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ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『ブラッド=デュプレ ■14話_1(選択肢:女王2)』

2・ブラッド滞在12で「2:お許しください、女王様」を選択している場合↓
【ビバルディ】
「なあ、アリス、おまえは我が愚弟を好いておるのか?」■■
「……直球ね」■■
確認はしていないが、ブラッドは仕事中だろう。■■
彼と過ごすのもいいが、こうやってビバルディと話をするのも楽しい。■■
いつも彼女は気まぐれに訪ねてくるから、いるかいないかは実際にここに来るまで分からない。■■
偶然に出くわすと、得をした気分になる。■■
「私が、ブラッドを好きだと思う?」■■
【ビバルディ】
「知らん。
わらわに読心術の能力はない」■■
「分からぬから、聞いておるのじゃ」■■
ビバルディは歯に衣着せない。
本当に直球だ。■■
「私、ビバルディのそういうところが好きだなあ……」■■
【ビバルディ】
「……ふん」■■
彼女は照れて、そっぽを向く。
そういうところも、好ましい。■■
【ビバルディ】
「……あ。
誤魔化したな?」■■
「わらわを好きかどうかなど聞いておらぬぞ?
ブラッドの奴を好きかどうかを尋ねたのじゃ」■■
「なんで、そんなことを聞くのよ」■■
【ビバルディ】
「なんだっていいだろう。
気になるから、聞いている」■■
「女王の質問に答えぬとは、ふてぶてしい奴……」■■
彼女は、ブラッドの姉だ。
弟のことを気にするのはおかしなことではない。■■
「私とブラッドは、恋人じゃないわ」■■
膝を抱えて、しゃがみ込む。■■
恋人ではない。
もっとただれた関係だ。■■
「安心した?」■■
実際は姉が安心して見守れるような関係ではないが……。■■
【ビバルディ】
「どうして、おまえが奴の恋人ではないと知って安心するのじゃ。
訳が分からぬ」■■
「私って、うじうじしていて暗い奴だから」■■
「こんなのが、もし弟の恋人だったら嫌だろうな~~~って……」■■
【ビバルディ】
「…………」■■
ビバルディも、私と同じようにしゃがみこむ。■■
「ドレスが汚れるわ」■■
【ビバルディ】
「わらわは、したいときにしたいことをする。
ドレスの替えなど、腐るほどあるわ」■■
ブラッドとそっくりだ。
言えば怒られそうなので口には出さないが、奔放なところが瓜二つの姉弟……。■■
「…………」■■
【ビバルディ】
「…………」■■
「…………」■■
【ビバルディ】
「アリス、おまえは……」■■
「…………」■■
「……卑屈じゃな」■■
「……自覚はある」■■
【ビバルディ】
「…………」■■
「…………。
……自分のこういうところ、大嫌い」■■
【ビバルディ】
「…………」■■
「……鬱陶しい」■■
「……それも自覚してる」■■
【ビバルディ】
「…………」■■
「うじうじしていて、そういうところを直せないと思ってて、直す気がない。
前進しようがない性格なの」■■
【ビバルディ】
「ふうん……。
わらわとは、だいぶ違うな」■■
「全然違うわ。
私、ビバルディみたいにさばさばした人になりたい……」■■
【ビバルディ】
「……それはないものねだりというやつであろう」■■
「わらわは、人に好かれるような性格はしておらんぞ?
