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マザーグースの秘密の館

『ツェザーリ(学者)ルート ■ツェザーリ05』

■ 全問正解イベント5

【【【時間経過】】】
◆クイズ時と同じ背景。クイズ終了後に、そのままイベントに入ります。
【ツェザーリ】
「満点おめでとう、エリカ。
これで、君はまた私の……」■■
「そうよ、又あなたの講義を聞けるの。
というわけで、さっそく聞きたいことがあるんだけど」■■
【ツェザーリ】
「…………。
……どうしたんだ、いきなり積極的になって」■■
「どうせ後5回は満点をとらないと帰れないのよ?
それなら、せっかくの機会を活用しようと思ったの」■■
「よく考えたら、学者先生につきっきりでプライベートレッスンしてもらえる機会なんて、そうそうないもの」■■
ぐいっと彼の手を引いて、歩く。■■
【ツェザーリ】
「ど、どこへ連れて行くんだ?」■■
「あなたの研究室よ。
何か不都合でもある?」■■
【ツェザーリ】
「いや……、ない。
ないが……」■■
「ないならいいじゃない。
ほら、行きましょう!」■■
【ツェザーリ】
「……不都合はないが、調子が崩れるな」■■
【【【時間経過】】】
◆ツェザーリの研究室。
◆壁が書架になっており、大量の本がぎっちりと並べてある。書庫といったイメージ。
彼の研究室へとつくと、真っ直ぐに机へと向かった。
その上に、小脇に抱えていた本を広げる。■■
「これよ、これ。
ここが分からないの」■■
【ツェザーリ】
「なんだ……、どこだ?
見せてみなさい」■■
◆傍ら、やや後ろから主人公の手元をのぞきこもうとするツェザーリ。
◆結果二人の顔の位置が近いが、二人とも目線は手元の本にある状態。
「ここよ、ここ。
神話の中にも、世代交代があるじゃない?」■■
「その中で、毎回トップに立つのが末っ子なのが気になるの。
順当にいけば、長男が後を継ぎそうなものでしょう?」■■
【ツェザーリ】
「…………」■■
「……何よ。
変な顔して」■■
【ツェザーリ】
「いや……。
感慨深いものを感じていた」■■
「今まで私は、褒美と称して君に半ば強引な講義をしてきただろう?
それなのに君は今自ら、私の分野での疑問点を調べてきている」■■
「これについて私に聞くために、満点をとったのか?
……もちろん、帰るという目的を除いての話だが」■■
「ええ。
分からないままだと気持ち悪いじゃない」■■
「もちろん、帰るためというのもあるけど……。
ほら……、ご褒美なんだから、ちゃんと説明してよ」■■
【ツェザーリ】
「……そうだな。
いい子には褒美があってしかるべきだ」■■
「さて、君の疑問は神々の世代交代についてだったな。
これについては、順序よく話していこうか」■■
「ええ、お願い」■■
【ツェザーリ】
「まず世界には二柱の神がいた。
天空の神ウラノスと、大地の女神ガイアだ」■■
「彼らは愛し合い、たくさんの子供が生まれたが……、そのどれもが醜い化け物の姿をしていた。
そのため、ウラノスは生まれた子供を片っ端から、大地の奥底に封印してしまうんだ」■■
「自分の子供なのに?」■■
【ツェザーリ】
「そう、自分の子供なのに、だ。
一方ガイアは、大地である自分の腹の中に化け物を押し込まれて苦しくて仕方がない」■■
「そこで、末っ子のクロノスを唆し、お父さんをやっつけておしまいと命じるわけだな。
これが第一の世代交代だ」■■
「末っ子のクロノスが、ウラノスの後を継ぐことになる」■■
【ツェザーリ】
「だが、彼もまた『父同様に、子によって権力を奪われるだろう』という予言を受け、その予言を恐れるあまりに妻レアとの間に生まれた子供達を次々と丸飲みにしてしまう」■■
「それで……、妻レアが怒って、最後に生まれたゼウスだけは隠しちゃうのよね?
クロノスには産着を着せた石を渡して」■■
【ツェザーリ】
「それでクロノスは、産着を着た石を飲み込んで安心する。
だが、隠れ育ったゼウスはやがてクロノスの腹の中から姉や兄を助け出し、クロノスを討つ」■■
「……これが第二の世代交代だな」■■
「ほらね?
やっぱり、クロノスの後を継いで神々の中心になるのは末っ子のゼウスなのよ」■■
「これって、偶然なの?
それとも何か意味があって、毎回末っ子が王座を継ぐの?」■■
【ツェザーリ】
「いい質問だな。
君は研究者に向いているかもしれないぞ」■■
「褒めるのはいいから、答えを教えてよ。
ずっと気になっているの」■■
【ツェザーリ】
「もう少し焦らしてみたい気もするが、答えを教えてあげよう。
これには、古代にあった末子相続制の名残だという説がある」■■
「末子相続制?
末っ子が後を継ぐってこと?」■■
「昔は今と逆だったのね」■■
【ツェザーリ】
「ああ、上の兄弟達が成人する頃、父親はまだまだ働き盛りだ。
それ故に、財産を分け与えて分家する」■■
「だが、末っ子が成人する頃には父親も年をとって弱ってきているからな。
それで全てを末っ子に与え、世代交代するという考え方だ」■■
「……なるほど。
そう聞くと、筋が通っているように思えるわ」■■
「私の祖母が暮らす日本では、伝統的に長男が家や財産を継ぐことになっているの。
それを聞いたことがあったから、末っ子が後を継ぐなんておかしいって感じていたけど……」■■
「あなたの説明を聞いて納得した。
文化の違いだろうけど、合理的だわ」■■
【ツェザーリ】
「…………」■■
「君は……、好奇心さえ発揮できれば、こんなにも勤勉な子だったんだな。
私も見習わなければと思う」■■
「あなたの説明が上手だから、うまく乗せられているだけよ」■■
そう答えて、顔をあげて気付いた。■■
c5_2

(か、顔の位置が近い……っ!)■■
【ツェザーリ】
「……っ!」■■
同じことに思い当たったのか、彼の顔にもさっと朱色が走った。■■
背中に、彼の胸が重なっている。
ツェザーリは、慌てて身を起こした。■■
【ツェザーリ】
「……そ、そろそろ夕食の時間だろう。
行ったほうがいい」■■
「そ、そうね」■■
【【【演出】】】・・・がたりと立ち上がる音。
私は椅子から立ち上がると、そそくさと部屋を出ようとする。■■
【ツェザーリ】
「……また、満点をとってきなさい。
次も、君を楽しませられる話題を用意しておく」■■
背中に、そんな声を聞いた。
振り返るのも、なんだか気恥ずかしかったけれど……。■■
【【【時間経過】】】