TOP>Game Novel> 「 ハートの国のアリス 」> エリオット=マーチ ■05話_2

ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『エリオット=マーチ ■05話_2』

帽子屋屋敷・主人公の部屋
(暇だな……)■■
せっかくの休みだが、ブラッド達は仕事なのか、揃っていない。■■
(部屋でごろごろしていても、つまらない。
どこかに出掛けよう)■■
ハートの城を訪ねる。
ペーターが、私を見付けて駆け寄ってきた。■■
【ペーター】
「【主人公の名前】……
ああ、みなまで言わなくていいです」■■
「僕に会いに来てくれたんですよね?
嬉しいです!」■■
みなまでも何も、そんなこと一言も言っていない。
……別のことを言ったところで、どうせ聞かないだろうが。■■
【ペーター】
「いい天気ですね、【主人公の名前】。
折角です、案内しますから散歩でもしませんか?」■■
「はいはい。
構わないわよ」■■
【【【時間経過】】】
帽子屋屋敷・エリオットの部屋
eri6 【エリオット】
「それでな、この間の仕事ではさ~……」■■
エリオットは寛ぎながら、愚痴をこぼす。
内容があまりに生臭いものになったら止めるが、そこまででない場合は聞き流してやる。■■
エリオットの部屋に招かれて以来、彼の仕事の合間に呼ばれることが多くなった。■■
男性の部屋だからということで始めは多少構えたが、慣れというのは偉大なもので、今ではとても寛げる。■■
エリオット自身が言っていたように、ここは男性の部屋としては片付いていると思う。■■
「ふ~ん、それは大変だったわね……」■■
【エリオット】
「ああ、面倒臭くってさあ……」■■
「……でも、どうせやっちゃうんでしょう?
少しくらい早まったっていいんじゃない?」■■
他人事なので、冷たい。
私の知らないところで起きている分には、エリオットの仕事対象がどうなろうと知ったことじゃない。■■
エリオットが疲れているほうがかわいそうだ。
私にとって、身近なものが現実で、遠いものはどうでもいい。■■
(感覚が麻痺してきちゃっているのかしら……)■■
だが、元からこんなものだったという気もする。■■
「そんなに面倒なら、ねじ伏せちゃえばいいじゃない。
一人倒しちゃえば、後はすぐ折れるわよ」■■
【エリオット】
「……そうか?」■■
「ええ、人なんて脆いものだもの。
特に、つるまないと立ち向かえない人っていうのはね」■■
【【【演出】】】・・・本のページをめくる音
本のページをめくる。■■
おかしなことに、この世界には本がある。
そして、ちゃんと読める。■■
私の夢だから、内容が正しいかどうかはともかく、新しい知識が吸収できるのだ。
おかしな夢……。■■
「ごく少数や単独でも、信念を持っている人とか、そういうののほうが強いわ。
そういう人は最後まで粘るの」■■
「それこそ、殺しでもしない限り、考えを変えない。
すごいわよね」■■
頑固な人というのはいるものだ。
いいことかどうかは別として。■■
器用に立ち回れない。■■
【エリオット】
「……【主人公の名前】、あんたは信念とかある?」■■
「私はないわ。信念なんて。
無気力だし、夢や希望とかもよく分からないの」■■
「熱意がないのよね。
情熱とかそういったもの」■■
「そういうのを持っている人、すごいなって思うわ。
真似できない」■■
本を読みながら、ページをめくるようにぺらぺらと喋る。■■
私は、読書や他のことに集中しているときほど多弁になる。
そして、無意識に近い会話というのは、内面を吐露することが多い。■■
【エリオット】
「俺にも、真似できないな……。
信念とかそういうの、よく分からない」■■
「仕事は、ブラッドがやること全部決めてくれるから楽なんだ。
俺はこだわりとか特にねえから、言われたとおりやってりゃいい」■■
「あなたは、ブラッドが大好きで力になろうとしているんでしょう。
