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ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『エリオット=マーチ ■04話』

アニバーサリーの国のアリス・エリオット滞在ルート04
【【【時間経過】】】
帽子屋屋敷・エントランス
【エリオット】
「……あ~、休みがとれねえ」■■
なかなか長期の休みがとれないことに、エリオットはイラついていた。■■
私との遠出がそんなに楽しめるとは思えないのだが、彼にとっては非常に楽しみなことらしい。■■
「仕事が忙しいのはいいことよ。
繁盛しているってことでしょう」■■
【エリオット】
「…………。
俺ら、マフィアなんだぜ、【主人公の名前】」■■
商家か何かのような表現に、苦い顔をされる。■■
「景気がいいってこと」■■
【エリオット】
「……ブラッドのためだから、頑張るけどな。
……はあ……」■■
「なによ、そんなに疲れているの?」■■
【エリオット】
「これくらいで疲れるほど、鈍っちゃいねえよ」■■
(これくらいって、どれくらいなのかしら……)■■
私は、エリオットの日頃の仕事内容を詳しく知らないし、あまり知りたくない。■■
だが、いつも忙しそうな彼を見ると、もう少し休みがあってもいいんじゃないかと思う。
マフィアのナンバー2なんて、普段から激務をこなしていそうだ。■■
「でも、ぐったりしているわよ?
疲れているんだって」■■
ぐったりしている……。
耳が。■■
エリオットは表情でも分かりやすいが、ウサギ耳が更に感情を分かりやすくしていた。■■
【エリオット】
「疲れてるんじゃねえ……」■■
「へこんでるのはさあ……、長時間の休みがとれないからあんたと遠出できないことに対してだよ。
いつまで経っても、出かけられない」■■
「今まで、不定期な休みに不満なんかなかったが……、こうしてみると不便だよなあ」■■
「労働条件がどうとか文句ばかり言いやがるガキ共を馬鹿にできないぜ」■■
「そんなに遠出したいの」■■
【エリオット】
「…………。
あんたは俺と出かけたくないのかよ」■■
恨みがましげに見られる。■■
「そんなことない。
出かけたいわ」■■
するりと言葉が出た。
なんの詰まりも、考えもなく、言葉は自然と漏れた。■■
【エリオット】
「よかった」■■
ほわんと柔らかく言われて、おかしな気分になる。■■
ぎゅうぎゅう抱きしめて、髪も耳もぐしゃぐしゃになるまで掻き乱してしまいたい。
前にもあった衝動なのだが、どうしていいか分からないほど頬が熱くなる。■■
【エリオット】
「早く出かけたいな……」■■
耳がぴょこんと動く。■■
(耳のせいなのかしら……?
私って……、【大】動物フェチ???【大】)■■
(……嫌だなあ)■■
【【【時間経過】】】
帽子屋屋敷・廊下
【帽子屋・メイド・女1】
「この仕事の期限、いつまででしたっけ~?」■■
【帽子屋・使用人・男1】
「二時間帯後まで、ですよ~。
次で片が付くでしょうから、間に合いそうですね~」■■
【帽子屋・メイド・女1】
「そうですね~。
よかった~」■■
【帽子屋・メイド・女2】
「終わったら、そのまま例のほうにも向かいましょうか~。
逃げられると困りますし、あっちもさっさと片付けたほうが~」■■
【帽子屋・使用人・男2】
「ああ、そうですね~。
じゃあもう少し多めに手榴弾を持っていきましょうか~」■■
【帽子屋・メイド・女2】
「ええ、そうしましょう~」■■
【帽子屋・メイド・女1】
「手っ取り早く終わらせるんでしたら、もう3、4人増員して囲んじゃってもいいかもしれません~」■■
「…………」■■
何やら相談しながら歩いていく使用人達と、廊下ですれ違う。
この屋敷の使用人はあんな口調ながらも、意外と働き者だ。■■
のんびりなのは口調だけで、行動や仕事の腕は速い。
だるだるしながらも、やるべきことはきっちりやっている。■■
