アニバーサリーの国のアリス・エリオット滞在ルート14
帽子屋屋敷・エリオットの部屋
「うん。
帰れるようになったら帰るつもりよ」■■
いつか帰るのかと聞かれて、肯定した。■■
「いきなりね?
どうしたの」■■
【エリオット】
「帰っちまいそうな気がしたんだ……」■■
さすがに勘がいい……。■■
【エリオット】
「聞いたら肯定するし……」■■
「だって、帰るつもりなんだもの」■■
【エリオット】
「そんな、けろりと……」■■
「……でも、戻ってくるわ」■■
帰らなくてはならない。
だが、戻ってくるつもりだ。■■
そう言っても、エリオットは安心しなかった。■■
【エリオット】
「……嘘だ!
黙って帰る気だったんだろ!?」■■
「心配すると思ったから……。
でも、帰る前には、ちゃんと相談するつもりだったのよ?」■■
本当のことだ。
エリオットが察知するほうが早かったのには驚いた。■■
【エリオット】
「……帰るなよ。
ずっとここに住めばいい」■■
「あんたの嫌いな……、嫌いじゃなくても、あんたを悩ませている姉さんとも二度と会わなけりゃいい」■■
「そうはいかないわ」■■
ここにいるにしろ、一度は帰らなくてはならない。
私は、いつまでも夢に留まってはいられない。■■
いずれ姉を裏切る。
それがどんな救いになるか分からないが(恐らく、単なる自己満足のために)、家にいる間だけはいい妹を演じたい。■■
いい子にしていたい。
後の裏切りが余計に手酷くなるとしても、直前まで知られたくないのだ。■■
なんて、最低で最悪な妹なんだろう。■■
「帰らなくちゃ」■■
【エリオット】
「……嫌だ」■■
「帰らせない」■■
「……エリオット」■■
【エリオット】
「……帰るな」■■
【【【演出】】】・・・抱き締める音
抱きしめる力が強まる。■■
「エリオット……」■■
ちゃんと戻ってくるつもりだ。
そう言っても、保証などない。■■
「…………。
帰っても、もうすぐ家を出ることになるから」■■
卒業は、そう遠くない未来だ。■■
学校を出ると同時に、私は家を出る。
姉を裏切り、泣かせてしまう。■■
でも、そうすると決めているのだ。■■
(家を出た上、異世界に行く……か)■■
(卒倒ものよね……。
とんだ不孝者だわ)■■
「ちゃんと、戻ってくる」■■
【エリオット】
「駄目だ」■■
「戻ったら、あんた……ここには帰ってこれない気がする」■■
……そうかもしれない。
未だ、ここが夢だかなんだか分からないのだ。
都合よく一旦戻ってまた帰ってくるなど……、出来るのかどうか。■■
それでも、私は繰り返す。■■
「ちゃんと戻ってくるから……、一度は帰るわ」■■
一度がずっとになる可能性があっても。■■
【【【時間経過】】】
ナイトメアの夢
【ナイトメア】
「三月ウサギはすっかり君に骨抜きにされているようだね?」■■
「……何よ、いきなり」■■
いつもの夢。
私の望むタイミングでみることはなく、ナイトメアとの遭遇は毎回相手都合だ。■■
今回も同じく。
気付くとこのおかしな空間にいて、現れたナイトメアはいきなりのたまった。■■
(夢魔のくせに、現実で起こっていることが分かるの?)■■
(……いや。
単に私の心を読んだだけかも)■■
何しろ私の頭は、エリオットのことで一杯……。
そう言っても過言ではない状態。■■
★エリオット滞在08で「2:適当に返事をしてやり過ごす」を選んでいる場合のみ↓
(何だか、前にも同じようなことを考えた気がするわね……)■■
★エリオット滞在08で「2:適当に返事をしてやり過ごす」を選んでいる場合のみ↑
【ナイトメア】
「ふふ、そうだよ。
私は夢魔だからね……、現実を共有していなくとも、君の心からすべてを読み取れる」■■
「すべては言いすぎでしょう」■■
いくら夢魔でも、私の心情や記憶全部は読み取れまい。■■
【ナイトメア】
「はは、まあそうだな。
さすが、君は鋭い……」■■
【ナイトメア】
「だが、今君の心の中にあること……君が印象的に覚えていること、強く考え続けていることなどは手に取るように分かるぞ」■■
【ナイトメア】
「今のように。
君は寝ても覚めても、三月ウサギのことを考えているんじゃないか?」■■
「う……」■■
否定できない。■■
寝ても覚めても……、考え続けなくてはいけないのは、元の世界へ帰ることのはずなのに。■■
考えているといつの間にか、それがエリオットのことに取って代わる。
帰るな、ここにいろと言って私を抱き締める彼のことに。■■
(絆されない。
エリオットの気持ちも分かるけど、私は帰らなきゃいけないんだもの)■■
(彼が何といおうと、私は帰らなきゃ)■■
【ナイトメア】
「あいつを置いて、帰るつもりなのか?
