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マザーグースの秘密の館

『ツェザーリ(学者)ルート ■ツェザーリ07』

■ 全問正解イベント7

【【【時間経過】】】
◆クイズ時と同じ背景。クイズ終了後に、そのままイベントに入ります。
【ツェザーリ】
「全問正解おめでとう、エリカ。
これで7回目、君は本当によく頑張っているな」■■
「最初のうちは、どうなることかと思っていたが……。
この調子だと、君が元の世界に帰ることが出来る日もそう遠くなさそうだ」■■
「……そうね」■■
【ツェザーリ】
「?」■■
「……不思議だわ。
最初のうちは、ただ帰りたいだけだったのに」■■
【ツェザーリ】
「今は違うのか?
……それなら、私にとっても望ましい展開だが」■■
「え……」■■
【ツェザーリ】
「…………」■■
「……さて。
今日は少し、森のほうを歩かないか?」■■
「あら、授業はお休み?」■■
【ツェザーリ】
「まさか。
君には、教えたいことがたくさんあるんだ」■■
【【【時間経過】】】
◆鬱蒼と茂る森の中。
針葉樹林が生い茂っているため、昼でも薄暗い。
◆二人が歩いているのは、森の中の小道。
私達は、館の裏手に広がる森の中へと足を踏み入れていた。
森の中は、鬱蒼と生い茂る木々のせいで昼でも薄暗い。■■
【ツェザーリ】
「足元が滑るから、気をつけるようにな」■■
「大丈夫……っ、きゃ!?」■■
【【【演出】】】・・・がしっと抱きとめる音
【ツェザーリ】
「……街のときと同じく、大丈夫とは思えないな。
危なっかしい……、腕を」■■
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「……はーい」■■
転びかけてしまった身としては、おとなしく掴まるしかない。
促されるまま、彼の腕に自分の腕を絡める。■■
「あなたまで一緒に転んだりして」■■
【ツェザーリ】
「私が、君一人分の体重すら支えられないとでも思っているのか?」■■
「学者だというイメージからかもしれないが……そう非力でもないぞ。
何なら、試してみようか」■■
「い、いいですっ!
試さなくていいです!」■■
ツェザーリが非力かどうかはともかく、根っからの学者気質であることに間違いはない。
非力かどうかの証明のために、危険なことも平気で冒してしまいそうだ。■■
【ツェザーリ】
「……フン。
お姫様抱っこで歩いてやってもよかったんだが」■■
「【大】私がよくないわよ【大】」■■
【ツェザーリ】
「それは残念だ」■■
「……あなた、私のことをからかって遊んでいるでしょう。
いや、実験材料とか……」■■
「もう、この森がこんなに暗いからいけないんだわ。
もっと日光を通して、明るくしてくれればいいのに」■■
【ツェザーリ】
「はは。
モミは常緑樹だからこそ神聖だというのに」■■
「え?モミが神聖?
ああ……、クリスマスツリーに採用されているものね」■■
「それにも何か、エピソードがあるの?」■■
【ツェザーリ】
「あるとも。
それを聞かせるつもりで、こうして連れ出したんだからな」■■
「君は、クリスマスが何の日だか知っているか?」■■
「何の日、って……。
イエス=キリストの誕生日でしょう?」■■
【ツェザーリ】
「そうだな。
そういうことに、なってはいる」■■
「…………。
なっているということは……、本当は違うのね?」■■
【ツェザーリ】
「ああ。
実は聖書のどこにも、イエス=キリストが12月25日に生まれたということは書かれていないんだ」■■
「というか、その時代には誕生日を祝う習慣はなかった。
それゆえに、正確な記録は残っていないんだよ」■■
「そ、それじゃあ、誰が12月25日をキリストの誕生日ということにしちゃったの?」■■
【ツェザーリ】
「誰かは、分からない。
だが、理由なら分かっている」■■
「犯人が分からないのに理由が分かっているなんて、変なの。
どういう理由があったの?」■■
【ツェザーリ】
「キリスト教が広がる前のローマ帝国には、ミトラス教という宗教が人々の間に親しまれていたんだ。
そして、そのミトラス教には、太陽神ミトラスの復活を祝う冬至祭が12月25日にあった」■■
「冬至というのは、一番日が短くなる日だ。
逆を言えば、それ以降は、再び日が長くなる」■■
「それを、人々は太陽神の復活に例えて祝ったわけだな。
その習慣が、キリスト教が広がるにつれてその中に吸収され、キリストの聖誕祭というふうに形を変えたんだ」■■
「び、びっくりだわ。
まさか、クリスマスが元々はキリスト教のイベントじゃなかったなんて……」■■
【ツェザーリ】
「キリスト教に吸収されたのは、ミトラス教だけじゃない。
クリスマスには、クリスマスツリーを飾るのが当たり前のようになっているが……」■■
「実はあれも、祝い事の折にモミを飾るのはゲルマン民族に伝わる冬至の祭典、ユールからきているんだ」■■
「クリスマスツリーも、キリスト教由来のものじゃなかったの!?」■■
「……わあ。
クリスマスって、キリスト教のビッグイベントだとしか思っていなかったけど、そういうわけでもなかったのね」■■
【ツェザーリ】
「ああ。
キリスト教が広がっていく中で、その地域に元々あった土着の宗教の教えや、祭典と混じりあい、今の形になっていったんだ」■■
「元々は違うものが、広がっていく中で混じって、吸収されて一つになったのね」■■
「最初は堅苦しくて、面白くなさそうだと思っていたけど……。
聞けば聞くほど、神話や宗教学って面白い」■■
「意外と身近にも関わっていて……。
あなたが夢中になるのもわかるわ」■■
【ツェザーリ】
「ああ、そうだな。
生活に必要な知識ではないが……、知る価値はあると思うし、魅力的だ」■■
「夢中にならずには、いられない。
私と同じように、君にもそうなってもらいたい」■■
(……っ!)■■
真っ直ぐに見つめて言い切られた言葉。■■
「……宗教学の話、よね?」■■
【ツェザーリ】
「……私達に対しても、だ。
忘れていたはずの君は、知識をどんどんと吸収して……、前以上に深く私と関わっている」■■
「その結果、生まれるものは何なのだろう、と。
君は私の興味を惹いて仕方ない」■■
「…………。
……私のこと、実験動物みたいに言わないでよ」■■
【ツェザーリ】
「私の興味の対象になるのは、嫌か?」■■
ふと、歩く足を止めて彼が私へと向き直った。
薄暗い森の中で、視線を交わしあう。■■
(……嫌?)■■
(そんなことはない)■■
(彼がどれだけ真剣に、そして熱心に彼の研究対象と向き合っているのかを知っているもの)■■
知識は興味の表れ。
執着でもある。■■
「……嫌じゃないわ」■■
そっと伸びてきた手が、私の顔に触れた。
くいと仰むかされる。■■
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【ツェザーリ】
「…………」■■
「…………」■■
ちゅ、とその唇が私の唇に触れた。■■
(……キス、されたんだ)■■
かっと、耳まで熱くなる。■■
【ツェザーリ】
「…………」■■
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【ツェザーリ】
「……エリカ」■■
「君と知り合えるのを嬉しく思う反面、君の帰る日が近づくのを疎ましく思ってしまう。
親しくなるほどに別れが近づくとは、皮肉なものだ」■■
「…………」■■
【ツェザーリ】
「……神話の神々のように、攫ってしまえればいいのにな」■■
「ツェザーリ……」■■
もう、すでに攫われている状態だ。■■
神話と違うのは、私が解放へ向かっていること。
本の中の彼は非現実的だが、万能でもない。■■
【【【時間経過】】】