……【大】方向性には大きな問題があるが【大】。■■
(手榴弾って……。
囲むって……)■■
(……考えても仕方ないか。
ここ、マフィアの本拠なんだもの)■■
考えないほうがいい。
深く考えると、住み続けられなくなる。■■
……内容はどうあれ、彼等は仕事熱心で優秀な使用人だ。■■
(エリオットの働き者気質が移っているのかも)■■
元々なのかもしれないが、ついそんなことを考える。■■
【ブラッド】
「【主人公の名前】」■■
考え事をしながら歩いていて、前方からブラッドが歩いてきているのに気付いていなかった。■■
「ブラッド」■■
【ブラッド】
「どうしたんだ、ぼんやりして。
危うくぶつかるところだったぞ」■■
指摘してくるが、そう言う彼のほうがだるそうで覇気がない。■■
(だるそうなのはいつものことだけど)■■
「ごめん。
けど、そう言うあなたも今にも寝そうな顔をしているわよ?」■■
【ブラッド】
「ああ……、寝そう、ではなく眠りたい。
昼はだるい……、珍しく今は紅茶を飲む気分にもならない……」■■
「あなたが紅茶を飲む気分じゃないって、よっぽどね。
そんなに眠いの?」■■
【ブラッド】
「ああ、眠い。
いや、いくらなんでも紅茶が飲めないほど眠いということはないが、この状態で飲むのは良質な茶葉に対する冒涜にも当たる」■■
【ブラッド】
「ちょうど今凝っているのは、それはそれは希少な茶葉で、入手にかなり手こずったものだからな……。
あれは、目の冴えているいい夜に楽しみたい」■■
(茶葉への冒涜?
……なるほど、いかにもブラッドらしいわね)■■
【ブラッド】
「ふう……、ひと眠りしてくるか……」■■
「……仕事は?」■■
休みがないと嘆いているエリオットや、働き者の使用人を思い出す。
かなり眠いのはよく分かったが、軽く苛ついた。■■
【ブラッド】
「昼間に自分が出ないといけなくなるような仕事は入れないさ。
エリオットか適当な使用人が片付けて来るだろう」■■
「…………」■■
「…………」■■
(……【大】イラッ【大】)■■
【【【演出】】】・・・げしっと足を踏む音
げしっ。
思い切り、ブラッドの足を踏んでみた。■■
【ブラッド】
「い……っ!?
つ……っ」■■
(あ、痛そう)■■
【ブラッド】
「……っ。
~~~っ」■■
【ブラッド】
「……何のつもりだ?
私は何かお嬢さんを怒らせるようなことを言ったか?……蹴られるほどに?」■■
「ごめんね。
ぼんやりしていたものだから」■■
「……でも、ちょっとは眠気も覚めたんじゃない?」■■
【【【演出】】】・・・立ち去る足音
そっけなく言って、さっさと歩き出す。■■
【【【時間経過】】】
帽子屋屋敷・廊下
【エリオット】
「【主人公の名前】、俺、いいこと思いついたんだ!」■■
あいかわらず、忙しいエリオットは休みがとれない。
彼はイラつきすぎて、壊れ気味だった。■■
一つ前の夜に一緒に食事をしたときなんか、大皿にいっぱいのにんじんスティック(最初、ポテトフライかと思った)をかりこりかりこりと3皿も平らげた。■■
ストレスが食に表れるタイプのようだが、食べるものからしていくら食べようと肥満にはなりそうもない。
羨ましいやら呆気にとられるやらで……。■■
同席していたブラッドは、平然と優雅にディナーを食べていた。
彼の料理だけが、ステーキとか魚介料理とかまともなものだった。■■
私も、彼のように慣れないといけないのかもしれない。■■
【エリオット】
「聞いているか、【主人公の名前】?
いいことを考えたんだ!」■■
繰り返さなくても、聞こえている。■■
「……いいこと、ね」■■
「やけ食いに付き合えとかいうのは勘弁してよ。
にんじん尽くしのフルコースはもういいから……」■■
ブラッドのように唯我独尊を貫くこともできない私は、エリオットの食事に合わせた。
にんじんは当分見たくもない。■■
【エリオット】
「?
なんでだよ、うまいのに……」■■
「俺の分が減ることを気にしてくれなくてもいいんだぜ?