こうなりたいなどと目標にするような美徳は持ち合わせていない」■■
「……ビバルディでも、そんなふうに思うの」■■
人に好かれるかどうかなど、そもそも最初から気にしないように見える。■■
「自分を変えて、好かれたいって思う?」■■
【ビバルディ】
「はっ。
人に好かれるような女に、血の色の国を統べる女王など務まるか」■■
「他の人間が変わるならいざ知らず、自分を変える気などない。
その点、おまえと同じかもな」■■
「……やっぱり、私とは違うわよ」■■
「私は、そんなに潔くないもの。
変えられないって決めつけて変える努力もしないくせに、どこかで変わりたいとも思っている」■■
「好かれたいって……」■■
誰にでも好かれる国などでなくてもいい。
誰か、自分も好きになれるような人に好かれる国に行きたい。■■
夢みたいなことを、きっと心のどこかで願っていた。■■
ナイトメアが言ったように、人として自然なことかもしれない。
それでも、傲慢だ。■■
「元の場所で好かれなかったから他の場所へ行きたいなんて、逃げよね」■■
【ビバルディ】
「…………」■■
「……必要とされる場所へ移っただけのことではないのか」■■
「?」■■
【ビバルディ】
「おまえの元いた場所がどんなところか、わらわは知らぬ。
おまえを受け入れなかった場所に興味もわかぬ」■■
「水の合う場所がここであったならば、ここに留まればいい。
捨ててしまえばいいのだ」■■
とんと、ビバルディにもたれる。
温かい。■■
私の姉には似ていない。
だが、この人も姉なのだ。■■
【ビバルディ】
「おまえはわらわのようになりたいと言うが、自分と同じような人間は好かぬ。
わらわが二人いて、気が合うと思うか?」■■
「…………。
喧嘩になるでしょうね」■■
【ビバルディ】
「喧嘩ですむか。間違いなく殺しあうであろう。
女王は二人もいらん」■■
「……うわ」■■
容易に想像できてしまうのが怖い。
ビバルディが二人いたら……、絶対に気が合わない。■■
否定できなかった。■■
【ビバルディ】
「な?合うはずがない。
おまえは、わらわのようであってはならないのだ」■■
「……ふふ。
わらわはおまえが好きだよ、アリス。
わらわに似ていない、うじうじと鬱陶しいおまえが好きだ」■■
「……ブラッドも、おまえのことが好きだ」■■
「どうして言い切れるの。
ブラッドは、そんなこと言っていないでしょう?」■■
彼が、姉にその手のことを相談するなんて考えられない。
だが、ビバルディはえらく自信に満ちていた。■■
【ビバルディ】
「わらわとあやつの好みは、そっくりなのじゃ。同じと言っていい。
そこだけが、姉弟の共通点なのだ」■■
「…………」■■
(他にも、似ているところは一杯あるよ……)■■
【ビバルディ】
「ところで、アリス。
おまえは、まだわらわの質問に答えておらぬぞ」■■
「おまえは、ブラッドのことが好きなのか?」■■
「……どうだろう」■■
「…………」■■
「……好きだと思う」■■
【ビバルディ】
「……煮え切らない返事だのう」■■
「……そういう性格なんだって」■■
【ビバルディ】
「ええい、鬱陶しい……」■■
「ビバルディも……、そういうことをぐさぐさ言うから好かれないのよ」■■
【ビバルディ】
「わらわのこれも、性格じゃ」■■
うまい逃げ口上だと思う、お互いに。
性格だと言って、直す気がないのだ。■■
「私、恋愛をしたくないの。
面倒くさい」■■
【ビバルディ】
「恋愛ごとが面倒なら、体だけの関係でもよかろう」■■
「…………」■■
「……そういう話じゃなくって」■■
ちゃらっと爆弾発言をする人だ。
さばけすぎている。■■
【ビバルディ】
「飽きれば、捨ててしまえばよい。
なんの面倒がある」■■
「ブラッドはあなたの弟でしょう……」■■
【ビバルディ】
「あやつには飽き飽きしておる。
わらわでも面倒に思うぞ」■■
「適当に弄んで、飽きがきたらとっとと捨てることじゃな」■■
「執念深くまとわりついてきたら、わらわにお言い。
始末するまで匿ってあげよう」■■
「…………」■■
(この人、本当にブラッドの実姉なのだろうか……)■■
【ビバルディ】
「飽きぬうちから言っても始まらぬか……」■■
「あんな奴でも好きだというなら、手助けしてやるが?」■■
「……私がブラッドを好きでも、彼が私を好きかは分からないのよ?」■■
【ビバルディ】
「好きに決まっておるだろう。
あやつは、おまえに夢中よ」■■
