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マザーグースの秘密の館

『アーサー(貴族)ルート ■アーサー03』

■ 全問正解イベント3

【【【時間経過】】】
◆クイズ時と同じ背景。クイズ終了後に、そのままイベントに入ります。
【アーサー】
「全問正解おめでとう、エリカ。
君の成績がいいと、私も嬉しいよ」■■
「それだけ君が私を理解してくれているということだからね。
それに、君を気兼ねなく散歩に誘えるというのも魅力的だ」■■
「……やっぱり、まだ帰してはくれないのね?」■■
【アーサー】
「…………」■■
「いや……、いいの、分かっていたわ」■■
(まだまだ……、なのね?)■■
【アーサー】
「ふふ……。
【大】いろんな意味で学んだね【大】」■■
「そりゃあ、3回目だもの。
それじゃあ、散歩に出発しましょうか」■■
【アーサー】
「おや、今回は君がエスコートしてくれるのか。
……では、出かけよう」■■
【【【時間経過】】】
◆住宅街を歩く二人。
◆二人が歩いている歩道は各家の庭に面していて、イギリスの古いスタイルの住宅が並んでいる。
◆落ち着いた閑静な住宅街といったイメージ。
「ねえ、アーサーさん。
ちょっと聞きたいことがあるんだけれど、いいかしら」■■
【アーサー】
「何だろう?
私に答えられることなら、なんなりと」■■
「あちこちの庭に、必ずといっていいほど妖精の置物があるのはどうしてなの?
小人のようなものから、羽の生えたものまで、いろいろ置いてあるわ」■■
◆主人公は屈んで妖精の像を見ており、アーサーは立ったまま軽く腰を曲げて同じく像を見ている。
◆庭に植えられた草木の陰に、白雪姫にで登場する小人のようなドワーフのような置物がある。
私は道に面した軒先に飾られた妖精の置物の前に屈んだ。
アーサーも立ち止まって、私の視線の先を覗き込む。■■
置物は一目で妖精だと分かるものから、ちょっとなんだか分からないようなものまで、様々だ。■■
【アーサー】
「それはね、英国式のガーデニングの特徴なんだよ。
彼らはオカルトを愛しているからね」■■
(オカルトか……)■■
【アーサー】
「ファンタジー好きなんだよ、日常に入り込んでいるほどにね。
少しばかり怖いものも含め、受け入れられている」■■
「へえ……。
イギリスの人達は庭に本物の妖精でも呼ぶ気なのかしら」■■
【アーサー】
「それが理想らしいね。
妖精が遊ぶ庭というのが、彼らの目指す庭の形だそうだ」■■
「まあ、妖精ぐらいなら可愛いかもしれないけど……」■■
「……う~ん、それでも私はちょっと怖いわ。
妖精だっていいものばかりじゃないでしょうし」■■
(妖精って、なんだか可愛いイメージが先行しているだけで、実は妖怪みたいなものよね)■■
【アーサー】
「君は日系だったっけ……、それが他の国の考え方なんだろうけどね。
彼らはそういったものを怖いとは感じないんだ」■■
「むしろ喜んで見に行こうとする。
英国では、幽霊の出る家なんていうのは人気物件なんだよ」■■
「だから皆、そういう噂のある物件に住みたがる。
ゴーストツアーなんていって、昔の凶悪犯罪の現場を巡ったりもするぐらいだからね」■■
「……筋金入りね。
私の感覚だと、幽霊の出る部屋は他に比べて格安になっているイメージだわ」■■
「何か事故や事件のあった部屋というのは、その事実を不動産屋さんも隠したがるし……。
感覚が違うのね」■■
【アーサー】
「幽霊や妖精、そういった見えない存在に対する憧れが強いのだと思えば、なんだか可愛い気もしてこないかな」■■
「妖精そのものじゃなくて、それを信じている人に対してはね」■■
【アーサー】
「ふふ……、ああ、そうだ。
エリカ、君はコティングリーの妖精事件というのを知っている?」■■
「コティングリーの妖精事件?
何それ、知らないわ」■■
【アーサー】
「英国はもちろん、世界中で有名になった事件なんだけれどね。
これがまた、すごいんだよ」■■
「昔ね、君より少し幼いぐらいの姉妹が、妖精の写真を撮ることに成功したと言うんだ。
その写真に、世間は大騒ぎになった」■■
「よ、妖精の写真?
それは大騒ぎにもなるわよね」■■
妖精を待ち望むようなお国柄なら、尚のこと。■■
【アーサー】
「綺麗なドレスを着た妖精でね。
背中には羽がはえていて……、まるで絵本の中から抜け出してきたような姿だった」■■
「わあ……、すごいわね。
ねえ、私もその写真見てみたいわ」■■
「今でも見ることができるの?」■■
【アーサー】
「少し調べれば、すぐに見ることが出来るんじゃないかな。