いっぱいあるからな」■■
そんなことは、誰も気にしていない。■■
「いらない……」■■
「やけ食いなら、ほんと、遠慮する……。
いいことって、それなの?」■■
だとしたら、私にとってはちっとも「いいこと」ではない。■■
【エリオット】
「ああ、食事もいい案だが思いついたのはそれとは違う。
俺の部屋はどうかと思ってさ」■■
「?」■■
(エリオットの部屋?)■■
「あなたの部屋がどうかしたの?」■■
エリオットだって、当然ながら屋敷の敷地内に住んでいる。
部屋も持っているだろうが、どこにあるのかすら知らない。■■
【エリオット】
「俺の部屋に来ないか。
まだ招待したことないだろ」■■
まじまじと、エリオットを見る。■■
【エリオット】
「長時間の休みがとれるのなんて待ってたら、延々と先延ばしになっちまう」■■
「短時間の休みならちょくちょくあるから、敷地内ならどこへ行こうと問題ない。
急な仕事が入っても、すぐ動けるからな」■■
「でも、庭や屋敷内は俺もあんたも知り尽くしているだろうから、周ってもつまらない。
つーわけで、俺の部屋に来いよ」■■
「名案だろ」と、彼は誇らしげだ。
大した案ではないし、自室に招くくらいもっと早くに思いついてもよさそうなものだが、彼らしい。■■
私の返事も聞かず、早く早くと急かす。■■
「はいはい、分かったわよ」■■
彼を見る限り、下心もなさそうだ。
従って、ついていく。■■
【エリオット】
「ほら。
こっちだぜ」■■
【【【演出】】】・・・足音×2
「エリオットの部屋は、この屋敷内にあるの?」■■
ここの敷地は広い。
庭にも、大小の建物がある。■■
使用人が住んでいたり、その他の用途(それがどんな用途かは知らない)で使用されていたりするらしい。■■
【エリオット】
「ああ、何かあったらすぐ駆けつけられるし、ブラッドを守りやすいからな」■■
「あなたって、生活の中心もブラッドなのね」■■
【エリオット】
「ん~~~……、ブラッドは俺の恩人だからな」■■
エリオットはさかさか歩いていく。
私の歩幅を考慮しないものだから、危うくはぐれそうになる。■■
ついていくのでやっとだ。■■
【エリオット】
「あいつには……、一生、頭が上がらねえ」■■
そんな有様だったから、歩く途中の会話は私の頭をほとんど素通りしてしまった。
歩くのに一杯一杯だったのだ。■■
【【【時間経過】】】
帽子屋屋敷・エリオットの部屋
【エリオット】
「ついたぜ」■■
「……ん?どうした?
息切らしちまって……」■■
「ぜえぜえ……。
あ……、あんたねえ……、自分の歩幅を考えなさいよ」■■
【エリオット】
「あんた、俺より足が短いもんな」■■
「短足だって言いたいの?
喧嘩売ってる?」■■
エリオットの足は長い。
自慢しているのか、こいつ……。■■
【エリオット】
「わ、悪気はねえよ……」■■
「悪気はないけど、私が短足だって言いたいのよね」■■
私は、根暗なだけに引っ張る。
もともと、ねちっこいし、後腐れありまくりなのだ。■■
つまり、性格が悪い。■■
【エリオット】
「すまんすまん。
急ぎすぎちまった……」■■
「お嬢さんと歩くことなんかないから、歩幅とかよく分からねえんだよな」■■
「……ふざけてんの」■■
「これくらい?」と手を広げてみせるエリオットに、からかわれているのかと思う。
しかし、彼はいたって真面目なようだ。■■
【【【時間経過】】】
エリオットの部屋で、適当に寛ぐ。
あまり気は利かないが、彼もそれなりのもてなしをしてくれて過ごしやすい。■■
「そんなに遠くないんだし、焦らなくてもよかったでしょう」■■
なんで小走りになる必要があったのか。■■
現役でばりばり危険な職に就いているエリオットだ。
彼の小走りについていくのは、私は疾走に近い。■■
この人といると、自分の尖った部分が抜かれていくような気になる。
そして、気も抜ける。■■
【エリオット】
「だってよ~、休憩時間が終わるまでの間、少しでも長く一緒にいたいんだ。
仕方ないだろ」■■
「…………」■■
(…………)■■
(……仕方ないわけねえだろ)■■
「……あ、と。
ごめん、本音が……」■■
「いかんいかん……」■■
【エリオット】
「……?」■■
取り乱す私を見て、エリオットは怪訝な顔をする。■■
(罪のなさそうな顔で見てくれちゃって……)■■
「エリオット、あんたさあ、よくそんな甘ったるい言葉吐けるわね」■■
私とエリオットは恋人同士でもなければ、それ以前の過程に及んだこともない。■■
「付き合ってもいない女にそんなに甘いことを言えるなんて、遊び人か……」■■
【エリオット】
「遊び人!?
