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マザーグースの秘密の館

『アーサー(貴族)ルート ■アーサー07』

■全問正解イベント7

【【【時間経過】】】
◆クイズ時と同じ背景。クイズ終了後に、そのままイベントに入ります。
【アーサー】
「ありがとう、エリカ。
よく頑張ってくれたね」■■
「……なんで、お礼を言うの?」■■
【アーサー】
「君が満点をとってくれたおかげで、またこうして君を散歩に誘うことが出来る。
お礼を言わずにはいられないよ」■■
「そ、そう……」■■
「……どういたしまして」■■
(……と返すのも、かなり変な気がするけど)■■
何か話していないと、妙に緊張してしまう。■■
「喜んでもらえると、頑張った甲斐があるわ。
というか……、そうまで言うのなら、テストなんか関係なく誘ってくれたらいいのに」■■
【アーサー】
「はは、それはさすがにね。
ご褒美の意味がないだろう?」■■
「そうだけど……。
そう考えると、本当に後3回しかアーサーさんと散歩することができないじゃない」■■
【アーサー】
「……もっと散歩したい?
でも、こういうのは息抜きだからいいんだよ」■■
(そうじゃなくて……)■■
「最近ね、元の世界に帰るためだけじゃなくて……。
アーサーさんと話したいから頑張っている部分もあるのよ?」■■
鈍そうにも思えないのに、話を逸らされているのだろうか。■■
【アーサー】
「おや……、それは嬉しいことを言ってくれるね。
私を知った上でそう言ってくれるとは……」■■
「…………」■■
「……?」■■
【アーサー】
「……よし、今日は張り切って散歩に行こう」■■
がく、となる。■■
「張り切った散歩って……、なんだかものすごく体力を使いそうだわ」■■
【アーサー】
「山歩きというような?
ふむ、たまには山にでも行ってみようか?」■■
「……アーサーさん、その格好で?」■■
【アーサー】
「もちろん。
私は紳士だからね、常に紳士に相応しい装いを心掛けなければ」■■
「それは素晴らしい信念だとは思うけど……。
その格好で、山歩きはやめておいたほうがいいと思うわ」■■
【アーサー】
「そうか。
それじゃあ、君の忠告に従って、おとなしくいつもの散歩をするとして……」■■
「先ほどから……、というよりも、以前から何気なく使っている『紳士』という言葉についてを話すとしようか」■■
「紳士という言葉について?
そのままの意味じゃないの?」■■
紳士。
ジェントルマン。■■
【アーサー】
「さて、それは君の言う『そのままの意味』がどういう意味かによるね……。
ほら……、行こうか」■■
そう言ってエスコートしてくれるアーサーは、やはり紳士らしい紳士だ。■■
(紳士がどういう意味か、って……。
こういう人のことよね)■■
【【【演出】】】・・・二人歩き出す音
【【【時間経過】】】
◆二人で住宅街の散歩。
住宅街を歩く二人。
◆二人が歩いている歩道は各家の庭に面していて、イギリスの古いスタイルの住宅が並んでいる。
◆落ち着いた閑静な住宅街といったイメージ。
【アーサー】
「さて、君は紳士という言葉の意味を、どういうふうに捉えているのかな。
先ほど、『そのままの意味』なんていうふうに言っていたけれど」■■
「ええと……。
振る舞いが礼儀正しくて、人間として誉められるような行動をする男性のこと……、かしら」■■
「あと、私のイメージだと、やっぱり『英国紳士』ね。
イギリスの男性に、そういう人が多いからなのかは知らないけれど、言葉として」■■
「不思議と、紳士というとイギリスのイメージだわ」■■
【アーサー】
「ふむふむ。
それじゃあ、一つ聞くけれど……、紳士と貴族はイコールで結ばれるものかな?」■■
「紳士と貴族……」■■
(……う~~ん?)■■
「似ている気がするけど……、違うと思うわ」■■
【アーサー】
「どうして?」■■
「貴族っていったら、上流階級の人でしょう?
そうとは限らないと思うの」■■
「貴族の中に紳士はいても、貴族でなければ紳士ではないというわけではないんじゃないかしら。
それに、貴族にも鼻持ちならない傲慢な人もいるでしょうし……」■■
【アーサー】
「なるほど。
とても面白い意見だね」■■
「……む。
答えは何なの?」■■
【アーサー】
「実は……、紳士というのは、英国における古い時代の身分の一つなんだよ。
貴族というのが位をさしているのと同じで、地方に土地を持つ豪族のことを紳士と呼ぶんだ」■■
「【大】えええ?【大】」■■
「紳士って、位の名前だったの!?
貴族とは違うの?」■■
「ああ……、でも、だから、紳士というと英国紳士をイメージしちゃうのね。
英国の身分の名前だからか……、そこは納得がいったわ」■■
【アーサー】
「ふふ、そういうこと。
ただ、貴族と紳士の違いについてなんだけれども……、これを説明するのは難しい」■■
「ある意味においては違うんだけど、ある意味においては同じというか……。
さて、どう説明したら分かりやすいかな」■■
「???」■■
【アーサー】
「貴族というのはね、国王陛下から位を授けられたものをさすんだよ。
紳士は、そうじゃない」■■
「元々、地方で力と土地をもっていた者が豪族だ。