それも、信念だと思うわよ」■■
【エリオット】
「そんな大層なもんじゃねえよ……」■■
「ナンバー1になろうとも思わねえし、そういうのは合ってない。
ブラッドも俺がよく分かってるから、重宝してくれんだ」■■
「こうしたいって意志がないから、裏切りっこねえ。
俺、反逆心ゼロだし」■■
「いいじゃない。
あなたの場合は、ブラッド=デュプレっていう人自体が信念なのよ」■■
「私は、信念なんて持ってないから羨ましいわ」■■
これだけは譲れないという信念など、私は持ち合わせていない。■■
馬鹿じゃないのと毛嫌いしながら、遠巻きにしか見られない。
ああいう熱さは私には持てないものだ。■■
【エリオット】
「…………。
俺は、お嬢に知り合いなんていないけど、あんたって他と違うよな」■■
「お嬢さん、って?」■■
そういった揶揄には慣れている。■■
私は裕福な家庭で何不自由なく育って、現在は養われる身だ。
お嬢さんと呼ばれても、そのままなのだから仕方ない。■■
だが、呼ばれるたびにかちんとくるのも仕方ないことだ。■■
私にはまったく似合わない言葉。
それに相応しい淑女ならともかく、いい境遇にいても私は「お嬢さん」になれない人間だ。■■
【エリオット】
「……って思ったこともあるけど、なんか違うよな」■■
「そうでしょうね」■■
淑女とは、とても言えない。■■
【エリオット】
「うちのメイド共みたいに壊れちゃいないくせに、馴染んじまっている」■■
「具体的な話は避けるのに、一人倒せば後はすぐ折れるなんてすらっと言えるし……」■■
「私も壊れているってことじゃないの?」■■
【エリオット】
「ん~~~……。
あんたは壊れちゃいねえよ」■■
「壊れた奴っていうのは、うちのメイドみたいなのをいうんだ。
あの女共は酷い」■■
「メイドさん達ね……。
そんなにおかしな言動はしていないと思うけど……」■■
彼女達は美人揃いで(ちょっと見た目が揃いすぎているが)、親切だ。■■
それなりに物騒な会話をしているのは耳にするが、それが仕事。
エリオットが前に話したほど、酷い言動は見たことがない。■■
「私にはよくしてくれるわよ」■■
【エリオット】
「…………。
あいつら、あんたが好きなんだよ」■■
「好きだから親切なんだ」■■
エリオットは面白くなさそうだ。■■
【エリオット】
「すっげー凶悪で、大概の悪事はこなしてきてる奴らだぜ」■■
★選択肢が出る
※好感度には影響のない選択肢です

1:「そうなの?」
2:「そんなふうには見えない」

1:「そうなの?」
「そうなの?」■■
私にはそこまでの悪人には見えない。
だが、エリオットが言うならそうなのだろうか。■■
(大概の悪事なんて言われても、私には想像がつかないけど)■■
【エリオット】
「そうだっての。
上司である俺が言ってんだぜ?」■■
「ん~。
でもやっぱり、私にとっては……」■■
2:「そんなふうには見えない」
「そんなふうには見えないわ」■■
私には、彼等がそこまでの悪人には思えない。■■
★選択肢で変わる部分、ここまで↑

「すれ違うと愛想よく笑ってくれるし、お願いごとはなんでも引き受けてくれる。
私が暇そうなときは雑談したり相手してくれるし、お菓子を作ってくれたりもする」■■
「……親切で、いい人たちよ」■■
彼女達を擁護すると、エリオットはますます不機嫌そうになる。■■
【エリオット】
「あんたは好かれてるんだよ。
特別だ」■■
「好きな奴には誰だって親切で優しいさ。
【主人公の名前】、あんたも猫を被るって言葉は知っているだろ?」■■
「私に猫なんて被ってどうするのよ。
好かれているっていうけど、メイドさん達がそんなに私を好きになるような理由がないわ」■■
「特別に親切にされているのは、私がお客さんだからでしょう。
あなたこそ、よそ向きの顔って知らないの?」■■
【エリオット】
「……っだ~~~~、分かってねえ!
