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マザーグースの秘密の館

『アーサー(貴族)ルート ■アーサー01』

■ 全問正解イベント1

【【【時間経過】】】
◆クイズ時と同じ背景。クイズ終了後に、そのままイベントに入ります。
【アーサー】
「全問正解おめでとう、エリカ。
といっても、まだまだ君を帰すわけにはいかないのだけれどね」■■
「……満点を取ったのに、帰してくれないなんてケチね。
10問正解したんだから、いいでしょう?」■■
【アーサー】
「そう、10問……、君はまだ私のことをたった10個しか知らないんだよ?
帰してあげるには不充分だ」■■
(…………)■■
「……やっぱり、ケチ」■■
【アーサー】
「…………」■■
「…………」■■
「……ちぇ」■■
【アーサー】
「はは、そんな拗ねた顔をするものじゃないよ。
帰してあげる代わりに、この辺りを案内してあげよう」■■
「まだ館の外を出歩いたことはなかったんじゃないかな。
どうだろう?」■■
【大】(!!!)【大】■■
「館の外に出られるの!?」■■
【アーサー】
「別に、私達は君を館に監禁しているわけではないからね。
それじゃあ満点のご褒美に、一緒に散歩をするとしよう」■■
「散歩……」■■
【アーサー】
「……?」■■
「ご褒美に散歩だなんていうと……、ケチくさいっていうか……。
……【大】年寄りくさい【大】」■■
【アーサー】
「…………」■■
「……【大】やめておこうか?【大】」■■
「い、いいえ!
ご褒美に散歩だなんて、とっても……【大】紳士的だわ!【大】」■■
【アーサー】
「…………」■■
「さすが、ジェントルマン!
いい気晴らしになりそうだし、嬉しいわ!」■■
【アーサー】
「…………」■■
「……それはよかった、レディ。
それでは、外に出てみようか」■■
「え、ええ」■■
【【【時間経過】】】
◆住宅街を歩く二人。
◆二人が歩いている歩道は各家の庭に面していて、イギリスの古いスタイルの住宅が並んでいる。
◆落ち着いた閑静な住宅街といったイメージ。
【【【演出】】】・・・さくさく、と二人の歩く足音
【アーサー】
「やあ、今日もいい天気だね。
絶好の散歩日和だ」■■
「そうね。
アーサーさんは、散歩好きなの?」■■
【アーサー】
「そうだね、散歩は私の趣味だよ。
先刻君が言ってくれたように、私は紳士だからね」■■
「……紳士だと歩くのが好きなの?
そこ、何か関連があるところ?」■■
【アーサー】
「あるとも。
そうだね、歩きながら話してあげよう」■■
「はーい」■■
(逆らわないほうがよさそう……)■■
【アーサー】
「紳士の国、などと言われる英国ではね、『歩く』という行為が昔から好まれてきたんだよ。
交通機関がまだ整備されていない頃から、必要半分楽しみ半分に歩く人が多かったんだ」■■
「曇っていることも多いが穏やかな気候で……、風光明媚な国だからかもしれないね。
歩く距離や速度を競うゲームも、昔から盛んだったらしいよ」■■
「それで、紳士なアーサーさんも散歩が趣味なの?」■■
【アーサー】
「そうだね。けれど、紳士でなくとも散歩を好まずにはいられないんじゃないかな。
この辺りの風景は、美しいだろう?」■■
「ええ、綺麗。
どの家も庭を丁寧に作ってあるから、見ていて飽きがこないわ」■■
「まるで……、道行く人を楽しませようとしてくれているみたい」■■
【アーサー】
「それはね、西洋の人々の考え方によるものなんだ。
彼らは自分達のために家の外観や庭を整えるのではなく、道を歩く人のため、町のために家を整えるんだよ」■■
「ガーデニングや日曜大工が趣味というだけではないのね?」■■
【アーサー】
「ああ、そうだね。
きっと他の地域に比べて、町並みを美しく保つということについての意識が高いのだろう」■■
「そんなところに住んでいたら、確かに散歩好きになりそうだわ。
アーサーさんも、いつもここを散歩しているの?」■■
「ああ、この辺りも散歩コースではあるのだけれど……。
こういった住宅街を歩くのも好きだが、私はフットパスを歩くのも好きでね」■■
