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ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『ブラッド=デュプレ ■05話_2』

◆帽子屋屋敷・ブラッドの部屋◆
★「お風呂イベント2」が発生している場合のみ↓
……そして、入浴を終えた私はブラッドと共に彼の部屋に移動している。■■
(って、この説明だけなら、間違いなくいかがわしい流れだな)■■
一緒にお風呂に入り、彼の部屋に移動。
実際には、いかがわしい事実など欠片もない。■■
★「お風呂イベント2」が発生している場合のみ↑
いつものように。
そう表現してもいいくらい慣れた空間で、本を読み、合間にブラッドを見ていた。■■
何度見ても。
見れば見るほどに。■■
「…………」■■
「……本当に似ている」■■
思わず、声が漏れる。
声は小さく、溜め息のように零れた。■■
ぴくりとペン先が動く。
それでも、特にリアクションがないので、聞こえていないのかと思った。■■
本の続きを読む。■■
【ブラッド】
「似ているって……、誰に?」■■
【【【演出】】】・・・書類の音
ブラッドが問いかけてきたのは、書類が一段落ついてからだった。■■
「……ん?」■■
間があいたので、なんのことを言われたのか咄嗟には分からない。■■
「ああ……。
ブラッドって、私の知人に似ているの」■■
【ブラッド】
「へえ……」■■
「……私が?
君の知り合いと、どんなふうに似ているんだ?」■■
「顔が似ているわ。
中身は全然似ていない」■■
「……と、思っていたけど、書き物をしているところは似ているわね」■■
顔はそっくり。
造形は同じといっていい。■■
世界に三人は同じ顔の人間がいるというが、それに当てはまるのではと思うほどだ。
それでも、瓜二つとまで思わないのは、中身の違いなのだろう。■■
私のよく知るあの人は、こんな威圧的な人ではなかった。■■
【ブラッド】
「そいつは、君とはどういう関係?」■■
「元家庭教師と、教え子」■■
やけに聞いてくるなと思いながら、特に迷うこともなく答えた。■■
ブラッドによく似た知人。
知人という枠には収まらないくらいに、よく知った人だ。■■
それを聞くと、ブラッドは舌打ちした。■■
【ブラッド】
「……下衆な男だな」■■
「は……?」■■
【ブラッド】
「教え子に手を出すとは、なかなか下劣じゃないか?
私も下衆だが、種類が違う」■■
「…………。
それとも、君が誘惑したのか、アリス?」■■
「今のようにじっと見つめて……」■■
「……っ」■■
「な、なんで……」■■
(なんで、分かるの!?)■■
ブラッドもナイトメアのように頭の中を読めるのかと、身構える。■■
【ブラッド】
「そんな熱い視線を注がれたら、分かるさ。
私に気があるのかと、誤解しそうだった」■■
「それがまあ……、恋人と似ていたからだったとはな」■■
「こ、恋人というわけでは……っ。
私が一方的に好きだっただけで……」■■
【ブラッド】
「手を出されてなかった?」■■
「……っ……」■■
あの人と同じ顔。
そして、ここが夢の世界だということが、私を平静でいさせてくれなかった。■■
その反応が、そのまま答えになる。■■
【ブラッド】
「……そうだろうな。
手を出していなかったらイカレている」■■
「教え子に手を出すような教師は下衆だが、今みたいな目で見られて手も出さないようでは教師以前に男じゃない」■■
「……私でも手を出すだろう」■■
「……っ!?
