TOP>Game Novel> 「 マザーグースの秘密の館 」> ツェザーリ(学者)ルート ■ツェザーリ06

マザーグースの秘密の館

『ツェザーリ(学者)ルート ■ツェザーリ06』

■ 全問正解イベント6

【【【時間経過】】】
◆クイズ時と同じ背景。クイズ終了後に、そのままイベントに入ります。
【ツェザーリ】
「全問正解おめでとう、エリカ。
これで6回目だ、よく頑張ったな」■■
「もう半分以上きたのか……、私についてずいぶんと理解してくれたようだ。
君は、本当にいい生徒だな」■■
「それは、あなたがいい教師だからよ。
ご褒美目当てに頑張っている部分もあるんだから」■■
「……私も、あなたのことを『先生』って呼んだほうがいいかしら」■■
【ツェザーリ】
「……ぶっ。
君まで、私をからかうのか!?」■■
「からかうつもりなんてないわよ。
あなたが私の教師役を務めてくれているのは本当のことでしょう?」■■
【ツェザーリ】
「そうだが……。
いや、やはり名前で呼んでくれ」■■
「そのほうが、しっくりくるし……、近しくなれる気がする」■■
「……そ、そう?」■■
【ツェザーリ】
「ああ。
私に対して、線を引いたりしないでくれ」■■
「わ、わかったわ」■■
(う……。
動揺しちゃっている)■■
「そ、それで?
今日は、何を教えてくれるの?」■■
【ツェザーリ】
「今日は、街に出るつもりでいる。
一緒に来てくれるだろう?」■■
「も、もちろんよ」■■
【【【時間経過】】】
◆下町。
◆地面は石畳、周囲には石造りの建物が並び、商店や屋台などもある賑やかな景色。
前にも訪れたことのある下町につく。
だが、前よりも人が多い。■■
「……わっ」■■
人にぶつかって流されそうになった。■■
【ツェザーリ】
「おい、大丈夫か?」■■
「大丈夫。
人出が多いから……」■■
【ツェザーリ】
「……大丈夫じゃないだろう。
今日は賑やかだからな……、ほら、手を貸しなさい」■■
「……え?」■■
【ツェザーリ】
「はぐれたら困るだろう。
ほら、手を」■■
「…………」■■
当たり前のように促され、手を繋いだ。■■
そのまま手を引かれ、人ごみの中を歩く。
【【【時間経過】】】
やがて彼が足を止めたのは、一軒の古美術屋の前だった。■■
◆古いアンティークショップ。
◆店先に、いろいろガラクタに混じって様々な古びた絵も飾ってある。
【ツェザーリ】
「これは……、面白いものを見つけたな」■■
「なあに?
これ……、普通の絵じゃないの?」■■
「私には、よくある宗教画に見えるけれど……」■■
【ツェザーリ】
「ああ、そうだな。
だが、何か不自然なところに気付かないか?」■■
「不自然……。
ええと……」■■
「……あ。
絵の中の登場人物が、全員正面を向いているわ」■■
「気付くと、ちょっと気持ち悪いわね。
絵の中から睨まれているみたい」■■
【ツェザーリ】
「はは、別に彼らは君を睨んでいるわけではない。
だが、君の気付いた違和感は正解だ」■■
「この絵の登場人物は、皆不気味なほどに正面を向いている。
それがどうしてか、分かるか?」■■
「……分からないわ」■■
「全員を正面向きで描くなんて、構図としても面白くないし……。
わざわざ、そうする意味なんてあるの?」■■
【ツェザーリ】
「これは宗教画の振りをした、似顔絵なんだ」■■
「似顔絵?
これが?」■■
【ツェザーリ】
「この絵の中に登場する人物らは、皆実在した貴族や、権力を持った商人達だ。
皆が皆、正面向きを希望したため、こんな無理のある構図になっている」■■
「似顔絵なら、普通に描けばいいのに……」■■
【ツェザーリ】
「物語のワンシーンにしたほうが、飾る際に映えるだろう?」■■
「そうかもしれないけど……。
いくら物語のワンシーンにしたとしても、全員が正面を向いていたらおかしいわよ」■■
【ツェザーリ】
「まあな。
君の言いたいことは分かる」■■
「ちなみに、役によって大きく描かれたり小さく描かれたりしている物があるだろう?
もしくは絵の中心にいるか、外側にいるか、など」■■
「ええ。
絵としての構図や、遠近法は最低限使われているわよね」■■
「【大】全員、正面向いているけど【大】」■■
見れば見るほど不気味だ。
夜中に廊下などでこんな絵を見たら、部屋に逃げ帰って毛布を被ることうけあいだ。■■
【ツェザーリ】
「この構図はそのまま、その絵の中に描かれた人物らの関係を表している。
あるいは、より多くの報酬を払った順だな」■■
「つまり、大きく描かれている人はその中で一番偉い人か、もしくは一番たくさんお金を出したってことなのね?」■■
宗教画が聞いて呆れる。
利権が絡みすぎだ。■■
【ツェザーリ】
「そういうことになる。
こういった絵の中に、モデルとして描かれるということは、当時ではとても栄誉なことだったらしい」■■
「そういうものなのね……。
なんだか、ピンとこないわ」■■
「ごっこ遊びみたいというか……」■■
【ツェザーリ】
「君も、モデルになってみるか?
女神のモデルにでもなれば、人々の敬愛の対象になることができるぞ」■■
「い、嫌よ!
そんな、恥ずかしい……っ!」■■
【ツェザーリ】
「君自身だと思うから恥ずかしいんだ。
中には自分の妻の美しさを画布に留めるために、ビーナス画のモデルとして描かせた者もいたそうだぞ」■■
「……ビーナスということは、まさか」■■
【ツェザーリ】
「【大】裸婦画だな【大】」■■
「【大】お断りします【大】」■■
【ツェザーリ】
「くくく……っ。
君がモデルなら、館に飾ってもよかったのにな」■■
「【大】絶っ対に嫌よ【大】」■■
ツン、とそっぽを向いて断言する。■■
【ツェザーリ】
「先ほども言ったとおり、そういった絵を描かせるということはそれなりの権力者だ。
いかに自分の妻の美しさを残したいからといっても、そういう立場ある者が妻の裸婦画を描かせるのはまずい」■■
「そのために、わざとビーナスのモデルとしたわけだな。
それならば、妻の裸婦画にはあたらないというわけだ」■■
「なんというか……。
それを許した奥さんの気がしれないわ」■■
「女神様のモデルとはいえ……、ずっと自分の裸が残るのよ?■■
【ツェザーリ】
「自分の一番美しいときのありのままの姿が女神像として残るなら、悪くないと思わないか?
私は、妻の美しさを残したいと思った夫の気持ちが分からないでもないな」■■
「……私には分からないわ。
【大】服を着せたって、残せるでしょう【大】」■■
【ツェザーリ】
「はは、そこは男だ。
服になど阻まれず、すべてを残しておきたかったんだろう」■■
「むう……」■■
【ツェザーリ】
「後世に残るかどうかは結果論。
自分の鑑賞用として描かせたんだ」■■
「館に飾らせるといっても、自分の私室。
もしくは夫婦の部屋やプライベートな場所に飾ることが多かった」■■
「……まあ、それなら」■■
納得できなくもない。
愛情があれば、そういうのもアリなのかもしれない。■■
【ツェザーリ】
「…………」■■
「私が君を描かせても……、表には出さないだろうな。
……服を着ていようと、いまいと」■■
【【【時間経過】】】