分かってないな、【主人公の名前】!」■■
「奴ら、客だろうがなんだろうが、気に食わなかったら追い返すか撃ち殺すかだぜ!?」■■
「……撃ち殺すならまだマシだ。
奴らはガキ共と一緒で、刃物も使いやがるから……」■■
エリオットはぶつぶつと呟いて、頭を抱えた。■■
【エリオット】
「奴らのせいで何度屋敷内のカーペットを替えたことか……。
血臭ってのは残るんだからな……外でやりやがれ……」■■
「あ~ムカつく、あ~ムカつく……」■■
「……なんだかよく分からないけど、あなたって結構苦労性だったのね」■■
大雑把そうなのに、エリオットはナンバー2らしく屋敷内の統括も行っているらしい。■■
「偉い偉い……」■■
【エリオット】
「【主人公の名前】……」■■
「……大好きだ」■■
誉めると、エリオットは目を細めた。■■
無防備な、甘えた顔になる。
甘えられると、年上の男性なのに幼く見えた。■■
可愛く見えてしまうのが妙な感じだ。
彼が外でもこうだとは思えない。■■
先刻出た言葉のように、彼こそ猫を被って外面とまったく違う顔を見せている。■■
「エリオットもストレスが溜まっているのよねえ……。
よくやっているわ」■■
働き詰めな父親を思い出す。
彼も、甘えるような人はいるのだろうか。■■
恐らく今は亡き母がそれにあたる人だったのだろうが、今の父は孤独だ。
私達姉妹では支えにはなれても、甘えられるような空間を作ってあげられなかった。■■
父にとって、母は特別だったのだ。■■
(そうすると……、今のエリオットにとって、私は父さんにとっての母さんみたいな感じ?)■■
特別。
友達だろうと恋人だろうと夫婦だろうと、代わりのきかない特別な人。■■
そう思うと、なんだか……■■
【エリオット】
「あいつらに変なことされたら、すぐに言えよ。
ぶっ殺すから」■■
ブラッドに返す本を受け取り、エリオットは立ち上がった。■■
(ぶっ殺すって……)■■
(女の人に対してなんて言い草……。
大体、変なことって何よ……)■■
「使用人の人達は皆、私によくしてくれているから問題ないわ」■■
「メイドさん達だけでなく、使用人の男の人達もとっても優しくて……」■■
【【【演出】】】……本を握りつぶす音
【大】ぐしゃ!!!【大】■■
「……え?」■■
【エリオット】
「あ……」■■
つぶれるような音になんだと思って見てみると、エリオットは本を握りつぶしていた。■■
【大】本を握りつぶしていた。【大】■■
「…………」■■
【エリオット】
「……力が入っちまった」■■
「…………」■■
【大】本を握りつぶし【大】本を握り(以下略)■■
(力が入ったくらいで握りつぶせるものか……?)■■
【エリオット】
「…………」■■
「……【主人公の名前】、あいつら……、男共も危険だから近寄らないほうがいい」■■
「……は、はい」■■
なんだかもう、頷くことしか出来なかった。■■
【【【時間経過】】】
時計塔広場
【女3】
「ねえ、どこかに寄っていく?」■■
【男3】
「そうだな、お茶でも飲んでいこうか。
この辺りでも、領地に入ってからでも……」■■
【男1】
「悪い、遅れた!
待ったか!?」■■
【女1】
「待ったに決まっているでしょう!
もうっ、どうしてあなたはいつもいつも遅刻するの!?」■■
平和な時計塔広場。
ユリウスに会いに来た私は、中央にそびえる時計塔に入っていく。■■
時計塔階段
【【【演出】】】・・・階段を上る音
この階段を上るのも、もう何度目か。
会いにきたところで歓迎などされないが、ついつい足を運んでしまう。■■
(落ち着くのよね。
あの人の作業場って)■■
といっても、エリオットの部屋で寛ぐときとはまた別の感覚だ。
似ているが微妙に違う。■■
一緒に過ごす相手が違うからだろう。■■
【【【時間経過】】】
時計塔・ユリウスの部屋
【【【演出】】】・・・ノックの音
【【【演出】】】・・・ドアを開ける音
「こんにちはユリウス。
また遊びに来ちゃ……」■■
「……あら?」■■
ノックの返事も待たずに(待っていても仕事に集中していると返事がないからだ)ドアを開けると、そこにはユリウス以外の人物がいた。■■
【エース】
「あれ?