ブラッド!?」■■
手を伸ばされて、慌てて跳ね除ける。■■
中身が違おうとも、この顔、この声。
耐えられない。■■
【ブラッド】
「ふふ、安心しなさい。
私は、自分に他の男を重ねられるような恋はごめんだ」■■
「火遊びにしても、気分が悪い」■■
「……ごめん。
他の人に似ているなんて言われるの、気を悪くしたわよね」■■
【ブラッド】
「いい気分ではないな」■■
「……少なからず、がっかりした」■■
ブラッドは、私の頬を撫でた。■■
【ブラッド】
「でも、別れたんだろう?」■■
「…………。
……あなたって、人の心が読めるの?」■■
「それとも、ペーターみたいに事前に私のことを知っているとか……」■■
【ブラッド】
「読めるわけがない。
これまでの君も知らないよ。ただの推測だ」■■
「君は、そいつによく似ているという私を燃えるような目で見つめるくせに、帰ることに前向きじゃない。
どうでもいいと捨て鉢になっている」■■
「別れていなかったら、君はもっと必死になっているはずだ」■■
もっと、必死に。
そうかもしれない。■■
あの人に夢中だった頃の私だったら、夢をみる間さえ惜しんで、現実に夢を見出していた。■■
「私から別れたの。
その人には、他に好きな人がいたから」■■
じっと、ブラッドを見た。■■
いや、見ていない。
ブラッドを見ていないことを、彼も気付いているはずだ。■■
熱い目といわれれば、そうなのかもしれない。■■
好きで、でも同じくらいに恨みがましく思っている。
仕方ないと諦めているのに、灰になりきらず暖炉の奥で燻っている薪のようだ。■■
燃え盛るような分かりやすさは消えて、もっと黒く、どろどろとしたもの。■■
【ブラッド】
「……やはり、その男はイカレている」■■
ブラッドの喉が上下した。
この反応は知っている。■■
同じ顔で、同じように。
だが、大分違う。■■
私の知る人とは違い、ブラッドの瞳にはもっと怖いものがある。
女としての恐怖ではなく、もっと根底から怖いと感じるようなものだ。■■
この人が興奮するようなことを何か言っただろうかと、恐々としながら考える。■■
【ブラッド】
「私なら、そんな目で見てくれる女性を絶対に手放したりしない」■■
「……そういう目で見てくれる人がいたら、両脚を切り落としてでも逃がしたりしないね。
他の女に気を移すことがあれば心臓を抉ってくれとでも誓える」■■
「…………。
すごい慰め方ね……」■■
【ブラッド】
「……慰めているわけではないよ」■■
【ブラッド】
「……心臓を抉って……というのも、例え話だ。
実際には……だからね」■■
「……?」■■
付け加えた部分だけ小声だったので、よく聞き取れなかった。
疑問に思うが、ブラッドは気付いているのかいないのか、無視して続ける。■■
【ブラッド】
「もし、君が私を見てくれていたのなら、それくらいの気持ちにはなっただろう」■■
「……あなたを見ていなくてよかったわ。
両脚を切り落とされるのも、心臓を抉るのも嫌」■■
【ブラッド】
「ははっ、心臓を抉らなければならないという心配は無用だ。
これと決めた人が現れたら、私は他に目を向けたりしない」■■
重ね合わせている男とは違うと、ほのめかす。■■
「……どっちにしても嫌」■■
ブラッドの冗談は笑えない。
どこまで冗談か分からない上に、冗談ではない可能性まである。■■
「恋愛なんか、もう当分はいいわ。
いつか結婚するまではいいって思っているくらい」■■
【ブラッド】
「若さを捨てるようなものだな」■■
「いいのよ、それで」■■
あんなに労力を使って、疲れること、もう何度もしたくない。
疲れるだけだ。■■
完全に自立できたら、生涯一人でも構わないとさえ思っている。
年齢からすれば気の早い話だが、それくらい、疲れた。■■
【ブラッド】
「では、次の恋愛で結婚すればいい」■■
「簡単に言うわね」■■
【ブラッド】
「恋なんていう厄介なものは理性とは無縁だ」■■
「昔から言うだろう?
恋はしようと思ってするものじゃない。落ちるものだ、と」■■
落ちる。■■
言い古された言葉なのに、ブラッドが言うとえらく邪に感じる言い回しだ。■■
戻れないような……、あの深い穴に落ちていく感覚。
どん底まで、引きずり落とされる。■■
【ブラッド】
「いくら計画が完璧でも、自分の思うとおりには事は運ばないものさ。
だから楽しいんだ」■■
「……あなたとだけは、恋愛したくないわ」■■
★「お風呂イベント」が発生している場合のみ↓
一緒に入浴しようと部屋に通おうと、いかがわしい展開になどなり得ない。
今までもこれからも、そういう関係でいい。■■
★「お風呂イベント」が発生している場合のみ↑
【ブラッド】
「だろうな。
昔の恋人と似た男なんか後釜に据えたら、顔を見るたびに思い出す」■■
(それもあるけど……、それだけじゃなく、あなたが異常だからよ)■■
こんな人に恋をしたら、それこそ、落ちる恋だ。■■
自分を堕とす。
針のむしろのような恋になる。■■
危険そうに見えない人が危険なことは多々あるが、危険そうに見える人はそのとおり危険な人だ。
とても冷静に思った。■■
【【【時間経過】】】
◆帽子屋屋敷・門前◆
散歩に行こうと門前まで来ると、ディーとダムがやる気のない様子で立っていた。■■
【ディー】
「僕らって、勤勉な門番だよね~」■■
【ダム】
「そうだね。
あまりに勤勉な人間ばかりだと、組織ってのは成り立たないよ」■■
【ディー】
「そうそう、現にひよこウサギは馬鹿みたいに真面目だけど、ボスはだるそ~にしてるし」■■
【ダム】
「僕らはそれなりに真面目に働いてそれなりに不真面目になった方がいいってことだよね」■■
【ディー】
「うんうん、じゃあそろそろ不真面目になろうか、兄弟」■■
【ダム】
「そうだね。
……あれ、お姉さん。散歩?」■■
【ディー】
「ちょうどよかった。
僕らと遊ばない?」■■
「別にいいわよ。
適当に、ぶらつこうと思っていただけだし」■■
【ディー】
「やった!