俺、遊んだりしてないぜ!?」■■
「その遊びって、わざと急所はずして撃ってじわじわ殺す遊びとか、助けるとみせて背後から撃つとか、そういった遊びじゃないよな!?」■■
「…………。
そういうのは遊びといわないと思う」■■
「女関係よ、女関係」■■
【エリオット】
「女となんか遊んでない!」■■
「…………。
……でしょうね」■■
「そこまで言い切れるのも悲しいものがあると思うんだけど……」■■
そこまで言い切れるのは男の矜持としてはいかがなものかと思うのだが、エリオットはやたらと誇らしげだ。
彼にとっては誇るべきことらしい。■■
【エリオット】
「俺、誠実なんだ」■■
えっへんと効果音がつきそうだ。■■
(私には、わざと急所はずして撃ってじわじわ殺したり、助けるとみせて背後から撃ったりする人が誠実だとはとても思えない……)■■
エリオットには独自の基準が多すぎる。
彼に限らず、ここの世界の人は皆そうだ。■■
自分ルールが多すぎだ。
少なくとも、私の基準とは違う。■■
【エリオット】
「ブラッドみたいにもてないしな。
好きな女もいない」■■
「へえ……」■■
ブラッドはもてるだろう。
だが、エリオットだってもてるに決まっている。■■
女というのは、危険な男に弱い。(彼らの場合は危険すぎるかもしれないが)
マフィアのナンバー2なんて肩書きは、魅力的に見えるはずだ。■■
それに……。■■
「エリオットって、男前なのにもてないわけがないじゃない」■■
【エリオット】
「は……」■■
何を言い出すんだと、驚いたのが耳の角度から知れる。■■
(ウサギ耳研究家にでもなるつもりなの、私は……)■■
【エリオット】
「な、な~に言ってんだよ、【主人公の名前】。
俺が男前って……」■■
「そ、そういうのはだな、ブラッドとかに相応しい言葉で……」■■
「私、特殊な趣味はしていないから外してないわよ。
あなたは世間一般にかっこいいと思うわよ、エリオット」■■
【エリオット】
「かっ、かっこいい……?
俺がか……?」■■
「かっこいいわよ。
私、あなたの顔って好きだわ」■■
エリオットは絶句した。■■
(……ふ)■■
(いつもいつもやられっぱなしじゃないわよ。
直でこういうことを言われたら恥ずかしいってこと、身をもって知りなさい)■■
そわそわ、もぞもぞしている彼は、見ていて楽しい。■■
いつもストレートというか、羞恥心がないんじゃないかというような甘酸っぱいことを平気で言える男だ。■■
対象は限定されるものの、その対象となるブラッドと私は苦笑もできないほど参っている。■■
エリオットは自分が言うことには抵抗がないらしいが、言われることにはまったく慣れていないらしい。
おたおたしているのはポーズではなさそうだ。■■
(…………)■■
(嘘は言っていないもんね……)■■
この人がもてないとは思えない。
標準の軽く上をいく男前だ。■■
「周りに、見る目のある女がいないんじゃないの」■■
(いや、逆か……。
俗めいた子なら外見に惹かれるくらい男前だから……)■■
(マフィアなんてものに惹かれたりしない賢明な女性ばかりの世界とか?)■■
それはないだろう。
俗物なんてどこにでもいる。■■
どこの世界だろうと変わらない。
それが私の夢の中なら絶対といっていい。■■
【エリオット】
「そ、そんなことねえよ……。
周りに女が寄り付かないっつーか、いても邪魔だと殺しちまうし……」■■
「…………。
そりゃ……、もてっこないわね」■■
【エリオット】
「だっ、だからっ、もてないって言ってるだろ!?