だから、そういった意味では貴族と紳士は違う」■■
「でも、ある意味でおいては同じ……、なのよね?」■■
【アーサー】
「そうなんだよ。
社会に対して果たしていた役割は、同じなんだ」■■
「国王陛下より位を授けられたかどうかという違いこそあれ、していることは同じでね。
だから、実質、差はなかったんだ」■■
「それがどうして、紳士イコール立派な男の人という意味になってしまったの?
貴族という言葉は、そんな使われ方をしていないでしょう?」■■
【アーサー】
「その答えは簡単だ。
国王陛下から位を授けられて貴族になるのは難しいが……、お金さえあれば、紳士には簡単になれるんだよ」■■
「簡単に紳士に、なれる?」■■
【アーサー】
「紳士というのは、先ほども言ったとおり、土地を治める者だ。
だから、土地を購入さえしてしまえば、紳士という身分には簡単になれるんだ」■■
「現代に近づくにつれ、成功して大金を手に入れた商人達は、皆こぞって土地を買って紳士になりたがったのだよ」■■
「うわ……。
いかにも、成り上がりって感じね」■■
「……いわゆる、成金か。
成功するために努力したっていうのは称えられるところだけど……」■■
もちろん、成功者も様々だろう。
だが、がっついている印象と紳士という言葉は結びつかない。■■
【アーサー】
「でもね、エリカ。
いくら土地を持っていても、紳士として認められるわけじゃないんだよ」■■
「え?
今、土地さえ持っていれば紳士になれるって……」■■
【アーサー】
「紳士には簡単になれる。
けれど、認められるかどうかは別問題なんだ」■■
「……どういうこと?」■■
【アーサー】
「ヨーロッパにはね、昔から『ノブレス・オブリージュ』という考え方がある。
この世界にも、だ」■■
「それが何かというと、富めるものには、それだけ社会に対する責任が付随するという考え方なんだ。
だから、貴族や紳士といった階級にあるものは、無償の奉仕を社会に対して行わなくてはいけない」■■
「つまり……、紳士として認められるためには、土地やお金だけじゃなくって、立派な行いをしなくてはいけないということなのね?」■■
【アーサー】
「ああ、金という意味では寄付も社会貢献とみなされたけど、それだけでは及ばない。
当時は揉め事の仲裁をはかったりするのも紳士の役目だったんだ」■■
「長期的な、地域貢献。
なるのが簡単な分……、その行動で評価され、認められるのが紳士という身分だったんだよ」■■
「金で買える身分だとしても、なった後で試される。
誇れる行いが出来なければ、紳士として失格だ」■■
「なるほど。
だから、立派な男性の代名詞として紳士という言葉が使われるようになったのね」■■
【アーサー】
「そういうことだね。
今はもう、紳士という階級に意味はないが……、そういった精神は今も息づいている」■■
「……アーサーさんにも?」■■
【アーサー】
「もちろん。
私は貴族でもあるが、紳士でもある」■■
「紳士だからこそ、こんな時間まで君を外に誘い出しても……。
悪さ一つ、ろくに出来ない」■■
「わ、悪さって……!」■■
「…………」■■
「……しないのが、いいことでしょう?」■■
残念そうに言わないでもらいたい。■■
【アーサー】
「男としては、ちっともいいことじゃないよ。
紳士であるのも、難儀なことだ……」■■
【アーサー】
「淑女としては、早く帰るのがいいことだ。
……君はいい子だよね?」■■
「こ、子供扱いしないでったら……!」■■
【アーサー】
「……じゃあ、どういうふうに扱えばいいのかな」■■
【【【演出】】】・・・ちゅ、と小さく髪にキスする音
【アーサー】
「…………」■■
◆アーサーが軽く腰をかがめて、主人公の頭、髪の上にキス。
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悪戯っぽく笑ったアーサーは軽く屈んで、私の髪へとキスをした。
軽く触れる程度、親愛の証だと言ってしまえばそれですむようなものだ。■■
「……っ!」■■
(子供扱いだわ)■■
だが、どういうふうに扱ってほしいかという問いにもうまく答えられない。■■
【アーサー】
「……白薔薇の君。
私を紳士なままでいさせてくれないのか?」■■
「…………」■■
「……芝居がかった言い草ね」■■
【アーサー】
「……そうだろうとも。
貴族だろうと紳士だろうと、こういう場面では道化になるものさ」■■
(『こういう場面』って、どういう場面?)■■
『そのままの意味』と同様に、切り返してやりたい。
だが、やはり私はうまく口を開けない。■■
◆アーサーが主人公の唇にキス。
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「……っ」■■
【アーサー】
「…………」■■
「…………」■■
口を、開けない。■■
(私は、やっぱり子供なんだわ)■■
『こういう場面』でどうすればいいのか、まるで分からない。■■
そんな相手にキスをするアーサーは、やはり紳士ではないのかもしれない。■■
【【【時間経過】】】

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