君に夢中のあの男を捨てて?」■■
「捨てるだなんて言わないで」■■
「……帰るわ。
一度はね」■■
【ナイトメア】
「そしてまた、戻って来る、と?」■■
「そのつもり」■■
(都合よく、そんなことができるなら)■■
【ナイトメア】
「…………」■■
ナイトメアは口を噤む。
彼には、私の内心は見透かされている。■■
落ち着かない。
何も言われていないのに、責められているような気になってくる。■■
(……なんで責められなきゃいけないのよ)■■
責められるようなことは何もしていないはずだ。■■
いや、エリオットに対して酷いことなのは分かっているが、帰らなければいけないのだから仕方がない。■■
夢はいつか、必ず覚める。
私がどうこうできることではない。■■
【ナイトメア】
「また戻って来る、ね……」■■
「…………」■■
(……知っているの?
それが出来るのかどうか)■■
ナイトメアはたまに、それこそ先刻のように何でも知っているように見えるときがある。
本人がそう誇張するときでなく、ふとしたときに。■■
この世界のこと、住人のこと、色々なことを教えてもらった。■■
掴み切れないところも多い。
だが、夢魔の神秘的な雰囲気は、彼は私には理解の及ばないすべてを把握しているのではないかと思わせる。■■
【ナイトメア】
「言っていなかったが、私もエリオットのことはよく知っているんだ」■■
「……そうなの?」■■
夢魔は、私の内心の思いには答えない。
追及するようなものでもないので、話を合わせる。■■
「エリオットとも、夢で会っているってこと?」■■
【ナイトメア】
「ああ、夢で会うときもあるし、それ以外の付き合いもあるよ。
キレやすいところがあるが彼は比較的付き合いやすい男だ……彼の上司などに比べれば余程ね」■■
「……まあ、そうね」■■
ブラッドのようなひねくれ者よりは、エリオットのほうが断然付き合いやすいに決まっている。■■
【ナイトメア】
「あいつの性格は分かっている。
君を放すまいと……、エリオットは必死だろう?」■■
「……っ」■■
疑問を無視して問い返され、言葉に詰まる。
質問が的を射ていたせいもあった。■■
【ナイトメア】
「私も、君にこの世界に留まってほしいと思っている。
引き留めるのがエリオットなら、私も面白いと思っていたんだが……」■■
「私は、誰に引き留められたりもしないわよ」■■
いつか帰る。
それは、最初から決まっていたことだ。■■
(最初から……)■■
【ナイトメア】
「そんな『最初』などないよ、【主人公の名前】。
決まってなどいない」■■
何もない空間なのに、その凛とした声は響いて聞こえた。■■
「いいえ、あるわ」■■
私がこの世界に留まり続ける、なんて。
そんなことは有り得ない。■■
人は、夢や空想の中だけで生きてなんていけない。■■
【ナイトメア】
「生きていけるさ。
私がそうだ」■■
「……?」■■
【ナイトメア】
「私にとっては、夢こそが現実。
ここで起こることのほうが、真実だ」■■
【ナイトメア】
「君も、そうなればいい。
君が受け入れれば、夢も現実になるし、真実になる」■■
「そんなの……」■■
「……受け入れられるわけないでしょう」■■
馬鹿げている。
私は夢魔ではないし夢想に浸る病人でもないのだから、そんなことは無理だ。■■
無理なのに……。■■
(…………)■■
ナイトメアの声が妙に甘く聞こえるのは、なぜなのか。■■
【【【時間経過】】】
帽子屋屋敷・エリオットの部屋
「……エリオット?」■■
【エリオット】
「…………」■■
「不安なんだ……」■■
エリオットは私を抱き締めている。
逃がさない、帰さないというように。■■
こうしていなければ不安なのだと、言葉にされずとも伝わってくる。■■
充分伝わっているのに、更にストレートな言葉まで。
伝わりすぎて、痛いほどだ。■■
「マフィアのナンバー2ともあろう人が弱気じゃない?」■■
彼が不安に思う原因は分かっているのに、苦笑する。
ポーズをとる。■■
【エリオット】
「あんたが安心させてくれないんだろ……」■■
「……帰らないって言ってくれれば安心するのに」■■
「嘘をついてほしいの?」■■
【エリオット】
「嘘じゃ意味ねえよ……。
帰らないって約束してくれ」■■
「……それこそ、嘘になるわ。
私は帰る気だもの」■■
少なくとも、一度は戻らなくてはと思う。■■
戻らなくては戻らなくてはと気が急くのだ。
焦燥感のようなものが積もっていく。■■
無視できない。■■
(なんで、こんなに……)■■
(……帰らなくても、向こうはうまく回っていくと思うのに)■■
それなのに、帰らなくてはという気持ちは日ごと増していくのだ。■■
(どうしてかしら……)■■
(……分からない)■■
【エリオット】
「……元の世界に、好きな奴でもいるんじゃないのか」■■
「え……?」■■
ぱっと出てきたのは、この屋敷の主人と同じ顔だ。■■
【エリオット】
「!