君は確か……」■■
見覚えがある。
忘れようもない鮮やかな赤い服……、前にハートの城で、私とペーターに斬り掛かってきた青年だ。■■
私を助けようとしていたそうだが、下手をしたら私まで斬られていた。■■
(ペーターの同僚だか部下だか……。
名前は……エース、だったっけ)■■
たしか、そんな名前だったはず。■■
(でも、ハートの城の住人が、どうしてここに???)■■
あれ以来何度となくハートの城にも行っているが、城では会ったこともなかった。
まさか、こんなところで再会するとは。■■
【ユリウス】
「【主人公の名前】。
なんだ、また来たのか」■■
【【【演出】】】・・・椅子の動く音
軽く椅子の擦る音がして、青年の背後からユリウスの姿が覗く。
ちょうど隠れていたが、ユリウスも普段通り作業机に座っていた。■■
「ええ。
遊びに来たんだけど……」■■
【エース】
「そうだそうだ、【主人公の名前】……、思い出した。
ペーターさんが連呼していたよね」■■
【エース】
「ユリウスとも親しかったんだ?
へえ、知らなかったな~」■■
にこにこと笑う、目の前の爽やかな青年。■■
「……その節はどうも」■■
よくぞ殺し掛けてくれました、という厭味を込めて言う。■■
「あなたは誰?
ハートの城の人が、なんでここにいるの?」■■
【エース】
「あはは、その疑問は尤もだな。
そういえばあのときは自己紹介もしていなかったか……」■■
【エース】
「俺はエース、ハートの城の騎士だ。
今は、友達のユリウスのところに遊びに来ている」■■
「ハートの城の騎士……。
ユリウスの友達……?」■■
(……【大】ユリウス、友達いたんだ【大】)■■
正直、そんなものは皆無だと思っていた。■■
「私は【主人公の名前】=【主人公の苗字】よ。
よろしく」■■
自己紹介していないのはこちらも同じ。
とりあえず名乗り返すと、エースは爽やかに笑顔をまき散らす。■■
【エース】
「よろしく、【主人公の名前】。
ここでまた君に会うとは思っていなかったぜ」■■
「私も同じことを思っていたわ。
私、お城にも何度も行っているんだけど」■■
【エース】
「ああ、そうなんだ?
俺は君と会った少し後くらいに、ここに向かって出発しちゃったからな~」■■
「???」■■
意味がよく分からない。
ずっと時計塔に滞在していたのだろうか。■■
(ここだって何度も来たけど、彼が滞在している気配なんてなかったけど?)■■
【ユリウス】
「こいつは極度の方向音痴なんだ。
いつもいつも、散々道に迷った挙句にふらりと現れる」■■
エースの背後で、ユリウスが仏頂面で補足する。■■
「方向音痴?」■■
【エース】
「あはははっ、そうなんだ。
時計塔までの道ってどうしても覚えられなくてさ、今回も結構迷っちゃって」■■
【ユリウス】
「おまえは、どこまでの道だろうとまともに覚えないだろう……」■■
「???
つまり何、私と会った後くらいに出発したけど、こちらに到着したのは最近ということ?」■■
少し前に私が遊びに来たときにはいなかった。
エースが来たのはつい最近ということだ。■■
【エース】
「最近というか、今着いたばかりさ。
いやー、今回も長い旅だった、ははっ」■■
(……長すぎるでしょ)■■
一体あれから何時間帯経っているだろう。
数え切れないほど前であることは間違いない。■■
どうりで城で会わないはずだ。
その間、延々迷子になって彷徨っていたのだろうか。■■
「さすがユリウスの友達……。
変わっているわね、この人も」■■
さすがペーターの同僚ともいえる。■■
【ユリウス】
「やめろ。
友達だなんて、こいつが勝手に言っているだけだ」■■
「でも、遊びに来るくらいの親しさなんでしょう?」■■
【エース】
「そうだぜ、ユリウス。
俺達は親友じゃないか、悲しいことを言うなよ」■■
【ユリウス】
「誰が親友だ!」■■
「じゃあ、私も友達ってことで。
お邪魔してもいいかしら」■■
【エース】
「もちろんいいさ!
友達の友達は、皆友達だ」■■
「どこかで聞いたような陳腐な響きだけど、どうもありがとう」■■
【ユリウス】
「勝手に話を進めるな!