「フットパス?
散歩専用の道か何かなの?」■■
【アーサー】
「いやいや、フットパスというのは、空き地や森の中にいつのまにか出来た小道……。
人が幾度となく歩くうちに道になったような、細い小道を指しているんだよ」■■
「……獣道?」■■
【アーサー】
「そうだねえ、獣道と言われれば獣道かもしれないが……。
人が作った道だから、人工的ともいえる」■■
「ほら、皆で便利だからって使っているうちに、気付いたら地元の人間しか知らない小道が出来ている、というようなことがあるだろう?」■■
「ああ、そういうの、私の家の近所にもあったわ。
ただ、土地の持ち主に怒られて、使えなくなっちゃったけど」■■
【アーサー】
「なんと。
それは酷い話だね」■■
「酷い?
そうかしら」■■
「当たり前じゃない?
自分の土地に勝手に道が作られて、皆が勝手に使っていたら普通の人は怒ると思うわ」■■
【アーサー】
「私達は怒らないけれどね。
セキュリティの問題ならともかく、小道は使われるうちに自然とできる……、人工物でありつつも自然なものだ」■■
「この辺りではそういう道のことをフットパスと呼んでいて、誰でも使えるし、それに対して土地の持ち主も文句を言ったりはしないものなんだよ」■■
「でも、怖くない?
自分の土地を、知らない人がうろうろしているのよ?」■■
【アーサー】
「それは確かに、自分の家の軒先をうろうろされたら嫌な気持ちにもなるだろうけれどね。
フットパスが出来るのは、例えば所有している牧場や、森、土地の上のことだからね」■■
「庭に道を作られる、だとか、そういう生活圏への干渉とは違うんだよ。
だから、土地の持ち主としても、そう気にせずにしていられる」■■
「そういうものなのかしら……」■■
【アーサー】
「そういうものだよ。
ああ、そうだ、せっかくだから実際にフットパスを歩いてみようか」■■
そういって彼が指差したのは、小高い丘を登る小道だった。■■
「ええ、行ってみましょう」■■
【【【時間経過】】】
◆何もない丘の上、足元には草原。二人が歩いてきたところだけ草が生えておらず、道のようになっている。
◆丘は高台のようになっており、下のほうに畑や牧場が広がり、地平線のあたりに森がある。
丘の上まで、やってきた。■■
足元には草原。
下のほうに畑や牧場が広がり、地平線のあたりに森がある。■■
【アーサー】
「ふう、頂上についたね。
大丈夫かな?」■■
「大丈夫よ。
丘を登ったぐらいでギブアップするほどヤワじゃないわ」■■
【【【演出】】】・・・風の吹く音
「ああ、風が気持ちいい……!」■■
【アーサー】
「少し汗をかいたから、風が心地いいね。
これこそ、フットパスを歩く醍醐味だよ」■■
「散歩っていうより、ハイキングね……」■■
「……癖になりそうだわ。
それに、景色も綺麗」■■
【アーサー】
「ああ、エリカ、あのあたりに森が広がっているのが見えるかな?
ほら、あの黒々とした木々のある辺りだよ」■■
「え……?」■■
「ええ……、見えるわ。
あの地平線のほうでしょう?」■■
【アーサー】
「そうそう。
あのあたりから、この丘までが私の土地でね」■■
「…………」■■
(え~と……)■■
「…………。
……ものすごく、広くない?」■■
【アーサー】
「だろう?
これだけ広ければ、その片隅を誰が通ろうと気にならないものなんだよ」■■
(…………)■■
(……おおらかさが、そういった慣習を受け入れているってことかしら)■■
【アーサー】
「ああ、そろそろ暗くなってきたね。
館まで送っていこう」■■
「あ、ありがとう」■■
【アーサー】
「どういたしまして。
君が今度満点をとったら、また散歩に誘ってあげよう」■■
「……【大】家に帰してよ【大】」■■
【アーサー】
「あははは。
ほら……、帰るよ」■■
◆手を差し出す。
「…………」■■
「……うん」■■
(…………)■■
(……ここにいると、伝染したみたいに、おおらかになっていっちゃいそう)■■
【【【時間経過】】】

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