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ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『ブラッド=デュプレ ■14話_1(選択肢:女王1)』

※条件により分岐
1:ブラッド滞在12で「1:いざ、倒錯の世界へ……」を選択している場合↓
【ビバルディ】
「ふふ、可愛い……」■■
【ブラッド】
「……珍しく気が合うな」■■
「…………」■■
「姉弟揃って、目がどうかしている……」■■
「……二人のほうがよっぽど見目麗しいのに」■■
私はうっとりと彼らに見惚れていたが、彼らの目は私に向いている。■■
嬉しくもあり、不満でもある。
美しい二人に、その自覚がないのが憎らしい。■■
彼らは、もっと自分達の美しさを自覚したほうがいい。■■
「私に目を向けるより、鏡を見たほうがいいわ」■■
【ビバルディ】
「鏡を見てうっとりしていろと言うのか?」■■
ビバルディの、形のいい眉が跳ねた。■■
【ブラッド】
「私は御免こうむるが、姉貴なら似合いそうじゃないか」■■
【ビバルディ】
「わらわとて、そんなのは御免じゃ!」■■
「でも、二人って本当に綺麗なんだもの」■■
【ブラッド】
「男が言われて嬉しいセリフじゃないな」■■
「ブラッドは……、そうね、単体だと綺麗っていう感じじゃないわね」■■
ブラッドだけを見ると、綺麗という単語とは結びつかない。■■
「かっこいい……。
男前だと思うわ」■■
【ブラッド】
「……どうも。
今後もその感想でいてほしいものだ」■■
【ビバルディ】
「アリス、おまえのほうこそ目がおかしい。
こやつのどこが男前なのじゃ。趣味の悪い……」■■
「わらわの好みではないわ」■■
【ブラッド】
「ありがたいことだ。
姉貴は、自分の好みだったら、弟だろうがなんだろうが関係なさそうだからな」■■
【ビバルディ】
「安心せい。
今後も、その感想が揺らぐことはないぞ」■■
「おまえのようにすかした男、好かん。
とんだ見掛け倒しだしな」■■
【ブラッド】
「その点でも、気が合う」■■
「私も、姉貴のことを姉以前に女だとはとても思えない。
世界に女が姉貴一人でも絶対に血迷ったりしないと誓えるな」■■
【ビバルディ】
「ふふふ……」■■
【ブラッド】
「ふふ……」■■
「…………」■■
怖い姉弟関係だ。
外見だけなら禁断の関係でも許されてしまいそうなほど美しいのに、実際の仲はどこまでも寒々しい。■■
「…………。
ビバルディはいかにもな美女だけど、ブラッドは美男子というよりもかっこいい感じなのよね」■■
だが、二人揃うと完璧な美しさが見える。■■
そう評すると、姉弟はよく似た表情を浮かべた。
姉弟なんだなあと、改めて実感するような苦い顔だ。■■
嫌そうな……、皮肉と嫌味で溢れかえった顔。
実際、頭の中では否定の言葉と罵詈雑言が飛び交っているのだろう。■■
口には出さないが、伝わってくる。■■
「二人揃うと、絵画のように綺麗なの。
美術館の天使の絵も真っ青よ」■■
【ビバルディ】
「アリス……」■■
【ブラッド】
「君は、よくもそんな恥ずかしいことを言えるな……」■■
「姉貴や私に、完璧な美しさだの綺麗だの……。
屋敷や街の人間が聞いたら、気が狂っていると思われるぞ」■■
【ビバルディ】
「城の人間もだろう」■■
【ブラッド】
「誰が聞いてもってことだ」■■
「マフィアのボスと、女王様だものね」■■
そのかけ離れ具合がまた、倒錯的だ。■■
【ブラッド】
「女王というだけなら、美しいとかいうのも的外れじゃない。
だが……、この姉貴だぞ?」■■
【ビバルディ】
「どういう意味だ」■■
【ブラッド】
「ハートの城の女王・ビバルディに、天使の絵より綺麗なんて誰も言わない。
そういうことだ」■■
【ビバルディ】
「帽子屋ファミリーのブラッド=デュプレにだって、そんなことを言ってくれる者はいまい」■■
【ブラッド】
「ああ、いないだろうさ。
そんな気色の悪い奴がいたら、即座に撃ち殺す」■■
「気色悪いのはエリオットだけで充分だ……」■■
【ビバルディ】
「……言われたのか?」■■
「天使みたいだって!?」■■
エリオットのブラッドへの傾倒ぶりは有名らしく、ビバルディと声が被った。■■
【ブラッド】
「天使ではないが、私は奴にとって神だそうだ……」■■
「ブラッドが神……」■■
えらく怖くて、気まますぎる神様だ。
まあ、エリオットなら言うかもしれない。■■
【ビバルディ】
「…………」■■
「奴は病気じゃ。
引導を渡しておやり」■■
「エリオットは、本気でブラッドのことを敬愛しているものね」■■
屋敷に滞在していると、よく分かる。
彼は、ブラッドのためだけに働いていた。■■
とてもまめなふうには見えないのに、ブラッドのためなら仕事漬けになれる人だ。■■
「あれだけ自分をたててくれる腹心なんだから、自慢でしょう」■■
【ブラッド】
「あいつのは、ちょっとばかりイカレすぎだ。
思い込むと一直線だからな……」■■
「アリス、君も気をつけたほうがいいぞ。
エリオットは一度これと思って慕ったら、一生心酔できる奴だからな」■■
「私には、ブラッドみたいなカリスマ性はないもの。
大丈夫よ」■■
【ブラッド】
「甘い……。あいつの心酔し方はものすごいんだ。
どこにスイッチがあるのか、未だに分からない」■■
「……ふうん?」■■
まあ、私には他人事だ。■■
「ブラッドもそうだけど、ビバルディも兵士に慕われているのよね?」■■
「心酔しちゃう気持ちは分かるなあ。
二人とも、魅力があるんだもの」■■
悪の華とでもいうのか、触れたら棘が刺さりそうなところも魅力的だ。■■
【ビバルディ】
「わらわには、こやつの腹心のような病的な信者はおらんぞ?」■■
「じゃあ、私がなっちゃう」■■
【ブラッド】
「君なら、私も歓迎だ」■■
「ふふ……。
公認してもらえるなら、遠慮なく……」■■
こうやって、二人が揃っているときには甘ったるく、倒錯的な遊びにはまっている。■■
薔薇園に来て、両方いないときには一人でぼんやり薔薇の香りを楽しみ、どちらか片方がいるときには一緒に過ごす。■■
背徳的で、遊びというには深いつながりは、けれど外に出れば一切漏らすことはない。
外で会ったとき、ブラッドもビバルディもここでのことを匂わすことはなく、私も尋ねなかった。■■
二人は、外では殺し合い、ここでは私を共有している。■■
「二人とも、大好きよ」■■
好きと言うのも、こんなに簡単。■■
ここにいる間は、私も狂っている。■■
綺麗な姉弟が悪い。
美しい薔薇園の、むせかえるような花の香りが悪い。■■
【【【時間経過】】】

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