【主人公の名前】、私はおまえも呼んだ覚えはないぞ!」■■
「呼ばれていないけど、友達だから勝手に会いに来ちゃったのよ」■■
【ユリウス】
「私は仕事が……っ」■■
エースがいるせいだろうか。
いつになく、ユリウスが取り乱していて面白い。■■
何気なく訪問したのだが、思いがけず楽しい外出になった。■■
【【【時間経過】】】
帽子屋屋敷・エリオットの部屋
エリオットはごろごろと、寛いでいる。■■
しばらく大人しくしていたから寝てしまったのかと思っていると(私は読書に忙しい)、いきなり爆弾発言をされた。■■
【エリオット】
「……姉さんのことが嫌いなのか?」■■
息が止まりそうになる。■■
「なんなの。
いきなり」■■
すぐに答えられないのは、答えを考えてしまうからだ。■■
即答できないということは、つまり、そういうことだ。
珍しく罪悪感がうずく。■■
私にも、善悪の基準くらいある。
これは、即答しなくてはならない問いかけだったのに。■■
【エリオット】
「前に話してたとき、嫌いなのかって思った」■■
私は、最低だ。■■
「まさか。
すごく感謝しているし……、先刻言った通り、優しくて綺麗な人なの」■■
「実の姉で、お世話になってばかりの恩人よ。
あなたにとってのブラッドみたいなもの」■■
【エリオット】
「…………。
でも、あんたは、俺がブラッドの話をするときみたいな目はしてないぜ?」■■
エリオットの目は、冷たい。
その目が私に向けられている。■■
【エリオット】
「俺なら、ブラッドを馬鹿にする奴は撃ち殺す」■■
いつの間にか、エリオットの手には銃がある。
腰からはずしたのを、気付きもしなかった。■■
【エリオット】
「俺にとってのブラッドみたいなもの?
そいつぁ、そんなに簡単に口にしてほしくない言葉だな」■■
「私、馬鹿にするようなふうに言った?」■■
殺気のようなものを感じて、寒くなる。■■
【エリオット】
「俺も、前にあんたの姉さんを馬鹿にしたからおあいこだな」■■
【【【演出】】】・・・銃をまわす音、金属が小さくかちゃっという音か回して空気を切る音(音は大きくなくていい)
エリオットは、くるんと銃を回す。
そうしていると、玩具のように現実味がなくなる。■■
「次にブラッドを軽く言ったら、私でも殺す?」■■
【エリオット】
「あんたは……」■■
「……殺さない」■■
髪を梳いてくれる手つきは優しい。■■
銃口は、私に向いていない。
だが、エリオットがその気になればいつでも引き金をひけることは実証済みだ。■■
【エリオット】
「俺が、あんたを殺せるわけないだろ?」■■
「よく、言い切れるわね」■■
今、銃をちらつかせていることだけではない。■■
「初めて会ったときのことを覚えてないの?」■■
【エリオット】
「……俺は、あんたを撃ちかけた」■■
「……撃ったのよ」■■
撃ちかけたというのは途中で止めた場合だ。■■
エリオットは、撃った。
途中で止めたのはブラッドで、エリオットではない。■■
【エリオット】
「あのときは、あんたを好きじゃなかった」■■
「今は違うって?」■■
【エリオット】
「違うに決まってるだろ!?」■■
エリオットは傷ついたというふうに、強く反論した。■■
【【【演出】】】・・・ベッドの上に銃を思いっきり叩きつける音
ばんっと銃を持った手を振り下ろす。
誤作動して暴発でもしたらどうする気なのだ。■■
危ういことこの上ない。■■
【エリオット】
「今は、絶対に撃ったりしない」■■
「どうかしら」■■
エリオットは銃口を向けたりはしないが、銃をしまってもいない。
彼の場合、しまうのを忘れているということもありえそうだが。■■
【エリオット】
「あんたは撃たないが、他の奴ならいくらでも撃てるぜ。
……ブラッドを除いてはな」■■
【【【演出】】】・・・銃をまわす音、金属が小さくかちゃっという音か回して空気を切る音(音は大きくなくていい)
恐ろしいことに、エリオットは銃をくるくる回した。
学生が手持無沙汰にやるしぐさと被るが、ここは学校ではないし、彼が手にしているのは回していいようなものではない。■■
「鉛筆を回すのとはワケが違うんだから、よしなさいよ」■■
【エリオット】
「【主人公の名前】。
あんたが姉さんのことを嫌いなら、俺がそいつのこと、殺してやるよ」■■
「は……?」■■
【エリオット】
「あんたは、常識とかそういうの気にするクチだから、実の姉なんか殺せないだろ?