やっぱり……っ」■■
「違……!
違うわよ、誤解、誤解っ!」■■
「思い出したのは家族、家族っ」■■
ここで、エリオットの上司が、付き合っていた人と瓜二つ……なんて言ってもややこしくなるだけだ。
混乱が増すようなことは避けたい。■■
【エリオット】
「家族か……」■■
「あんた……、家族のこと嫌いなんだろ?」■■
「ええ?
そんなことないわ」■■
「家族のこと、大事に思っている」■■
【エリオット】
「でも、好きじゃない。
今だって……悲しそうな顔してるぜ?」■■
「え?」■■
(悲しそうな顔?)■■
「また、変な顔している?」■■
【エリオット】
「してる。
変じゃないけど……悲しそうだ」■■
「気のせいよ。
私、家族に会いたいと思っているもの」■■
特に、姉さん。■■
姉に会いたいと思っている。
いつも、思い出すのは彼女のことだ。■■
(会いたい)■■
元の世界で、一番会いたい人だ。■■
「嫌いなんて、とんでもないわ。
本当に……大好きなのよ」■■
【エリオット】
「じゃあ、そんな顔するなよ」■■
「そう言われても困るわ。
自分じゃ、悲しそうな顔をしているつもりなんてないもの」■■
帰りたい……、帰らなくてはいけない。
姉に会いたい。■■
そのときが近いことも、何となく気付いている。
それなのにどうして、悲しむ必要があるのか。■■
【エリオット】
「本当は帰りたくなんかないんだろ?
帰るなよ」■■
「私の意思まで勝手に決めつけないで。
一度は帰らなきゃいけないんだって、もう何度も……」■■
【エリオット】
「帰るな」■■
「んん……っ!」■■
聞き飽きるほど繰り返した短い台詞をもう一度言って、乱暴に唇を合わせてくる。■■
歯がぶつかって、少し痛かった。
エリオットは構わず唇を押し開いて、キスを深める。■■
【エリオット】
「ん……、……っ」■■
「……っ。
は……っ」■■
【エリオット】
「…………」■■
「……ふ、は」■■
「…………」■■
【【【演出】】】・・・抱き締める音
【エリオット】
「【主人公の名前】……」■■
長いキスを解くと、エリオットはきつく私を抱き締めた。
呼吸がままならなくて、苦しいほど。■■
「エリオット……」■■
「どうして、こんなに執着してくれるのか分からない」■■
【エリオット】
「さあ……。
俺にも分からねえよ……」■■
「……狂信的なのかもな。
性分なんだ。こうと決めたら、信じ込んで変えられなくなっちまう」■■
「ブラッドにも、すごく尽くしているものねー……」■■
からかい半分に茶化してみる。■■
からかい半分……嫉妬も半分だ。
エリオットの、ブラッドへの信望ぶりはすさまじい。■■
【エリオット】
「そうだな。
ブラッドには絶対的に尽くしてる」■■
「ブラッドの言うことはなんだって正しい……と思うぜ、多分」■■
「……いいわね、そういうの」■■
そこまで言い切られると、茶化す気も失せる。■■
ちょっと羨ましいとも思う。
慕われるブラッドもだが、そこまで慕うことの出来るエリオットにも。■■
「純粋ね。
なかなかそうまで信じられないわ」■■
【エリオット】
「…………」■■
「ああ。あいつがどんなことを言っても信じちまう。
だけど……」■■
「【主人公の名前】、あんたのことは……、疑うと思う」■■
「…………」■■
「……私のことはブラッドみたいに信じられない?」■■
【エリオット】
「信じられない」■■
きっぱりと。■■
「そんなに信用ならないんだ……」■■
付き合いの長さなどからも仕方ないとは思うが、軽く傷つく。
面と向かって言われたいことではない。■■
【エリオット】
「……失いたくないんだと思う」■■
「ブラッドになら裏切られてもいいって思うが……、あんたには……裏切られたくないんだ」■■
「…………」■■
無償の信頼と、そうでない好意。■■
【エリオット】
「そういうの……嫌だと思うか?」■■
「……ううん」■■
形は違うが、どちらも好意だ。
だが、私は、裏切られてもいいと言われるより、裏切られたくないと言われるほうが嬉しい。■■
つなぎとめていてくれる気がする。■■
【【【時間経過】】】
★全キャラ共通部分ここから↓
帽子屋屋敷・主人公の部屋
【【【時間経過】】】
「…………」■■
一杯になった小瓶を見上げる。■■
苦い薬。