もういいだろ、変なこと言うなよ。俺はもてないんだって!」■■
「あ~……、……あ、そうだ!
どうだ、俺の部屋……」■■
「わざとらしい話の逸らし方……」■■
そういえば、せっかく部屋に招いてもらったのに感想も言っていない。■■
息切れして、入ったときはそんな余裕もなかったのだ。
周りを見る余裕もなく、そのまま入ってしまった。■■
改めて、室内を見渡してみる。
立派なお屋敷につりあう程度の広さだが……。■■
「普通」■■
【エリオット】
「…………」■■
私の感想に、エリオットはがくっと項垂れた。■■
「だって、普通なんだもの。
無難にまとめられていて、特徴がない」■■
「あなた、部屋にこだわりがないでしょう、エリオット。
自分の色というものがないわ」■■
(まるで、現実世界の私の部屋みたい)■■
姉や妹に見られてもまずくないよう、綺麗に片付けられ、それなりに女らしく。■■
私の部屋という気がしない。
寝起きするためだけの場所だ。■■
エリオットの部屋は、それの男性版という気がした。
男性の部屋ではあるが、彼を連想させない。■■
【エリオット】
「男の部屋にしちゃ片付いてるだろ~……?」■■
「それは、メイドさんのおかげでしょう」■■
【エリオット】
「……掃除はしてもらっている」■■
「で、でも、仕事で忙しいときだけだからな!
時間があったら自分でする!」■■
「……責めてやしないわよ。
家事まで行き届かないからこそ、使用人を雇うんでしょう」■■
「なんでも自分でやっちゃったら、彼らの仕事がなくなっちゃうわ」■■
下町の友達の中には、使用人と雇い主の関係を勘違いしている者も多かった。
自分がやれる範囲のことはやるべきだ。■■
なんでもかんでも任せるべきじゃない。
傲慢だ、という見方をする。■■
それはそれで正しいのだが、使用人はそれが仕事で、その仕事の収入で生計をたてている。
雇い主は使用人の仕事を奪ってはいけないのだ。■■
【エリオット】
「ブラッドもそんなこと言ってたな……。
だけど、人に何かしてもらうのってだらけてる気がするし、落ち着かねえよ」■■
「……あんたらしいかもね」■■
「……ね、メイドさんは?」■■
【エリオット】
「?」■■
「美人多いじゃない」■■
(美人が多いっていうか、みんな同じような感じだけど……。
みんな美人よね)■■
周りに女性がいないと言うが、職場にはたくさんいる。
それに、彼女達なら大人しく殺されそうもない。■■
【エリオット】
「ま~だその話で引っ張るのかよ。
俺は遊び人じゃねえっつってんだろ」■■
「それに、あんなおっそろしい女共、こっちから願い下げだ」■■
「恐ろしい?」■■
【エリオット】
「あいつら、なぶり殺しが趣味なんだぜ?
始末任したら、すっげえの」■■
【エリオット】
「後始末は今は門番の仕事なんだが、ガキ共はガキ共で細切れにしやがるし……。
今は相応しい奴がいねえ、って問題もあるんだけどな」■■
「なんなんだ、あいつら。サイコな映画にでもはまってんじゃねえの?
