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マザーグースの秘密の館

『ツェザーリ(学者)ルート ■ツェザーリ10(終)』

■ 全問正解イベント10

【【【時間経過】】】
◆クイズ時と同じ背景。クイズ終了後に、そのままイベントに入ります。
【ツェザーリ】
「全問正解おめでとう、エリカ。
ついに達成したな……」■■
「満点を10回も取るなんて、最初の頃の君にとっては無理難題のように感じられたはずだ。
それをこうしてやりとげた君を、私は誇りに思う」■■
(……10回)■■
長いようで、短かった。■■
「……あなたが、素敵なご褒美を用意していてくれたからだわ。
私は、ご褒美につられて頑張っていただけよ」■■
【ツェザーリ】
「素敵なご褒美……、か。
ふ、最初の頃など、授業や講義のどこが褒美だと散々文句を言われたような記憶があるが」■■
「そ、それは言わないお約束、というやつよ。
最初の頃は興味もなかったのだもの、仕方ないわよ」■■
【ツェザーリ】
「それなら、今は興味を持ってくれているのか?」■■
「ええ、もちろん。
あなたの話してくれた分野のことを、もっと知りたいと思っているわ」■■
「きっと、元の世界に戻っても私は勉強を続けると思う。
……ああ、でも、何か分からないことがあってもあなたに聞けないというのが不便ね」■■
「せっかく……、いい先生に巡り会えたのに」■■
【ツェザーリ】
「私は教師向きの人間ではない。
君がいい生徒だったんだ」■■
「そんなことないわ。
あなたの話は、いつも分かりやすかったし、的確に私の興味を惹いたもの」■■
【ツェザーリ】
「それなら……。
きっと、私達の相性がよかったんだろう」■■
「……っ」■■
(相性……。
そうね、悪くなかった)■■
さらりと言われた言葉に、赤くなってしまいそうになる。
それが単に人間関係全般をさすのではなく、恋愛絡みに聞こえたのだ。■■
(そういえば、一度はキスをしたのよね)■■
薄暗い森の中、交わしたキスを思い出す。■■
彼は、私に興味があると言っていた。
私も、それが嫌だとは思わなかった。■■
(もっと、彼のことを知りたいと思った)■■
【ツェザーリ】
「さて……。
これで君は、やっと元の世界へ帰ることが出来るわけだな」■■
そう、クイズも10回目。
10回目の満点を取ってしまった今、私は元の世界へと帰らなければいけない。■■
「ええ」■■
(帰れるのよ?
もっと、喜ばないと)■■
【ツェザーリ】
「エリカ、君に最後のご褒美だ。
私と一緒に出掛けてくれないか?」■■
(……最後のご褒美)■■
これが彼と過ごす最後。
卒業式のような……、それ以上の感傷に目が潤みそうになる。■■
「ええ、もちろん。
是非、連れて行って」■■
【【【時間経過】】】
◆暗い夜の帰り道。
周囲にはほとんど森はなく、下町と館との間にある丘のような場所。
◆夜空には満天の星が輝いている。
私達は、すっかり暗くなった夜道を歩いていた。■■
周囲は薄暗く、足元は見えない。
だが、しっかりと繋いだ手のおかげで不安はなかった。■■
【ツェザーリ】
「遅くまで付き合わせてしまったな。
これが最後だと思うと、つい……時間が経つのを忘れてしまった」■■
「いいのよ。
私も同じだわ」■■
「それに、いつもよりたくさんあなたの話を聞けてよかった。
改めて、まだまだ知りたいって思えたわ」■■
知りたくとも、ここから先に彼はいない。
私は自分で調べていかなくてはならない。■■
【ツェザーリ】
「……そうか。
ああ、エリカ、空を見てみろ」■■
「空?
……わあ、綺麗な星空!」■■
「今日は昼間、晴れていたものね。
星座がはっきりと見えるわ」■■
【ツェザーリ】
「ん?
