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マザーグースの秘密の館

『ツェザーリ(学者)ルート ■ツェザーリ04』

■ 全問正解イベント4

【【【時間経過】】】
◆クイズ時と同じ背景。クイズ終了後に、そのままイベントに入ります。
【ツェザーリ】
「満点おめでとう、エリカ。
これで4回目だ」■■
「君が私に対して、理解を深めていくのが嬉しいよ。
こう……、教師の気分がわかったような気がする」■■
「教師の気分?
学者なんだから、元々、そういう気分は味わう機会も多いんじゃないの?」■■
【ツェザーリ】
「先生と呼ばれたりすることも多いからな……。
外から見れば、同種に見えるのかもしれないが……」■■
「……そういえば、他の人に『先生』って呼ばれるのを嫌がっていたわよね」■■
【ツェザーリ】
「……君は、学者も教師も、似たようなものだろうと思うかもしれない。
だが、学者と教師は決定的なまでに違う存在なんだ」■■
「学者は知りたいから、調べる。
己の欲に忠実なわけだな」■■
「教師は、その得た知識をいかに人々に広めるかに熱心だ。
それは大きな違いだし、どちらも専門職である以上は境界があってしかるべきだ……と思っていた」■■
境界があるべき。
そう言う彼だが、ライン引きを曖昧にしてでも得るものがあったようだ。■■
「……で、あなたは私にクイズを出すことで教師気分を味わっているというわけなのね?」■■
【ツェザーリ】
「人に教えることで、自ら学ぶ時間を削るのは愚かしいと考えていたが……。
君を見ていると、そう悪くないという気がしてくる」■■
「教えるのが好きになりそう?
でも、ヴィンセントにも勉強を教えてあげたりしているんでしょう?」■■
【ツェザーリ】
「彼は元々優秀だし、学校で学ぶ以上のことを求めて自主的に通ってくるような青年だ。
君とは違う」■■
「まあ……、それは違うでしょうね……」■■
私の場合は、自主的どころか、強制そのもの。
本の中に閉じ込められ、学ばされている。■■
【ツェザーリ】
「そう、君のような不出来でやる気もない生徒にやる気をおこさせるというのは……、格別だ」■■
「む……」■■
(不出来で、やる気もない、って……)■■
「人を馬鹿な女学生みたいに言わないでよね。
これでも、成績はいいほうよ?」■■
【ツェザーリ】
「ああ、それは分かる。
完全に忘れていた状態から、ここまできたんだからな……」■■
「……最初はまったく駄目だっただろう。
それが今では、満点を4回も叩き出している」■■
「このままいくと確実に連続正解10回を達成できるだろう。
めざましいまでの成長過程を見られるというのは、教える上での喜びだ」■■
(このままいくと、確実に……)■■
はっとする。■■
(……私は帰るんだわ。
元の世界へ)■■
私が帰ったら、私を通じて教えるのが楽しくなってきたというこの男はどうするのだろう。■■
(…………)■■
「教えるのが楽しくなってきたなら……、他の子にも勉強を教えたくなってきたんじゃない?」■■
【ツェザーリ】
「ん?どうだろうな。
今のところ、私には君だけで手一杯……、充分だ」■■
「……っ!」■■
(特別な意味はないと分かっていても、ちょっとドキっとするな……)■■
下心などないからこそ、こんなにさらっと言えるのだとしても。■■
「そ、それじゃあ、今日も張り切って研究を手伝ってあげるわ。
資料まとめの手伝いでも……」■■
【ツェザーリ】
「おや、それは残念だな。
今日は、ご褒美に海岸まで連れ出してやろうと思っていたんだが」■■
「え!?
本当に?」■■
【ツェザーリ】
「こんなことで嘘をついてどうする。
だが、君が研究を手伝いたいというのなら……」■■
「わー!わーわー!
海岸に散歩がいいわっ、海岸に行きたい!」■■
【ツェザーリ】
「……くくっ。
それじゃあ行こうか」■■
【【【時間経過】】】
◆海辺。
◆砂浜へと続く海岸には緑が広がり、白い花がたくさん咲いている。
白い砂浜に続く海岸は、緑の植物で覆われ、またその植物はたくさんの白い花をつけている。■■
「なんだか、意外だわ。
塩水って、植物の天敵みたいなものでしょう?」■■