お姉さんの相手なら、ボスも許してくれるよね」■■
【ダム】
「そうだね。
でもどうだろう、妬まれちゃうかもしれないよ?」■■
【ディー】
「ここの大人たちは大人気ないからね。
そうなる前に逃げちゃおうか、お姉さん」■■
「逃げるのは、まずいんじゃないの」■■
勢いで誘いを受けたが、これはサボりの共犯になるのだろうか。■■
(なるわよね。
勝手に休憩しようとしているみたいだし)■■
「……やっぱり、遊ぶのはやめておきましょう」■■
「遊ぶのは、また今度。
ちゃんと仕事しなさい」■■
【ディー】
「え~……。
僕らと遊びたくないの?お姉さん」■■
基本会話から引用↑
二人は引き留めるように私にしがみついてくる。■■
「だーっ、しがみつかないで!
斧っ、斧がっ」■■
(厄介なのに捕まった……)■■
門前に立っていないと問題だが、立っていれば立っていたで問題だ。■■
【【【時間経過】】】
◆ナイトメアの夢◆
【ナイトメア】
「げほごほ……っ」■■
もう何度となくみている夢の中。
いつもいつも具合が悪そう~な感じで、ナイトメアは現れる。■■
「…………」■■
「あなたが現れなくなったら、寝込んだと思えばいいのかしら、それとも喪服を用意すべきなのかしら……」■■
【ナイトメア】
「……病人に嫌味を言わないでくれないか」■■
「注射が嫌いで病院に行かないなんて人は、嫌味を言われて当然だと思うわよ」■■
【ナイトメア】
「嫌いなものはきら……ぐ……っ」■■
「……ううう。
気分が悪い……」■■
「吐く……血を吐く……」■■
そんなに体調が悪いのに、病院に行かないなんて信じられない。■■
行かない理由が、注射が嫌いだから。
まったくもって、信じられない話だ。■■
「ねえ、ナイトメア……」■■
【ナイトメア】
「ぐぐ……っ。
な、なんだ……?」■■
「そんなに病院が嫌いだなんて……、何かあったんでしょう?」■■
ここは夢の中の夢だから、病院はないのかもしれない。
しかし、彼の言動を見る限り、自分の選択で行かないというような感じだ。■■
つまり、行こうと思えば行ける。
病院に行かないのは、きっと深い理由があるのだ。■■
注射が嫌いで病院へ行かないなんて、あってはならないことだ。■■
【ナイトメア】
「ん?」■■
「ああ……。
そうだな。許せない過去があって……」■■
「やっぱり……」■■
医者に恨みがあるとか、大事な人を亡くした思い出とか、そういう影のありそうな設定が……。■■
【ナイトメア】
「前に注射をうけたとき、看護師に失敗されて、それがすごく痛かったのでトラウマに……」■■
「…………」■■
(……ないんだ)■■
そういう影のある設定ナシで、ただ単に注射が怖いだけなんだ……、この男。■■
「外見は影のありそうな感じなのに……」■■
「外見は……」■■
【ナイトメア】
「……君、さりげなく顔にこだわるよな」■■
「さりげなくないレベルで面食いよ」■■
顔がいいというそれだけで、ペーターだって許せてしまうくらいだ。■■
「あなただって、最初会ったときは影がありそうでミステリアスな男性だって思ったのに……」■■
【ナイトメア】
「影がなくて悪かったね」■■
「【大】ありすぎなのよ。
死相が出ているわ【大】」■■
そういう影は求めていない。■■
「大体、それだけ吐血していて病院に行かないなんて、別の意味でミステリーだし……」■■
もちろん、そういうミステリアス具合も求めてはいなかった。■■
【ナイトメア】
「私は病弱だが、病院は嫌いだ。
絶対行かないぞ」■■
「自力で治してみせる……。
病院なんか必要ない……っ」■■
喪服を用意しなくてはならない日も近そうな顔色で、よくぞ言えたものだ……。■■
「どうしようもない奴ね……」■■
気分の悪そうなナイトメアの背をさすってやる。■■
【ナイトメア】
「うう……。
すまない……」■■
「でも、病院には行きたくない……」■■
(本当にどうしようもない……)■■
【【【時間経過】】】

★以下の条件を満たす場合、ここからナイトメアルート(別ファイル) へ進む
・エース及びユリウスの「滞在BESTEND」か「非滞在END」を見ている
・ナイトメアの好感度が2あり、ルートキャラの好感度が3以下
・責任感が1以下

★条件を満たさない場合、ブラッド 06話_1 へ進む