君は星座が分かるのか?」■■
「簡単なものだけだけどね。
オリオン座や、北斗七星、北極星ぐらいなら見つけられるわ」■■
【ツェザーリ】
「ほほう。
それでは、星座に纏わる神話も知っているか?」■■
(星座というと……、まさにギリシャ神話の独壇場)■■
「星座に纏わる神話?
ええと……あんまり詳しくないけど、好きよ」■■
最後のテストを受けている気分だ。
これで終わりだと思うと講義なんていうふうには思えず、格好いいところを見せたくなる。■■
「ロマンチックな話が多いでしょう?
それに、古い物語の中には星に愛を誓うものも多いし……」■■
「やっぱり、いろいろなものが移り変わる中で、いつまでも変わらずに輝き続けるところが永遠の愛を誓う対象としていいのかもしれないわね」■■
ロマンチストぶってみたが、ツェザーリは微妙そうな顔をした。■■
【ツェザーリ】
「……そうか?
私なら、星になど愛を誓う気にはなれないな」■■
「どうして?
勇者に救われた乙女の星座だったり、いろいろとロマンチックじゃない」■■
【ツェザーリ】
「……あそこに、北斗七星があるだろう?」■■
ツェザーリが、夜空を指で示す。■■
「ええ。
あれなら分かる……」■■
【ツェザーリ】
「北斗七星は、おおぐま座と呼ばれる星座の一部でもあるんだが……。
君は、おおぐま座の由来を知っているか?」■■
「いえ、知らないわ」■■
多少の知識があるくらいで学者である彼に太刀打ちできるはずがない。
生半可なものなら、聞いているほうがよかった。■■
やはり最後だからと見栄を張って話すより、いつものように教えてもらうほうがいい。
面倒だとかではなく……、彼の講義は心地いいのだ。■■
【ツェザーリ】
「昔、カリストーという名の美しい妖精がいたんだ。
ゼウスはその彼女の美しさに一目で惹かれ、恋に落ちる」■■
「彼は彼女の主であるアルテミスに化け、転寝する彼女に接近し……。
やがて、彼女はゼウスの子を身ごもってしまう」■■
「……【大】神話の神様って【大】」■■
【ツェザーリ】
「それが【大】彼らのお家芸【大】だから仕方ない」■■
「誘拐とか……、もう何でもアリね」■■
【ツェザーリ】
「それを知って我慢ならないのは、ゼウスの妻であるヘラだ。
彼女は嫉妬のあまり、美しいカリストーを恐ろしい大熊の姿に変えてしまった」■■
「ええ!?
悪いのは旦那のゼウスでしょう?」■■
「どうしてカリストーがそんな目にあわないといけないのよ。
納得がいかないわ」■■
【ツェザーリ】
「ヘラとはそういう女神だからな。
彼女の怒りを買ったのは、何もカリストーだけじゃない」■■
「他にもたくさんの女性がゼウスに手を出され、その結果ヘラの怒りをかい、悲劇的な最期を迎えている」■■
「悲劇的な最期って……。
熊に姿を変えられてしまったカリストーは、元には戻れなかったの?」■■
【ツェザーリ】
「それどころか、カリストーはゼウスとの間にできた子供を出産していたんだが……。
立派な青年に育った息子に、獲物として矢を射掛けられることになるんだ」■■
「母親と知らずに?
そんな酷い話ないわ」■■
【ツェザーリ】
「そこでようやくゼウスは責任を感じ、息子が矢を放った瞬間に熊に姿を変えられたカリストーとその息子を天に掬い上げ、星座に変えた」■■
「【大】それのどこが責任を感じているのよ【大】」■■
【ツェザーリ】
「私に文句を言われてもな……」■■
「そうして天にあげられた母子が、おおぐま座とこぐま座だという伝説だ。
他にも悲惨なものが多いんだが……、それでも、星に愛を誓うのがロマンチックだと思うか?」■■
「……うう。
し、知らなければよかったわ」■■
「星に愛を誓う……なんて、古くからの恋愛ものの定番よ?
