてにおける共通点が……。■■
「ダイヤモンド……?」■■
【ヴィンセント】
「……ああ。
美しいだろう?」■■
「ええ、すごく……。
こんな綺麗なダイヤモンド見たことないわ」■■
綺麗で……、大きいし、多い。
きらきらと、まばゆいばかりの輝きだ。■■
【ヴィンセント】
「これらはすべて、イギリス女王の持ち物なんだ。
ちょうど次の褒美になるネタを探しているときに、今度特別に展示があると聞いて……」■■
「……わざわざ、私へのご褒美になりそうなものを探してくれていたの?」■■
(……もっと、適当に考えていると思ったのに)■■
(意外……)■■
【ヴィンセント】
「そ、そんなことはどうでもいいんだ。
せっかく来たんだ、説明を聞いていけ」■■
「ええ、聞くわ。
教えてちょうだい」■■
なんだか、私のほうまで調子を崩し、素直に応じてしまう。■■
【ヴィンセント】
「これらの宝石のほとんどは、元は一つの原石だったんだ。
想像できるか?」■■
「え……?
この装飾品に使われているダイヤモンド、元々は一つの石だったの?」■■
【ヴィンセント】
「ああ。
南アフリカのカリナン鉱山で発見された、史上最大のダイヤ原石だ」■■
「大きさだけじゃない。
普通それだけ大きければ、内部に不純物や傷があるものなんだが……、その原石にはまったくなかったんだ」■■
「史上最大のサイズを誇る、完全無欠の原石だった。
その原石は、南アフリカの政府に買い取られた後に、イギリス王国に献上され、分割されて研磨された」■■
「それで、こんなふうにペンダントになっていたり、指輪だったりするのね?
一体、幾つになったの?」■■
【ヴィンセント】
「史上最大の原石は、合計九つの大きい石と、九十六個の小さい石とに分かれたらしい。
九十六個のほうは方々に売られていったようだが……」■■
「残りの九つの大きい石については、すべてイギリス王室、もしくは王族のものとして所有されているんだそうだ」■■
「へえ……。
こんな大きいダイヤ、今まで見たことなかった」■■
「でも、原石はもっともっと大きかったのね……。
想像がつかないわ」■■
「……原石の状態でも見てみたかったな」■■
【ヴィンセント】
「原石のままで置いていても価値があったんだろうが、そうなると本当に置いておくだけになる。
考え方にもよるんだろうが、実用されたほうがいいということで分割されたんだろう」■■
「そうね。
大きな原石がひとつ美術館にあるよりは、今みたいに分けてでも使われているほうが……価値がありそう」■■
今は美術館にあるものの、実際に使われ続けているものだ。
そのほうが有効活用されているという気がした。■■
(でも……、やっぱり原石も見てみたかったな)■■
「分割しても、これだけ貫禄があるんだからすごいわよね。
宝石に詳しくない私でも、いいものだって分かるくらい」■■
【ヴィンセント】
「そうだな。
だが、いくら原石がよくても研磨師の腕が悪ければその価値を殺すだけだ」■■
「たしか……、ダイヤやその他の原石を宝石として仕上げるためには、磨いたりカットしたりする必要があるのよね?」■■
【ヴィンセント】
「ああ。
光の入射、反射を考えたカットなど、研磨師の腕次第で宝石は化ける」■■
「おまえも……、もしかしたら磨けば光るのかもしれないな」■■
「……はい?
どういうことよ」■■
寒いことを言われてしまった。
今までの態度を鑑みれば、不気味としか思えない。■■
【ヴィンセント】
「満点も3回だ、認めると言っただろ。
やれば出来るってわけだ……」■■
「それ、やっぱり褒められているように聞こえない」■■
だが、少しばかり嬉しいと感じてしまう。■■
【ヴィンセント】
「勉強に励めば、おまえだって……。
今は路傍の石に等しいが、磨きあげればああいった宝石に化けるかもしれないぞ?」■■
「……だとしても、あなたに磨かれるなんて真っ平御免よ」■■
【ヴィンセント】
「じゃあ、怠けずに自己研鑽することだ。
……俺に磨かれたくはないんだろ?自分で磨け」■■
「言われなくても」■■
ああ言えば、こう言う。■■
だが、突き放したような言い方がどこか小気味よく感じられた。
下手に飾った言葉よりも、しっくりとくる。■■
(ここにある宝石ほどきらきらしていないけど……、そのかわりごてごてもしていない)■■
「…………」■■
ここにはない原石を想像してみる。
それは、想像でしかないものの……。■■
人でごったがえす美術館。
手は繋いだまま。■■
【【【時間経過】】】