「こんな海の近くで、よくこんなに育つわね」■■
【ツェザーリ】
「この植物は潮風に強い。
葉が肉厚だろう?」■■
「それに、風で動きやすい砂の上に育つこともあり、根がとても深い。
そのおかげで、乾きやすい砂からでもしっかりと水分を確保できているわけだな」■■
「……なるほど。
他の植物が生活できない場所で咲くだけあって、いろいろと進化しているのね」■■
【ツェザーリ】
「ああ、もちろん。
おそらくその花はハマナスの一種だろうな」■■
「ハマナスは薔薇科の植物だから、ローズヒップが取れるぞ。
持って帰ったらバッカスが喜ぶ」■■
「それなら、ちょっと探してみようかしら」■■
【【【演出】】】・・・さくさく、と砂浜を踏みしめる足音
砂浜を踏みしめて、生い茂る花の中へと足を踏み入れた。■■
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「あ、本当だわ。
赤い実がなっている」■■
【ツェザーリ】
「それがハマナスの実だ。
生でも食べられるが、あまり甘みはなく、逆に酸味が強い」■■
「へえ。
それじゃあここで食べるよりも、持って帰ってバッカスになんとかしてもらったほうがよさそうね」■■
【ツェザーリ】
「そうだな。
……ふふ」■■
ハマナスの実を摘む私の背後で、ツェザーリが小さく笑う声が聞こえた。■■
「何?
どうしたの?」■■
【ツェザーリ】
「……いや。
ここに白い牡牛が現れたらどうしようかと考えていた」■■
「白い牡牛?」■■
実を摘む手をとめて、彼を振り返る。■■
【ツェザーリ】
「神話の一つで、そういう話があるんだ。
海岸で花を摘む美しい王女が、ふと現れた牡牛に攫われてしまうという話が」■■
「牡牛がどうして、王女を攫うのよ」■■
【ツェザーリ】
「実はその牡牛はゼウスが化けた姿でな。
ゼウスはその美しい王女を手に入れるために、牡牛に化けてそっと近づくんだ」■■
「王女は気がつくと傍に寄ってきた白い牡牛に懐かれて、悪い気はしない。
花をやれば、牡牛は嬉しそうにそれを食み、王女へと体をすり寄せてくる」■■
「それに安心した王女は、すっかり気を許してその牡牛に乗って海岸を散歩しようとするんだ。
ところがその牡牛、王女を乗せたとたん海に向って突っ走る」■■
「…………」■■
【ツェザーリ】
「王女は慌てるものの、猛スピードで沖に向かって泳ぎ出した牡牛を止められない。
その角にしっかりとしがみついて振り落とされないようにするので必死だった」■■
「そして、王女はゼウスに攫われるわけだな」■■
「……ねえ。
ギリシャ神話の神々って、可愛い女の子を見かけたら攫わずにいられないの?」■■
「この前話してくれたハデスだって、ペルセフォネを誘拐したんでしょう?
神話の中は誘拐犯罪だらけだわ」■■
【ツェザーリ】
「前にも言ったとおり、【大】美女を攫うのは神々のお家芸だ【大】」■■
「【大】褒められたものじゃないわね【大】」■■
【ツェザーリ】
「攫われた王女の名前はエウロペと言い、牡牛が彼女を乗せて走り回った大地には、彼女の名がついたといわれている」■■
「それが、どこだか分かるか?」■■
「エウロペ?
エウロペ……、エウロペ……」■■
「…………」■■
「どこかしら。
私も知っている地名?」■■
【ツェザーリ】
「知っているとも。
……答えは、ヨーロッパだ」■■
「そ、そんな広い範囲……、大陸中を駆け回ったの?
ゼウスって……【大】暇人ね【大】」■■
【ツェザーリ】
「お目当ての王女を無事に攫うことが出来て、浮かれていたんだろうな。
散々な言われようだが、ギリシャ神話の神々は、そういったどこか憎めない人間らしさを残している」■■
「完全無欠の神としてではなく……、人間離れしたすごい力を持ってはいるのだろうが、隣人めいた気安さがあるだろう?」■■
「そうね。
……困った隣人だわ」■■
「だけど、なんとなく、わかる気がするわ。
誘拐するような困った隣人なのに……、憎めない」■■
【ツェザーリ】
「……そうか」■■
「……ええ。
私自身、困ったことに、ね」■■
神様に誘拐された王女も、こんなふうに困ったのだろうか。■■
【【【時間経過】】】