あ、【主人公の名前】、今度映画見に行かねえ?」■■
(なんなのよ、あんたも……)■■
エリオットの感性も、あまり変わりばえしない。■■
「……でも、美人だわ」■■
映画については返事せず、メイドさんについてのみコメントする。■■
【エリオット】
「だから、中身がグロすぎなんだって」■■
「それでも、補うくらいには美人だわ」■■
【エリオット】
「女は中身だろ」■■
「ふ~ん……」■■
「……エリオットはそうなの」■■
【エリオット】
「な、なんだよ……」■■
「…………」■■
「……きっと、あんたって私の姉さんみたいな人を好きになるわね」■■
【エリオット】
「誰だ、それ……」■■
「【主人公の名前】、姉妹なんかいたんだ。
俺、会ったことあるのか?」■■
「あるわけがないでしょう。
姉がいるって言った覚えもないわ」■■
【エリオット】
「そんな会ったこともない女、好きになるかよ」■■
「……っと、あんたの姉さんだからいい女だとは思うけどな」■■
「そうよ。
すごく綺麗なだけでなく優しい人」■■
【エリオット】
「ふん……」■■
「そんな女、××××に決まって……。
……あっ、あんたの姉さんなんだから、もちろん違うさ」■■
(会ったこともない女性を××××扱い……。
もてないはずだわ……)■■
「……裏表のない人よ。
そんな人じゃない」■■
【エリオット】
「へ~……」■■
「じゃあ、いい女かもな。
会ったこともない女、あんたの姉さんってこと以外に興味ないんだけど……」■■
エリオットは気のない様子だ。
好意を持った人以外に、まったく興味がわかないらしい。■■
「会ったら、きっと好きになるわ」■■
【エリオット】
「なるわけねえだろ」■■
「…………」■■
【エリオット】
「……怒ったのか、【主人公の名前】?」■■
「……どうして私があなたを怒るの」■■
【エリオット】
「俺があんたの姉さんを馬鹿にしたから。
で、でも馬鹿にしたっつーか……」■■
「怒ってなんかいないわ。
私って、ものすごく性格が悪いから、安心している」■■
私は、きっと今ものすごく意地の悪い顔をしているだろう。■■
【エリオット】
「よかった。
俺も、あんたが怒ってなくて安心した」■■
散々な顔をしていたはずなのに、エリオットは嬉しそうだ。
それ以外のリアクションはなかった。■■
【【【時間経過】】】
【エリオット】
「さって……と、仕事に戻るか」■■
「あっという間だったよな……。
また、部屋に誘っていいか?」■■
「ええ、是非」■■
「今回は、お招きありがとう。
楽しい時間だったわ」■■
【エリオット】
「どういたしまして」■■
私が丁寧に礼を言うと、エリオットも丁寧に返してきた。■■
【エリオット】
「こちらこそ、楽しい時間を過ごさせてもらった。
あんたといると時間が早いぜ」■■
「やっぱり、好きな奴と過ごす楽しい時間って早く過ぎちまうんだな」■■
(それにしても、また……)■■
(なんで、こんなにすらっと甘いことが言えるのかしら……)■■
それでいて、恋愛要素を感じさせない。
警戒させない。■■
「ああ、エリオット。忘れるところだったわ。
さっき言ったの、続きがあるの」■■
【エリオット】
「?
なんのことだ???」■■
「付き合ってもいない女にそんなに甘いことを言えるなんて、遊び人か……の続き」■■
「エリオットが遊び人だなんて思っていないわ」■■
【エリオット】
「ああ、俺は遊び人なんかじゃねえ」■■
「もっと別のものだと思っている」■■
【エリオット】
「???」■■
「付き合ってもいない女にそんなに甘いことを言えるなんて、遊び人か……、勘違い男か、無神経のどれかよ」■■
【エリオット】
「…………。
勘違い男?」■■
「……妥当に、最後でしょう」■■
【【【時間経過】】】
帽子屋屋敷・廊下
【エリオット】
「【主人公の名前】~」■■
仕事でリネン類の荷物を運びながら歩いていると、背後から呼び止められる。■■
「エリオット。
なに??」■■
【エリオット】
「ちょっと頼みたいことがあんだけどさ。
今、無理か?」■■
「頼み?」■■
(内容を聞く前から、無理かと尋ねられても困るけど……)■■
(……仕事中なんだけどな。
まだ何往復かして運び切っちゃわなきゃいけないし……、どうしよう?)■■
「……いいわよ。
今は仕事中だから、できる範囲でだけど」■■
【エリオット】
「ああ、分かってる……、それを運んでるんだろ?
大丈夫だ、ちょっと寄ってもらうだけだから、大した手間は取らせねえよ」■■
【【【時間経過】】】
※「1:仕事中だが聞いてやる」を選択した場合のみ、条件により分岐ここから↓

★エリオットの好感度が4以上の場合、お風呂・エリオット1(好感度:高) へ進む
★エリオットの好感度が3以下の場合、お風呂・エリオット1(好感度:低) へ進む