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ハートの国のアリス
~Wonderful Wonder World~

『ブラッド=デュプレ ■05話_1』

【【【時間経過】】】
◆森◆
他領土の友人に会いに行く途中。
森の中の小道で思い掛けない光景に出合い、ぎくりと足を止めた。■■
「……!!!」■■
倒れている人がいる。
男性だ。■■
じっと見るが、ぴくりとも動かない。
生きているのか死んでいるのかも分からない状態で……。■■
(……って、何をのんきな……)■■
見ている暇があるなら、助けなくては。
重病人や怪我人ならば、誰かを呼ばなくてはならない。■■
ぼさっと突っ立っている場合ではない。
とりあえず様子をみようと、近づく。■■
「……?」■■
……近づけない。
近くへ行こうとしても、それ以上は近寄れない。■■
(……な、なんで……)■■
距離をとって、見ているだけ。
小瓶を見るように、じっと見るだけ。■■
(……どうして?)■■
【【【演出】】】……不思議サウンド(頭がぼんやりする音?)
頭がぼんやりする。■■
(…………)■■
【【【時間経過】】】
◆帽子屋屋敷・廊下◆
【ブラッド】
「退屈しているようだな、お嬢さん?」■■
「ブラッド」■■
廊下を歩いていると、どこからかふらりとブラッドが現れた。■■
【ブラッド】
「退屈は、私がもっとも嫌いなものだ。
同情する」■■
「え?
そんなには……」■■
ここは見知らぬ土地。
目新しいものも多く、飽きて退屈するまでには至っていない。■■
【ブラッド】
「客人を退屈させるとは由々しき事態だな。
屋敷の主として、なんとかせねば」■■
私が答える前に、ブラッドはさくさく話を進めていく。■■
【ブラッド】
「どこかへ出かけるか?」■■
「それとも、敷地内を散歩でもするか?
まだ案内していない場所もあるはずだ」■■
「……ブラッド」■■
私は、まだ名前しか呼んでいない。
それなのに、もう一緒に過ごすことを決められてしまっている。■■
「退屈しているんでしょう?
……あなたが」■■
【ブラッド】
「そういうことだ。
仕事が予定より早く終わって退屈している」■■
悪びれもしない。■■
【ブラッド】
「私は退屈が嫌いなんだ。
暇つぶしに付き合ってもらおう」■■
(なんでこんなに子供みたいなことを偉そうに言えるんだろう……)■■
【ブラッド】
「どうする?
外へ行くか、敷地内を案内するか」■■
「もう、どこかへ付き合うのは決定事項なのね……」■■
敷地内を案内してもらうことにした。■■
「せっかくだから、案内してくれる?」■■
「このお屋敷は広いから、まだまだ一杯、行ったことのない場所がありそう……」■■
【ブラッド】
「いいぞ。
では、私のとっておきの場所へ案内しよう」■■
「マフィアのボスのとっておきの場所……。
ちょっと怖いわね」■■
自分の屋敷内でそんな恐ろしげなものもないと思うが、からかう。■■
【ブラッド】
「茶化すな……。
きっと君も気に入るはずだ」■■
「へえ?」■■
【ブラッド】
「女性なら、喜びそうな場所だから」■■
(女の喜びそうな場所?
私って、そういう感性が薄めだから……どうかな……)■■
【【【時間経過】】】
◆帽子屋屋敷・薔薇園◆
【ブラッド】
「ここだ」■■
「…………」■■
「すごいわね……」■■
ブラッドが私を案内したのは、見渡す限り赤薔薇が咲き誇る、広い庭。
見事な薔薇園だ。■■
「これは……、女性に限らず圧倒されるんじゃない……?」■■
「…………。
……手入れが難しそう」■■
【ブラッド】
「なかなか現実的な感想だな」■■
夢のない感想に、ブラッドは呆れたようだ。■■
こんな夢をみているのだから、私は充分に夢見がちだと思う。■■
「こんなに立派なお屋敷だから、いい庭師さんがついているんでしょうね」■■
【ブラッド】
「ああ。
庭の管理は、すべて任せてある」■■
「だが、この一画は特別だ。
誰にも入らせないし、誰にも触らせない」■■
「じゃあ、どうやって手入れしてもらうの」■■
【ブラッド】
「ここは、庭師にも触らせていない。
手入れも断っている」■■
「手入れしていないわけじゃないでしょう」■■
これほどまでに見事な薔薇園だ。
手入れしていないわけがない。■■
【ブラッド】
「……私が」■■
「え?」■■
【ブラッド】
「私がやっているんだ」■■
そっぽを向いたブラッドの耳は、薔薇ほどではないが赤い。■■
「え……。
【大】ええ!?【大】」■■
「う、嘘!?ブラッドが手入れしているの!?
嘘でしょう!?」■■
【ブラッド】
「……悪いか?
大げさだな」■■
「ちっとも大げさじゃないわ!
すごいじゃない」■■
これだけの薔薇園を維持するとは、相当な造園技術だ。
それに、技術だけでなく、相当の時間も使っているはずで……。■■
「……いつも、ここで仕事をさぼっているのね」■■
【ブラッド】
「まあな……」■■
堂々とさぼっていそうなブラッドなのに、ばつが悪そうだ。■■
マフィアのボスが仕事をさぼってまでやっていることが、薔薇園の手入れなのだから照れたくもなるだろう。■■
「仕事をさぼるのは悪いことだけど……」■■
「……この庭を見ていると、気持ちが分かるわ」■■
実に、壮麗な薔薇園だ。
重厚な香り、雰囲気もいい。■■
この世界はそもそもが私にとっては別世界だが、ここは別の意味で異世界だった。■■
私の住む世界にもありそうなのに、とても遠くへ飛んだような気分になる。
元いた場所に近そうなのに、絶対に有り得ないようにも思う。■■
美しい。
現実味のある美しさであることが、この世界では異様に映った。■■
【ブラッド】
「気に入ったようだな」■■
「ええ……」■■
何をするでもなく過ごしても、苦にならない。■■
時間までもが、美しかった。
ここで過ごす時間そのものが、薔薇色に感じられる。■■
【ブラッド】
「そうか。
気にいったのなら、また連れてきてあげよう」■■
【【【時間経過】】】

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