その味を知っているのに、捨てられない薬。■■
薬……なのだろうか。
その正体すら知れない。■■
毒かもしれない。
身のためにならないのかもしれない。■■
捨ててしまいたい気持ちがないわけではないのに、捨ててはいけない気がするのだ。■■
「……っ……」■■
「また……」■■
耳鳴りがする。
体から心だけ引き離されるように……痛い。■■
「……っ……」■■
落ちていく。
ここに来たときと同じように。■■
体も、心も。■■
どこか異空間
「…………」■■
「……え?」■■
先刻まで、私はベッドにいたはずだ。
そして、引き剥がされた。■■
(これは……)■■
(……夢?)■■
馴染みになった夢とは違った空間。
いつもと異なり、夢の先に別のものがある。■■
暗闇と、その先の……。■■
夢かどうかを考えるなど、愚かなことではないだろうか。■■
これは夢。
そうだと信じているはずだ。■■
これは夢で、今までのことも、今このときも全てが夢だ。
逃げ道なんて用意されていない。■■
選択肢なんてない。
そう決めたはず。■■
(……?)■■
(どうして、そんなふうに決めたの?)■■
目の前には道がある。
この道を進んで帰らなくてはいけないと、誰も強制などしていない。■■
ここは、ペーターが落とした闇ではない。
ナイトメアは、まだ現れない。■■
行く手を遮るものも、進めと促すものもいない。
どちらの道も選べる。■■
ここに残るか、先に進むか……。■■
……決めるのは、私だ。■■
どちらに進むか。
これから、歩いていく道。■■
(選ぶ権利なんて、あると思っているの?)■■
(そんなことが許されると?)■■
「…………」■■
(……?)■■
(……どうして、そんなふうに思うの?)■■
(どうして、そんなふうに思わなきゃいけないの)■■
歩く道を制限されなくてはならないような失敗はしていない。■■
私は、罪を犯してなどいない。
断罪しなければならないことなどない。■■
今の私には、まだ。■■
「……?」■■
(今?)■■
(これから先は違うの?)■■
今の私。
今の私は、今ここにいる私だ。■■
そのはずだ。
これから犯す罪など、知らないはず。■■
(……あれ?)■■
【???】
「【主人公の名前】」■■
「!?」■■
名前を呼ばれ、振り向く。■■
しかし、誰もいない。
誰かに名前を呼ばれたのに、声が聞こえない。■■
「ナイトメア?」■■
ここにいそうな人の名前を呼ぶ。■■
しかし、誰も答えない。
誰からの返事もなく、姿もない。■■
何も見えない。
誰もいない。■■
私を呼んだのは、誰でもない。■■
私を受け入れてくれる世界だ。
このままここにいてもいいと、許してくれる。■■
(許される?)■■
(許してほしくなんかないのに?)■■
それでも、振り向けば愛おしい。■■
優しく感じる。
安心する。■■
(……深い闇が?)■■
前を向けば、光の道。
輝いている。■■
輝いて見えたのだ、今の私には。■■
この道に惹かれるはずだ、今の私なら。
振り向けば、夢ともつかない闇が広がっている。■■
今の私なら間違いなく光の道を選ぶはずなのに、決めあぐねている。
光り輝く道が魅力的に思えない。■■
ずっとここにいたいと思う。
愛しい世界。■■
そう感じるのは、今の私が「今」の私ではないからで……。■■
「……?」■■
(何を考えているのかしら?)■■
(……?)■■
胸が痛い。■■
今の私……。■■
「今」の私は、こんなに大人びていただろうか。■■
どうして、疑問に思わない?
「今」の私なら、どちらを選ぶ?■■
このとき、「今」なら自由に選べたはず。■■
今の私は……。■■
【【【時間経過】】】
★全キャラ共通部分、ここまで↑
※ここからEND分岐(全ルート共通END含む)
※「帽子屋ファミリーEND」はブラッド・エリオット・双子滞在ルート共通
★以下の条件を満たす場合、ブラッドの好感度に関係なく「ナイトメア・BAD2(真相END)」へ
・ユリウスENDを見ている
・責任感が4以上
・「ナイトメア・BADEND1」を見ている
★責任感が4以上、ブラッドの好感度が10以下の場合、「ナイトメア・BADEND1」へ
★エリオットの好感度が10以下、責任感3以下の場合、「帽子屋ファミリーEND」へ
★エリオットの好感度が11以上の場合、「エリオットBESTEND」へ