だから、俺がやってやる」■■
彼は得意げで、自分が誉められるようなことを提案していると思っている。■■
「そんなこと、私は望んでないわ」■■
【エリオット】
「あんたは優しいからな」■■
「優しくなんてない」■■
【エリオット】
「【主人公の名前】。
優しいぜ、あんたは」■■
「だから、俺がやってやる」■■
「だから、そんなことは頼んでない」■■
【エリオット】
「勝手にやるよ」■■
エリオットは、くるくる銃を回している。■■
【【【演出】】】・・・銃をまわす音、金属が小さくかちゃっという音か回して空気を切る音(音は大きくなくていい)
(恐ろしい奴……)■■
(同じ世界に住んでいたらやりかねない……)■■
これが夢でよかった……。■■
【【【演出】】】・・・銃をまわす音、金属が小さくかちゃっという音か回して空気を切る音(音は大きくなくていい)
【【【時間経過】】】
★全キャラ共通部分ここから↓
【【【時間経過】】】
ナイトメアの夢
【ナイトメア】
「げほごほ……っ」■■
もう何度となくみている夢の中。
いつもいつも具合が悪そう~な感じで、ナイトメアは現れる。■■
「…………」■■
「あなたが現れなくなったら、寝込んだと思えばいいのかしら、それとも喪服を用意すべきなのかしら……」■■
【ナイトメア】
「……病人に嫌味を言わないでくれないか」■■
「注射が嫌いで病院に行かないなんて人は、嫌味を言われて当然だと思うわよ」■■
【ナイトメア】
「嫌いなものはきら……ぐ……っ」■■
「……ううう。
気分が悪い……」■■
「吐く……血を吐く……」■■
そんなに体調が悪いのに、病院に行かないなんて信じられない。■■
行かない理由が、注射が嫌いだから。
まったくもって、信じられない話だ。■■
「ねえ、ナイトメア……」■■
【ナイトメア】
「ぐぐ……っ。
な、なんだ……?」■■
「そんなに病院が嫌いだなんて……、何かあったんでしょう?」■■
ここは夢の中の夢だから、病院はないのかもしれない。
しかし、彼の言動を見る限り、自分の選択で行かないというような感じだ。■■
つまり、行こうと思えば行ける。
病院に行かないのは、きっと深い理由があるのだ。■■
注射が嫌いで病院へ行かないなんて、あってはならないことだ。■■
【ナイトメア】
「ん?」■■
「ああ……。
そうだな。許せない過去があって……」■■
「やっぱり……」■■
医者に恨みがあるとか、大事な人を亡くした思い出とか、そういう影のありそうな設定が……。■■
【ナイトメア】
「前に注射をうけたとき、看護師に失敗されて、それがすごく痛かったのでトラウマに……」■■
「…………」■■
(……ないんだ)■■
そういう影のある設定ナシで、ただ単に注射が怖いだけなんだ……、この男。■■
「外見は影のありそうな感じなのに……」■■
「外見は……」■■
【ナイトメア】
「……君、さりげなく顔にこだわるよな」■■
「さりげなくないレベルで面食いよ」■■
顔がいいというそれだけで、ペーターだって許せてしまうくらいだ。■■
「あなただって、最初会ったときは影がありそうでミステリアスな男性だって思ったのに……」■■
【ナイトメア】
「影がなくて悪かったね」■■
「【大】ありすぎなのよ。
死相が出ているわ【大】」■■
そういう影は求めていない。■■
「大体、それだけ吐血していて病院に行かないなんて、別の意味でミステリーだし……」■■
もちろん、そういうミステリアス具合も求めてはいなかった。■■
【ナイトメア】
「私は病弱だが、病院は嫌いだ。
絶対行かないぞ」■■
「自力で治してみせる……。
病院なんか必要ない……っ」■■
喪服を用意しなくてはならない日も近そうな顔色で、よくぞ言えたものだ……。■■
「どうしようもない奴ね……」■■
気分の悪そうなナイトメアの背をさすってやる。■■
【ナイトメア】
「うう……。
すまない……」■■
「でも、病院には行きたくない……」■■
(本当にどうしようもない……)■■
★全キャラ共通部分、ここまで↑
【【【時間経過】】】

★以下の条件を満たす場合、ここからナイトメアルート へ進む
・エース及びユリウスの「滞在BESTEND」か「非滞在END」を見ている
・ナイトメアの好感度が2あり、ルートキャラの好感度が3以下
・責任感が1以下

★条件を満たさない場合、エリオット 06話 へ進む