そして私は今、絵本の中から抜け出してきたような……、と言ったのだけど」■■
「だけど?」■■
【アーサー】
「それは本当だったんだよ。
その妖精達は、絵本の中から抜け出してきたんだ」■■
(あなたみたいに?)■■
(いえ、自分が抜け出すんじゃなくて、私を引きずり込んだのよね……。
でも、本の中の人……、妖精みたいなものじゃない?)■■
だが、アーサーはあまり妖精らしくない。
普通の男性に見える。■■
「その写真の妖精は……、本の妖精だった、ということ?」■■
【アーサー】
「はは、それならずいぶんとロマンがあっていいね。
……違うんだよ」■■
「その姉妹はね、絵本に出てくる妖精を紙に模写して、それを写真に撮ったんだ。
つまりは、偽物だったわけなんだ」■■
「ええ?
偽物だったの!?」■■
先刻言われた通り、事件というほどのことだ。■■
【アーサー】
「そう、偽物だった。
でもね、その偽物に、世界中の人達が何十年も騙されたんだ」■■
「な、何十年も!?」■■
(スケールが……)■■
【アーサー】
「そう、何十年も。
彼女達が、それが偽物だったと白状したのは、幼かった彼女達がしわくちゃのおばあさんになって、死んでしまう寸前だったんだからね」■■
「今わの際に白状したっていうこと……」■■
「……嘘も、そこまで突き通すとすごいわね」■■
【アーサー】
「突き通すなら、墓場まで秘密を持っていくほうがよかったと思うけどね。
実際、白状なんてしなくてよかったという人も多かった」■■
「何もかも、真実を突き詰めるだなんて、それこそナンセンスな話だ。
騙されていたほうが楽しい嘘だってあるのさ」■■
「でも……、最後まで抱えるには重かったんじゃない?
嘘は嘘だし……」■■
【アーサー】
「嘘であり、空想であることこそがファンタジーだと思うけどね……。
……さ、散歩の続きと行こうか」■■
「ええ」■■
私は立ち上がって、彼の隣を歩き出した。■■
ファンタジーを具現化したような、彼の。■■
【【【時間経過】】】
◆二人で住宅街を歩いている。
◆住宅街を歩く二人。
二人が歩いている歩道は各家の庭に面していて、イギリスの古いスタイルの住宅が並んでいる。
◆落ち着いた閑静な住宅街といったイメージ。
【アーサー】
「そういえば、先刻の話なのだけれどもね。
彼女達の主張していた妖精の存在が、全て嘘かどうかは分からないんだよ」■■
「え?
でも、嘘だったって、白状したんでしょう?」■■
(それなら、偽物に決まっているじゃない?)■■
【アーサー】
「彼女達の撮った妖精の写真は、全部で五枚あるんだけれどね。
そのうちの最後の一枚だけは本物だと、絶対に嘘だとは認めなかったそうだよ」■■
「それじゃあ……」■■
【アーサー】
「そうだね。
もしかしたら……、その最後の一枚だけは本物かもしれない」■■
(かもしれない、か)■■
今わの際の、おばあさんの言葉。
戯言だと片付けるのは簡単だが……。■■
想像の余地がある。
それこそが、ファンタジーだ。■■
「嘘か本当かよりも、そうかもしれないって思うほうがファンタジックね」■■
【アーサー】
「……だろう?
ファンタジーでもあり、ロマンでもある」■■
「さて……、君はどうかな。
君も何か、人に言えない秘密を持っている?」■■
「私はそんな、死ぬ間際に白状しなきゃいけないような秘密はないわ。
……今のところ」■■
【アーサー】
「はは、そうか、今のところ、か。
そのうち秘密が出来たら、私にだけは教えておくれ」■■
「アーサーさんだけに?」■■
【アーサー】
「そう……、私だけに」■■
「秘密を共有できるなんて、ロマンチックだろう?
……それが二人きりのものなら、尚更に」■■
「……っ!」■■
「……ああ、そろそろ風が冷たくなってきたね」■■
「っ、え、ええ、本当だわ。
もうすっかり、夕方ね」■■
【アーサー】
「君が妖精に攫われてしまわないように、館まで送るとしよう。
今日も、私の散歩に付き合ってくれてありがとう」■■
「私こそ、今日も息抜きをさせてくれてありがとう。
アーサーさんとの散歩は、いつも面白い話が聞けて楽しいわ」■■
【アーサー】
「それじゃあ、また何か面白い話を仕入れておこう。
君の息抜きに付き合えるのを、楽しみにしているよ」■■
「……それって、つまり、また満点を取りなさいってことよね」■■
【アーサー】
「はは、そういうことだね。
君なら大丈夫だよ、また近いうちに機会は訪れるだろう」■■
【【【時間経過】】】

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