「どうして分からないのか、そっちのほうが分からぬわ」■■
「私には、どうして私なんかを好いてくれるのか、それが分からないわ」■■
ビバルディの言うように、恋愛的な意味でブラッドが私を好きかどうかは分からない。
姉である彼女がそう言ったからといって、鵜呑みには出来なかった。■■
しかし、恋愛かどうかは別として、好意を持たれていることは分かる。■■
「なんで、私なんかを好きになるのかしら。
私だったら、絶対に好きにならないわ、こんな女」■■
【ビバルディ】
「…………」■■
「……暗」■■
「根暗なのも、性格なのよ」■■
「性格なの」。
本当に、なんて立派な逃げ口上だろう。■■
それですべて解決するとは思えないが、会話を打ち切りやすい。■■
しかし、ビバルディは打ち切らなかった。
彼女は自分の聞きたいことを聞き、話したいことを話す。■■
【ビバルディ】
「わらわも……、わらわのような女がいたら、絶対に好きになれないだろうな」■■
「先刻言ったように、殺したいくらい憎く思うであろう。
鏡を突きつけられると、壊したくなる」■■
自分に似た人間と親しくなどなれないと、ビバルディは言った。■■
【ビバルディ】
「……おまえだけではないよ、アリス。
自分のことが嫌いな人間は多い」■■
「私は……、あなたのことが好きよ、ビバルディ」■■
強くて毅然としていて、思うがままに生きている。
わがままで奔放なところも、憧れる。■■
「自分のことを嫌う必要なんてないわ。
あなたってすごく美人だし……、素敵な人だもの」■■
彼女に対しては、驚くほどさらりと好きだと言えることに驚いた。■■
女性だからかもしれないし、自分と違いすぎているからかもしれない。
彼女に対してなら、好きだと言うことはこんなに簡単だ。■■
【ビバルディ】
「わらわも、おまえのことが好きだぞ」■■
「鬱陶しく歯痒いところも多々あるが、まあ、それも味であろう。
首を刎ねてやりたいほどには、鬱陶しくもない」■■
「鬱陶しいからって、首を刎ねられたらたまったものじゃないわ……」■■
【ビバルディ】
「抑えることが出来ぬほど、激情家で気分屋。
それが、わらわの性格じゃ」■■
「鬱陶しいものなど、目の前から消してしまうに限る。
イライラすれば、すぐに消す」■■
「だが……、おまえに対しても、そう感じたことがないわけではないのに。
どうして、おまえのことは首を刎ねる気にならないのだろうな……?」■■
「聞かれても困る……」■■
ビバルディは不思議そうに聞いてくるが、私に聞かれても答えなど出てこない。■■
「私は鬱陶しいと思っても、人の首を刎ねようなんて思わないもの……」■■
【ビバルディ】
「そうか?
気の長い女よのう……」■■
「普通だと思う……」■■
イライラしたくらいで、いちいち突っかかろうとは思わない。
突っかかることはあるとしても、首を切ろうとか……、思考の範疇外だ。■■
「私、面倒くさがりでもあるから。
ビバルディほどエネルギッシュじゃないのよ」■■
控えめに言っておく。■■
【ビバルディ】
「やはり、おまえはブラッドに合うだろうよ。
奴も、だらけておるからな」■■
ビバルディからすると、イライラして首を切ろうと思わない人間は皆、だらけていることになるらしい。■■
とにかく、彼女は私とブラッドをくっつけたいみたいだ。■■
「ビバルディは、恋の橋渡しをしたいの?
弟思いのお姉さんね」■■
しかし、当の弟の意思は完全に無視されている。
彼女にかかれば、その気がなくてもくっつけられてしまいそうだ。■■
私は、(多分)ブラッドのことが好きだが、彼が私を好きかどうかは非常に危なっかしい。
ブラッドとビバルディはやはり姉弟で、彼女ほどでないにしろ、弟のほうの発想も私には理解不能なことが多い。■■
【ビバルディ】
「わらわが味方してやりたいのは、弟ではない」■■
「アリス。
おまえに味方してやりたいのじゃ」■■
ビバルディは、優しく微笑んだ。■■
妹を見る姉のような微笑みだが、私の実姉であるロリーナとは違う。
ビバルディには毒があり、私を安心させてくれる。■■
【ビバルディ】
「おまえを義妹にすれば、奴から奪う楽しみができる」■■
私を殺しかねない、猛毒といっていいまでの毒ではあるが。■■
【【【時間経過】】】
※条件により分岐、ここまで↑
※「女王・ブラッド」6回目ここまで↑

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