歌にも本にもザラにあるっていうのに」■■
「星に永遠の愛なんて、誓えないじゃない」■■
古くから、恋愛ものとしては定番なのに。■■
【ツェザーリ】
「星になど誓わなければいいだけだ。
……互いに、誓いあえばいい」■■
【【【演出】】】・・・ぐっと抱き寄せられる音
「……!?」■■
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あっというまに、腰を抱かれて引き寄せられていた。
真っ直ぐに見つめる視線から、目が逸らせない。■■
「……ツェザーリ?」■■
【ツェザーリ】
「私は、君が好きだ。
君のことをもっと知りたい」■■
「そして君にも、私のことをもっと理解してほしい。
理解しあえたとは思うが、もっと……知ってほしい」■■
「……君は、どうだ」■■
「そ、そりゃあ、私だって……」■■
(知りたいし、わかってほしい)■■
(もっと……。
一緒にいたい)■■
「でも、私は……」■■
(もう、帰ることになる)■■
100点をとれた今、このままここに留まるわけにはいかない。
帰すと、彼だって約束した。■■
【ツェザーリ】
「ああ。
君は帰らなければいけない」■■
「……ええ。
だから……」■■
【ツェザーリ】
「だから、私が君についていく」■■
「…………」■■
「……【大】はい?【大】」■■
ものすごく、とんでもないことを聞いた気がする。■■
それこそ、星にかける愛の誓いなんて、比較にならないくらい。■■
【ツェザーリ】
「……言っただろう?
新しい世界に飛び込む覚悟が出来たと」■■
「そ、それは……っ。
階級の差に負けないとか、学者として成功するとか、そういう意味じゃなかったの!?」■■
【ツェザーリ】
「人生の成功を目指すという意味では同義だ。
私の人生は、君がいないと完璧にならない」■■
「……そ、そんな無茶苦茶な」■■
【ツェザーリ】
「実際、君もこうして、この世界に来ているんだ。
その逆が出来ないわけがないだろう?」■■
「そ、そういうものなの……?」■■
【ツェザーリ】
「ああ、そういうものだ。
本と行き来する方法もみつけてみせる」■■
「……神話の神様並みに無茶を言っている気がするわ」■■
【ツェザーリ】
「例えるにはいいな、無茶でも彼らは実行してきた。
神話の神々を真似て……、私も無茶がしたくなったんだ」■■
「…………」■■
「神話の神様の真似ってことは……、私を誘拐するの?」■■
【ツェザーリ】
「いや、今回は逆だから……。
私が誘拐されることになるか」■■
「……無茶苦茶ね」■■
【ツェザーリ】
「だが、神話みたいに成功しそうだろう?」■■
「…………」■■
(……そうよ。
諦めることなんかない)■■
(私の世界では、女性だって強いんだから)■■
古代ギリシャのように、誘拐されるばかりではない。■■
【【【CG】】】・・・主人公が引き寄せる
「じゃあ……、私があなたを攫っていくわ」■■
帰らなければと思っていたから、ずっと抑えていた。■■
「……私も、あなたのことが好き。
だから、無茶苦茶なことだって出来る」■■
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【ツェザーリ】
「…………」■■
「……エリカ」■■
「…………」■■
【ツェザーリ】
「…………」■■
「……どうする?
星に愛を誓うべきか?」■■
「……やめておくわ」■■
【ツェザーリ】
「では……、君に誓おう」■■
「……ん」■■
上げた視線の先、満天の星空を背景に彼が顔を寄せてくるのが分かる。
そっと目を閉じて、そのキスを受けた。■■
【ツェザーリ】
「……神話にないくらいの、ハッピーエンドを」■■
【【【時間経過】】】